チラシの裏SS投稿掲示板




No.5527の一覧
[0] 東方結壊戦 『旧題 ネギま×東方projectを書いてみた』【習作】[BBB](2010/01/05 03:43)
[1] 1話 落ちた先は?[BBB](2012/03/19 01:17)
[2] 1.5話 幻想郷での出来事の間話[BBB](2009/02/04 03:18)
[3] 2話 要注意人物[BBB](2010/01/05 03:46)
[4] 3話 それぞれの思惑[BBB](2012/03/19 01:18)
[5] 4話 力の有り様[BBB](2012/03/19 01:18)
[6] 5話 差[BBB](2010/11/16 12:49)
[7] 6話 近き者[BBB](2012/03/19 01:18)
[8] 6.5話 温度差の有る幻想郷[BBB](2012/03/19 01:19)
[9] 7話 修学旅行の前に[BBB](2012/03/19 00:59)
[10] 8話 修学旅行の始まりで[BBB](2012/03/19 00:59)
[11] 9話 約束[BBB](2012/03/19 01:53)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[5527] 8話 修学旅行の始まりで
Name: BBB◆e494c1dd ID:e6765bff 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/03/19 00:59
「藍」

 幻想郷の端の端、博霊神社とは反対方向の艮にある古い屋敷。
 その屋敷の畳が敷き詰められた居間、障子を隔てて金色の狐の名を呼ぶモノが一人。
 声を発したのは八雲 紫。、それを聞くのは八雲 藍。
 縁側を歩く式神の狐に向かって、居間から呼びかける妖怪。

「おや、紫様? 帰ってきたのなら教えてくださってもいいでしょうに」
「私の忠実な式神、結界は今日も異常は無かったですか?」
「別段、ありませんでした」
「あったら困るものね」

 問いに答えた藍に飄々と返す。
 それを聞いて僅かに眉を動かした藍が口を開く前に紫は言葉を出す。

「沢山、とても沢山の存在が消えたわ」

 藍は何が、とは聞かなかった。
 何の存在が消えたのか一言で理解した、してくれなくては困るのだけど。
 結界に干渉、それが幻想郷だけではないと気が付いた時には手遅れだった。

「奴らは我々の存在を許さないと?」
「それはどうでしょうか」
「と、言うと?」
「許す許さない、安易なものではないでしょうね」

 単純な殺生ではない、紫には別の物にも見えていた。
 奴らが幻想郷を幻想郷として成り立たせている二つの結界を破壊しようとした、その理由。
 ごく僅かに、不審な点を紫は展開した『ラプラスの魔』にて拾い上げていた。
 お陰で断定できるものも出来なくなり、より多く動かなければいけなくなった。

「では、一体何を目的で結界に攻撃を?」

 藍が問いても、私は口を閉じて扇を扇いで流し目で見るだけ。
 自身で考えろ、と言う訳ではないけど。
 まっすぐと見つめてくる藍は、私が発した言葉の意味を考えているのでしょう。
 ですが、その答えは出る事は無い、出たとしても正しくない答え。
 間違った見解は決して真実に辿り着けない、藍が曲解の螺旋に足を踏み込む前に止めた。

「答えを出すにはまだ早すぎますわ」
「……でしたら、惑わせるような事を仰らないでください。 情報がないので不確かな推測しか出来ませんよ」
「それもそうですわね」

 文句を言ってくる藍、忠実すぎて動けない式神に笑みを返して立ち上がった。

「それじゃあ、もう一仕事してきます」

 私は扇子を仕舞いながら左右隣の畳の上に、一丈ほどの二つの境界を開く。

「あまり外の世界と馴染んで欲しくないものね」

 とは言え、帰りたがっている霊夢は必要以上に見聞きしないでしょう。
 魔理沙もさほど問題とはならない、確かに外の物を見て喜びこそすれ欲しがる事はしないでしょう。
 がらくた時々貴重品を集めているとは言え、幻想郷と外の世界のとでは意味や意義が違う。
 その点をきっちりと言いくるめているから、無闇矢鱈に持ち込もうとはしないでしょう。

「夕餉はどうしましょうか」
「用意しておいてね、暖かいのも一つ」

 私の背後に空間の境界を作って、垂直に開いた境界に向き直りながら藍に言った。
 さらに別の境界、床の境界と垂直に並ぶ、天井すれすれに床と同じ大きさの境界を二つ。

「あ」

 開いた途端、天井の境界から落ちてくる物体を見て藍が口を開いた。

「それじゃあ、行ってくるわ」
「あ、はい。 行ってらっしゃい」

 落ちてきたのは既に就寝していた紅白と白黒、藍はその二人に視線が上から下へ。
 そうして私は空間に作った境界を潜る、潜る先は一つ。






「……申し訳ないが、せめて扉から入ってきてはくれんかの?」

 いつの間にか居た、表現するとしたらそうとしか言えない。
 学園運営に係わる書類を処理していたら、いつの間にか机を挟んで向こう側に立っていた。
 ふと視線を上げたから気が付けた、そうでなければ気付くのはもっと後になっていたじゃろう。

「確かに不躾でしたわ、今度からはノックも付けましょう」

 彼女、八雲殿が右手でノックする仕草をして笑う。
 妖しい笑み、美女の笑顔だと言うのにどうも好きになれない表情。
 何かあるのでは、と勘繰ってしまう様なモノだった。

「そうしてくれると助かる、心臓が止まりそうじゃわい」
「それはそれは、申し訳ありません。 早速で悪いのですが、今日お伺いしたのは二人のことですわ」
「……霊夢君と魔理沙君のことかね?」
「ええ、既に向こうの宿に送っておりますので、足の取り消しをお願いに」

 そう言って、やはり何か含みのありそうな笑顔を作る八雲殿。

「それはかまわんが、どこの宿に泊まるかは」
「ホテル嵐山、同じですわ。 二人とも京の都は初めてですが、はしゃぎはしないかと思いますが」
「……ふむ、魔理沙君はともかく、霊夢君ははしゃぐほど子供ではなかろう」
「確かに」

 そう言ってソファーに座る八雲殿、一挙一動に注意を払ってなお、いつ握られたか分からないビンに気づいた。
 そしてほぼ真下で音、ペンを持つ右腕の内側に小さなお猪口。
 親指と人差し指だけで摘める小さなお猪口になみなみと注がれた、香り立つ透明な液体を見た。

「……わし、仕事中なんじゃが」
「気付けの一杯に、お聞きしたい事もありまして」

 そう勧めてくる八雲殿、下に視線を落とせば芳醇な香りが漂う恐らくは日本酒。
 八雲殿は既に口を付け、酒を飲んでいた。

「……すまんが、遠慮させてもらう。 事重要な話でなくとも聞き逃したりしたくはないのでな」
「それは残念、程よい銘酒ですのに」

 そう言ってもう一度お猪口に口を付ける、顔にはやはり妖しい笑み。

「聞きたい事とは?」
「……英雄の息子と黄昏の姫御子の事ですわ」
「……ふむ」

 お猪口を置きつつ、僅かに顔を向けて視線を送ってくる八雲殿。

「具体的には?」
「現状とこれからの傾向、主に性格の事なら特に」
「おや? このような事、わしから聞くまでも無いと思ったんじゃがの」
「いいえ、百聞どころか百見したとしても心と言うのは得てして捉えがたいもの。 そう思いませんこと?」

