「ひぎぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!」
ああ、どうも。
絶賛絶叫&大回転中の田中真二改め糸井優姫(10)です。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
未来から刺客がやってくるってのは良く聞きますが、まさか前世からこんな刺客がこようとは…。
「ふぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
ちなみにお姉さんの正体は前回分かったので、今は夢世界で絶叫しつつ思い出し作業に入ってます。
<<マスター…なんてかわいらしい…>>
なんかお姉さんが呟いてるけどキコエナーイ。
うん、ちなみに今はあれから月日は流れ4月28日、冒頭のとおり10歳になりました。
要するに1年半かけても思い出せてない。
ダメすぎる。
それと夢世界を自由に出入りできる感じになりました。
もうお姉さんと会うのも100回近い。
しっかしここはいいね。
まだ現実で思い出し作業してた頃は「ぬぅあぅ!」とか「ふぅあっふ!」とか変な叫び声が部屋から漏れないか心配だったけど、
ここは夢の中なのでどれだけ転げまわろうがどれだけ叫ぼうがOKなのです。
え?何で叫んだり転がったりするか分からない?
ああ、そういう人もいるのか。羨ましい。死んでください。羨ましい。
わかんないかなぁ…ほら、今考えると恥ずかしい昔の事とかやっちゃったZe☆な事を突然思い出すと変な声が出る感じ。アレだよ。殺せよ。
それを意識的に引き起こそうとしてるからこんなことになってるわけで。
いや、こういうことを考えてる時点で精神的にも悲鳴を上げてるというか逃避したがってるのを理解して欲しい。
<<そろそろお時間ですマスター>>
「んうー…」
その言葉と共に転がるのをやめた俺は、フラフラとお姉さんの方に歩きだす。
そして膝の上にライドオン。
ストン
むにゅ
後頭部がちょうやーらかい。
そしてお姉さんの腕が俺を抱きしめる。
まさに夢のような状態が今ここに!
これは悪魔の兵器ですよ音速丸さん!抜け出せません!
うおおおおおお!!!燃え上がれ俺の小宇宙!!!!!
<<お疲れ様ですマスター>>
「んーでもまだ思い出せないよ…」
<<気にしないで下さい>>
「うう、すまないねぇ」
<<それは言わない約束ですよマスター>>
うん、1年半の間で大分砕けてきたなお姉さん。
今では表情も変わるし冗談にも乗ってくれる。
無表情キャラに表情がついてくる様を間近で見ることが出来た事だけでも生まれ変わった価値があった気がする。
無表情は無表情でいいものがあるのだが。
<<こうして毎晩会えるようになっただけでも嬉しいことです>>
うう、癒される。後頭部を中心に。
疲労していた心がギュンギュン回復していくよ。
シン・ベルワン・バオウ・ザケルガが撃てそうな程に。
そして次第に眠くなってくる。
夢の中で寝るってどうよと思うが最近の終り方は大体こんな感じだ。
<<それではまた夜に>>
ああ、それじゃまた夜に───
dream -2. 『Calling of Strength』
またもや時間はとんで夕方過ぎ。
俺はミッション(お使い)の帰還途中である。
卵と豆腐ということは今日はすき焼きかもしれない。自然と足が速くなる。
そしてそこの角を華麗に─── って
ドムッ
ズシャァ
ガシャ
ブゥーン
グシャ
うん、見事な一連の流れ。
曲がり角でぶつかって。
俺が後ろに倒れて。
ビニール袋が落ちて。
車が来て。
全部グチャグチャになった。
「うわぁ…」
落ちる程度ならどうにかなったものを車に轢かれるとかマジですか。
車に轢かれるのは前世の従兄弟、ヒロキ君(11)のPSPだけで十分だ。
いやーあの時の彼の慌てっぷりは動画サイトに投稿できるレベルだった。
最終的に『泣く』ではなく『慟哭』と言っていいレベルだったもん。
もう恋人と死に別れたような泣きっぷりだったね。
「ピーコォォォォォォォォォォォ!!!」ってPSPの名前なんだろうけどオカマとしか思えなかった。腹痛い。
お年玉で買ったPSPが大事だったのは分かるがそれならそんな大事な物を駐車場の地べたに置いとくなと言いたい。もう言えないが。
「あー…怪我ァないか?大丈夫か?堪忍な嬢ちゃん。弁償するから許したってぇな」
ん?ああ、ぶつかった人か。どっちかっていうと俺の運が悪かっただけでこの人は悪くないんだけどな。これも美少女効果か?
