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No.5527の一覧
[0] 東方結壊戦 『旧題 ネギま×東方projectを書いてみた』【習作】[BBB](2010/01/05 03:43)
[1] 1話 落ちた先は?[BBB](2012/03/19 01:17)
[2] 1.5話 幻想郷での出来事の間話[BBB](2009/02/04 03:18)
[3] 2話 要注意人物[BBB](2010/01/05 03:46)
[4] 3話 それぞれの思惑[BBB](2012/03/19 01:18)
[5] 4話 力の有り様[BBB](2012/03/19 01:18)
[6] 5話 差[BBB](2010/11/16 12:49)
[7] 6話 近き者[BBB](2012/03/19 01:18)
[8] 6.5話 温度差の有る幻想郷[BBB](2012/03/19 01:19)
[9] 7話 修学旅行の前に[BBB](2012/03/19 00:59)
[10] 8話 修学旅行の始まりで[BBB](2012/03/19 00:59)
[11] 9話 約束[BBB](2012/03/19 01:53)
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[5527] 7話 修学旅行の前に
Name: BBB◆e494c1dd ID:bbd5e0f0 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/03/19 00:59
「話の結論から先に言おう、彼女らと協力する事となった」

 そう重々しく口を開く場所は、朝日が差し込む学園長室。
 一人椅子に座り、机に肘を乗せ顔の前で指を組む近右衛門。
 机を挟んだ向こう側に立つ者らがどよめき、室内が一気に騒がしくなる。

「何故ですか学園長!」

 ガンドルフィーニを筆頭に魔法先生と呼ばれる麻帆良学園の教師たちが疑問の声を上げる。
 朝緊急の要件で招集されたと思ったら、予想外の話が出てきたのだ。
 集まっていた教師皆が目的の分からない不法侵入者と協力する、なんて話が出るなど予想だにしなかった。
 だから学園長、近右衛門の言葉が信じられないと言わんばかりに声を荒らげた。

「まあまあ、少し声を抑えんか。 怒鳴っても耳が痛くなるだけじゃ」
「……申し訳ありません、何故彼女らのような不審人物を置いておくどころか協力など……」
「見解の一致じゃ、彼女らがここに来た理由が我々にも関係あるからの」
「我々? それはどう言う理由で?」

 ガンドルフィーニの隣、細目の少々頼りなさそうな印象を受ける男性教員の『瀬流彦』が問う。
 その問いに近右衛門は一度頷き、協力する事となった経緯を話し出す。

「まずは彼女らの事から話そうかの、彼女らは魔法協会や呪術協会にも属しておらんフリーの魔法使いたちじゃ」
「どちらにも?」
「うむ、この前エヴァンジェリンが来た時に言っておったじゃろう? 『穴倉』だと」
「……確かに言ってましたね」
「その言葉の通り、本来なら彼女らは表舞台に出て来ない者らじゃ」
「本来と言うと、出ざるを得ない事でも起きたのですか?」

 カソックと呼ばれる法衣を身に包む褐色肌の女性、『シスター シャークティ』が言葉の要点を突く。

「うむ、彼女らの住む土地が攻撃されたそうじゃ」
「攻撃……、報復でも?」

 小太り、微妙に横に太い教員、『弐集院 光』が出ざるを得なかった理由を口にする。

「うむ、全く以て余計な事を仕出かした連中が居る」
「まさか……」

 麻帆良大学で教授を努める『明石』が眉を顰めた。

「いや、麻帆良には十中八九居らんじゃろう、彼女らは随分と視野が広いようじゃからの」
「ではなぜ麻帆良へ?」

 改めてガンドルフィーニが近右衛門へと問いかける。

「そこで我々、と言うかこの麻帆良に居る人物が関係してくるんじゃ」

 一つ大きなため息を吐く近右衛門。

「その彼女らが住む土地を攻撃した者がの、ネギ君を狙っているそうじゃ」
「ネギ先生を!?」

 そうしてまたざわりと動揺が広がる。

「つまりじゃ、彼女らは攻撃してきた者を捕まえたい。 我々はネギ君を狙っている者を放ってはおけない、さすれば後は簡単じゃ」
「だから協力すると……、しかし誰が攻撃を行ったのか分かっているのなら……」
「調べているが場所まではわからんそうじゃ、ワシも色々と探させては居るが手がかりすら掴めて居らん」

 顔色を変えず、とある考えに至った瀬流彦がそのままの言葉を吐く。

「それってネギ君を使った囮じゃないんですか?」
「そうじゃよ」

 近右衛門は軽く頷く、間違っていない事に首は横に振れない。

「学園長ッ!?」

 ガンドルフィーニがまたも声を荒らげ、近右衛門を見るが。
 近右衛門の表情は暗い、近右衛門もまたそのようなことを望んでいないと理解して口を閉ざした。

「諸君らも分かるじゃろう?」
「………」

 そう言って一人一人と視線を合わせ、見据える近右衛門。
 魔法先生たちは一様に黙る。

「彼女ら、霊夢君と魔理沙君、そして八雲殿」

 この場に居る全員が停電時に起きたエヴァンジェリンの戦いを、八雲 紫をしっかりと瞳に、記憶に収めている。
 天と地、雲泥の差、何をしようとも決して埋まらぬ溝。
 力を測ることすらおこがましい程の、その力の深淵。
 もし敵対し対峙すればせいぜい震え立ち竦むのが良い所、逃げ出すことが出来るならだけでも素晴らしいと言えるだろう。

「正直に言おう、ワシは彼女らと敵対したくはない」

 力の差を実感した者は幾人か、あるいは全員なのかもしれない。
 無論近右衛門もその一人、高畑や葛葉 刀子、神多羅木などより近い所で直接見て経験している。
 近右衛門や高畑なら抵抗することは出来ようが、倒せるかどうかは甚だしいほどに疑問を持たざるをえない。

「でしたら本国にも人員援助の要請を……」
「無理じゃな、色よい返事は貰えなかったからの」

 ラカン殿はこっちに来ようとして居るが、それ以外の、本国はそんな相手に有能な魔法使いを送れないと言う言葉を態度で示している。
 文字通り当てには出来ない、現状の戦力でどうにかしろと突きつけて居るようなもんじゃ。

「もちろん最初は力ずくで排除しようと言う案も有りましたよ」

 短い沈黙を終わらせたのは高畑、いつも通りの表情で口にする。

「霊夢君と魔理沙君だけならなんとか出来るかもしれないと思っていたんですが、八雲さんを見て吹き飛びましたね」
「……ええ、それについては同意しか出来ません」
「他にもかなり強い存在も何人か確認出来ていますし、まだ居る事も十分考えられます」
「力に屈したと言われても否定はできん、じゃが彼女らが探す者を排除出来れば我々にとっても、ネギ君にとっても非常に有益な事じゃ」
「幸い、彼女たちはこちらの事などあまり気にしていません。 攻撃した者を捕まえればすぐにでも戻ると宣言もしていますし、無理に反発するのはどう考えても不利益、と言うか無駄でしょうね」
「八雲 紫さんの方はわかりませんが、見て話した限りでは博麗さんと霧雨さんは意図して攻撃を加えるような子では無いかと」

 高畑に続くのは一歩前に出た葛葉 刀子。
 近右衛門から他の魔法先生へと視線を移しながら話す。

「……いい子でしたか?」

 シスター シャークティーの問いに刀子は頷く。

「霧雨さんは少々大雑把ですね、やんちゃな感じも見受けられました」
「神多羅木先生は見てどう思いましたか?」
「……霧雨 魔理沙の方は刀子と同感だ、博麗 霊夢の方はどうもやる気が感じられなかったな」
「年の割にすごく落ち着いてますよね、だからある意味バランスが取れているとも思いますが」
「ああ」

 高畑は苦笑しながら、神多羅木は呟くように言う。

「流石に数日しか経っておらんからの、安全だと決めるのは尚早すぎるのは分かっておる。 向こうもそれを理解して居るようじゃし、監視はこれからも継続して良いと言っておる」
「結局は変わらないと?」
「うむ、無論そうして我々の警戒心を削ぐと言う手もあるかもしれんので気を付けて欲しい。 じゃが一方的に敵だと決めつけて接するのはいかんよ」

 肘を机から離し、椅子の背もたれに一度背を預ける。

「我々も監視のローテーションに?」
「話してみたいと言う者は優先して付けさせよう。 彼女らがどう言った人物か、それを信用出来るかどうかは自身で見聞きした方がわかりやすいじゃろうて」
「でしたら希望します」
「ガンドルフィーニ君や、最近帰りが遅いからもう少し早く帰りたいって言ってなかったかの?」
「うっ、それは……」

 苦しそうに呟く家庭を持つガンドルフィーニ、監視のローテーションに組み込まれればさらに帰りが遅くなる事に呻き声を上げた。
 最近一人娘や妻にもっと早く帰ってきて欲しいと言われており、また遅くなると伝えれば怒るだろうと容易に予想出来ることに悩む。
 それを見て近右衛門は笑い。

「さて、ガンドルフィーニ君は除外として」

 外す事を決めるが、それを不服としてガンドルフィーニが声をあげる。

「が、学園長!」
「遅くなって良いのかね?」
「う……むぅ、今は緊急事態ですので背に腹は……」
「夜はきついじゃろうて、昼の方に組み込んでおく」
「……申し訳ありません」

 深々と頭を下げる。
 それを見て笑いながらも頷く近右衛門。

「うむ、他の者はどうじゃ?」
「興味有りますねー」

 瀬流彦が手を上げ、釣られるように他の者も手を上げた。

「希望する者は付きたい時間を出して置いて欲しい、最大限考慮しておくからの」
「はい」
「後数時間もすれば交代に監視として入れられるが、やりたいと言う者は居るかね? 無論授業などが有る者は別じゃが」