 長く付き合っている者でもその心が読めないときが有る、大か小か、差異はあれ心は常に変化し続ける。

「申し訳ないがわしとて彼と縁を作ったのは最近じゃ、額面通りの事しか言えんが」
「でしたら第一印象でも構いませんわ」
「なるほど」

 いつの間にか消えていたお猪口を内心惜しみつつ、今現状近右衛門が知るネギ・スプリングフィールドと神楽坂 明日菜について語る。

「黄昏の姫御子、ここへ来て随分と様変わりしたようですわね。 追って見なければその姿に、当時を知る者は驚くでしょうか」
「他者との交流は影響を与える、その点でアスナちゃんは非常に良い友人とめぐり合えたの」

 雪広 あやか、神楽坂 明日菜として麻帆良の地に住む事になり、学園へと転入した当初からの友人。
 当時無感情だった神楽坂 明日菜、それに突っかかったのが雪広 あやか。
 声を掛けても返事を返さず、まるで見えていないかのように無視。
 返事ぐらいしたらどうかと詰め寄るも、同じように無視したから掴み合いに発展。
 先生やクラスメイトたちが間に入って止めたので大事には至らなかったが、それから事あるごとに二人はぶつかり合いを起こすようになった。

 お互いが気に入らないから、そう言う理由も有っただろうが、原因となる事柄が二人にはあった。
 それは『死』、念入りな記憶操作で覚えては居ないが、神楽坂 明日菜にとって親しい存在。
 紅き翼のナギ・スプリングフィールドとさほど差が無いほど慕っていたガトウ・カグラ・ヴァンデンバーグの赤。
 息を引き取る所を見た訳ではなかったが、敵の攻撃を受け血に濡れた姿は容易く死をイメージさせた。
 覚えていなくとも、それは記憶のどこかに僅かばかり残って、神楽坂 明日菜に影を落とした。

 雪広 あやかにとっての死は、生まれてくるはずだった弟。
 姉になると言う気負いと期待、早く生まれて来いと願うほどの思い。
 そしてその願いは叶う事無く、日の目を見る事無く弟は亡くなった。
 嘆く両親と姉、あやかにとっても大きな悲しみとして心に傷を残す。

 お互いに残る傷が、ささくれて思いを加速させた。
 あやかはただ悲しみに明け暮れる事はしなかった、だからこそ他者との交流を持って早く忘れようとした。
 明日菜は記憶を封じられたせいもあってか、他者との接触を極端に控えるようになった。
 その時に神楽坂 明日菜と雪広 あやかは出会ってしまった。

 話しかけるもまともに返事を返さない明日菜に食って掛かるあやかに、それを煩わしく思う明日菜。
 あやかの気落ちしていても性根の思いやりがなくなる訳でもなく、何度も話し掛け続けるも無視の連続。
 明日菜も何度も繰り返される言葉に疲弊していた訳ではなかったが限度はある。
 無感情であっても、何故突っかかってくるのかとイラ付いていたとも言える。

 結局、何度も接触すれば精神的負担が溜まり、お互いの溜めていた気持ちは同時に爆発する。
 そうして掴み合い罵り合い本音を曝け出す、心の奥底にある心労と心痛をお互いにぶつける。
 お互い髪を引っ張り合い、見る間にビンタや蹴りを入れる大喧嘩に発展した。
 その時は高畑・T・タカミチの仲介により事無きを得たが、今回だけで収まる訳がなかった。
 事有る毎に大喧嘩に発展する、それがちょっとした行き違いだとしても大喧嘩。

 何度も何度も、お互い気に入らないと喧嘩をして二人は成長していく。
 ストレスの発散とでも言うべきか、あやかとの交流で明日菜は無感情な少女から活発な少女へと。
 明日菜との交流で弟の死を乗り越え元気を取り戻したあやか、二人の口論や喧嘩はお互いに良い効果を齎した。
 中等部に上がる頃には喧嘩の数は減ったが、口論の数は増えた。
 エスカレーター式の麻帆良学園でクラスはそのまま、だからこそほぼ毎日顔をあわせる。

 結果、二人は否定するが親友と言って良い仲になっていた。
 喧嘩するほど仲が良いと言う言葉がそのまま当て嵌まる二人だった。

「なるほど、それは僥倖。 なんとも素晴らしい事ですわね」
「うむ」

 頷く近右衛門、その表情を見ながら紫は少しだけ笑った。

「これで物語は動きますわ」
「なんじゃと?」

 意味深、いや、実際に意味があるのだろう言葉に近右衛門は紫を見る。
 その紫はお猪口を置き、右手で指折りに数え始める。

「英雄の息子、英雄に救われた少女、そして再動する敵」

 英雄の息子へと与えられる試練、成長した少女との出会い。

「とてもドラマティックですわ、関係深い二人に取り巻く環境は実に『整っている』」

 同じ笑みを浮かべたままの八雲殿。
 確かに、ネギ君が麻帆良に来る事は意図した事ではないが。
 ネギ君が真実を知るには色々と整っている。

「『運命』と申しましょうか、その運命は今だ係わる者を抱擁している。 さて、その運命の中心に居るネギ・スプリングフィールドはどう動くのでしょうか?」
「……どうもこうも、ネギ君が思うように動くじゃろうて」
「では、思うように動くネギ・スプリングフィールドの性格は?」

 尋ねる意図、何らかの含みが有る。
 何を企んでいるのか、有る程度予測をつけることは出来るが当たりかどうかは分からない。

「……ふむ、わしから見てネギ君はただ『良い子』じゃ。 何事にも真剣に取り組む……子供じゃ」

 周りが上手く見えていないように感じる、一点にだけ集中して他の事に気を払っているようには見えない。

「知っての通り、ネギ君は魔法に関してすばらしい才能を持っておる。 何れはナギにも劣らぬほど優れた魔法使いになるだろうが──」
「幼き故に脆い」
「……うむ、素晴らしい才能を見せても未だ子供。 少々魔法使いの正義を妄信しておる、まぁこれについては真実を見て知れば大丈夫じゃろうが……」

 世の為人の為に魔法を使う事は良い事じゃ、じゃが世の中は善だけで成り立っているわけではない。
 善が悪になり、悪が善になることも間々ある。
 一面だけを捉えて考えるのは見識を失う、ネギ君にはそのような狭い考えではなく広く深い識者となってほしい。

「む、いかん。 ただの願望になっておった」
「言ある者必ずしも徳あらず」
「然り、裏も表もない者などこの世には居らん」
「純真な者こそ囚われ易い、飲まれ溺れる事も呆気無く」
「故に教え導かねばならん」
「だからこそあの吸血鬼が少年に世界を教えると」
「……どう言う事かね?」

 八雲殿から唐突に出てきた言葉、誰もネギ君がエヴァンジェリンに教えを請うとは言っていない。
 確かに六百年という時は現実と言うものを深く知っているじゃろう、だが余程の事が無い限り物事を教えるなどエヴァンジェリンはしないじゃろう。
 この学園都市には様々な者たちが居る、幅広い年齢層に学ぶ為には事欠かない。
 だからこそエヴァンジェリンである必要も無い。

「言葉を教える、数式を教える。 多くの知識を持てば可能でしょう、ですがそれは付録に過ぎず」

 お猪口に口を付け、一口飲み干す。
 そうして空になったお猪口を置き、艶やかにふっと息を吐いて続ける。

「運命とは如何様か? ネギ・スプリングフィールドがここ、麻帆良学園都市に来たのは?」
「……彼の試練の為じゃ」
「子が子に物事を教える? 結構、知識を有してひけらかすには十分」
「でなければ教師は務まらん」
「本当に? 彼は教える為だけに此処へ来たと?」
「一体何が言いたいんじゃ」

 その言葉を聞いて八雲殿は立ち上がる。

「物事は一面だけで成り立たず、事は相反するからこそ生まれる。 真に教えられるべき者は?」
「……確かにそうじゃが」
「所詮は子供、ならば大人に持ち得ないものを持つ。 人は一人では立てない、彼の者が寄り添って立つ者は誰か?」