「いえ、悪いのは急いでた私ですから…」
ってありり?この人どっかで見たことあるよ?
このやや横に裂けたような口に、ベレー帽被ったらいかにもなエセおフランス人になりそうな金髪オカッパはどっかで見たことあるよ!?
…………………………平子真子じゃね?
ヴァイザァァァァァァァァァァァァァァァァァド!!!!
いるのかなーとは思ってたけどやっぱこの時点で既に空座町に根城構えてるのか!?あの倉庫にいるのか!?
「いやいや、ここで引いては男が廃るっちゅうもんや。ほなサクサクいこか」
と、俺の手を引っ張ってどんどん進んでいく平子さん。
原作通り強引な人ですネ!!
ガーーーーーッ
買い物も終ってスーパーから出ると平子さんがまた話しかけてきた。
というか道中からスーパーの中までまーよく喋る人だ。
「いやーホンマ悪かったな嬢ちゃん。しゃーけど嬢ちゃんも気をつけなアカンで?オレやったから良かったものの」
「あぅ…スイマセン」
「そないな顔しィなや。まぁ怪我ァなくて良かったわ。お使い、卵と豆腐でよかったか?」
「ハイ、わざわざありがとうございました」
「気にせんでええ、お礼なら嬢ちゃんが大人になったらチューでもしてくれや」
「ええっ!?ちゅ、チューですか!?」
「ハハ、冗談や。ほならオレはこの後用事あるさかい。またなー嬢ちゃん」
「ええ、『またお会いしましょう』、おにーさん」
こうして突然の死神(今は仮面の軍勢<ヴァイザード>だが)との遭遇は終った。
でもさ、いきなりな上に元護廷十三隊隊長で現仮面の軍勢は大物過ぎやしませんか?
原作であの人が出てくるの尸魂界編の後じゃん。フライングにも程がある。
このまま原作通り行けば7年後くらいにマジで『また』会うことになるんだよなぁ…。しかも見た目年取らずにあのままの姿で。
リアクションどうしよう…。
っていうかめちゃくちゃビビッた。もうくちゃくちゃビビッた。くちゃくちゃだ。
こんなにビビッたのは前世の友人である成宮君(当時17)がお化け屋敷で絶叫&腰抜かしたのを見たとき以来だ。
というか何で俺男同士でお化け屋敷行かなきゃいけなかったんだろう。
思い出さなけりゃよかった。なんか泣きそう。
───────── 平子真子
なんやエライ可愛い嬢ちゃんやったな。
ありゃ間違いなく将来ドエロイ…やなくてドエライべっぴんさんになるで。
でもそれ以上に気になったのは、嬢ちゃんがオレを見た時ほんのわずかに感じた霊圧や。
あれは人のモンやない。
かといって死神のモンでもなければ虚のモンでもなかった。
気になってしばらく観察してみたけど、アレからは全く霊圧の漏れは感じひんかった。
オレの勘違いやったかと思える程に。
それに
ジャーラーラジャッチャー♪
ピッ
「はーい平子ですけどー?」
「おいコラ!!ハゲェ!!!何弁当買うのにチンタラしとんじゃあ!!!!!」
「ぎゃーぎゃーやかましいのォ…、可愛い嬢ちゃんとちょっとお話しとっただけやボケ」
「ボケ言うなハゲェ!つーか弁当買わずにナンパかハゲェ!!!」
「何度もハゲハゲ言うなやボケ、お前のだけのり弁にするど」
「うっさい!!こっちは腹へっとるんじゃ!!さっさと買ってこい!!!」
ピッ
あー…何やったかな…。何考えとったか忘れてもうたわアホひよ里が。
あー、せやせや。
嬢ちゃんが最後に言った
『ええ、またお会いしましょう、おにーさん』
は何や含みを感じるモンがあったな。
思わず笑いが漏れる。
「ックック…ホンマ、将来が楽しみな嬢ちゃんやで。『また』、な、嬢ちゃん」
さて、平子さんと別れて今度は前方に気をつけつつ家路を急いでいると、今度は黒崎母子に会った。
「おう、優姫」
「あら、優姫ちゃんこんばんわ。もしかしてお使い?偉いわねぇ」
「こんばんわ、今夜はすき焼きみたいなので卵と豆腐のお使いを」
