二度目の飛行機の旅は快適だった。寝不足気味だったのでグッスリと寝れたからなのかも知れない。空港に着くと、ネカネさんが迎えに来てくれていた。常にハヤテを自分の隣に呼んでいる。今の所、不振な輩は居ない。「お帰り、アギ」「ただいま、ネカネさん」空港出ると、車が一台止めてあった。荷物を車に入れる前に、鞄の中から薬品を複数取り出して、ローブの中に入れておく。魔法処理をしてあるので、ちゃんと保存できる造りに成っている。自分でしたんだけどね。アスモダイに貰ったローブは着ない。感づかれても困るからだ。しかし、何かを忘れている。かなり前から、頭の隅に何かが引っかかっている。でも、思い出せない「どうしたの?」「何でもないよ…懐かしいなって思っただけ」「…そう」メルディアナ魔法学校。懐かしき我が母校だが、良い思い出は少ない。長い廊下を歩き、階段を上がる。時々擦れ違う魔法学校の教師の視線が鬱陶しい。俺が修行をリタイアしたのを知っているからだろうが、反応があからさま過ぎる。大人なら、もう少し抑えろよ。一際大きい扉が見えた。あの扉の向こうに、此処。メルディアナで最強の護衛が居る。ドアを開けて部屋に入る。「久しぶりじゃの、馬鹿孫」「そうだな、クソジジイ。」「ふ、二人とも!!」ネカネさんが怒るけど気にしない。「それで…どうする? 今から行くか?」「出来るだけ早い方が良い。此処の職員の眼も鬱陶しいからね」少し考えてから、立ち上がる校長。「ネカネ、此処で待っていなさい」「はい。」「ワシの後に付いて来い。」再び、階段を下りて廊下を進み。更に階段を下りる。見えたのは魔法処理された扉。此処から見ただけでも解かる程に厳重な処理がされている。此処なら、襲われる可能性も低い。「アギ…魔法薬のサンプルは提出せんのか?」「成分表は渡したでしょ? 一応、予備を鞄の中に一つ入れてるからソレを量産すれば良い。」扉を開くと、無数の石造が並んでいた。その中から探す。少し進むと、ソレはソコに有った「……スタンじいちゃん」やっと…やっと終わる。やっと話せる。話したい事は沢山有るんだ。懐から、魔法薬を取り出そうとローブに手を突っ込んだ瞬間、その声を聞いた――――――――――障壁突破・石の槍。永久石化!!振り向いたが遅い。ソコには無かった筈の水の塊が有った。他の石造の影に隠れていたのか!!避ければスタンじいちゃんの石造が砕ける。避けられない。障壁も無意味(ハヤテ!!)呼びかけても反応が無い。何故だ?! 何で…肉を貫かれる、ダメだ、背骨も砕けた。意識が残っているのはこれ以上の痛みを知っているからだ。「アギ!! 貴様!!」「動かないで貰おう、ルグリス・スプリングフィールド。やはり、君がジョーカーだったようだね。アギ・スプリングフィールド。」「フェ…イト…何で…俺を…」痛みは直ぐに消えた。穴を開けられた腹から石化が始まっている。ジジイも動くに動けない。地面を見ると、少しだけ石の棘が見えた。その棘は石造の真下にある。動けば多くの石造が砕かれる。中には修復不可能な程に砕かれるモノも出てくるかもしれない。「君がヘルマンをあしらったのは知っている。僕もね、あの場に居たんだよ。水溜りを通して見させて貰った。君の知識・機転はネギ・スプリングフィールド以上だ。その人脈もね。」それだけ…の筈が無い。「勿論それだけじゃない。僕が君を意の一番に殺す事を決めたのは、君の魔法薬を作る技術だ。僕の石化を解除した魔法薬を作ったのは君だ。あの状況では君以外に考えられない。君の過去を調べれば自然と行き着いたよ。君が石化を解除出来る魔法薬を作ろうとしている事はね」腕は既に動かない。速く…魔法薬を外に出さないと…石化してしまう!!何故だ!! 何で来ない!! ハヤテ!! アン!! シニィ!!(浮遊の魔法で何とか…)「それにだ……君の死は彼への警告にもなる。例え彼が怒りに身を任せて僕を追ったとしても、簡単に排除できる。」コツコツと音を立てて近寄るフェイト。俺が何も出来ないのを解かっている…「残念だけど、魔法薬は廃棄させて貰うよ!!」拳が、俺のローブを身体事叩く。試験管が割れた「ギィ!!」掛った!!「? 何を笑ってる?」「ケハッ…ただじゃ死なないって事だよ!! ジジイ!!」フェイトが叩いたのは右の胸。確かにソコにも魔法薬が入っている。でも、石化解除の魔法薬は左胸の方なんだよ!!扉で石化解除の薬を二つ、ジジイに送る。もう一つは俺の真後ろ、スタンじいちゃんの真上だ。石化が、肺まで到達してきた。最後の呼吸で酸素を取り入れる「マガ・マギ・ゴディア・マラスクス!! 我が意の侭に貫け!! 水針!!」細く鋭い水の針が右の胸から伸びる。有りったけの魔力を込めた。