 踵を返し、テーブルの上に置いてあったお猪口をスキマの中に沈みこませる。

「英雄か怪物か、それとも人間か。 彼の者の将来は彼の者の思いだけに左右されない、それは寄って立つ伴侶の役目でもある。 お話を聞かせていただき感謝を、それではお暇をさせていただきますわ」

 そう言い、淀みを感じさせずに出入り口へと歩いていく。
 近右衛門はそれを止める事はせずドアノブに手を掛け捻り、そのまま外へと出て行く紫を見送る。
 カチャリと、ドアが閉まって完全に姿が見えなくなった。

「……ネギ君はエヴァンジェリンに何かを教わる為に教師に、麻帆良に来たと?」

 独白、それに答える者は居ない。
 むぅ、と近右衛門が一つ唸れば音。
 近右衛門が座る椅子と机の正面、学園長室の扉の向こうからノック。
 戻ってきた? そう考えた近右衛門は。

「開いとるよ」

 入室の許可、真っ直ぐと扉を近右衛門は見据えて入ってくる人物を確かめる。

「失礼します」
「……しずな君じゃったか」

 八雲殿が出て行ってからほんの数秒、間違いなく入れ違いになる時間。

「しずな君、部屋に入る前に誰か見なかったかね?」
「いえ、誰も見ていませんがどなたかいらっしゃるのですか?」
「ふむ」

 神出鬼没、しずな君に扉を開けている姿を間違いなく見られているはず。
 認識阻害? 位置的にわしとしずな君、同時に八雲殿の姿を捉えておるはず。
 じゃがわしだけ見えてしずな君は見えなかったと言うのも……。

「……底が知れぬな」
「学園長先生?」
「なんでもないよ、用があるんじゃないのかね?」
「あ、はい、こちらなのですが……」

 そうして近右衛門は源 しずなが差し出した報告書を受け取った。









「………」

 目覚めると見覚えのない天井だった。
 むくりと霊夢が体を起こし、視線を周囲に巡らせると寝巻き姿の魔理沙が布団からはみ出していた。

「……何処よここ」
『起きたか』

 困った時の、と言うより多分困らせた奴の式神の声。

「ここ、あの屋敷じゃないわよね」

 何度か瞬きをし、どことも知れぬ部屋で一つ欠伸と背伸びをする霊夢。

『そこは京の都に有る嵐山と言う旅籠屋だ』

 簡潔な一言、カーテンで仕切られた窓から上がったばかりの朝日が覗いていた。

「一言言いなさいよ、全く」

 それくらいできるでしょ、と言いながらどこからともなく取り出した端に白のフリルが付いた赤いリボンで髪を後ろで纏める。
 そしてなぜか枕元に畳んで置いてあった何時もの巫女服、それを手に取り袖を通せば何時もの紅白巫女。

「で? 京の都とやらに勝手に送って何させる気よ」

 乱れがないか確かめて、窓のカーテンを開ける霊夢。
 カッと入り込んで来る眩しい朝日が、直接魔理沙の顔に直撃してうめき声を上げるが霊夢は無視する。

『この前話したばかりだろう、ネギ・スプリングフィールドと神楽坂 明日菜が京の都に行くから付いていくようにと』
「あー、そうだったわね」
『今頃こちらに向かう準備をしているだろう、日が落ちる頃にはそこの旅籠屋で会える算段だ』

 地底の街並みと似ているような風景を見つつ、何時も通り時間が余り何をしようかと考える。

「……とりあえず朝食ね」

 腹が減ってはなんとやら、お腹を空かせたままじゃいろんな物が減っていく。
 踵を返して振り返り、部屋の中を一遍する。
 端に寄せられた座椅子とちゃぶ台、てれびに厠の扉などが見える。
 その他これと言って気になる物はない、精々部屋が広々としているくらい。

「旅籠屋、持ってきてくれるのかしら?」

 自分で手早く何かを作るにしても、台所がない為に作れない。
 そもそも食材すらないのだけど。

「今は卯の刻(午前六時)ってところね、それにしてもお腹が減ったわ」

 何か……、ああ。

「藍、ちょっと神社から持ってきて欲しい物があるんだけど」
『それほど暇ではないんだが』
「あんたの主が行き成り送ってこうなったんだから、それくらい良いじゃない」
『……分かった、何を持ってくればいい?』
「お饅頭、棚の奥に置いてるのよ。 腐らないようにしておいてるけど、余り置きっぱなしにしてると腐っちゃうし」
『辰の刻(午前八時)になれば朝餉も取れるだろう、我慢したらどうだ』

 それに一言返す。

「無理、お茶請けに適したお饅頭なのよ。 出来るだけ早くね」
『……はぁ、分かった、取ってこよう』

 それを聞いて踵を返し、襖で区切られた隣の部屋へ顔を出す。
 寝ていた部屋と同じく、一面畳張りの三十畳ほどの部屋。
 結構広い部屋の中心には座椅子とちゃぶ台、霊夢はそのちゃぶ台の上に目当ての物を見つけての前に行き。
 座り込んでちゃぶ台の上に置いてあった湯飲みをひっくり返す。

「……? これは紙の中に茶葉が入ってるのかしら」

 茶葉と書かれた缶の蓋を開け、一つ摘んで紐が付いた袋を取り出す。

「なるほど、茶漉しを使わないでお茶を入れるって訳ね」

 破れないのかしら? そう思いながら湯飲み茶碗に茶葉袋を入れ、それをぽっとの前に置き、ぽっとの上の部分を押し込んでお湯を出す。
 注ぎ口から熱いお湯が出て、湯飲み茶碗を満たす。
 紐を指で掴んで軽く上下させ、茶葉を煮出させる。

「便利と言えば便利だけど」

 お湯がお茶へと変化したのを見計らい。
 他の伏せてあった湯飲み茶碗をひっくり返し、その中に茶葉袋を移す。
 お茶を飲む為の手順としては、何時もの急須で入れるのとそれほど変わらないけど。
 座布団を引っ張り出して座り、湯飲み茶碗を持って一口。

「いい茶葉ね」

 ふぅ、と一つ息を吐く。
 朝のお茶もまた格別、しかも中々美味しいのだからより一層。
 もう一度飲んでまた一息、お茶が無くなる前にお茶請けが到着すればいいんだけど。
 流石に厳しいかなと、見たのはひっくり返っていた湯飲み茶碗が乗っている盆の隣、木で出来ているお椀の中には様々なお茶請けが入っていた。
 お茶請けがあるとないとでは勝手が違ってくる、だから手を伸ばして小袋に入ったお茶請け、ばうむくーへんと書かれた木の年輪のようなものを取る。
 
「誰かこれ知ってる?」

 どんなお菓子か、それを向こう側に聞いてみれば。

『それはドイツの……、あなたじゃ分からないわね、外の世界の異国のお菓子よ。 作り方の説明は必要?』
「要らないわ」
『でしょうね、とりあえず作る時間が掛かって面倒なお菓子よ』

 説明を返してきたのはメイド、とりあえず袋を開けて口に放り込む。
 モグモグ、ばうむくーへんを咀嚼して味わう。

「……ん、これはお茶請けって意味では悪くないわね」

 パサパサというかモソモソというか、どうにも饅頭より水気が少なく甘みも押さえられている。
 ばうむくーへんばかり食べていれば間違いなく喉が渇いてくるモノ、そのため口の中と喉を潤すお茶が進む。
 そのまま次のお茶請けへと手を伸ばす、小袋をあけては中身を口に放り込み咀嚼、そしてお茶をグイッと飲む。
 お茶が無くなればまた注ぎ足して、小皿のお茶請けが無くなった頃に。