 その問いに素早く反応したのは。

「はい、自分が」

 とガンドルフィーニ君。

「ふむ、ならばガンドルフィーニ君にやってもらうとするが、出来ればもう一人やりたいと言う者は? 一人だけと言うのも不安じゃろう」
「それじゃあ僕が」

 ガンドルフィーニ君とコンビを組む回数が多い瀬流彦君が手を上げる。

「うむ、では二人にやってもらおう。 時間などはすぐにしずな君に資料を持ってこさせよう」
「はい」
「さて、本題が終わった所でもう一つ、重要な件が有る」

 解決した、と言うより不安が薄れたと言った方が良い具合の話。
 真の危惧が去ってはいないが、表面上の問題が軽くなったと言うところで他の、それも重要な話があると近右衛門。
 魔法先生たちの表情を引き締めるには十分な一言、それを見ていた近右衛門は口を開く。

「3年生の修学旅行の件じゃ。 言い方が悪いがネギ君を囮に、と言うのも関係して居る」

 神妙な面持ち、ゆっくりとだがしっかりと喋る。

「ネギ君が麻帆良から離れるのは襲撃者に取ってチャンスである、そして彼女らに取ってもチャンスで有る」

 そうして話すのは真実に偽りを混ぜた、疑われないよう信憑性を高めた話。
 真の狙いであろう黄昏の姫巫女の代わりに、赤き翼の英雄の息子に置き換える。
 存在の知名度を利用した巧妙な話、学院長や理事を務める自身の信頼をも使った話。

「修学旅行に同行させるのですか?」
「そうじゃ、修学旅行の行き先は麻帆良と違ってそこまで安全ではない。 つまり麻帆良で襲えなくとも向こうでは襲える、そう言う可能性は大いに有る」
「……確かに」

 その話に頷く魔法先生たち。

「皆も停電時に見ていたじゃろう、エヴァンジェリンとの戦いで彼女らの実力は証明されて居る。 ネギ君を狙ってくる者に関しての戦闘は全面的に請け負うと提案してきても居る」
「彼女たちを攻撃した者たちはかなりの実力を持っているでしょう、下手にその戦いに介入しても邪魔に成る可能性が大きいので……」

 実証された実力、本気のエヴァンジェリンに落とされず、逆に攻め返すほどの力。
 そのような彼女たちを相手にすることから、相当な力を持つ者らを相手に出来る者などこの麻帆良にはごく少数しか居ないだろう。

「基本的に援護も無しじゃ、もし戦闘が起こればかなり危うい状況となるじゃろう。 近くで戦いに巻き込まれれば即座に離れるか、そうでない場合は生徒などの避難の誘導をしてもらいたい」
「はい」
「ネギ君が担当の3-Aを重点的に注意を払うように割り振っておる、事が起きれば直ぐにフォローできるようにの」
「我々は3-Aの周囲に注意を払っていれば良いのですか?」
「うむ、異変の予兆を察したならすぐにでも知らせて欲しい。 無論無理は禁物じゃぞ?」
「はっ!」

 力の篭った、張りのある声で皆が返事を返した。





 


 そうして魔法先生のみへの直接の連絡、それが終わり解散となってから学園長室に残るのは部屋の主と一人の魔法先生。
 近右衛門と高畑のみ。

「お疲れ様です、学園長」
「騙るのはやはり好きにはなれんよ」

 魔法先生たちに嘘をつく、嘘に少々の真実を混ぜた話。
 無論この程度の腹芸など簡単にやれなければ、今もなおこの席に座って入れなかっただろう。
 本国に通すだけの力と交渉術を近右衛門は持っている、いずれこの事が非難されようとも皆の安全を約束出来るなら容易こと。
 
「……心労を増やして申し訳ないのですが」
「……なんじゃね?」
「向こう側の魔法使いに関して気になる情報が……」
「居るじゃろうな、八雲殿やほかにもある程度精通しておる者が」
「彼女たち、霊夢君たちと話していて聞いたモノを調べたのですが……」
「どのような話じゃ?」
「パチュリー・ノーレッジと言う名の魔法使いはご存知でしょうか?」

 ふむ、と呟き近右衛門は思案顔。

「どこかで聞いたことが有るんじゃが……」
「今から約100年ほど昔に存在したらしい魔法使いです」
「それで、そのパチュリー・ノーレッジとやらが向こう側に居ると?」
「はい、エヴァも眉唾ものだと言っていましたので詳しく調べてから報告しようと」
「どう言った人物だったのじゃ?」
「一言で言えば天才ですね、それもナギを上回るほどの」
「ほう……」

 出鱈目な魔力量を持っていたナギ・スプリングフィールド。
 その魔力と類稀なる戦闘センスを駆使し、魔法世界を救った英雄の一人。
 天才と謳われ、今も最強に上げられるナギをも上回る天才。
 それを聞いて近右衛門は興味深そうに声を漏らす。
 勿論本当のナギを知っている近右衛門からすれば、馬鹿っぽいが戦いに関して天性の才能を持っているのは否定できない。
 つまりパチュリー・ノーレッジがナギと同系統の、戦いに関しての天才なのか、あるいは治癒や研究者気質の天才なのかと言う事に興味がある。

「驚くほど資料が少なく残っていなかったので完全とは言えませんが、人物像の型枠を作り上げるくらいには」
「ナギを超える天才、のぉ……」
「膨大な魔力に複数の得意属性、果ては類稀なる頭脳を持っていたと書かれていました」
「……なんか出来すぎた魔法使いじゃな」

 高畑は苦笑を作り、話を続ける。

「そうですね、ネギ君を強化したような感じでしょうか」
「全く以て恐ろしいのぉ」
「魔力量に付いては膨大としか書かれていませんので、詳しい量は分かりませんがエヴァやナギ並みに有ると思って良いかも知れません」
「羨ましい限りじゃ」
「得意属性に関してですが、複数の属性を自在に操ったなどと書かれていました。 他にも魔法を使わせないと言う記述も」
「使わせない? なんじゃそれは」
「それはちょっとわかりませんでした、本当に一言だけ書かれて有ったので真意を掴みかねます」

 複数の属性を自在に操るから相手に魔法を使わせない、得意だから使わせないと言う関係性が良く見えない。

「ふむ、意味がわからんのぉ。 これは置いといて属性の方を頼む」
「はい、どれが得意かと書かれていませんでしたが、魔理沙君がヒントをくれましたのでおそらくは『一週間』に使えるかと」
「一週間? どう言う……まさか、本当かの?」
「おそらくは合っていると見て良いでしょう、『月・火・水・木・金・土・日』の七つの属性を操れるかと」

 近右衛門は絶句する、得意とする属性が三つあるだけでもかなり珍しいと言うのに倍以上の七つも得意とする。
 その内訳もかなり凄まじい、火・水・土の三つは四大元素の内の三つで。
 五行思想で言えば全てを満たし、『相生(生み出す)』『相剋(打ち勝つ)』『比和(増幅)』『相乗(過剰)』『相侮(逆転)』、全てを循環させることが出来る。
 最後には月と日、意味はそのままの月と太陽じゃろうて、。
 天才等と書かれているから、その得意属性を利用したオリジナルの魔法を作っていてもおかしくはないじゃろう……。

「頭脳の方も随分と凄いですね。 彼女しか使えなかったようですが、殆どの魔法を無詠唱で発動させる術式などを作り上げています」
「……天はニ物や三物どころか、魔法使いに必要な才能を丸ごと与えたようじゃの」
「天才と言うか、鬼才でしょうかね」
「じゃのぉ……、そんな人物が向こう側に居ると言うのか」
「はい……、普通であれば生きていても年老いているのですが……」
「え? なにその躊躇いがちな言葉」

 言葉を出すのが億劫と言った感じの高畑。
 数瞬迷い、意を決したように口を開いた。

「……一瞬だけですが本人らしき姿を見ました」
「……どうじゃった?」
「見た限りでは……、高校生に届くかどうかと言う位かと……」
「………」
「………」

 何とも言えぬ沈黙。

「……3-Aに混ざってもあまり違和感がなさ──」
「いや、もう言わんでいい……」
「……すみません」
「……うむ、切り替えよう。 それで、パチュリー・ノーレッジなる大天才が向こうに居るとして、何か問題が?」
「はい、資料の少なさも関係している話です」
「大きな話かの?」
「……僕は大きな話だと思うのですが」
「ちょっと待っとくれい」

 ふぅー、と溜息を吐きつつお茶を飲み一息。

「良いぞ」
「吸血鬼と関係が有るようなんです」
「………」

 近右衛門は湯のみを置いて手を離し、目頭を抑えた。

「彼女の資料が少ない原因は吸血鬼との関連が有ったらしいのです、事実関係性を指摘されてから消息が不明になったようで」
「……無論──」
「エヴァではないでしょう、本人も大して憶えていないようでしたし」
「……つまりじゃ、パチュリー・ノーレッジなる者は吸血鬼と何らかの関係を持っており、もしかすると向こう側にはパチュリー・ノーレッジと共にその吸血鬼が居ると?」
「おそらくは、その吸血鬼に関してもそれらしいと思われるものが」
「断定はできんが、恐らくはその吸血鬼じゃと?」
「はい」
「有名かの?」
「はい」
「……エヴァンジェリン並みに?」
「……はい」
「……はぁー」