「すき焼きかぁ、いいなぁ」
「あら、じゃあ今日はウチもすき焼きにしようかしら」
「ホントか!母ちゃん!」
相変わらず仲がいいな。
出来ればこの光景を守りたい。
前世で両親と死に別れたせいだろうか、2人を見てるとその思いが強まるのを感じる。代償行為と言えるかもしれんが。
「それじゃ私、こっちですから」
「それじゃあね、優姫ちゃん」
「また明日な、優姫」
「また明日、一護クン」
夕食は思った通りすき焼きだった。
だが思ってたより食は進まない。
先ほどの光景を思い出すと胸が締め付けられるようだ。
「ごめん、ちょっと気分が悪いから先に寝るね」
「あら大丈夫?優姫」
「優姫ちゃん風邪でもひいたかい?」
「大丈夫、寝れば治るよ」
「そう?薬とかいらない?」
「大丈夫大丈夫、それじゃおやすみなさい」
正直今の両親には感謝してもしきれない。
日々の生活の端々から感じる程に俺を愛してくれてるし、俺のとっぴな行動にも触れないでいてくれる。
以前までは俺が本物の糸井優姫でないことに罪悪感はあったが、お姉さんの <<初めから糸井優姫の魂は存在していません>> 発言で吹っ切れた。
ならば俺は糸井優姫でいいのだろう、ならば俺はあの人たちの愛情に恥じない生き方をしよう。
そう、あの日誓った。
そうだ、なのに今まで俺は何をしてたんだろう。
部屋に着く。
ベッドに潜る。
「今日こそ呼んでやる」
その思いと共に。
<<こんばんわ、マスター>>
「こんばんわ、お姉さん。そして今日こそお姉さんの名前を呼んでみせる!!」
いきなり俺がそう言うと、お姉さんは少し驚いたような表情をして次の瞬間わずかに微笑む。
<<分かりました、マスター>>
「ん!」
今日は立ったまま集中する。
思い出せ。
思い出せ。
俺は一体どんな名前をつけた。
「んんんんんんんんんんんん!!!!!」
そうだ、お姉さんは間違いなくアレだ。
アレなのだ。
「んんんんんんんんんんんん!!!!!」
ぼんやりと黒いものが見えて来る。
それと同時に今までに無いほど心が悲鳴を上げる。
このまま気を失ってしまいたいくらいだ。
「んんんんんんんんんんんんんんんんんんんんん!!!!!」
それでも集中を解かない。
今日呼んでみせると決めた。
そうだ、ノートだ、これは黒いノートだ。
そしてこれをめくる、めくる、めくる、めくる。
その度に痛みが押し寄せてくる。
「んがああああああああああああっつ!!!!!!くぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!!」
頭が真っ白になりそうだ。
それでもめくる。
思い出すのがつらい。
それでもめくる。
なみだがでてくる。
それでもめくる。
めくるめくるめくるめくるめくるめくる
めくるめくるめくるめくるめくるめくる
めくるめくるめくるめくるめくるめくる
めくるめくるめくるめくるめくるめくる
めくるめくるめくるめくるめくるめくる
めくるめくるめくるめくるめくるめくる
めくるめくるめくるめくるめくるめくる
めくるめくるめくるめくるめくるめくる
めくるめくるめくるめくるめくるめくる
めくるめくるめくるめくるめくるめくる
めくるめくるめくるめくるめくるめくる
めくるめくるめくるめくるめくるめくる
めくるめくるめくるめくるめくるめくる
めくるめくるめくるめくるめくるめくる
めくるめくるめくるめくるめくるめくる
めくるめくるめくるめくるめくるめくる
気が狂いそうだ。尋常じゃない痛みが絶え間なく俺を襲う。
それでも名前が思い出せない。
名前が出てこない。
それでも。
それでも俺は────────────
「男の子にはよぉ!意地があるんだよ!!!」
それでも俺は思い出す!
「万難悉く打ち砕け!!!」
「祈星<スピカ>!!!!!!!」
そして世界は光に満ちた。