『霊夢、饅頭など見当たらないが』

 藍が声を掛けてきた。

「そんな訳ないでしょ、茶色の箪笥の上の棚の奥。 ちゃんと見なさいよ」
『……引き戸だろう? 饅頭など見当たらないが』
「私が探すわ」

 霊夢の目の前に現れる陰陽玉、それに霊力を込めた右手を叩きつけるように置いた。

「逆の機能があるとは教えてなかったはずだが」
「あるんじゃないかと思ってたわよ」

 博麗神社の社務所、霊夢が過ごす居住区。
 居間にある木目の長い年月を感じさせる棚、そこの前に立っていた藍の隣に霊夢は姿を現す。

「ちょっと退いて」

 棚の前から藍を退かした霊夢は、饅頭を収めていた開いている上の棚の奥をあさり始める。

「………」

 ガサゴソ。

「………」

 ガサゴソガサゴソ。

「………」

 何度も確かめるように手を棚の中で動かす霊夢、だがその手に目的の物が収まることは無い。

「………」

 頬をひくつかせ、ゆっくりと手を引く霊夢に藍は言った。

「無いだろう?」
「……無いわね」

 ギギギと錆付き金切り音を立てそうな首を動かして藍を見る霊夢。
 その視線、意図を一瞬で看破した藍は。

「私が食べる訳が無いだろう、なぜ他人の家の物を勝手に食さねばならない」

 紫様じゃあるまいし、とボソっと最後に付け加える。

「……そうね」

 間違いなく藍は紫より行儀が良い、スキマを使って勝手に饅頭やらを盗っていく妖怪の賢者とは違う。
 饅頭を食べるくらいなら油揚げを自前で用意して食べるだろう、となれば怪しいのは今言ったスキマ妖怪くらいだけど……。

「……違うわね」

 スキマ妖怪ではないと勘が囁く、霊夢の鋭い勘、鋭いを超えて未来予測に近しいそれがスキマ妖怪ではないと囁く。
 と言っても勘が『あいつが犯人だ!』と示すわけでもなく、異変発生時の漠然と異変の首謀者があっちの方向に居ると思うようなもの。
 基本霊夢は自分の事をよく理解している、勘が当たる事もあれば外れる事もあると分かっているし、それを分かった上で『とりあえず』動く。
 行き当たりばったりとも言えるが、当たっている事も非常に多い為に霊夢は今回も『饅頭を食べたはとりあえずスキマ妖怪じゃない』と断定した。
 
「となれば」

 霊夢の左手は右腕の肘に当てられ、右手の人差し指はこめかみを突いていた。
 魔理沙? 違う、スキマで幻想郷の外に放り出されてからほとんど一緒に居た。
 だったら、他に神社によく来る奴は?

「……萃香」
「大当たり、流石はお姉さん」

 にゃーんと一つ鳴き声が聞こえ、包み紙を右手に持って縁側に立つ少女が一人。
 血のような赤毛の上には猫の耳、外側は黒毛で内側が髪と同じく赤毛。
 その赤毛で三つ編みのおさげを二つ、三つ編みが解けないよう根元と端に二つずつ黒いリボンで止められていた。
 服は黒を基調として柄は濃緑と白の花や葉に似た模様、袖や襟には濃緑のフリル。
 立っている襟も濃緑で襟元には首輪のような赤い輪、左足には黒いリボンから解けた白黒で交互に区切られた長いリボン。
 
「いやー、あたいがお空に追いついた時はもう食べちゃってたんだよね」

 詫び入れる様子が無く猫耳少女、もとい妖怪の『火焔猫 燐』が霊夢に向かって包み紙を差し出す。

「これ、さとりさまからのお詫びだってさ。 『うちのペットが勝手に人様の者を食べて申し訳ない』って、お空はもう食べた事なんて忘れてるけど」

 険しい視線を火焔猫 燐に向けていた霊夢だが、その包み紙の中身が饅頭や大福であると看破して受け取る。

「なら貰っときましょ、鳥頭を叩きのめすのは別の話だけど。 それと、他に食べた奴も居るわね?」
「鬼が二人にお空、あと誰だか知らないなんだっけなー……青い暇人?」
「天子ね、打っ叩く」

 それを聞いてふわりと霊夢が浮き、火焔猫 燐とすれ違いながら青空へと飛んでいった。

「あららー、相当怒ってるねー」
「全く……、お前も早く地底へ戻れ。 地底の者にうろちょろされると面倒な事が起きそうだ」
「はいはい、お詫びを持ってきただけだから言われなくても戻るさ」

 もう一度にゃーんと鳴いて、光が収まると二又の尾を持つ黒と赤の毛並みの猫が居た。
 そうしてヒューンと霊夢と同じように縁側から二又の猫が空に飛んでいった。

 その後青い暇人こと比那名居 天子は霊夢が見つけるなり弾幕ごっこで叩きのめされて、酒やなんやら奪われた。
 鬼の二人こと萃香と勇儀は襲ってきた霊夢に勇み喜んで弾幕ごっこを受けて立ち、勝ったらもっと良い饅頭や大福を用意しようと不用意な言葉を言って叩きのめされ。
 鳥頭こと霊烏路 空は空を飛び回っていたところに霊夢を見つけ、見分けが付かない巫女が弾幕ごっこを仕掛けてきたので相手をしたら叩きのめされた。
 食い物の恨みは恐ろしい、特に期待していた物だとなおさらだった。







「おい、これはどうしたんだ?」

 魔理沙が目覚めると知らない天井で、開いていた襖の向こうには背を向け紅白の巫女がちゃぶ台の前に座っていた。
 頭を掻きながらその霊夢が居る部屋へと移動した魔理沙、霊夢の後ろからちゃぶ台を覗けばなにやら饅頭や大福、そして良い香りのする酒が置かれていた。

「朝っぱらから酒か、私にも飲ませろよ」

 ここがどこかよりも、霊夢が飲み食いする酒や饅頭のほうが重要な魔理沙だった。
 酒瓶に手を伸ばす魔理沙だが、霊夢はピシャリと魔理沙の手を叩き落す。

「駄目よ、お風呂から上がってきてから」
「叩くこと無いだろ」

 手の甲を叩かれた右手を振りながら、魔理沙はむぅっと顔を膨らませる。

「朝から運動したし、さっぱりした後の朝餉で飲むのよ」

 時間は辰の刻前、もうすぐ朝食が出来ると仲居が起こしに来た。
 霊夢がどれくらいに出来るのかと聞けば、八時前にはお持ちしますと返事が返ってきた。
 八時にはまだ時間があり、ひとっ風呂浴びてくるのに良い時間。

「なるほど、朝風呂の中でも良いがそっちも良いな」

 そう言った魔理沙が部屋の中をあさり始め、見つけたのは浴衣。

「察するにここは旅籠屋だな? だったら浴衣を着なくちゃ乙もなにも無いだろ?」

 寝巻きを脱ぎ捨てながら浴衣に着替える魔理沙、確かに浴衣も風情があると頷く霊夢。
 そうして二人して手早く浴衣に着替えて風呂へと向かっていった。






「ふー、露天風呂だったか」

 流れる金髪を纏め上げて頭の上で巻く魔理沙、頬を染めながら肩まで温泉につかる。
 同じように黒髪を巻き上げ、頭の上に手拭いを置く霊夢。

「景色もそれなりね」

 流石に竹細工で作られた囲いに蔽われ、景色を見下ろす事は出来ないが。
 それでも遠くに見える山が風情を醸し出す、幻想郷と比べて圧倒的に自然の緑が少ないが朝日と青空が映えている。

