「まっ…待て一護…!何をそんなに慌てておるのだ…!」
『どうも嫌な予感がしてな!心配なんだよ!あいつが上手くやってるか!』
いや、間違いなく何かしらの問題は起きてるだろうな…。
何だよあのいかにもな好青年じみた俺は!絶対ェあやしいだろうが!
頼むから誰も構ってくれるなよ!一発で変と思われるだろうからな!
あーこんなに教室にいきてぇと思ったのは初めてだぜ!
ガシャン!ガシャン!ガシャン!ガシャン!ガシャン!ガシャン!
キャァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!
「ッ!?」
『チッ!』
「やるな一護!大正解のようだぞ!」
『嬉しくねぇよ!チクショウ!』
ルキアがクラスへ向かう、ここは挟み撃ちの形がいいな。
「そこまでだ!」
一気にクラスの窓まで跳び上がる。
そしてそこで俺の見たものは!
「ギブ!ギブギブギブギブ!折れる!折れます!骨も心も折れますってば!!!」
「折れた骨はまた繋げればいい」
「アンタって人はぁー!!!って心は!?心はフォローなし!?」
「ヒュー!流石師匠!そのバカに更なる裁きを!!」
「いいよ優姫!もっとやってやりな!」
「優姫ちゃん強ーい!!」
「織姫ちゃんの手にキスをしようとするなんて七つの大罪を八つに増やす気なの?ほーねーがぴょんと鳴ーるっと」
メキメキメキメキッ
「ちょっ!それぴょんどころじゃギャァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!」
優姫に関節技を決められ悲鳴を上げる俺と盛り上がるクラスメイト、
そして勢いよく入ったはいいが、予想外の事態に呆然としてるルキアの姿だった…。
dream 10. 『Angry Queen's Manner Lesson』
───────── ちょっと前、優姫
「はぁいそこまでー♪」
あっぶなー…コイツ織姫ちゃんの手にキスしようとしたなコノヤロウ。
まぁちょうどいい…さっきのことも含めて今この場で教えてやろう。
誰が頂点たる存在であるかをな!
手を掴んだ次の瞬間、対象を絞り限定的に霊圧を飛ばす!これなら大丈夫だろう。
「!?」
フッ…怯えて声も出ぬか。
まぁそれも仕方なかろう、ここまで高濃度で敵意を含んだ霊圧を浴びるなんて初めてであろうからな。
だがまだ始まったばかりだぞ!?魂の奥に刻み付けてくれる!絶対的な力の恐怖というものをなぁ!
ガシャン!ガシャン!ガシャン!ガシャン!ガシャン!ガシャン!
キャァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!
あ!やっばーい!余波でガラスが砕け散っちゃった。
隣の織姫ちゃんは口をぽかーんとあけてビックリしてるし。俺もビックリしてるし。
あ、この野郎気絶しやがった。ま、アレをモロに浴びたんだからそうなるか。
だが俺は容赦しない。
まだまだ俺のターン!速攻、関節技に持ち込む!
一護クンの体なのが申し訳ないけど腕が千切れても戻せるから大丈夫!いや、そんなスプラッタはゴメンだけどね。
そして冒頭。
「ゆ、優姫?」
「あ、ルキアちゃんお疲れ様ー。そっちはどうだった?」
「あ、いや、無事済んだがコレは一体どういう?」
「っと、もういいか。あーコレはお痛しちゃったから教育的指導ってやつかな?」
「ん…そうか…。ッ!?一護!そっちに逃げたぞ!」
「うおおおおおお!!!!こんなトコで死にたくねぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」
『おう!オラッ!もう逃げ場は無ぇ…ぞ!?』
一護クンもまさかこの高さで窓から飛び出すとは思うまい。
奴は足を強化した改造魂魄だからな。
この程度の高さから飛び降りることなんか何の問題にもならないよねー。
『待てコラァ!誰の体だと思って…!?』
着地成功、か。まぁ人造死神が護廷十三隊の副隊長になれるこの世の中だしな。
金と時間を掛ければ相当強靭なのが造り出せるのだろう。浦原商店のウルルだって確か…。
『一体どうなってんだあいつ……』
「間違いない…奴は──── 改造魂魄だ…!」
改造魂魄──────────────────
────────────────── それはつまり。
あ、今のに意味は無いのよ?
