これはふと浮かんでしまった一種の逆行もののプロローグです
Fate×デモベは書いてはいるのですが、書いた紙がどこぞへと失せてやる気が一気にダウン、とりあえず誤魔化しに書いてみました。
いえ、感想もいただいているので蜂蜜酒を作るところまでは最低でも続きを書きますよ?
ちなみにこの話だけではでは誰が逆行したかはまったく書かれていません、それでも誰が逆行したのかタイトルでわかる不思議
ぶっちゃけわけのわからない話です。
既読ではありますが、買っていないためお・り・が・みが手元にないのでいろいろ矛盾に満ちています
パウダースノー。
ある雪の日、粉雪が舞っていた。
「――っていうのですかー。いい名前ですね」
それは古い日の記憶。
「――、一緒に来ますか?」
差し出されたその手を――が忘れることは一生ない。
いつも――は誰かからそれを差し伸べられることを求めていた。
けれど、それが差し伸べられることはなく、――に負担が増えていくばかり。
――は、そのとき自分がどうしたのか覚えていない。
けれど、最後にはきっとその手をつかんだのだろう。
これは一つの改変された物語。
一つの異分子が入り込んだことにより、変革された物語。
そして、誰もが二十一世紀を願う物語。
さあ、物語を始めよう。
開始は始まりより十数年後、1999年の四月初頭に空に奇妙な魔法陣が描かれ、「神殿協会」という新興宗教が台頭してきた頃より始まる。
「ふあああああ」
一人の少女が数学の授業が終わると同時に大欠伸をした。
「鈴蘭、そんなに野木先生の授業は退屈だった?」
そんな彼女に苦笑して問いかけたのは親友である高木 嘉子(たかぎ よしこ)だ。
もっとも、彼女を本名で呼ぶものはおらず、カギ・カッコと皆が呼んでいるのは公然の秘密だ。
「うん、なんであんなつまんない授業を聞かなきゃいけないのかわかんないよ」
そして、その親友である鈴蘭はなかなかふてぶてしい性格をしている。
「にゃ~、ワタシとしては文系科目ではどん底の鈴蘭がなんで数学と物理、英語に限ってはそんなにできるのかが分からないよ」
「そりゃ、勉強してますから!」
「そういう問題じゃないない。それとも鈴蘭は他の科目は勉強してないわけ?」
「いや、してるけどさ……」
困ったように頬を掻く鈴蘭にカッコは呆れたように首をすくめた。
「まあ、勉強は興味がある分野しか頭に入らないって言うしね。鈴蘭は確か、将来プログラマー希望だったけ?」
「そう」
「んで、Wind-OSを超えるOSの開発をしたいんだっけ」
「そうそう!」
「もーまったく、この子は……」
呆れたように、カッコ―――魔人組織「ゼピルム」の最高幹部の一人VZ(ヴィゼータ)は監視対象である「川村 鈴蘭」を見た。
ゼピルムの調べによれば、鈴蘭は古き“異界の従(アウター)”の血を引く神殺し四家「本流」名護屋河の出生であり、ゼルピム総長の魔族「エルシオン」同様、魔王候補であるのだという。もっとも、最後の魔王「フィエル」の息子であるエルシオンと比べ、圧倒的に魔王候補としては劣るとも、教えられている。
ゼピルムの情報関係を統括するエスティから齎されたその情報を疑うわけではない、わけではないが、時折、VZは鈴蘭がそのような物騒なものであると思えなくなってしまう。
なにせ、ただの孤児で親戚中を回されているはずだった鈴蘭が、ゼピルムの監視網からいなくなり、見つけたときには、なぜか日本が世界に誇る大企業「Will Century Of 21 Corpration」―――通称、「二十一世紀社」の会長令嬢になっていたということを信じろというほうが難しい。
長年ゼピルムに所属し実績を積み上げてきたエスティの言葉でなければ誰一人として信じなかっただろう。
そして、その言葉を真実と信じて動くVZにしても鈴蘭本人を目の前にすると「魔王」という言葉と、鈴蘭がつながらなくて困る。
なにせ、目の前にいる鈴蘭という少女はどこからどう見てもただの人間、未来という可能性に燃える「第一世界」の存在にしか思えない。
対し、「魔王」とは、一般人の住まう「第一世界」、その裏に存在する暴力が支配する「第二世界」、さらに深くに存在する神秘が実在する「第三世界」よりもなお深く、歴史に忘れ去られた「澱」の沈殿する「第四世界」の存在である。
どう考えても繋げようがない。
「はあ」
溜息一つ。
外を見れば、青空に描かれた魔法陣(らくがき)。
「ひどいよカッコ、これでも結構真面目に……って何を見ているの?」
「ん~?」
落書きに指をさして
「アレ」
「ああ、あれね……あの胡散臭いイカサマ師達がどうやってか作り出したホログラムね……」
数ヵ月前に、ゼピルムがランディル・シア・エムネス枢機卿を利用し、魔王を復活させるために用意したサブプラン、そのための大業な仕掛けを鈴蘭はただのこけおどしとして相手にしない。
そう、鈴蘭本人は第一世界の存在だ、それは間違いがない。
けれども、その背景は第一世界の範疇に収まっていないのが問題だ。
「でもでも、鈴蘭、皆、世紀末の大魔王降臨だ~とか、ノストラダムスの予言は真実だったんだ~とか言ってるけど」
「そんなことあるわけがないでしょうが。母さんがウチの技術者連中に調べさせてみたけど、ただの映像が見えるだけで、何の
異常力場もなかったって言ってたわよ」
そう、二十一世紀社というあまりにも大きなバックグラウンドが鈴蘭には存在している。
いかにゼピルムが第三世界の一大勢力であろうと、二十一世紀社はそれを凌駕する第一世界から第三世界に横たわる超巨大勢力
である。
十数年前に誕生したばかりの会社だというのに神殿協会もゼルピムも気づかぬ間に第三世界にまで名を轟かすようになった大企業、それの実態を探るためにランディル枢機卿に「川村 鈴蘭」ではなく「名護屋河 鈴蘭」の情報をリークしたのだ。
その力を使えば神になれると。
そして、「名護屋河 鈴蘭」の正体に気づいた時にはもう止まれなくなっているように。
そのことによって二十一世紀社の脅威を図り、あわよくば魔王を復活させる、これが落書きの裏に隠された意図であり目的である。
流れる大河に小石一つ投げ込んでも流れが変わることはほとんど無い、けれども大岩、或いは山を投げ込んだら大規模な変化が起こってしまう。
―――たとえ、山が大河の流れを乱すことを望まないのだとしても。