「やっぱり一杯欲しいな」

 その風景を見ながら、クイっと魔理沙が右手を捻る。

「それもそうだけど、やっぱり食事の時にね」

 湯船につかりながらも良いけど、美味しい食事と一緒だとさらに美味しくなるってもの。
 幻想郷でも散々温泉につかりながら酒を呷ったんだから、幻想郷じゃ早々食べられないものと一緒にとるのも悪くない。

「で? あれはどっから持ってきたんだ?」
「天子の所からよ、人の饅頭や大福を勝手に食べて困ったものだわ」
「とんとんか?」
「大分まけてとんとんね」

 饅頭一個食べられたくらいで、弾幕を叩き込んで三瓶ほど質の良い酒を持って行った霊夢にとってこれで一応とんとんだった。
 そんな他愛もない話をしながら、泊まっている旅籠屋で充てがわれた部屋へと戻る廊下の途中で。

「あん?」

 廊下の向こう側、曲がり角を曲がってくる影が三つ。
 そのうちの二人は霊夢と魔理沙が見たことがある人物。

「む?」

 男性二人、女性が一人。
 それを見て魔理沙が軽く手を上げる

「おー、ガンドルフィーニに刀子と誰か知らない人じゃないか」

 随分な呼び方だったが、そんな言い方をする人物だと認識しているガンドルフィーニ。
 誰か知らない人と呼ばれた弐集院 光はその細い目で、浴衣の霊夢と魔理沙を見る。
 そして葛葉 刀子は無表情でカツカツと魔理沙に詰め寄る。

「お、おい!?」
「またそんなだらしない格好で!!」

 刀子は魔理沙のよれた浴衣を真っ直ぐに正して帯も締めなおす。
 霊夢は霊夢できっちりと着ている為に何も言われなかった。

「お目付け?」
「それもあるが、どちらかと言えばネギ君の方だ」
「だろうな」

 ちょっと退いてくれと刀子を魔理沙が押し退けるが、刀子はそんな魔理沙に説教紛いに話を続ける。
 それを無視されて刀子は不満そうに黙り、魔理沙は話を続ける。

「朝っぱらからご苦労さん、朝一でこっちに来たのか?」
「ああ、学園長から君たちはもう京都に入ったと連絡があってすぐに追いかけてきた」

 魔理沙が言った通りまさしくご苦労さんだった、恐らく日が昇る前に起きて移動してきたんだろうと霊夢は考える。
 実際大急ぎで始発の新幹線の席を取って、霊夢たちと旅館で出会う数十分前に京都に入った。
 勿論京都一帯は関西呪術教会が治めている、刀子は神鳴流の剣士である為ある程度は見逃されるが、残り二人はそうも行かない。
 たった一人の魔法先生でも難色を示したのに、追加で後二人、しかも行き成りであるから関西呪術教会は急激に不信感を募らせていた。
 無論近右衛門もその事は理解している、だが目的の為協力している仲とは言え、低く見積もってもランクにしてAAA以上はあるだろう二人を無視できないと言うのもあった。

 故に近右衛門は霊夢たちと関西呪術教会を天秤に掛け、傾いたのは霊夢たち。
 だからこそガンドルフィーニ、葛葉 刀子、弐集院 光の三名に急遽京都に向かってもらう事にした。
 近右衛門はこの後に起こるだろうごたごたは自ら対処するし、そのための言い訳やらなんやらを麻帆良学園学園長室で考えている最中だった。

「文句は紫にな、私たちも行き成り送られたし」
「む」

 そう言う魔理沙、ガンドルフィーニたちからすれば文句の一つも言いたいが。
 対象と成る二人も承諾無しで京都入りさせられたと言う事実が、ガンドルフィーニを黙らせた。

「……はぁ、しょうがない。 この事に付いては何も言わないでおこう、しかしだ……」

 ガンドルフィーニが一つ溜息を吐いた後、真剣な表情で霊夢と魔理沙を見る。

「ここ、京都は関西呪術教会の影響下にある。 麻帆良の土地と同じように自由に動き回らないでくれ、君たちが好き勝手動かれると折り合いが付けられなくなりそうだ」

 最悪、関西呪術教会と関東魔法教会との抗争になりえる。
 そんな事になったら、近右衛門は霊夢たちに協力する事は出来なくなる。
 陰陽術師と魔法使いが戦い、血が流れる事になって収拾が付けられなくなるだろう。

「はいはい、適当に食っちゃ寝しとくわ」
「少し待ってくれ、紹介しておこう」

 どうでもよさそうにそう言った霊夢が階段へ向かおうとするが、ガンドルフィーニが呼び止める。
 右手を隣の男、スーツを着た小太りの弐集院 光へと向け。

「僕たちと同じ麻帆良学園の魔法先生、弐集院 光先生だ」
「いやいや、初めまして。 弐集院 光だ、よろしくお願いするよ」

 ニッコリと人懐っこい笑みを浮かべ、頭を軽く下げた。

「知ってるだろうけど霧雨 魔理沙だぜ」
「博麗 霊夢よ」

 挨拶が終われば今度こそ霊夢は歩き出す、魔理沙もその後に付いて歩き。

「外を出歩くなって言うなら部屋に篭るが、ずっと篭りっぱなしは無いと思ってくれよ?」
「誰も絶対に部屋から出るなとは言ってません、出歩きたい時はこちらに一言告げてからに」
「その時は三人のうち誰かが君たちに付く」
「了解」

 霊夢と魔理沙はガンドルフィーニと弐集院とすれ違い、階段を上っていく。

「待った、一つ忘れていた」
「何度も止めないで纏めてくれよ、それでなんだ?」

 霊夢はずんずんと階段を上って階上へと消えていく。

「君たちの部屋はどこだ?」
「この階段上った先の一番奥だぜ」

 そう言った魔理沙はすぐに霊夢の後を追いかけ、階上へと姿を消した。

「……ここの一番奥となるとスイートルームじゃなかったですかね?」

 魔理沙の一言に弐集院が呟く、ホテル嵐山は縦ではなく横に広い。
 階層も少なく三階までしかないが、三階は二階の団体客をメインとしたものとは違い、一部屋が二階のよりも広く値が張る。
 窓から見える景色は良く食事やサービスも値段相応、一泊五桁の金額が掛かるスイートルーム。

「お金あるんですねぇ」
「……うむ」
「危険な相手かもしれませんし、そういう意味も込めているのかもしれませんね」

 そうして三人は霊夢と魔理沙が上っていった階段を見つめた。






 その霊夢と魔理沙が部屋に戻り、朝食が運ばれてくるのを今か今かと待ちわびている頃……。

「おや、ネギ君。 随分と早いね」
「タカミチ! おはよう! みなさんもおはようございます!」

 集合場所となる大宮の駅で一つの集団があった。
 時刻はようやく八時を回ったところ、集合時間まであと一時間もある。
 そんな中で赤毛の少年、ネギ・スプリングフィールドは眼鏡を掛け無精髭を生やしたタカミチ・T・高畑へと挨拶。
 続けてネギが受け持つ3-Aの生徒たちにも挨拶を掛ける。

「おはよーネギ君!」

 ワイワイと返事が帰ってきて、ネギも嬉しそうに笑みを返す。

「みなさん、はやいですね!」
「楽しみで朝一番で来ちゃったー」
「僕もです! いやー京都楽しみだなー!」

 明石 裕奈や和泉 亜子などと楽しそうに話している。

「明日菜たちは?」
「僕教員ですから、僕だけ早めに出てきたんです」
「あ、そっかー」

 そうして集合時間までネギたちは話して過ごし、九時、九時五十分と時間が流れて生徒たちが集合して集まってくる。

「はーい! 3-Aのみなさんはこっちですよー、集まってくださーい!」

 ネギが3-Aと書かれた小さな旗を振り、呼びかける。

「班長は点呼をお願いします! 終わったら教えてくださいねー」
「はーい」

 着々と京都までの時間が少なくなっていく中、ネギは内心楽しみが高まっていく。
 もうすぐ京都! 父さんが一時期住んでいた家! 父さんを探す為の手がかりがあるかも知れない!
 ギュっと手を握る、期待に胸を膨らませてネギは意気込むが。