なんかこうしただけでアレっぽくなるかなーと思いまして。
フフフ…文体が線だらけになっていた、モロにアレの影響を受けてたあの時代…忘れたいなぁ…。
<<少年、斗神 紡はその左目に神殺しの魔眼を持ち───── >>
やめてぇ!?悪気無く俺の傷口に煮えたぎった塩水をかけるようなマネはやめてスピカさん!!!
うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!迂闊に思い出すとロクなことがねぇ!かずいぃぃぃぃぃぃ!助けてかずいぃぃぃぃぃ!!!!
名前に神が入ってる辺り今の俺にこうかはばつぐんだ!ネタじゃなくマジでやれてたあの頃が恨めしい!斗神の斗は闘の意味もあったりなんかしてうぎゃぁぁぁぁ!!!!
「優姫ちゃん?顔色悪いけど大丈夫?」
「あ、ああ…大丈夫…ちょっと昔を……ね……」
「うん…」
ああん、心配そうにしょんぼりしてるこの織姫ちゃんのわんこっぷりといったらもう。
垂れた耳としっぽが見えるね俺の腐れアイには。ホント死ねばいいのに。
「あれ?ところでルキアちゃん達は?」
「あの人を追いかけて2人とも行っちゃった」
「あの人と2人って1人多くない織姫?っていうかあの人って?」
「えっ!?あ、そうだった!うっかりしちゃった。アハハ」
「まったくあんたは…まぁあんな事があれば仕方ないか」
ふむ、やっぱり織姫ちゃんは修行の効果が出てるみたいね。
一護クンの体とルキアちゃんだけでなく、死神体の一護クンもバッチリ見えてるみたいだし中身が違うことも分かってるようだ。
逆に他のみんなは死神体が見えてない…と。
まぁ間違いなく見える石田くんはどっかでお昼食べてるみたいだし、チャドくんは学食みたいだからまだその辺は分からないなぁ。
<<ところで単に霊圧発するだけであんなガラス割れるような物理的効果って出たっけ?>>
<<まぁ『霊圧のようなもの』ですし>>
<<だよねー。凝縮すれば地面切れるしまぁそんなものなのかな?>>
こんど竹やぶで剣心ごっこしてみよう、なんて思いつつ念話もどきしてたら廊下がザワザワしてきた。
さっきの騒ぎを聞きつけて先生が来たな。
面倒だけど変質者が云々言ってこの場を誤魔化せればいいか。
どうせ後で記憶置換すれば良いだろうしいざとなったら俺にも手はあるしね。
そっから先生が来てさっさと誤魔化して帰ってもらった。
優等生ズの証言力は強いのだ。
と思ったら。
「ハイハーイ♪ここは黒崎サンのクラスでよろしいですかー?」
ゲタ帽子スタイルの浦原喜助登場!何で!?
「ちょっと部外者の立ち入りは!」
ボムッ!
「きゅう」
ああ!!
なーるほーどねー!欠陥品売ったから後始末とか回収とかその辺をしに来たって話なのね!
即織姫ちゃんとアイコンタクト!織姫ちゃんから「『きゅう』だね!」と答えが返ってきた!気がする!
あれ?つーことは何?俺も『きゅう』しないといけないって事?
うわぁ、恥ずかしい。何その羞恥プレイ。
恐らくアレは一般人用だから当時霊力の芽生え状態だった織姫ちゃんには若干効いたけど、今の織姫ちゃんや俺には全く効果なし。
もう物理無効化の敵に直接打撃するくらい無駄。1ターン無駄に使ってしまい死ぬほど後悔。ああ少し脱線した。
ようはですねーじぶんで『きゅう』っていって、きぜつのふりをするひつようがあるんですねー。
はーずーかーしーいー。『きゅう』はねぇよマユリ様。畜生、絶対石田くんにボコボコにさせてやる。モテモテ王国のファーザーみたいな耳しやがってクソッ。
とか思ってたらコッチにも来やがった。
ボムッ!