 その吸血鬼に思い当たりが有る近右衛門。
 大きく溜息をつきながら、がっくりと肩を落とす。

「エヴァンジェリン並みになると、あの吸血鬼しか思いつかんのじゃが……」
「……パチュリー・ノーレッジはその吸血鬼と対峙したことがあるそうで」

 『闇の福音』『人形遣い』『不死の魔法使い』と言った異名を持ち、未だ魔法世界で恐れられている吸血鬼のエヴァンジェリン・A・K・マクダウェル。
 それと双璧のように並び立ち恐れられている吸血鬼が居る、『紅い悪魔』と呼ばれる吸血鬼の名は『レミリア・スカーレット』。
 吸血鬼と言えばこの二人、魔法世界で吸血鬼が龍に並ぶ最強種と言われる原因を作ったのもこの二人。

「……もういいわい、気にしすぎるとぽっくり逝きそうじゃ」

 レミリア・スカーレット、その名と同調する恐るべき吸血鬼、肌が紅いなどと言うことではなく、敵対する者の返り血を浴びて真紅に染まると言う悪魔。
 恐るべき異名、噂に尾びれ背びれが付いたものではなく、事実としてその現状を作り上げそう認識された存在。
 エヴァンジェリンのような女子供は殺さないと言う信条などは見当たらなく、レミリア・スカーレットは誰であろうと容赦無く力を振るい蹂躙したと言う。
 刃向かう者には容赦しない、そう言って憚ら無い恐るべき吸血鬼。

 エヴァンジェリンは主に魔法世界で活動し、レミリア・スカーレットは現実世界で活動していた。
 勿論二人とも吸血鬼であり、名が知れ始めた頃は討伐しようと血気盛んな魔法使いが返り討ちにあったなんてよく聞く話。
 レミリア・スカーレットは当時魔法世界と現実世界を行ったり来たりしていたエヴァンジェリンとは違い、現実世界の東欧に堂々と居を構えていたと言う。
 館は紅いらしく、非常に視線を集める外観であったにも関わらず、周囲に住む者は全く気にしていなかったとか。
 例えば屋敷があることは知っているが、場所までは知らない、と言った具合の認識しかないらしい。

 屋敷の周囲には霧掛かっており、遠目で見れば屋敷の周囲だけに霧が発生しているので丸分かりとも聞いた。
 つまりは常時居場所が割れていて、正々堂々正面から行く者や寝首を掻いてやろうと言う輩がかなり居たと言うが……。
 一つ足りとも成功したなどと言う話は聞かず、殆どが門番に返り討ちにされたらしい。

 悪名として広がったのは、返り討ちにされた者たちが広めたものかも知れない。
 名が轟くと言うのも吸血鬼であり、名うての魔法使いを撃退出来るほどの強い門番を従えると言うのも大きかったのだろう。
 一時は本当に館の中に居るのか、なんて話も出回ったほど。
 だがそれを一息に払拭した事件が起こり、館に襲撃を掛け生き残った者が『腕の一振りで数十人の魔法使いが千切れ飛んだ』と話に伝えたそうだ。
 それを行った者の容姿は背中にコウモリの羽を生やした幼女、その恐慌具合は想像だに出来ないだろう。

 如何にも子供で、腕力など大人に比べあまりにも脆弱な、大人の庇護下にありそうな少女が。
 無造作に腕を振るだけで数十人の魔法使いを肉塊に変えたなどと、容易に信じられる物ではない。
 しかしながらエヴァンジェリンの例があり、童姿で甚大な力を操るのはありえるだろう。
 話を伝えた者も飛び散った血で体を濡らしており、心ここに有らずと言った状態だったと言う。
 それのおかげか信憑性が一気に増し、エヴァンジェリンと比肩するほどの吸血鬼として名が知られた。

 一説には自身の存在を知らしめるために、わざと殺さず見逃したなどと言う話も出た。

「資料が少なかったのは処分されたんでしょう、向こうは過剰なほど吸血鬼に嫌悪感を示しますからね」
「じゃろうな、当時は今より酷かったじゃろうし処分されても不思議ではない」

 あーしんど、と近右衛門は呟きながらもお茶を飲む。
 彼女らと関わってまだ数日と言うのにこの心労、本当にあっさり逝きそうな気がしてきた近右衛門だった。

「……分かって居るのが八人かの? 妖怪らしいから『人』とは呼べんじゃろうが、……と言うか学園結界の内側に居るのに普通に動ける理由がわからん」
「そうですね、霊夢君たちが言った通り妖怪なら高位の存在でしょうが平然と……」
「あのスキマと関係あるかもしれんの」
「あるいは単純に何かの術式を使って無効化しているのかも」

 麻帆良を覆う学園結界は不法侵入者の感知から魔物や妖怪などの動きや能力を阻害する効果がある。
 魔物や妖怪に関してはその位が上がれば上がるほど、さらに強力に抑えこむよう出来ている。
 八雲 紫はエヴァンジェリンに匹敵かそれ以上の妖怪かもしれないと言うのに、ごく平然と何の問題もなさそうに振舞っていた。
 となれば単純に結界の効果が及ばないのか、何らかの術で結界の効果を相殺や無効化しているのかもしれない。

「純粋な人型の妖怪なぞ早々居らんじゃろうし……」

 呪術師が使役する式神の鬼や烏天狗などは人と似た形をしているが、肌の色や顔などはどう見ても人間とは思えない造形をしている。
 想像通りと言った感じの、一般的に知られている姿だ。

「いえ、それはわかりませんよ。 エヴァの別荘で戦った鬼の伊吹さんは頭に角が生えた子供にしか……」
「そう言えば八雲殿の式である藍殿も妖獣と言いながらも人型だったの……、魔法や呪術を使って変身でもしてるのかのぉ……」

 彼女ら一般的な想像図と全然ちがうじゃん、と近右衛門は唸る。

「その藍さんも強いのですか?」
「強いじゃろうな、エヴァンジェリンもかなり強いと言っておったし」
「本当にどう反応して良いかわかりませんね……」
「もう赤き翼の面々が普通に見えてくるわい」
「確かに」

 反応は二つだった、唖然とするか苦笑するか。
 もちろん両方既に出ているし、これからもこの二つばかり出るだろう。

「……タカミチ君はどう見る? 彼女らの機嫌を損ねた場合にどう対応してくるか」





 そう真剣に聞いてくる学園長、それに対し考えを述べる高畑。

「去るか牙を向くか、どちらかでしょうが……僕としては去るような気がしますね」
「ふむ」
「正直言って彼女たちが麻帆良を制圧しようとすれば簡単に落ちるでしょうが……」
「それに意味を見出すか……」
「八雲さんの隙間を使えば図書館島の貴重な書物を盗み出すのも簡単でしょうし、誘拐も容易くやってのけるでしょう」
「それをしないと言う事は、彼女たちに取って麻帆良は価値が無い土地と?」
「麻帆良に居る者や有る物自体に興味は無さそうですし、気にしてるのはネギ君と明日菜君だけでしょう」
「機嫌を損ねた場合は二人を連れて行かれるかもしれんか」
「可能性は大いに、そうなれば釣り餌として使われるかもしれません」
「ワシにはそれを非難する資格は無いがの」
「それは仕方がない、とは言えませんが……」

 呪いが解けた状態のエヴァンジェリンでも勝てるかどうか分からない存在が複数、対抗するにはやはり全盛期の赤き翼レベルの実力者が何人も必要となるだろう。
 そのような存在は比べられる赤き翼の面々などしか思い付かない、それに今でも全盛期の力を保っているのはラカンさん位だろう。
 ナギやゼクトさんは行方不明だし、アルは図書館島の下に居るらしいが実力を保っているかは分からない。
 詠春さんは呪術協会に入ってからはデスクワークばかりだと聞いている、僕は当然あの人達には届いていない。
 クルトは才能が有ったのでもしかすると今は僕以上に強くなっているかもしれないが、詠春さんと同等か超えるほどの実力を持っているかは疑問に思う。

「僕では学園長の案以上のものを思い付きませんし、それ以外のも考え付きませんから何も言えないですよ」

 やはり戦うとするならエヴァかラカンさん位しか当てに出来ない。
 才能あるネギ君ならいつかナギ達に届いてもおかしくはないだろうが、今のネギ君は僕の足元にすら及ばない。
 そうして無理だと考える、彼女たちとは戦えない。
 二十年前の、あの時の赤き翼が今居たならば戦う事を選んでいたかもしれない。
 だからこそ学園長の選択が正しいと判断する、彼我の戦力差がどうやっても埋められないからだ。

「……どうにか出来れば良いんじゃがの」
『彼女たちが一方的で無かった事が幸いでしたね』

 たった二人しか居ない学園長室に聞こえる第三者の声。

「……アル」
『お久し振りですね、タカミチ君』
「はい、お久しぶりです」

 姿は見えない、声だけが聞こえる。

『タカミチ君、殴り合いや魔法の撃ち合いだけが戦いではないのですよ』
「……読まれてましたか」
『昔の私達が居たなら戦っていた、と考えていたでしょう?』
「……はい」
『大分烈戦争の時とは違います、あの時は物理的な力で戦うしか無かったのですよ』
「あの時と今この時と状況は全く違います、それ位は分かっているつもりです」
『あの時我々は話し合いが通らないから腕を振るい力を振るった、そうしなければ全てが消えていたからそうせざるを得なかった』
「ええ、彼女たちとは話し合えます」
『タカミチ君はわかっていませんねぇ』
「え?」

 予想外の言葉に声が出る。

『あの時の私達とは違う方法で学園長は戦っているのですよ? 腕力や魔法を使わずに、言葉と言う武器で今も戦っているのです』
「………」
『力尽くで追い出すと言う案も確かに有りました、勿論今もそれはしっかりと存在しているのですよ?』