「! タカミチ……」
「ネギ君、随分と力が入っているようだけどそんなに楽しみなのかい?」

 肩に手を置かれ、ハッとしてネギは高畑を見る。

「うん! 京都に父さんが一時期住んでいた家があるって、エヴァンジェリンさんが」
「……なるほど、それは確かに楽しみだろうけど、修学旅行を楽しみにしているのはネギ君だけじゃない。 ネギ君は3-Aの担任なんだから、ちゃんと皆を引率しなきゃダメだよ」

 勿論副担任の僕も精一杯サポートさせてもらうよ、そう高畑は笑みを浮かべてネギに言う。
 それを聞いてネギは近右衛門からも言われた言葉を思い出す、今の自分は先生なんだと。

「……ありがとう、タカミチ!」

 高畑は笑みを浮かべたまま頷き、ネギの傍に顔を寄せ、右肩に乗るオコジョ妖精、カモに小さな声で語りかける。

「……カモ君、何かと僕らとは離れるかもしれないから、その時はネギ君をサポートしてやってくれ」
「任せとけい! 兄貴の使い魔としてしっかりとやってやるぜ!」
「頼むよ、ネギ君も特使として気を付けて動くんだ。 それじゃあもうすぐ出発だ、行こうか」
「うん! それじゃあみなさん! しっかり付いてきてくださいねー!」
「はーい!」

 歩き出して新幹線の中に入っていくネギ、その後に付いて乗り込む3-Aの生徒。
 1班、2班、3班と続々と乗り込む中、高畑は最後尾からそれを見守り、二人しか居ない6班のザジ・レイニーデイと桜咲 刹那を見た。

「刹那君」

 乗り込み待ちの刹那を呼び、声を小さくして話しかける高畑。

「学園長から聞いてるかな?」
「はい」
「それは良かった、おそらく関西呪術教会から妨害があるだろうね。 僕は妨害を防ぐけど、手が回らなくなるかもしれない」
「分かりました、出来るだけサポートに回ります」
「助かるよ、でも刹那君の本分は木乃香君の護衛だ。 僕たちのサポートはどうしてもって時だけお願いするよ」
「……はい」

 木乃香の話題が出て、雰囲気が暗くなる刹那。
 勿論それを分かってて高畑は言葉に出した、何とかしてやりたいと思うもその内容にまで口を挟めるほどではない。
 余計なお節介と言われるだろう、それでも傍から見ても余り良い事ではない。

「今回はちょっと事情が違う、いつもより気を付けておいて欲しい」
「高畑先生は何か知っているのですか?」
「ある程度はね、でも木乃香君と刹那君たちには関係ないよ。 刹那君は木乃香君の護衛に全力を尽くしてくれればいいさ」
「それは勿論!」
「頼むよ」

 開いたよ、と高畑は新幹線へと手を向ける。
 刹那は頷き、新幹線に乗り込む。
 それを見送った後、高畑は一度周囲を見渡してから新幹線へと乗り込んだ。

 




「瀬流彦先生」
「既に設置済みですよ、今回は気が抜けませんからね」

 高畑と瀬流彦が既に閉まっているドアの付近で話し合う。

「数は?」
「今は三重にしてます、京都に着いたら五重ぐらいには」
「すみません、サポートできず」
「いやいや、そんな事無いですよ。 僕が戦闘に出ても役立たずになりますし、得意とする分野での役割が一番ですよ」

 高畑は先天性の呪文詠唱が出来ない体質、正確に言えば呪文詠唱は出来るがそれに付随するはずの精霊に働きかける力ある言葉にならないと言うもの。
 幾ら魔法始動キーを設定して呪文を詠唱しようと、無詠唱も同じく魔法という現象として世界に現れない。
 そのため魔法使いになれず、ネギの父親のナギ・スプリングフィールドのような『立派な魔法使い(マギステル・マギ)』になれる資格も無い。
 だが魔法を使えずとも戦える証とも言える、ナギと同じく紅き翼のガトウ・カグラ・ヴァンデンバーグから学んだ居合い拳こと無音拳や。
 弛まぬ努力で身に着けた究極技法、咸卦法を習得してマギステル・マギに値する実績を持つ。

 そのため魔法世界本国からは高い評価を受けており、おおよその強さを表すランクではAA+という非常に高い位置付けを受けている。
 その活躍で魔法世界で発行されている幾つかの雑誌の表紙を何度も飾り、赤き翼のメンバーと言う事もあって魔法使いの間での知名度は超有名と言って良いほど知られている。
 言ってしまえば高畑は前面に立って戦える一線級の戦闘能力を持つが、魔法を一切使えないため魔法に関する補助的な役割をこなせないと言う欠点があった。

 謝られる瀬流彦は攻撃魔法を余り得意とせず、補助系統の魔法の方を得意としている。
 前衛と後衛、役割的に逆転する事は非常に難しい上、本人たちの性質にあった役割である為に瀬流彦は高畑の謝罪を流す。

「今のところ気になるような反応は無いですね、京都に近づくに連れそう言えなくなるかもしれませんが」
「そうですか、何かあったらすぐにでも」
「ええ、って!?」
「どうかしましたか!?」

 分かれようとした矢先、瀬流彦が奇妙な声をあげ高畑が詰め寄る。

「3-Aの車両に大量の小さい魔力反応が!」

 それを聞いた瞬間、高畑は振り返ってドアのガラス越しに見える光景に眉を動かす。
 3-Aの専用とする7両目、その中では慌てる生徒たちとその原因であるだろう沢山の緑色のカエルが跳ね回っていた。

「瀬流彦先生は他に反応が無いか警戒を!」
「はい! っ、奥の車両から何か高速で向かってきています!」

 高畑は7両目に踏み込み、カエルの回収をしている生徒たちの奥。
 瀬流彦が言っていた向かってきている何かに油断せず、ポケットに右手を収める。
 立ち上がっていた刹那と視線を合わせた高畑はここは任せてくれと頷き、それを見て刹那は頷き返してカエル集めに協力し始める。
 そしてカエルの回収が終わった頃、ネギが慌てて自分のスーツを弄って親書を取り出していた。

「ネギく──」

 その行動を高畑が諌めようとした矢先、奥の車両とを隔てる少しだけ開いているドアの隙間から一羽の燕が入り込み、ネギが持っていた親書を掠め取る。
 高速、人が走る速度より早く車両内を駆け、奪い取った親書を術者に届けようとして高畑の隣を通り過ぎた。

「コラー! 待てー! タカミチ! なんで止めて──」

 親書を奪い取った燕を素通りさせた高畑にネギは声を荒げたが。

「ネギ君、今の君はとても迂闊だったよ。 むやみやたらに大事な物を人目に晒しちゃダメだ」

 高畑の右手には親書、燕とすれ違いざまに奪い返した高畑だった。

「い、いつのまに! 凄いよタカミチ!」

 ネギから見て高畑は微動だにしなかった、それなのに燕から親書を奪い返していたことにネギは驚き褒める。
 高畑としては燕、おそらくは式神から親書を奪い返すだけではなく、そのまま消し飛ばすことも出来たが。
 術者の元に返るだろう式神を泳がせて、妨害してきた輩を見つけようとした。
 だがその当ては外れ燕の式神はそのままドアにぶつかり、ただの紙型へと戻っていた。
 それを尻目に見て、ネギへと顔を向けなおす高畑。