水の針はフェイトの障壁を貫いて。左腕に突き刺さった。「グッ!! コレは!!」「カカカカ、腐食の呪い。俺の研究の…副産物…だ」「イギィ!! アアアアアアアアアアア!!」「速く…腕を捨てないと……魂事…腐るぜ?」ブチィと音がすると、顔を掴まれた「塵と成れ!! 」石化した部分から砂になって行くのが解かった。御丁寧に風を呼んで散らしてやがる…(コレで…終り…かぁ)フェイトは逃げた。逃げ足は早いようだ「アギ!! 確りせんか!!」最後を看取るのがジジイっていうのがなぁ(ツケが全部回ってきたか?)もう、心臓も石化する。記憶がフラッシュバックした。その中に、今まで忘れて居て思い出せなかった事が有った。(そう…いう…事か…何て無様。今頃思い出すか? 普通)本当に救いようがないな。アギ・スプリングフィールド石化から解除されたスタンが最初に見たのは、一掴みの砂を握り締めて涙を流すルグリス・スプリングフィールドだった。アギ・スプリングフィールドの死は、直ぐに麻帆良に届いた。ネギ・スプリングフィールドは呆然とし、涙を流した。関係者も勿論、涙を流した。一番酷かったのは近衛このかと桜咲刹那だった。「誰?! 誰がアギ君を!!」「…フェイト…アーウェンルクスと姿形、使用魔法が一致した。」「奴か…このちゃん、行こう」「…そうやな…ケジメは付けさせて貰う!!」彼女達の心に有るのは悲しみと怒りだった。ネギが落ち着いて居られたのは、今まで見たことも無い二人を見たからなのかも知れない。ネギは、直ぐに行動した。先ずは師匠であるエヴァンジェリンにこの事を知らせに行った。しかし、エヴァンジェリンは「…そうか……」と一言言うと、ネギを追い出した。ネギは、始めてみたエヴァンジェリンの姿に衝撃を受けた。全くの無表情。恐怖が背筋を這い上がった。部屋に帰るとネギは、直ぐに荷造りを始めた。アスナも一緒だった。勿論このかも刹那ものどか達も、荷造りをしていた。元々は魔法世界に行く為にウェールズに行くつもりだったのだ。その予定は変わらない。ただ…ソレまでの時間を兄の所で過ごしたい。その思いが強かった。涙が、嗚咽が止まらない。息が詰まる。「グッ…ヒィッ…」ネギ・スプリングフィールドは本当の意味で一人に成った。近衛このかは桜咲刹那の部屋に既に荷物を詰めた鞄を持って座っていた。彼女達とネギの心境は違う。お互い怒りを持っているの確かだ。しかし、このか達が持っている怒りは「してやられた」という怒りだった。既にエヴァンジェリンの所には顔をだした。エヴァンジェリンは一人で泣いていた。その姿を見て、不思議に思った。アギ・スプリングフィールドは本当に死んだのだろうか?陰陽道の中には占いも在る。そして、アギの体の一部は直ぐに入手できた。エヴァンジェリンの家からマンションに向かった刹那が、窓の一部を破壊して部屋に侵入しアギの髪を入手した。龍宮真名の姿を探したが、居なかった。恐らく、何処かで泣いているのかも知れない。そう思い、下手な希望を持たせない様に探す事はしなかった。結果は、出なかった。生死が判別出来ないのだ。しかし…死んで居ない可能性が高い事は解かった。「これは…秘密にしておかなアカンな」「ですね……ネギ先生に付いていけば何か解かるかも知れません」二人はアギが死んだとは微塵も思っていなかった。その頃、龍宮真名は茶々丸に連れられて歩いていた。アギの死を聞いた時は何が何だか解からなくなった。しかし、部屋で蹲っていると茶々丸が合鍵で家のドアを開けて入ってきて言ったのだ「アギ先生は生きています」どういう事だと怒鳴った。茶々丸はただ、自分に付いて来いとしか言わなかった。目的地はエヴァンジェリンの家。ソコには涙で眼を腫らしたエヴァンジェリンが、怒りを顕にして腕を組んで待っていた。茶々丸は、鞄を一つ取り出すとその中から『箱庭』を取り出した。真名には見えた。その周りに漂う精霊を。「本当に?」「はい…私が必要も無いメンテナンスを受けていたのは、この為です。」「…どういう事だ」「中に入れば解かります。最初から、アギ先生の手の上の出来事だったんです。」その言葉に、エヴァンジェリンは一つの事に気付いた。「は…ハハハハハ…まさか…そうか、そういう事だったのか!! チャチャゼロ!! 貴様も一枚噛んでるな!!」「ソウイウ事…泣イテル御主人も可愛カッタゼ?」「はい、録画もバッチリです」「ど、どういう事なんだ?!」真名の叫びに茶々丸が笑顔で言った。「ダミーです。」多分…次で最後…だといいな…以下略[ついにBINの天国行きが秒読みのようです]「七つの大罪(病気)を司る悪魔王BIN」『ハスターより早いBIN』『因果律を調整する者BIN』『BIN粒子最大圧縮! 連装更新砲、発射!!』