「きゅう」
わー織姫ちゃん上手い。
ボムッ!
「きゅう」
わーたつきちゃんマジ一般人。
ボムッ!
「きゅう」
わー俺超恥ずかしい。死にたい。
「っと、これで全員っスね。さて、次はアッチの回収に行きますか」
ヒュッ
よし、浦原の他3人が離れていったのを感じる。それじゃそろそろ起きますか。
と思って目を開けたら織姫ちゃんすっごくニコニコしてるの。もうニヘラニヘラって感じ。何がそんなに嬉しいのかね?
ってさっきのか!さっきのなのか!?もうバッチリ『きゅう』聞かれちゃったのかー!!
「ま、まぁとにかくバレずにすんだね」
「うん、そうだね♪」
ああんもぅ!嬉しそうだね織姫ちゃん!俺は凄く恥ずかしいです!
<<デリカシーがありませんね>>
貴女もね!!っていうか話の流れ的にまた録画してたな!?
俺の味方はいないのかドチクショウ!
───────── 一護
「あっ!朽木サン!ダメっスよそれ取っちゃ!」
「何だ浦原?貴様は客に売った商品を金を払わずに奪い取るのか?」
「そ、それじゃ仕方ない…代金のほうはお返ししますんで…」
「必要ない、こちらはこの商品で満足している」
あー…何だ?とりあえず今までをまとめると。
改造魂魄を追う→ホロウがレーダーに引っかかる→とりあえずホロウ優先で退治に向かう
→そこにはホロウと戦う俺(改造魂魄)の姿が→2人でホロウを倒す→このゲタ帽子が来て俺の体から改造魂魄を抜く
→それを回収して帰ろうとしたゲタ帽子からルキアが取り返した
って所か…。ルキアが出張ってきたのは意外だったな、改造魂魄は破棄するのが掟だーとか言ってたクセに。
まぁ俺としても生まれた時点で殺される日が決まってた、なんて話をされたりしたからありがたかったけどよ。
勝手に生み出して勝手に殺すだなんてのはいい気がしねぇからな……。
にしてもあんな雑魚ホロウにやられそうになるようじゃ、どっちにしろ改造魂魄の計画とやらはダメだったんじゃねぇのか?言わねぇけど。
「……知りませんよ?面倒なことになったらアタシら姿くらましますからね」
「好きにしろ。最近は面倒にも慣れた。ほれ、お前が持っておけ、帰るぞ」
『お、おう……ありがとな、コイツ捨てないでくれて…』
「フン、礼ならもう聞いた。」
『あ?』
何のことかはよく分かんねぇけど、とにかくこれはめでたしめでたしってトコか。
あーでも俺の制服、肩の所とか破れちまってんな……またおふくろに怒られそうだ……。
とりあえず学校に戻って優姫に肩の怪我治してもらうとするか……。
「はいこれでOK」
「おう、悪ィな」
「ほう…やはり凄いな、今すぐにでも四番隊に入れるのではないか?」
「ハハハ、まぁどっちにしろまだ六、七十年位は先の話だけどね。まだ死ぬ気は無いよ」
「フッ、それもそうだな」
「おっ、流石。肩回しても違和感ねぇな」
「あ、ところでその改造魂魄とやらはすぐ捕まえたの?」
「いや、しばらく見失ってな」
「途中でホロウも出たしな」
「フム、それじゃある程度覚悟しといた方が良いかもね」
「あ?」
「む?」
“今日午後一時ごろ、空座町で空を跳ぶ少年が─── ”
「一兄、アタシは信じてるからね」
「私たちの学校の近くでもお兄ちゃんに良く似た人がぴょんぴょん跳ねてたけど…ち、違うよねお兄ちゃん?」
「あら?これ一護なの?ダメよ?授業サボっちゃ」
「ハハハ!父さんの息子としてはまだまだだな一護ォ!!父さんが若い頃といったらそりゃあもう!!!」