「気をつけなくちゃダメだよ、ネギ君。 今回は僕や他の皆が居たから奪われずに済んだけど」
「うっ、ごめんなさい……」
「これからもこんな妨害があるかもしれないから、絶対に誰か見ている所で取り出しちゃいけないよ」

 高畑の忠告にネギは真剣に頷く。

「助かったぜ旦那!」
「カエルと燕だけで助かったよ」

 騒がしい3-Aの声に紛れ、二人と一匹は声を抑えて話す。

「僕らのほうにも妨害が向いてたら親書を奪われていたかもしれない」

 それを聞いたネギはしょぼーんと小さくなり、大きな失敗に落ち込むが。

「ネギ君、失敗は誰にでもあるさ。 肝心なのは同じ過ちを起こさないようにする事だよ」

 僕だって昔は沢山失敗してきたからね、とフォローを入れる高畑。
 ネギに親書を手渡し、頑張れと励ました。

「うん、わかったよ!」
「それじゃあ僕はあの式神を作った術者が居ないか見て回るよ、僕が見回ってる間何かあったら……」

 途中で言葉を区切る高畑は視線をネギの奥、刹那へと向ける。

「刹那君に頼ってくれ、彼女も魔法を知っているからね」
「せつな? 桜咲さんですか!?」
「そうだよ、刹那君は木乃香君の護衛なんだよ」
「そ、そうなんですか!?」

 驚き続けるネギに高畑は頷いて肩を叩く、それじゃあ言ってくるよと言って踵を返した。






「……何か反応は?」
「あれっきりです、それにしても行き成りですね……」

 今の高畑たち麻帆良の魔法先生にとって問題が二つ。
 一つは予想された関西呪術教会へと届ける特使と親書、それの妨害。
 そしてもう一つは親書を届ける特使であるネギ・スプリングフィールドを狙う謎の敵。
 先が厳しそうだと瀬流彦は漏らす、相手が誰だか知っている高畑も溜息を吐きたい気分だが無駄な事。
 溜息を吐く暇があるなら妨害してくる者を探し出して捕らえ、より強大な『完全なる世界(コズモエンテレケイア)』に対して体制を整えるべきだろう。

「瀬流彦先生、おそらく術者も新幹線のどこかに同乗しているでしょう。 見回ってきます」
「分かりました、あんまり心配要らないと思いますけど気を付けて」
「はい」

 そのまま高畑は瀬流彦と分かれ、別の車両へと移動する。
 京都へと修学旅行へ行くクラスは3-Aの他、3-D、3-H、3-J、3-Sの計五組。
 各五組の専用となっている5両を通り過ぎ、他の車両の座席を確認しながら進む。
 疎らに座る一般人、その一人一人視線を向けずに注意を払う。

「……逃げたか、あるいは……」

 1両、2両、3両と怪しい人物を見つけられず、最後尾から2量目に足を踏み入れようとして。

「おっと、すみません」
「いえいえ、大丈夫どす」

 向こうから現れた車内販売員が押すワゴンとぶつかりそうになって謝る。
 高畑は道を譲る為に足を止め、その前を通り過ぎる車内販売員を見た。
 一言聞いたもので京言葉、京都弁で話し、前は眉辺りで切り揃えて膝近くまである後ろで纏められた髪。
 顔は切れ長の瞳、その上には丸い眼鏡を掛けたすらりとした細身の女性。

「………」
「………」

 お互い無言、見られている事に気が付いてか車内販売員の女性が微笑んで高畑が来た方へと進みだす。
 二人はすれ違い、高畑は笑みを返さず。

「ちょっと待った」

 呼び止めた、それに反応してピタリと止まる。

「何か必要で?」

 笑みを浮かべたまま振り返り、車内販売員の女性は高畑を見る。

「………」

 高畑は高畑で、数秒の無言の後。

「タバコはあるかい?」

 軽く笑みを浮かべ、胸のポケットに入れていた、残り2本だけとなったタバコを取り出して見せる。

「……申し訳ありません、タバコは販売していませんので」

 そう言って頭を下げる。

「そうなんだ、呼び止めてすまないね」
「いえいえ、他に必要な物はありませんか?」
「いや、タバコだけが欲しかったんだ」
「そうですか、それでは何か入用でしたら声をお掛けください」

 もう一度頭を下げ、ワゴンを押しながら進んでいった。

「………」

 高畑は浮かべていた笑みを消し、一本タバコを取り出し口にくわえながらその後姿を見つめていた。






 その後、新幹線内でのカエルのような妨害は起こらずに京都に到着した。
 京都駅に到着して新幹線から降り、バスで移動、14時前に清水寺に到着して見学に移る。
 清水寺で大仏を見学後、綾瀬 夕映による説明で音羽の滝に3-Aの生徒が群がったり、その勢いのまま地主神社へと移動して恋占いの石の途中で派手に転んだりした。
 魔法先生たちの警戒もあってかその後も妨害と言える出来事は起きず、宿泊施設であるホテル嵐山に無事到着した。

「ふぅー、あれから妨害は無かったねー」
「兄貴、油断してるとまたあのペーパーゴーレムみたいなのが飛んでくるかもしれないぜ!」
「そうだね、気を付けてなきゃ!」

 今日はもう仕掛けてこないだけで、明日からまた妨害をしてくるかもしれないとネギは気合を入れ直す。
 よし! とネギが立ち上がると、通路の奥から二人の見知った人物が話しながら歩いていた。

「あれ? 葛葉先生」
「おや、ネギ先生」

 ネギが呼んだ葛葉 刀子とその左隣には瀬流彦が付いていた。
 その姿はいつものスーツではなく、二人ともホテルの浴衣を着ていた。

「ああ、ネギ先生。 今日はお疲れ様」
「あ、はい、お疲れ様です。 葛葉先生たちもこっちにきているとは知りませんでした」
「朝一でこちらに移動してきたんです、他にガンドルフィーニ先生や弐集院先生も居ますよ」
「そうなんですか!」

 てっきり麻帆良学園に残ってるかと思っていました、と笑みを浮かべたままネギは二人に言った。

「最初はその心算だったのですが……」

 そんなネギとは対照的に、溜息を吐きそうな様子で刀子は言葉を区切る。

「……? どうかしたんですか?」
「……ええ、あの二人がちょっと……」
「あの二人?」
「あ」

 そこまで言って、刀子は自分の失言に気が付いた。
 ネギは霊夢と魔理沙の事を知っているのかと、それを補足したのは刀子の隣に居た瀬流彦。

「あの二人だよ、ネギ君も知ってるだろ?」
「……ああ! れいむさんとまりささんですか!」
「ネギ先生も知ってたんですね」
「はい! お二人に会って話もしました。 それでれいむさんとまりささんがどうかしたんですか?」

 ネギのその一言で刀子は周囲を確かめ、話し始めた。
 曰く昨晩から京都に移動した博麗 霊夢と霧雨 魔理沙を急ぎ追いかけ、ここで二人を捉えたのはいいが。
 朝食前に今後の予定を詳しく話しておこうと二人が泊まる部屋を尋ねたところ、既に朝食を食べながらも酒を飲んでいたり。
 ホテルから出てはいないが歩き回って時おり居場所が分からなくなるなど、ついさっきまで翻弄され続けてきたと刀子は語る。

「お、お酒ですか……」

 日本に来てまだ余り時間が経っていないネギでも、お酒は大人になってからと言うのは知っている。
 ネギから見ても霊夢と魔理沙は成人していないと分かる少女、だが外見が幼いだけで本当は大人だったのかなと思いなおすが。