 その言葉を聞いて学園長を見る、学園長の視線は有無を言わさない真剣な眼差し。
 彼女たちが約束を破り、害を成すと言うなら何が何でも討ち取ると言う意志が垣間見える。

『ですが今は話し合いの余地が大きく残っています。 麻帆良にある魔法書や居る者に手を出さない代わりに麻帆良に滞在することを認め、捜索の協力をする。 それを引き出せたと言う事は学園長が勝利を掴んだと言う証拠、たとえそれが八雲さんの思惑通りだとしてもです』
「………」

 それは近右衛門に取って勝利以外の何者でも無い、安全を確保するに当たってこれ以上のものはないだろう。
 だがその勝利の中にも敗北は存在する、その安全の範疇の中に神楽坂 明日菜が含まれていない事だ。
 近衛 近右衛門にとって、八雲 紫にとって、そして狙ってくるだろう敵にとっても神楽坂 明日菜は鍵となる。
 どんな提案を出しても近右衛門が認める『安全の範疇』には含まれない。

「まぁの、残念ながら明日菜君の事は手が届かんかった。 だからと言ってそれで諦めるのはおかしいじゃろう? 危険に曝されないよう最善を尽くすのがワシの役目じゃろうし」

 囮にする案は最初から確定していた事、それを覆せなかったから敗北。
 ならば囮にされても出来るだけ安全になるよう配慮すべき、それが麻帆良学園の学園長であり理事長でもある近衛 近右衛門のやるべき事。
 なぜなら今の彼女は『アスナ・ウェスペリーナ・テオタナシア・エンテオフュシア』ではなく『神楽坂 明日菜』、この麻帆良学園女子中等部の生徒だからだ。
 教師が生徒を守ることなど当たり前、打算が有ろうが無かろうが近右衛門にとって当然の事だった。

『分かりますかタカミチ君、これからも話し合いと言う戦いをしなければならないのです。 今回は凌げても、次も凌げる保証などないのですから』
「……すみません、学園長」
「何を謝る、誰だって考えるものじゃ。 ワシも考えちゃったしの」

 ふぉっふぉっふぉっと近右衛門が笑い、フフフとアルビレオが笑う。
 それに釣られ高畑も笑みをこぼした。

「とりあえず戦いを選ぶかどうかは先の話じゃ、今は彼女らの機嫌を損ねず、気分良くお帰り頂けるよう頑張るしかないの」
「はい」
『それで、学園長はネギ君に特使を頼むのですか?』
「出来れば高畑君が良いんじゃがの、ここはネギ君に頼むことにする」
「……一緒に行動させますか?」
「そっちの方が動きやすいじゃろうし、何より二人の仲が良いしな」
「気に掛けてる様子は有りますね」
『血縁だからでしょうか?』
「嫌いと言いつつ、気になっているようですから。 ……僕としてはいずれ教師と生徒では無く、正しい関係になって欲しいのですが」
『それはネギ君と明日菜君次第です、封印を解くかどうかはしっかりと見極めなければなりません』
「それはそうですが……」
「ごく普通の女の子として生きて欲しいとも思う、じゃがそれは押し付けにしかすぎん。 ……記憶を封じておいて虫がいいとも思うがの、彼女の人生じゃ」

 他人の人生を勝手に決めるなど、許されることではないだろう。
 今の彼女を見ていると昔の事を忘れたままでいいのではないか、とも思っている自分が居る。
 だが、せめてガトウさんのことだけでも覚えていて欲しい、そう思う自分が居る。
 しかし結局は決められないのだ、そうして欲しいと思うしか出来ない。

「そうですね……、彼女を尊重します」
「……そうじゃの、他に何か報告することはあるかの?」
「いえ、わかったのはこれだけです」
「また話して何か気になったら報告を頼むぞい、今回のように調べずとも良いのでな」
「はい」
「さて、修学旅行の件も彼女たちに話して置かねばならんの、反対せんとおもうのじゃが」
「囮として見ているなら了承するでしょうね」
『霊夢さんは別の理由で嫌がりそうですが』
「別の……?」

 拒む理由? 霊夢君が拒む理由など……。

「……ああ、移動をめんどくさがりそうですね」

 短い間だが、二人のイメージが固まってきていた高畑だった。

「高畑君や、彼女らに説明を頼んでも良いかね?」
「はい、移動方法などは?」
「一緒で良いじゃろうな、同じ車両だと関わってくるかもしれんので一つずらすとしよう。 宿場などはこちらが全部用意しておくと伝えてくれい」
「彼女たちの立場はどうするんですか?」
「儂の友人の孫、とでもしておこうかの。 彼らもあの夜の戦いを見ておるし、いざという時は頼るようネギ君には言っておく」
「わかりました、それでは伝えてきます」

 学園長室から退室しようとして、足を止める。

「ああ、そういえばアル。 図書館島の下に居ると聞きましたが、今まで何をしていたんですか?」
『ただ待っているだけですよ、時が来るのを』
「時が来る? 何かあるんですか?」
『友との約束を』
「友……」
『タカミチ君、少し落ち着いたらこちらへ遊びに来てはどうでしょうか? エヴァも知ってから入り浸ってますし』
「……はい」
『たまには昔話も良いでしょう、それでは』
「はい」

 そうして声が消える。
 約束とは何か、ナギ関連のような気がするが僕が詮索するようなことではないだろう。
 そう考えて、もう一度学園長に頭を下げてドアへと足を進めた。







 高畑が霊夢君と魔理沙君に話を伝える為、学園長室から出ていくのを見送ってから近右衛門は机に備え付けてられている電話の受話器を取る近右衛門。

「刹那君達にも伝えておかなければの」

 電話の一つのボタンを押し、受話器を耳に当てる。

「……しずな君、刹那君と真名君を呼んでくれんかね? ……うむ、重要なことなので今すぐに、頼むぞい」

 要件を伝え、帰ってくる返事を聞いてから受話器を置く。

「さてと、来るまで書類でもやって置くかの」

 と判子を取り出し、学園長室の端に積んであった書類に目をやった。
 それから数分後、書類と向かい合いながら二人を待っていれば。

「桜咲 刹那と龍宮 真名、只今出頭致しました」
「開いとるぞい」

 ペッタンペッタンと学園長及び理事長判を押しつつ、ドアがノックして名乗った人物を招き入れる。
 ドアを開き、頭を下げて入ってくる二人の少女。

 一人は麻帆良学院女子中等部の制服を纏い黒髪をサイドテールで纏め、身長150センチほどの引き締められた表情で入ってきた少女『桜咲 刹那』と。
 もう一人も同じく女子中等部の制服を纏い、褐色の肌とロングストレートの黒髪、三白眼の身長180センチを超える中学生とは思えないスタイルを誇る少女『龍宮 真名』。
 判子を押すのを止め、机の前に来た二人を見据える。

「急に呼び出してスマンの、君らを呼んだのは今度の修学旅行について話しがあるからじゃ」
「何か問題でもあったんですか?」
「有るといえば有るの、生徒や教師以外にも修学旅行に付いて行くことになった」
「……もしやあの二人ですか?」

 今現在最大の問題が麻帆良に腰を据えている、通常ならば誰が付いて行くのか思いつかないだろう。
 しかしながら桜咲 刹那と龍宮 真名は直接問題を目にしている、そこに部外者も付いて行くといえば真っ先にあの二人を思い浮かべるのは容易に想像できる。

「うむ、ちょっと訳ありでの。 そこで刹那君と真名君にも協力してもらいたくての」
「それは構わないのですが……」
「こっちは報酬次第ですね」

 『あの二人』について躊躇いがちな刹那君と、淡々と報酬次第と語る真名君。

「そうじゃの、報酬はいつもの3倍。 それと向こうで起こった戦闘の際に使用する弾薬費はこっちで全額負担しよう」
「……太っ腹なのは嬉しいのですが、何かあるとしか思えないんですがね」
「負担になるようなことがあったら、その分別途報酬に上乗せするがどうじゃね?」
「分かりました、その依頼受けましょう」

 それを聞いて龍宮 真名は素早く頷く。
 金銭次第で何でもやる傭兵紛いのことをやっている為か、契約違反にならないよう注意を払った。

「ですが一つだけ要望が」
「わかっとる、彼女らが戦闘に出張ってきたらすぐにでも引いて貰って構わんよ。 無論真名君が相手に出来ない者が出てきても同様じゃ」

 桜咲 刹那と龍宮 真名からすれば、博麗 霊夢と霧雨 魔理沙は手に負えない『化け物』級として認識されている。
 化け物級のエヴァンジェリンと戦い、尚生き残っていることがそれを証明している。
 その認識は他者から見ても間違いなく、麻帆良停電時に見た時のような攻撃を放たれたら、この麻帆良に居る魔法先生と魔法生徒の殆どが守ることも避けることも出来ず吹き飛ばされるだろう。
 勿論二人とも吹き飛ばされる側に入っていた。

「不利だと判断すればすぐにでも」

 任意撤退許可を確認できて頷く龍宮 真名に、納得が入っていない桜咲 刹那は近右衛門から納得を得ようと口を開く。

「あの二人を付いて行かせる理由をお聞かせください」
「護衛じゃよ、正直に言えばこちらより向こうのほうが危なっかしいのでの」
「我々だけでは不足だと?」
「不足じゃ、高畑君も護衛に付けてから早々事は起きんじゃろうが、用心しておく事に損はなかろう」

