朝、自分一人しかいない部屋で人を待つ「…何を緊張してるんだか…私らしくないな」インターホンが鳴り、声を掛ける「開いてるよ」「お邪魔するヨ」超鈴音。自分の依頼人。その掲げる目的に共感したからこそ依頼を受けた。少しばかりの私怨…後悔が在ったからだ。「それで、どうしたんだい? 超。私は依頼を受けた、打ち合わせもした。なのに君はまだ話す事があると言う」「単刀直入に言うヨ。アギ・スプリングフィールドの事ネ」ドキリとした。彼を裏切る事は出来ない。イロイロと世話になっているし、敵対してもメリットが略無い。デメリットの方が大きい。何よりも仲間を売る事はしない。刹那に関しても情報は渡していない。渡さずとも超は既に知っている可能性が高い。コレは確信している。「先生がどうしたんだい?」「アギ・スプリングフィールドは死ぬ」ピチョンと蛇口から落ちた一滴の水の音が大きく聞こえた朝っぱらからエヴァさん宅に訪問しました。怒られました蹴られました茶々丸が優しいんです。優しいんです。「それで、別荘を貸せと?」「良いでしょ? どの道此処に住まわせて貰うんだから。先達の意見が聞きたいんだよ」エヴァさんは少し考えて「…本人を連れて来い。監視の方は私が何とかしよう。久しぶりに戦闘以外で本領を発揮できるしな。伊達に魔女狩りの時代から生きてはいない」頼もしいです。最終的にはエヴァさんが鍵だからねぇ。親しくしといた方が得ですよ。ネギが試験に受かっても顔を合わせなければ良いんだし。借りてる部屋はダミーだからね。隠れ家の役割も在るけど。基本的には借家に居るけど、他の時間は此処に居るからねぇ。此処まで監視したらエヴァさんが爆発するから、止めないといけないし。此処で悪魔を召喚すれば気付かれないし、エヴァさんは侵入者用の結界とリンクしてるから誤魔化せる。後は、俺がどう動くかなんだよねぇ。クロは戦闘に出せないから、三人に頑張って貰うとして…精霊さんは…その日の天候だなぁ。確か、雨が降っていた筈だしね。ヴィヴィ辺りかなぁ「このかさんと千草さんなら、連れて来てるよ。後は本人の決意表明を聞いてあげて。虐めても良いけどね。ある程度は心の強さも鍛えないといけないから」そうじゃないと、呪いとか教えられないよ。罪悪感が少しでも混じれば、弱くなる。返されても大変だし。罪悪感を抱いても良いけど、それを全部飲み込める様になって貰わないとねぇ。治療系の方は才能が在るみたいだし。コッチはゆっくりとできるし。「ほぉ…私は厳しいぞ? あんな天然娘に耐えられるのか?」「あの子、思ったよりも芯が通ってるよ? 千草さん…実際に誘拐した本人から、イロイロ教えられてるからねぇ。危機感もチャンと持ってる。」「…そうか、茶々丸。近衛このか、天ヶ崎千草を連れて別荘に行け。お前はどうする? 付いてきても良いが…手は出させんぞ?」どうするか…帰るのも嫌だし「魔導書を読んでるよ。知識は欲しい」「どの道、別荘か。それと、別荘内では幻術を解け。」「了解。エヴァさんには隠しててもしょうがないしね。」精霊さん達が居ないのはやっぱりキツイな……何とか、誤魔化せてるけど。此の儘だと魔法先生・生徒が五月蝿いだろうし。道具は有るけど……消耗品だからなぁ。直接見られなければ、何とかなるけど…これはエヴァさんの知識を借りるしかないか。報酬は薬草で良いかな? 興味も持ってたし。「茶々丸、先に行く。着いて来いアギ」「はいはい」「畏まりました。アギ様、食事の方は?」「茶々丸のお勧めでいいよ。」「畏まりました。後で、紅茶をお持ちします」本当に欲しいなぁ別荘内の一室で、魔導書を読み漁る。ドレもコレもが古い物で、今は忘れられてしまった物も多い。本当に良い物は残る。コレは確かだ。しかし、それを使う・使える人間が居れば話だ。魔法使いの才能の一つは魔力量。コレが足りなければ改良するしかない。既に出来上がっている物を改良する事ほど難しい物は無いと思う。薬に関してもだ。既に絶滅してしまった薬草・幻獣などの一部は手に入らない。成分表が有ったとしても補える可能性は皆無と言っても言い。人工的に作れるようになるまで何十、何百年と掛るだろう。その前に忘れ去られてしまう可能性の方が高い。エヴァンジェリンが収集した魔導書、アーティファクトはそのドレもが俺に取って素晴らしい物だ。心が躍る。此処に記述してある魔法薬、エヴァンジェリンが保存している魔法薬の成分表。その技術。全てを使って試したいという欲求に駆られる。「ダメだ…先ずは奴を捕らえてからだ。」エヴァンジェリンは今年までは麻帆良に留まるだろう。何だかんだで義理堅い所がある。そこは好ましく感じるが、信用はしても過度の信頼をしてはいけない。彼女は己の矜持に従い行動を続けるだろう。何処かでぶつかる可能性もある。「熱くなりすぎたな…少し、休憩するか」備え付けの時計を見れば六時間程経っていた。茶々丸に悪い事をしたな。そう思いながらも、辞められそうに無い。煙を吐きながら階段を下りる。携帯灰皿に灰を落としながら、階段を折りきると。唸っているこのかさんを発見「う~ん…コレは本人の感覚しだいどすからなぁ…余り焦らんと、ゆっくり行きまひょ。お嬢様」「なんか、後チョットで掴めそうな気がするんよぉ。もうチョットだけ付き合ってぇな。千草姉さん」仲が良くなってるねぇ。此の儘独立できるんじゃないの?「エヴァさん。このかさんはどうだった?」何時の間にか隣に居たエヴァさんに聞いてみる。物凄く嬉しそうなんだもの「合格だ。己が言った決意の矛盾。それさえも理解し、己の為に考え己の為に決める。自分が定めた道を流されずに歩くと言い切ったよ。」やっぱりねぇ…発破を掛けすぎたかなぁ「私は近衛このかを認めてやれるよ。四葉五月と同程度にはな。」「そこまで?」「あぁ、流されない強さ………強者には絶対的に求められる物だ。私は、流されていたからな。」「エヴァさん?」「昔の事だ。弱かった時のな……それよりも、茶々丸が待ってるぞ。貴様が没頭しているのを邪魔をしてはいけないと、時間をズラしたらしい。」「直ぐに行きましょう。このかさん!! 千草さん!! ご飯ですよぉ!!」「コラ、私を引っ張るな!!」食堂に相坂が居た事に驚きました。このかさんは、魔力を巧く出せずに困っている様です。コレは個人の感覚が物を言うからなぁ。このかさんは相坂と茶々丸と料理談義しています。まぁ、息抜きは必要だよねぇ。俺は千草さんとエヴァさんと一緒に、ヘルマンの石化を受けた人の一部に付いて意見を出し合っています。在る意味で呪いという石化の魔法。それも爵位持ちの悪魔が使った石化と言ったら二人とも凄くノリノリになりました。とても、心強いです。アギが書庫に篭ってる間「近衛このか、魔力を使う、引き出す感覚を使いたいのなら仮契約しろ」「へ? エヴァちゃんと?」「…アギが居るだろう」「お嬢様とアギはんを仮契約させたら、学園長と長の思いの侭になりますよ?」「チィ、そうだったな。」皆寝ろよ? 俺も今日は寝て、次はループに行くから。今日は此処までです。