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No.6455の一覧
[0] 博麗神社オンライン 【習作】[nktk](2012/12/27 07:43)
[1] 昔の奴まとめ[nktk](2011/01/31 18:54)
[2] 一話[nktk](2011/02/02 20:40)
[3] 二話[nktk](2011/02/02 21:12)
[4] 3-1[nktk](2011/02/14 01:21)
[5] 3-2[nktk](2011/02/02 18:53)
[6] 3-3[nktk](2011/02/12 19:54)
[29] 4-1[nktk](2011/02/27 08:03)
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[6455] 3-1
Name: nktk◆1610228f ID:cf4f66c0 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/02/14 01:21

 《SO》。
 略さず言うと《シュラ・オンライン》。
 今時ネトゲの名に"オンライン"かよ、と思われるかも知れないが正式名称ではない。SOは正式名称の略称ですら無く、通称の略称。それで正式名称は――なんだったか、開発コードをそのまま持って来ていたような奴。
 VRMMO。もうすぐ車も浮きかねない世の中にあっても、発表当時は誰も信じなかった。……あまりにも幻想に近かったからだろうか?
 人は自分の願望通りの事象を突き付けられると、なかなかそれを信じようとはしない。だから爆発はとてもゆっくりだった。CS社――コロニーソフトウェア社――は少しずつ少しずつ確実な証拠を示していき、やがて体験キャンペーンで全てが証明された。
 当然というべきかこの時点で本体価格が七桁という高額にも関わらず予約完売。そんなきちがいじみた騒ぎの中、やはり名前は大事と考えるものは相当に居た。こんな型番みたいな名称では淋しかろうと名付けに躍起になる者はとてつもなく多く、日本全国、どこのコミュニティでもそうだった。
 決まるはずがない。議長が居なければ三人以上の議論は成立せず、紛糾しきり、色々な案が粗大ゴミのように積み重なり――

 2051年3月1日。正式サービス、《シュラサーバー》稼働。

 シュラだけでは淋しかろうと《オンライン》が付けられ、ほとんど反対意見も無かった。これがSOに到るまでの顛末である。




 という話を以前どこかで目にした。





 とんてんかん。
 実際にこんな音が出せるようになれば一人前だと思う。根拠は無いが。

「ふう。」

 汗を拭う。
 かいてもない汗を。
 無駄なことをやってしまうのはロールプレイヤーの宿命。

 ……とんてんかん。
 お庭にてゴミの再生作業。まず椅子、鉄の台を用意して――

 とんてんかん。
 延々二時間。

 錆びたボロボロの曲がった剣 → ボロボロの曲がった剣 → ボロボロの剣 → ブロンズショートソード

 本来は磨いたり薬品の類を使って錆を落としてから真っ直ぐにして《簡易溶鉱炉》で熱して鍛え直す……私は面倒なので《精錬用ハンマー》でたたき続ける。
 一応アイテムの特性としてサビ落としなどの判定も付加されているからスキル上げるだけならとりあえずこれで十分。壊れる確率は上がるけど、三千本もあるのにケチったって仕方ない。

 カンカン、ぱきーん。

「……あ、クホった」

 突然のこの言葉、クホった――とは、最近『MMOアーカイブス』により復活を果たした古いゲームから……何かその語だけが流行って伝わったもの。そのゲームの精錬NPCが装備を叩き壊した時に誤魔化すようにクホホホホ……と言うらしい。つまり精錬失敗の意。そのゲーム自体を自分で見たことないわけだし人前じゃ使えないけど、独り言とはフィルターが緩むもの。
 ……流行言葉って不思議だ。復活したとは言え、なんでそんな古いゲームから今更。

 ちなみに今回の結果は《ブロンズショートソード》が+10手前で折れて消滅と、まずまずの戦果。
 スキル値も順調に増え三十くらい。と言っても伸びにくくなるのはここから。残り二千九百九十二本でどれだけ上げることができるやら……。