 刹那の問いに面と向かって言い切る近右衛門。
 自分では守れない、そう判断されている事に内心歯噛みしながらも刹那は続きを聞く。

「君らには何が有るのかは言えん、魔法先生たちにも全ては教えては居らん」
「………」
「正直に言えば知って欲しくはない、言い触らす話でも無いのでな」

 護衛に高畑を付けてなお不足、居るかどうか分からない敵に注意を払いすぎていると言われるだろうがそんな事はなかった。
 事実を知っている近右衛門から見れば、彼奴等が魔法世界で引き起こした事を考えれば全くもって足りない。
 最強と言われた赤き翼の面々から死者を出すほどに苦戦した相手、もしそんな者らが出てくれば刹那や真名が一瞬で消し飛ばされるのが目に見えている。

「……行き先は京都かハワイかと聞いていますが」
「京都に決まっておるよ、そこでネギ君に呪術協会へ送る特使としてやってもらう事になって居る」
「ネギ先生に?」
「関西呪術協会と関東魔法協会は仲が良くないからの、妨害を掛けてくる輩が居るかもしれん」
「先立っての露払いですか」
「うむ、ちなみに先日彼女らと協定を結んでの。 お互い殺傷行為は禁止になっとる、出来れば破られて欲しくはないがの」
「……そのようなものが信用出来るのですか?」
「信用するしか無いとしか言えん」

 重たい一言、どうこう出来ないと言う意味が込められていることに気がつく刹那。

「……分かりました、全力で当たらせていただきます」
「……刹那君や」
「はい」

 一瞬の沈黙。

「……何か言おうとして忘れちゃった」
「……学園長、呆けてきたのでは?」

 お茶目に笑う近右衛門を前に、面と向かって龍宮が言ってのける。

「かもしれんの、最近老骨に鞭打ちまくりじゃよ」

 だが気にしたような素振りは見せず、肩を叩きながら微笑む。

「話はこれだけじゃ、戻ってもよいぞい」
「それでは失礼します」
「失礼」
「ああ、刹那君」

 またかと言う表情を浮かべる真名、刹那は変わらずの表情で返事を返す。

「……なんでしょうか?」
「木乃香の事を頼む」
「……はい」

 近右衛門の頼みに一度目を伏せた刹那、一瞬迷いを見せた後に頷く。
 退室時にもう一度頭を下げ、二人は学園長室から出て行った。

「……ワシが言うべき事ではないか」

 刹那が幼なじみであり護衛の対象でもある『近衛 木乃香』から離れるようになった理由。
 それが大きなコンプレックス担っているのは容易く理解出来る。
 気持ちは分かると言ってやっても所詮は同情の類でしか無い、真に気持ちが分かるなど全く同じ境遇を体験しなければ分からんじゃろう。
 何かをしてやりたいが、何もしてやれないのが現状。
 気持ちの整理が付き、本人が打ち明けねば前には進めんじゃろう。

「昔のように……、簡単には行かんじゃろうな」

 『友達』であった頃のように、いずれ二人が笑顔で付き合っていけるようになる事を近右衛門は心中で祈った。






 入れ替わり、刹那と真名が退出してから5分と掛からず次なる者。

「学園長、ネギ・スプリングフィールドです」
「開いとるぞい」

 3-Aの担任、短い赤茶色の髪を後ろで纏めた背の小さな、通称子供先生が学園長室に足を入れる。

「お呼びでしょうか、学園長先生」
「うむ、修学旅行に付いてネギ君と話しておかなければならないからの」

 ちょいちょいっと手招き、それを見たネギ君は机の前まで寄ってくる。

「も、問題でもあるんですか……?」
「……ある!」
「えぇーっ!?」

 少々力強く言っただけでこれほど驚くとは、ナギとは違い純真じゃのぉ。

「3年生の修学旅行がの、京都がダメになりそうなんじゃ」
「!?!?」

 言葉にならない悲鳴を上げ、ふらふらとネギ君が壁に額を当ててもたれかかった。

「コレコレ、まだ中止になったわけじゃないぞい。 ただ行き先の京都がハワイに変更になるかもしれんと言う話じゃ」
「……きょうとぉ~」

 ものすごく落ち込むネギ君、非常にブルーな感じ。

「どうしたんじゃネギ君、そんなに京都が良かったのかの?」
「ハイ、エヴァンジェリンさんが京都に父さんが住んでた家が有るって!」

 瞳を輝かせて言う、ナギが目標なのはちょっと心配じゃが。
 まぁナギとは全然違うから、あんな風にはならんじゃろう。

「なるほど、それは行きたいじゃろうな。 だがネギ君、今の君は教師なのじゃ。 自分が行きたいからと言って生徒に合わさせるなんて以ての外じゃぞ?」
「う、すみません……」

 うなだれるネギ君、10歳で教師をやらせると言うのもきついことじゃろうが……。

「分かってくれればよい、それでなんじゃがネギ君に重要な仕事を受けてもらいたい」
「重要な仕事、ですか?」
「うむ、そもそも京都行きが駄目になりそうなのは先方と喧嘩しておるからじゃ」
「け、ケンカですか!?」
「と言っても先方が目の敵に見てきておるだけでの、ワシとしてはもーケンカなんぞ止めて仲良くしたいんじゃよ」

 ネギ君も仲良くなれる子とケンカしたままなんて嫌じゃろ? と真っ直ぐ見て問う。

「ハイ、僕もそう思います」
「じゃろ? そこでネギ君に特使を頼みたいんじゃ」
「特使ですか……」
「なに、そんなに難しいことではないよ。 この親書を先方、『関西呪術協会』の長に渡すだけで良いからの。 まぁ妨害もあるかもしれんが向こうも魔法使いじゃ、一般人の目に触れるようなことはしてこんじゃろう」

 親書、手紙を取り出して、どうじゃね? 受けてくれるかね? と真っ直ぐネギを見て近右衛門。

「関西魔術協会……はい! 任せてください!」
「ほ、良い返事じゃ。 それと、孫の木乃香の生家が京都にあっての」
「生まれた家ですか」
「うむ、木乃香には魔法の事はバレておらんじゃろな?」
「多分、バレてはいないと思います」

 ムムム、と眉を寄せて少々自信がなさそうなネギ君。

「そうか、ワシとしてはバレても良いんじゃが、木乃香の両親の意向でバレないようにして欲しいのじゃ」
「そうなんですか……、木乃香さんのご両親は魔法使いなんですか?」
「む? ネギ君は知らんかったかの?」

 頭の上にハテナが幻視しそうな表情でネギ君が首をかしげる。

「アレの父親は『近衛 詠春』と言っての」
「このえ えいしゅんさんですかー」

 そう言うネギ君、そして数秒の沈黙。

「……わからんのかの?」
「え? 有名な方なんですか?」

 本気で分からないと言った表情のネギ君、名前ぐらいは知ってると思ったんじゃが……。

「……赤き翼の一員なんじゃが」

 数秒の沈黙後。

「……えぇー!?」
「ナギ・スプリングフィールドの友人であり、共に大分烈戦争を戦ったワシの義理の息子じゃ」

 そう言えば、大口を開けてネギ君は大層驚いていた。

「……ネギ君、ナギを追いかけるのは良いがの、周りの者達も劣らず有名なのじゃから少しは知っておいた方が良いと思うが」
「す、すみません……」
「流石に苗字が変わってわからんかったかの、こちらに婿入りしたから旧姓名は青山 詠春じゃ。 その点で言えばネギ君と木乃香は少々似ておるかもしれんの」
「あ、確かにそうですね」

 ネギはナギの息子で、木乃香は詠春の娘。
 名が知られる英雄の子どもたち、どちらも狙われるほどの資質を持っているのが一つの悩みじゃのぉ。

「まぁそれは有名じゃからすぐにでも知ることができるからの。 それではネギ君、修学旅行は予定通り行うからよろしく頼むぞい」
「はいっ!」
「ああ、それとネギ君に紹介しておきたい娘らが居るんじゃが……」





 ネギと近右衛門が話している頃、霊夢と魔理沙が寝食している屋敷へと高畑は向かっていた。
 向かう用事は修学旅行の説明、霊夢君が渋る可能性もある為しっかりと利を説かなければいけない。
 まぁ向こうには八雲さんなどが居るから、こっちの話を理解してくれるだろう。
 そう考えながらも到着した場所は、しっかりとした門拵えがある屋敷の前。
 インターホンを押し、門を潜って玄関の前で待つ。

「………」

 そうして待つこと数十秒ほど、インターホンの呼び鈴に対する返事と共に屋敷の中から気配が玄関に近づいてくる。

「やぁ」

 玄関が開き、姿を見せたのは白黒の魔女。
 高畑は魔理沙へ軽く腕を上げて挨拶を掛けた。

「今日も高畑か? 随分と暇してるな」
「いやいや、大事な話があるから来たんだ。 今日からは他の人も来るよ」
「まぁなんだ、ここで立ち話もなんだから上がれよ」
「お邪魔するよ」

 それを聞かずに廊下を進んで行く魔理沙君、それを追いかけるように玄関を潜って廊下を渡る。
 屋敷を貫く一本廊下の途中、居間へと顔を出した。

「やぁ、霊夢君」
「大事な話があるってさ」

 ちゃぶ台の傍に腰を下ろし、湯のみを取る魔理沙君。
 グイっと傾けてお茶を飲む。

「……また茶葉変えたのか?」
「色々あるしね、出来るだけ合うものが飲みたいじゃない。 それで、大事な話って藍にでも話したらいいんじゃないの?」

 面倒くさそうな話は頭が回る奴らにやらせれば良いと、そう言いながら霊夢君は手振りで示す。

「二人にも関係あるからね、紫さんは今居るかな?」
「要件は?」
「ん? 居るのかい?」
「紫は寝てるんじゃないか? 藍が応答するってさ」

 寝てるって……、まぁいいか。
 気にしないでおこうと考えていれば、瞬時にして霊夢君より少々背が高い金髪の女性が現れた。
 この人が学園長が言っていた藍さんなのだろうか。