夏梨、その言葉と裏腹に諦めたような視線を止めろ、肩に手を置くな。
遊子、スマンそれ俺だ。中身は俺じゃねぇけど。
おふくろ、そういう問題じゃねぇ。
親父、死ね。
「なんか知らんが父さん涙出そう……」
知るか。
一護が明日からのことを悩み、改造魂魄を手で転がしながら困り果て、
ルキアが今後の改造魂魄の取り扱いをどうするか思いにふける、そんな騒動が終わった後ののんびりとした夜。
一つの事件が無事解決と終わった、次の戦いまでの間の穏やかな休息。
その空座町の夜空があたかも牙を剥くかの如くその巨大な顎を開いた。
異界から現れたのは、全身を陶器のような色彩の外殻で覆われ蟹にも似た巨躯の異形。
その大きさはゆうに二階建ての家屋を超え、その霊圧は抑えられているにも関わらず一護の遭遇した虚のどれをも凌いでいた。
そう、正にこの段階では破格の化物が空座町に姿を現したのだ。
『フゥゥゥゥゥゥ……久々に来たがやっぱり虚圏<ウェコムンド>と比べると現世は霊子が薄くてかなわねぇな…』
夜だというのに灯りの絶えない町並み、星よりも眩く輝く遠くの夜景、闇を恐れることなく出歩く多くの人間。
世界の全てが異形の記憶とは様変わりしていた。
異形は久方ぶりの現世の変わりようを見て物珍しそうに世界を眺める。
だがそれも長くは続かない。
異形は求めていた。
獣としての本能が。
虚としての性質が。
無くした筈の心の渇きが。
『さぁて、何処だ…俺の獲物は。俺を更に強くしてくれる愛しい獲物は』
異形は知覚する。
四方数kmに渡り存在する獲物の霊圧を。
己を更なる高みへと導く獲物の気配を。
『この霊圧は……死神か…こいつも久々だな、そこそこの大きさはあるようだしまぁ前菜にはちょうど良いか』
異形は求める。
最上大虚<ヴァストローデ>に至る道を。
望むままに生きることの出来る力を。
『そうだ、手当たり次第ここの人間を殺し尽くしてみるか。そうすりゃ死神も来るだろうし、ついでにちょうど良い宣伝になるかもしれねぇ』
だがそれが叶う事は無い。
光と影が対になる様に、コインに表と裏がある様に。
世界には悪に対するモノもまた存在しているからだ。
『残念ながら殺し尽くされるのはお前の方だ、中級大虚<アジューカス>』
かくして物語は、本来辿るべき筋道には存在しえない未知なる闘劇の開幕を告げた。
『あとがきゴールデン』
と言うわけでコン編終了。3話にまたがった話になりました。
ぶっちゃけますとあれ?この後どうなるの!?って引きと、間接キッスに照れる一護と、優姫に恐怖を叩き込まれるコンを書きたかっただけです。
なのでインコ同様、このSS的にはあんまり必要ないなぁと思った部分はカットしました。
「アンタって人はぁー!!!」と思ったあなたは良いツッコミありがとうございます。
元ネタはまた花を植えれば良いとか言ってましたが内容的には元ネタの方が外道臭い事言ってる気がするのは気のせいでしょうか。
「型月───────── だと……?」と思ったあなたは作者の事は放って置いて下さい。
作者は既に心が十七分割されそうです。実際にプレイした事は無いのに設定だけは……というのがさらに拍車をかけます。
「俺のフィギュアに義魂丸を……ッ!」と思ったあなたは相当な変態の可能性があります。
ちなみに作者は相当な変態です。プライズの20cmくらいある承太郎とDIOのフィギュアは未だ動く気配はありません。
次回、舞い散る花の名は『千本桜』。