「彼女たちは成人していませんよ、それなのに平然と……」
「……話を聞いたらいつも普通に飲んでるそうだよ。 しかしあのお酒、凄い良い香りでしたね」

 ホテルの人はお酒出していないって言ってたしなぁ、どこから持ってきたんだろ? と瀬流彦は首を傾げる。

「それって悪い事ですよね?」
「ええ、ですが彼女たちはちょっと違いますから、絶対に悪いとも言えないのです」
「え? どうしてですか?」
「……彼女たちが住んでいた所は、お酒は大人にならずとも飲んで良いそうで」

 ガンドルフィーニも含めこの事に良い顔は出来なかったが、こちらの法を押し付けて向こうを怒らせるのも拙いと言及できないのもあった。
 霊夢たち側も麻帆良側に迷惑をかける心算は無い為、へべれけになるまで飲まないと言い含んである。
 かるーく頬が染まる程度、コップ一杯二杯と言う程度だった。

「そうなんですか……」

 それでも未成年がお酒と理解して飲む、と言うのは少し受け入れがたいと刀子。
 
「本当は飲んで欲しくないんだけどね、なんだかお酒の事を語りだしたりしてなんだか『飲む事は悪い事じゃない、本当に悪いのは飲んで酔わない事だ』とか」

 いつの間にか酒を飲む飲まないじゃなく、酔う酔わないの話に摩り替わっていた事に後で気が付いた。
 その話している間にも、お酒を勧められたりして困ったもんだと瀬流彦。

「仕事が終わった後なら飲んでみたいけどね、とりあえず断って飲み過ぎないようには言ったんだけど」
「まったく、頭が痛くなります」

 刀子は右手でこめかみを揉んでいた。

「話を聞いてくれないんですか?」
「いや、聞いてるんだけどね……」

 うーんと瀬流彦が唸り、ネギもうーんと唸る。
 そうしてネギはポンっと握った右手で左手のひらを叩く。

「じゃあ僕も話してみます!」
「あーネギ君、止めておいたほうが……」
「皆で説得すれば止めてくれるかもしれませんし!」

 それはそうかもしれないけど、と瀬流彦。

「それじゃあ話し──」

 てきます! とネギが走り出そうとすれば。

「ネギ先生! お風呂はまだのようですね、教員は早めに済ませてくださいな」
「あ、はい! お話が終わったらすぐに入ります!」
「あ、ネギ先生!」

 刀子と瀬流彦と同じように、丁度風呂上りで浴衣を着た源 しずながネギに声を掛けた。
 それにネギは頷き、刀子が止めようと声を掛けるが構わず廊下を走り出して。

「……れいむさんたちの部屋ってどこだろう?」
「さっきの二人が知ってるんじゃないっすかね」

 大事な事として思い出し、カモが刀子と瀬流彦が部屋の場所を知ってると話し、ネギはピタっと階段の手前で足を止める。
 葛葉先生たちに聞いてこよう! そうして踵を返して走り出そうとすれば。

「お、葱坊主じゃないか」

 と、階段の上から呼ぶ声。
 ネギが見上げれば浴衣を着て脇にタオルを抱える霊夢と、同じく浴衣の肩にタオルを掛けた魔理沙が階段を下りてきた。
 酒のせいか二人とも僅かに頬が紅色に染まっていた。

「夕暮れにこっち来るって聞いてたが、随分と遅かったな」

 笑みを浮かべた魔理沙が言い、下まで降りてきた二人をネギが見ながら。

「れいむさん、まりささん。 さっき聞いたんですけどお酒飲んでるって本当ですか?」
「飲んでるぜ、まさか葱坊主も同じこと言う心算か?」
「お二人ともお酒を飲むにはまだ早いと思います!」
「もう何年も前から飲んでるのに今更ね」

 ネギの言葉に興味無さそうに霊夢は歩き出し。

「ネギ、お前まだ風呂は入ってないだろ?」
「え? 入っていませんけど……」
「じゃあ入るか!」
「え゛!?」

 ネギより少し背が高い魔理沙の腕がネギの首に掛かり、何とか抵抗しようとするネギだが容赦なくずるずると引き摺られていく。

「あわ、わわわわ!」
「おいおい、私たちと話したいんだろ? だったら風呂の中で話せばいいじゃないか」

 ずるずるずるずる、腕をバタバタさせてネギは変わらず引き摺られる。
 だ、誰か助けてくれる人は!? そう考えて。

「た、助けてアスナさーん!」
「ネギ!? ちょっとそこの! どこのクラスか知らないけどネギを離しなさいよ!」

 霊夢と魔理沙と同じように、お風呂に入ろうとタオルを持って丁度出くわした明日菜と木乃香。

「霊夢の受け売りだがな、酒ってのは色々と神聖なものだったりするんだぜ?」

 魔理沙はその二人に気が付いていないかのようにネギを引き摺りながら話を続ける。
 その様子にカッチーンと頭に来た明日菜はズンズンと大股でネギを引き摺る魔理沙に近寄り。

「人の話聞いてんの!?」

 魔理沙の肩を掴もうとして。

「ッ!?」

 あっさりと避けられた。

(姉さんの手を簡単によけるなんざ、やっぱりこの二人はただもんじゃねぇ……!)

 魔理沙の腕を避け、ネギの頭に移動したカモは魔理沙を見て考える。
 明日菜の運動神経は抜群で、繰り出された腕もそれに反映されて相応に速い。
 しかし魔理沙はあまりにもあっさりと避けた。

(敵じゃねぇとすると、姉さんもわるかないが……。 あれだけつえぇんだ、兄貴のパートナーになったら怖いもんなしだぜ……)

 ニヤァとカモは邪悪な笑みを浮かべ、いかにネギとパクティオーさせるか悪知恵を働かせ始める。

「あん? お前さんはあの時橋に居た……だれだっけ?」

 そんなグッフッフと笑うカモをよそに、腕をすかされてバランスを崩した明日菜を魔理沙が見る。

「まぁいいや、見るにそっちも風呂入りに来たんだろ?」
「え゛?」

 魔理沙は明日菜の腕を掴み、ネギと一緒に引き摺っていく。

「え、ちょちょ!?」
「うわわ!」
「あー誰か知らへんけど待ってーなー!」

 明日菜より小柄な魔理沙に容赦なく引っ張られ、霊夢と魔理沙、ネギに明日菜と木乃香は露天風呂の暖簾を潜った、




















 afterwordは後書き


 香霖堂も買ったし、挿絵の霊夢と魔理沙が可愛いね。
 大戦争は買ってません! 動画はちょっと見ましたが、魔理沙はともかく他の妖精はチルノと同じ大きさでも良かったんじゃないかなーと。
 チルノが三月精よりもちっちゃくみえて残念、立ち絵あるんだしドットもペドい絵にしなくても、と。


 東方側で紅魔館が便利と言いましたが、ネギま側だと高畑が便利だ。
 あとガンドルや刀子、瀬流彦辺りが使いやすい。
 余り多用しすぎると詰まりそうだから、他のキャラも間違いなく出しますが。

 とりあえずようやくメインキャラが絡み合う! 勿論百合百合な絡み合いじゃないよ。
 お陰で幻想郷側のキャラの出番ほぼなし、紫と藍と咲夜にお初のお燐、名前だけのさとりと弾幕でボコられた鬼二匹と鳥頭と暇人だけでした。
 入ったばかりですけど次回で修学旅行は終わるかと、それに色々共通点があるキャラを掛け合いさせます。
 長くなっても間違いなく二話以内で修学旅行編は終わります。


 陰陽玉の設定その2、霊夢魔理沙の背後に浮かぶ陰陽玉と幻想郷の妖怪たちが持ってる陰陽玉は大きさが違うだけで同じもの。
 つまり霊夢たちも外の世界から幻想郷内部へと写し身で来ます、勿論出来るのは霊夢魔理沙だけ。


前を表示する / 次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.071036815643311