「お初にお目に掛かる、紫様の式を務めさせてもらって頂いている八雲 藍と申します」

 そう言って腰を折る。
 ……凄いな、なんと言うかあり得るのかと思うほどの美女。

「学園長に聞いております、3-Aの副担任のタカミチ・T・高畑です」

 美人だから見惚れていて良い訳もなく、同じように腰を折って頭を下げる。

「それで、要件とは」
「ええ、来週の頭に三年生が勉強のために京都へと旅行にいくんですよ。 ネギ君たちも参加するので、霊夢君たちにも一緒に来て欲しいと思いまして」
「問題ありません、付いて行かせましょう」
「こっちの了承無しで即決なんて、中々清々しいな」
「断っても送り込まれるんだから、どうでも良いわよ」
 
 肩を竦め諦める魔理沙君と、行動を読んで達観している霊夢君。
 予想としては嫌がりそうだと思ったんだけど、目を瞑りお茶を飲んでいた。

「そう言ってくれるな、これは必ずやらねばならない事なんだから」
「はいはい、自分の家を焼かれちゃ堪らないしね」
「家どころか地面ごとだしな」

 気軽に言う魔理沙君は、どこか重かった。
 テーブルに肘を付いて、頬杖をしている顔にも表れている。
 恐らくは相当酷かったのかも知れない、三人とも大きな感情、怒りなどが見えないからどれほどのものか予想するだけしか出来ない。
 彼女らを攻撃した者は地面、大地ごと消し去る目算だったのか。
 自分に当てはめれば、この麻帆良を大地ごと消し去るような手段を使ってくる相手に怒りを禁じ得ない。

「……移動などに関してですが、全てこちらで用意するので二人にはただ付いてくるだけで構いません」
「自力で来いなんて言われてもね、スキマでも使えば良いけど」
「飛んで行くか? きょうととやらがどこにあるのか知らんが」
「京はこの国の首都だったところだ、遠くの昔から雅な都として栄えて四方から色んなモノが集まった。 今はどうだか知らないが、街並みも統一され国の中心に相応しいものだったな」
「へぇ」






 そう言ってどうでも良い返事をしていると。

『京ね、随分と懐かしいじゃないの』

 しゃしゃり出てきたのは輝夜。

『見知った光景は数えるほども無いかも知れないね、随分と長い事見ていないからさ』

 萃香もでしゃばってくる。

『京、京ってなんだったかしら』

 とか幽々子も。
 どいつもこいつも住んでたり行った事があるらしい、関連があるのか裏で色々と話し始めた。
 やれ妖怪が一番蠢いていた都とか、やれ陰陽師がしつこかったとか。

「要件ってそれだけ?」

 陰陽玉から聞こえる昔話を無視して高畑さんに聞く。

「あるけど、重要な話ではないよ。 そちら側、と言うより霊夢君たちに関係有るね」
「それでしたら私はこれで」
「はい」

 そう言った時には藍が消える。

「私たちって、どんな内容だ?」
「さっきも言ったけど、監視の人たちの数が増えるんだ」
「これ以上増やすってのか?」
「監視する人の数が増えるけど、一度にする人が増えるって意味じゃないよ」
「なんだ? 神多羅木と葛葉じゃなくなるのか?」
「二人だけじゃなくて他の人も来る予定だったよ、その数が増えるだけさ」
「ははぁーん、私たちが恐いってか?」

 ニヒル……かどうか分からないけど、魔理沙が口端を釣り上げて笑う。

「そりゃそうさ、封印が解けたエヴァンジェリンと戦って、倒されなかったって言うだけで凄いものだし」
「本当のことを言っても飴の一つもでないぜ」
「あれぐらいになるとめんどくさいけどね」

 絶対に死なないと言うわけじゃないけど、昨今は弾幕ごっこばかりだからあの夜の様な戦いは少なくなってきている。
 だからと言って不覚を取るようなことはしない、そう言う協定があるにしても死ぬことだってありえるし。
 ざら、と言う程でもないがあれくらいの妖怪はちょくちょく見かけるし、それ以上の妖怪が周りに居るしどうって事はない。
 と言うか弾幕ごっこならではの、視界を埋め尽くす美しい弾幕の隙間を見つけて潜り抜けなければならないから、ただ一点の速い攻撃など当たりはしない。
 弾幕ごっこ上級者ともなれば二重三重の罠を用意していて、それを見切れなければ落とされると言う美しさに比例した悪辣さを持ってたりする。

「まぁな、あいつみたいな直球勝負もありだろうけどさ。 やりやすい相手ってのは変わらないな」
「似たようなタイプじゃない、レーザーっぽいものとか、でっかい氷の塊は無いけど」
「なぁタカミチ、エヴァって体当たりとか使うのか?」
「え? 体当たり? ……エヴァは魔法使い型に近いからどうだろう」
「魔法使い型? なんだそれ」

 魔理沙がよく分からないと言って訪ねる。

「ああ、こっちの魔法使いには二つのスタイルがあってね、一つが魔法使い型、もう一つが魔法剣士型なんだよ」

 そう言って高畑さんは人差し指を立てて魔法使い、続いて中指を立てて魔法剣士と言う。
 それを魔理沙は頬杖をついたまま見る。
 そしてどうでも良い私はお茶を飲む。

「魔法使い型は遠距離から強力な魔法を放つタイプで、魔法剣士型が前に出て近接戦闘も行えるタイプだね」
「つまり遠くからドカンと撃つタイプと、魔法を使って殴り合いするタイプってことか」
「基本的に従者が居て、二人一組で戦うんだ。 魔法使い型は前衛を従者に任せ、魔法剣士型は従者と一緒に前に出て戦うんだよ」
「めんどくさいことしてるのな、近づかれる前に撃ち落とすか、近づかれても撃ち落とせば良いと思うが」
「結局撃ち落とすんじゃない」
「体術は得意じゃなくてね、それよりも刀子が頻繁に来なくなるのは良いかも」

 魔理沙は笑いながらもそう言った。
 どうもああ言う構ってくるようなタイプは苦手のようだ。

「刀子さんは魔理沙君がどうも気になってるようだね、何と言うかだらしない妹とでも見て、っと、すまない」

 話していた高畑さんから音が鳴り、胸のポケットからけいたいでんわを取り出し。
 すぐに居間から廊下へと出て、けいたいでんわを耳に当てていた。

「おいおい、だらしないって聞こえたぜ」
『その通りじゃないか、捨てられない癖に随分と集めて置所が無い』
「そりゃそうだ、宝物だからな」
「宝物の癖に乱雑に扱ってるんだから」

 割って入ってくるのは霖之助さん、確かに言う通り魔理沙は集めるだけ集めてそのままが多い。

「そのおかげでこれになったんだ、宝物は宝物になるんだよ」

 とミニ八卦炉を取り出した。

「ミニ八卦炉がどうしたって言うのよ」
「そういや霊夢は知らなかったか。 このミニ八卦炉はな、なんと緋々色金製だぜ」

 と魔理沙は嬉しそうに言った。
 とりあえず置かれているミニ八卦炉を見て。

「へぇ」

 それ以外に言う事は無かった。

「おいおい、もうちょっと驚けよ。 稀少な緋々色金で出来てるんだぜ」
『確かに稀少だろう、何せ世界で一つだけの物だろうからね』

 よくよく見ればミニ八卦炉は少々赤い。
 血のような赤と言うより、天に明るい太陽のような色。
 表面も何か見にくい、何と言うか揺れているように見えてはっきりしない感じがする。
 そんな特殊っぽいミニ八卦炉を見てもう一言。

「へぇ」
「……だからもうちょっと大げさにだなぁ……」
 
 なんとかその価値を知ってもらおうとする魔理沙だが、正直言ってどうでも良いから聞いてはいない。
 何か言っている魔理沙の言葉に耳を貸さずにお茶を飲む、そうしていれば高畑さんが戻ってきた。

「これから君たちに紹介しておきたい人が居るんだけど、良いかな?」
「良いんじゃない?」
「霊夢、私の話を聞こうぜ」
「ただの自慢でしょ、それとも魔理沙は他人の自慢話を聞きたいわけ?」
「む、そりゃあ聞きたくないな」
「と言うわけで魔理沙も良いらしいわ」
「ははは、こっちに向かってるそうだから、十分位で来ると思うよ」
「それは重畳」

 やっと分かったのか魔理沙は口を閉じた。
 とりあえずお茶を注ぎ足そうと急須を持ち上げると、魔理沙が湯のみを差し出してきた。

「まったく、これの価値は知ってて当然なのにな」
「魔法使いからしたら、でしょ」

 注いでやればそのまま手元に湯のみを引き寄せて行く。

「……それは一体?」

 ミニ八卦炉を見ながら座る高畑さん
 使っていない盆の上にひっくり返していた湯のみを、お茶を注げるよう戻し注いで高畑さんの前に置いた。

「ああ、ありがとう」
「ふふん、タカミチは気になるか? 気になるよな? 気になったよな?」

 魔理沙はテーブルの上に身を乗り出した。

「これはマジックアイテムなんだろう? 魔法使いじゃないが気になるね、こんな物見た事が無いし」
「こいつがなきゃ私じゃないかも知れないな」

 さも魔理沙は言った。
 確かにこれ、ミニ八卦炉は魔理沙の特徴の一つだ。
 白黒の魔女の服に竹箒、そして魔理沙が十八番とする『マスタースパーク』。
 それを放つために使用されるのがミニ八卦炉、霧雨 魔理沙と言う魔法使いを表すにはこの三つが必要じゃないかしら。