 うん。心配のしようがない。みんな作った武器の処分には困ってるし買い足しは楽だろう。それにあれだけゴミを引き取り、物によっては購入までしたのだから、職人プレイヤーは倉庫が開いた分また制作を始めるだろう。すると全体的なランクは多少なりとも上がり、それを更に精錬して売ればまた利益が上がる――かもしれない。
 まあ利益についてはまだわからないけど、こんな圧倒的な暇と根気が無けりゃなりたたないスキマ産業に邪魔が入ることもあるまい。
 全部折っても補充は容易。しばらくはかもしれない運転を続けて問題ない――
 ……いや、ひとつ問題があるかもしれない。

「またハンマーが壊れてる……」

 この第一回目でハンマー代を稼げるかどうか。








 五時間後。

「+100が出来てしまった」

 やべぇ。見たことないよこんな数値。暇つぶしに始めただけなのに凄い。
「このウェポンどうしよう」
 わくわくてかてか、ああどうしてくれようか。

 ――精錬効果。ボロボロからまともなものに作り替え、プラスを上げていくうちに確率で"エゴ"が付く。今回の場合だと以下の通り。

 《鋭利な輝きの鉄のナイフ+100》

 エゴ効果により切れ味が増し、恐らくアンデッドの類に何らかの効果。+100により攻撃力が上がり防御無視ダメージが追加。もう少しランクの高い装備ならもっと効果は増えるけど、単なるナイフじゃこんなもの。
 鑑定すりゃもっと詳しく分かるだろうが既にお腹いっぱい。十分だ。+30で《偽神器事件》が起こったこの世界。こうともなればサブウェポンとしては兵器のレベル。ひょっとしたら私ですらそれなりにダメージを被る場合も……ああ売ろう。絶対売ろう。
 そうと決まればオークション。早速出かける準備をするべくと思ったけど特に無く、勝手に出鼻を挫かれたようになってあーうー唸ってるところにお声が掛かる。

「よう。今暇か?」
「はうあっ」

 変な声が出ました。

「……大丈夫か? まあ、演技だよな。いつも何でか気付いてるし」
「もちろん気付いてたわよ。いつもだったら山に入った時点で気配くらい」
「そーかそーか」

 ……笑顔にいらついたが、顔には出さない。いちいち突っ込んでくるほど無粋な奴じゃないけど、ロールプレイ的な事情であまり容易く素を出すのも。

 ……まあ寸劇は置いといて、何の用?
 はあ、遊びに行く、と。付いて来いと。で、

「どこを襲撃するつもり?」
「む、流石……!」

 これもロールプレイ的な事情だが、お互い察しは良いのだ。

「ほら、おとついユニーク武器について訊いただろ」
「ああ、あれね。自分ひとりで戦うんだと思ってたけど」
「いや。それとは全く関係なくちょっと金稼ぎをと。もう勝ったし」
「ああそう」

 無駄な回り道をしないでほしい。

「まあ、それなら…………行かないわ。何かのついでならともかく、利用されるようなのは気に食わないし」
「む、そういうつもりが無いとは言わんが――ま、今回は一応誘いに来ただけだぜ。遊びに、さ」

 そう言ってウインクする魔理沙。私はそれに何も返さず、じっと目を見る。
「――ん?」
 自然にはにかみ、首をかしげる。

 ……むう。どうやら、遊びってのは本気らしい。となると断ったのは浅慮だったかもしれない。ウインクの意味はよく分かんなかったけどもちょっと悔いる。
 お互い格好つけずにいられないから時折こうしてすれ違う。

「けど珍しいな。お前に暇以外の何かがあるなんて。で、さっきから気になってるんだがそれはなんなんだぜ?」
「それ、って……」

 言われて、思い出す。左手に握っているもの――+100ナイフ。

 ――突然ながら、ここで計算が入る。仮にLv20のバランス型がこれを持った場合素の攻撃力約30にナイフの攻撃力16鉄の素材補正が+5で51に+100分、仕様変更が無ければ要するにStr(力)+100に等しいからだいたい145足されるとして計196。更に防御無視ダメージが100。相手のレベルも同程度とすると相手がVit特化としても確実に一撃でオーバーキルという――

「やっぱ行く」
「あいさ」

 即座に答える魔理沙はしきりに帽子の位置を直すふりをしており、返事の調子は"どちらでも良いさ"というスタンス。ロールプレイ病と自分勝手さ。どちらも鏡を見ているようで気に食わなく、今からでも断りたい気持ちはあったが……あったが――


 思うに、わるくはないとおもうのだ。




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