「……これは凄いな、触ってみても良いかい?」
「ああ、触るだけだぜ」

 高畑さんは頷いて、テーブルの上に置かれているミニ八卦炉を手に取る。
 隅から隅へと、三百六十度ミニ八卦炉を触って見て確かめる。

「本当にこれは一体何なんだい? アーティファクトじゃなさそうだけど」

 テーブルの上にミニ八卦炉を置き、それを魔理沙が手に取る。

「これはな──」
『魔理沙、言わない方が良い』
『店主と同感ね、言い触らすような物ではないわ』

 そうしていつもの如く止める声。
 霖之助さんとパチュリーが、ミニ八卦炉を構成する金属の名を言うのを制止する。

『なんだ? 緋々色金は確かに稀少だがそんなにか?』
『考えてもみろ、外の世界で失われた物が流れ着く幻想郷でも稀少なんだ』
『外の世界じゃ完全に失われた金属よ、それと同じように緋々色金でマジックアイテムを作れば非常に強力なものになる。 それほどの大きさだと馬鹿みたいな値段で取引されるわね、つまり……』
「奪われるかも知れない、って事ね」
「ん? 何がだい?」
「……それは駄目だ、一番の宝物を誰かにやる事は出来ないな」

 そう言って魔理沙は揺らめくミニ八卦炉に視線を落とす。

「……いや、すまなかった。 聞いちゃいけない事だったようだね」

 そんな魔理沙の呟きに高畑さんが謝る。

「事情が違うんだし、持ってる奴は持ってるんでしょうね、スキマとか」
『これを使えとこぶし大の緋々色金を彼女は持って来たからね、あの分だとまだ持ってそうだよ』
「紫が絡むと有難みが無くなるのな」
『伝説と言うのは真に受けるべきではないの、ちょっと賢者の石を作ってみたのだけどエリクサーにはならなかったわ』

 そう言うパチュリーにエリクサーって何? と聞いた所、万能の霊薬、どんな病気でも治す薬と言われて納得した。
 パチュリーはよく苦しそうにしてたわね、それを治したかったんだろう。

「口を閉じていた方が良いかな?」
「でしょうね」
「譲れない宝物さ」
『大切に、は無理だろうから精々末永く使ってやってくれ』
「言われなくとも」

 ミニ八卦炉をスカートの中に仕舞いながら、魔理沙は笑う。

「自慢する時と場所と人を選ばないとね」

 幻想郷では珍しいで済むけど、外の世界じゃ大金に当たるらしいから気を付けて置いた方が良いと言う事。

「そうだな、戻ったらしこたま自慢するか」
『そんなのどうでもいいし、こっちに来ないでよ』
『記事にする程でもないですね』
『それよりも稀少な物を持ってるから来ないでよ』
『そんなに興味はないわねぇ、紫は大元を持っているようだし』
『魔理沙以上にミニ八卦炉を知っているんだ、こっちに来る意味はないぞ』
「………」

 帰ってきたのは総すかんだった。

「だから他人の自慢話なんて聞きたくないって言ったでしょうに」
「……いいさいいさ、私だけが知ってりゃ良いさ」

 少々不貞腐れたように、両手を後ろ手に体を支えて天井を仰ぎ見ていた。

「ははは、何か魔理沙君には面白くない事でも言われたようだね」
「間違いなくつまらないな」

 それを見た高畑さんはまた笑みをこぼす。

「それで、紹介しておきたい人って?」
「ああ、ネギ君だよ。 図書館島の下で話しただろう?」
「薬味ね」
「……確かに同じ名前だけど」
「味噌汁に一つまみ、だろ?」
「それは……、多分彼も知っているだろうけど直接言わない方が良いと思うよ」
「なるほど、葱坊主か」

 魔理沙がテーブルの上に乗せた腕を組み、その上に顎を載せた。

「積極的に関われってか?」
「いや、ネギ君とアスナ君が狙われている以上、君たちが狙う者が現れる可能性が大きい。 そうなった時、君たちはその者を捕らえようと動くだろう、でも彼らが君たちを不審な人物として敵対行動をしたりするとめんどくさいだろう?」
「まぁそうね」
「言い含めてあるからそうはならないと思うけど、学園長は『知り合い』であった方が双方にとって悪くないと考えたんだよ」
「蹴っ飛ばす時間も惜しくなるかも知れないって事ね、だったら知り合っていた方が良いわね」
「いやいや、黒焦げにする時間が惜しいのかも知れないぜ」
「……どっちもそうして欲しくはないからね」

 何故か冷や汗を流しながら高畑さん。
 一応冗談よ、と言っておいた。
 それでも半笑いだったけど。
 この続きは薬味が来てから、と言う事で少々冷えてしまったお茶を入れなおしてゆっくりする。
 入れなおしたお茶を二杯目、一息付いた所で呼び鈴がなった。

「はいはいっと」
「僕も行くよ」
「だったら私は残らないとな」

 ひらひらと手を揺らす魔理沙を他所に廊下へと出て、高畑さんとともに玄関へと向かった。







 学園長先生から紹介したい人が居ると聞いて、修学旅行の準備を先送りにしてその人達が居る家に行くことになりました。
 どんな人か聞いたら、あの停電の時にエヴァンジェリンさんと戦った人たちらしい。
 興味はある、手加減してもらった僕とは違い、エヴァンジェリンさんと本当の戦いを出来る人たち。

「兄貴ィ、本当に会うつもりなのか?」

 肩に乗るカモ君が、耳元で言ってくる。

「そうだよ、学園長先生も会って置いた方が良いって言ってたし」
「元600万ドルの賞金首と正面からやりあえるなんて、とんでもねぇ奴らに決まってるって!」
「でもとんでもない人たちなら学園長先生が会って置いた方が良い、なんて言わないと思うけど……」
「おれっちの勘じゃ学園長さんは何か隠してやがるぜ、何がとは言えねーがどうも引っかかる!」
「うーん、でも」

 廊下を歩きながら顎に手を当て、カモ君の言い分を考える。

「……カモ君、大丈夫だよ。 会うのは僕一人じゃないし、タカミチだって居るんだから」
「……兄貴がそこまで言うならしかたねぇ、でも危ないと思ったらすぐ逃げるようにしてたほうがいいぜ」
「うん」

 そうして一人と一匹はまた廊下を歩き出す。

「あ、そう言えば案内してくれるって──」
「ネギ先生」

 案内、一緒に行ってくれる他の先生が居ると学園長先生が言っていた。
 誰が付いてきてくれるんだろう? そう考えていれば後ろから声が掛かった。

「ガンドルフィーニ先生、それに瀬流彦先生も。 どうしたんですか?」
「あれ、聞いてないのかな? 僕たちがネギ先生を案内するよう学園長に言われたんだけど」
「あ、そうなんですか! よろしくお願いします!」

 腰を折り、ガンドルフィーニ先生と瀬流彦先生にペコリと頭を下げる。

「ネギ先生、これから向かう所は危険かも知れない」
「え?」
「ガンドルフィーニさん、そう言う考えは無しって、会って確かめてからって学園長は言ってたじゃないですか」
「しかしだな、彼女たちの実力が侮れないのは君も知ってるだろう!」

 とガンドルフィーニ先生が、瀬流彦先生の肩を掴んで声を荒げる。

「それは分かりますけど、悪気があったら僕ら生きてちゃいないですよ」
「それはそうだが……」
「えっと、悪い人たちかどうか会ってみたら分かるんじゃないんですか?」

 そう言ったら、二人は振り向いて僕を見た。

「……そうだった、まずは会ってからだった。 ありがとうネギ先生、君に教えられたよ」
「さっき僕がそう言ったじゃないですか……」
「それじゃあネギ先生、彼女たちのところへ行くとしましょう」
「はい!」

 そうして僕たち三人は歩き出した。
 学園を出てから十分ほど歩いて、目的地に着いた。
 そこは日本式の大きな家だった。
 同じように大きな門があって、その奥に玄関が有る。

「ここですか?」
「ここだよ、住所もあってるし」
「では」

 門に取り付けられているインターホンを、ガンドルフィーニ先生が押した。
 押してから30秒ほど位かな、それくらいして家の中から人が現れて玄関が開いた。
 玄関のドアを開いたのは、紅白の、日本のみこさんと言われる職業の制服を来た人と。
 その人の後ろにタカミチが立っていた。

「やぁネギ君、ガンドルフィーニ先生たちも案内ご苦労様です」
「いえいえ、これも仕事ですから」
「……高畑先生、彼女が?」

 とガンドルフィーニ先生が言った時には、みこさんの人は家の中に入っていった。

「中に入ってからでも遅くはないと思うけど」
「はは、自己紹介などは中で」

 軽く握った右手を口に当て、咳をするようにタカミチが笑っていた。
 でもガンドルフィーニ先生は眉を顰め、瀬流彦先生は半笑いだった。
 とりあえず中に入った方が良いと思い、歩いて玄関を潜る。

「おじゃまします」

 一言断り、靴を脱いで上がる。
 ガンドルフィーニ先生たちも後に続いた。

「居間で話しましょう、もう一人も居ますから」
「……高畑先生、彼女は常にあんな感じですか」
「そうですね、神多羅木先生と葛葉先生の時もあんな感じでしたよ」
「慣れ合うような感じじゃなさそうですね」
「多分こちらから何か言わないと、何時間も無言とかなるかと」

 物静かな人ってことかな。
 そんな事を考えながら、前を歩くタカミチに付いて行く。

「高畑先生、彼女たちをどう見ますか?」
「まだはっきりとは言えませんね」

 後ろ姿のタカミチ、顔は見えないけど真剣な声だというのは分かった。

「あの人達が凄い魔法使いだって言うのは分かるんですが、何かあるんですか?」
「……そうだね、凄い魔法使いだからガンドルフィーニ先生は警戒してるんだよ」

 タカミチが足を止めて振り向く。

「強い力は危ないって言うのはネギ君も知ってるだろ?」
「……あ! ガンドルフィーニ先生は、あの人達が悪いことをしないか心配してるんですか?」
「そういう事だよ、ネギ先生の言う通り、あの子らが誰かを傷つけたりしないか心配してるんだよ」
「……だったら話し合わないと、言えば分かると思います!」
「そういう事ですよ、ガンドルフィーニ先生。 彼女たちとは言葉を交わせますから」
「……この心配が杞憂だと良いんだが」
「なら早く晴らした方が良いですね、ずっとこの事ばかり考えてるわけにも行かないし」
「瀬流彦先生の言う通りですね、それじゃあ早くガンドルフィーニ先生の悩みを解決しに行きましょうか」

 そう言ってタカミチがまた歩き出す。
 難しい顔をしたままガンドルフィーニ先生も歩き出した。

「ネギ君、いい事言うじゃないか」

 二人を追いかけようとすればヒソヒソと、瀬流彦先生が耳打ちをしてくる。

「あんなこと言えるなんて、流石だぜ兄貴!」
「そ、そんなことないよ!」
「ガンドルフィーニ先生は物事を難しく考えるからね、ネギ君みたいな発想は中々出ないんじゃないかな」
「そうなんですか?」
「裏を返せば、麻帆良に居る皆のことを心配してる事だから悪いことじゃないんだけどね」
「それはとってもすごい事だと思います」
「そうだね、柔らかくなったらガンドルフィーニ先生っぽく無くなる気もするけど。 とりあえず行こうか」
「はい」

 頷いて廊下を歩いている二人を追いかける。
 そうして追いついた先、タカミチとガンドルフィーニ先生が廊下の途中で立ち止まって僕たちを待っていた。

「居間はここだよ」

 そうして顔を出す。
 室内はタタミでタンスとかが置かれている。
 その部屋の中心に置かれた、丸いテーブルの傍に座るニ人の女性。
 一人はさっき玄関で出迎えてくれたみこさんの人と。
 もう一人はむかーしの魔法使いのような服を着る、長い金髪の女性だった。

「初めまして、ネギ・スプリングフィールドと言います!」

 その二人に向かって名乗りながら頭を下げる。

「博麗 霊夢よ」
「霧雨 魔理沙だぜ。 お前さんが葱坊主か、緑かと思ったら赤かったな」
「?」
「気にしなくて良いわ」
「はぁ……、わかりました」
「こちらがガンドルフィーニ先生と瀬流彦先生、僕たちと同じ教師だよ」

 左手を僕の後ろにいたガンドルフィーニ先生と瀬流彦先生に向けるタカミチ。

「ガンドルフィーニさん、間近で見ると普通……っぽい子たちじゃないですか」
「……私の名前はガンドルフィーニと言う、一つだけ聞かせて欲しい」

 真剣な表情でガンドルフィーニ先生。
 視線を向けられた二人、いきなりの事だけど嫌そうな顔を見せず、きりさめさんが答える。

「モノによるな」
「……君たちは誰かを傷つけることを良しとするのかね」
「それはそっち次第ね」
「あんたたちが私達の邪魔をするってんなら、良しとしなきゃいけない。 と言うか良しとしなきゃめんどくさい事になるから良しとする」

 そう言うことね、とはくれいさんは言った。
 だけど、ガンドルフィーニ先生は「違う」と首を振る。

「そちら側の事情ではなく、君たち自身の事だ」
「ちょ、ガンド……」

 ガンドルフィーニ先生を止めようとした瀬流彦先生を、タカミチが制止した。

「私たちか? 私の宝物を奪いに来るならぶっ飛ばすが」
「傷つけて意味が有るの? 無駄に疲れるだけなのに?」
「妖怪ならともかく、人間相手にやると何されるか分かったもんじゃないからな」
「だそうですよ」

 タカミチがそう締めくくる。
 その顔は少し笑ってる、なにかおかしい事でもあったのかな。

「……その言葉、信じていいんだね?」
「違うぜ」
「なに?」
「どーせ他人の言葉だ、私達を信じるんじゃなくて、それを決める自分を信じた方が良いと思うぜ」

 そっちの方が後悔はしないと思うがな、そうきりさめさんがニヤリと笑って言った。

「……分かった、僕は君たちを信じる僕を信じよう」
「裏切ったら駄目だぜ」
「それはこちらのセリフなんだけど」
「えっと、よろしくお願いします!」
「はいはい」

 勢い良く頭を下げた。
 はくれいさんはこちらを見ずに一言そう言った。
 それとは裏腹に、きりさめさんは僕をじっと見てくる。

「ところで、先生って誰でも出来る仕事なのか?」
「ネギ君は特別だよ、大学……成人した大人が学ぶ学校を卒業出来るくらいに頭がいいからね」
「へぇー、よくわからん」

 そうして数秒静かになり、また口を開く。

「……なぁ葱坊主」
「はい」
「そっち側で楽しいか?」
「え?」

 いきなりで何が楽しいのか分からない。

「私達側から見るとな……、歳は幾つだ?」
「数えで10になります」
「私達側から見るとな、10歳だと遊びで走りまわって勉強をして宿題を忘れると頭突きされるんだ。 つまりだ、教える側じゃなくて教えられる側なんだ」
「………」
「そっち側で楽しいか?」
「……はい!」
「……そりゃ良かったな」

 またきりさめさんは笑う。
 僕の答えのどこが可笑しかったんだろう?

「立ったままは疲れるでしょう、座りなさいよ」
「あ、はい」

 言われてから気が付く、はくれいさんの言う通りにテーブルに寄って座る。

「ガンドルフィーニ先生たちも」
「ああ」
「今さらだけどお邪魔するよ」
「そういや、三人とも魔法使いなんだろ? ちょっと魔法のことをな……」

 そうしてきりさめさんが話し出す。
 はくれいさんは立ち上がってキッチンへ。
 僕たちはきりさめさんの問いに答える。
 はくれいさんが戻ってきて、お盆の上には湯のみ。
 それにお茶を注いで僕たちの前に置いていく。

「ありがとうございます」
「そう言えばネギ君も聞いてるよね、彼女たちが修学旅行に付いて行くのを」
「うん」
「勿論彼女たちは生徒じゃないから勉強のために行く訳じゃない、どちらかと言うと護衛に近いかな」
「向こうの魔法使いさんたちが邪魔してくるかもって学園長先生が」
「そうそう、安全のために万全を期すけど、もしかしたら生徒たちや他の一般人達に被害が及ぶかも知れない。 停電の時に彼女らの戦いは見たよね? 学園長の知り合いだし、実力もあるから彼女たちに力を貸してもらおうってわけだよ」
「あ、そうなんだ。 はくれいさん、きりさめさん、修学旅行ではよろしくお願いします」
「魔理沙でいいぜ、霊夢は霊夢な。 苗字で呼ばれるなんざ滅多に無いからむず痒くなるぜ」

 あーかゆい! と言いながら背中を掻き始めるまりささん。

「これのために二人を紹介する事になったんだ。 向こうでは周りのことは僕たちに任せてくれて良いけど、油断だけはしないでくれよ?」
「うん、学園長先生に頼まれたしちゃんと届けるよ!」
「ネギ先生は頼もしいね」
「なんか知らんががんばれよ、葱坊主」
「はい!」
「ところでその肩の動物、美味しそうね」
「え゛」

 その一言でブルブル震えだすカモ君。

「た、食べちゃだめですよ!」

 カモ君を隠しながら抗議。

「分かってるわよ、それ妖精の類でしょ」
「だったら食べても良いんじゃないか? 死んでも……って死なないか」
「食べられたら死んじまう!」
「なんだ、死ぬのか。 生き物の側面が強いのか」

 そんな会話をしながら僕たちは、長い時間話していた。
 れいむさんは寡黙で、まりささんは陽気な人でした。
 この人達は信じていいんじゃないかな、話してれば無理やり人を襲うような人達に見えないし。
 修学旅行もタカミチやれいむさんたちが居るんだから、そんなに心配しないで良いかも知れない。
 そう考えながら、夕暮れまで僕たちはれいむさんたちと話していた。





















 紅魔館便利すぎる、何この使いやすさ。
 紅魔館は幻想郷入りする前は東欧にあったと言う設定に、居場所がばれている吸血鬼を正義(笑)の魔法使いが見過ごすはずもなさそうで。
 面子なども大事にしてるようですし、喧嘩売ってくる魔法使いが煩わしいと思いつつも、移動すれば逃げたなんて思われそうだから動かなかった、とか。
 パチュリーは紅魔館の蔵書目当てかも、正面からレミリアを叩きのめして気に入られたとか。
 残像すら残らない速度で移動するレミリアを捉え、近寄られる前に魔法をたたき込めるくらいの実力が有るパチュリーでした。



 ネギま勢、フルネームがない人がいて困る。
 おかげで微妙な……、設定資料集とかでも載ってないのですかねぇ。


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