「はー…お茶とケーキが美味い…」
<<お気に召していただけたようで何よりです>>
さて、いきなりだが久しぶりに夢世界からこんばんわ、
あなたの夜のネオン街、田中真二改め糸井優姫(16)です。
特に意味は無い。
場所は白亜の館、テラス部分。
庭には綺麗に手入れされた様々な花が色とりどりに咲き乱れ、実に美しい風景となっている。
最初の頃と比べてどんどんグレードアップされていくね。素晴らしい進歩だ、文化の光が見える。
そしてテーブルの上には紅茶とケーキ、対面にはスピカ、何と言うリラックス空間でしょう、匠の技が光ります。
たまに夢なのが疑わしくなるほどだが、よく考えたらここは昔から何でもアリっぽいのでよしとする。
「そしてようやく最後のピースが完成っと…」
<<最後のは短くて助かりましたね>>
俺の手に光るのはたった今モノクロームからカラーに変化した一枚のカード、そしてそれをスピカに渡す。
これでようやく愛染攻略の準備が整った。
そう、今更な話だが、俺の目的は愛染をブチ殺す、もしくは崩玉の奪取だ。
とりあえずアイツさえいなければ俺の人生はバラ色ライダーズだ。イエス!ハンサム!
にしても約6年間の準備期間を考えると結構ギリギリだったかもしれない。
最初にはしゃいで遊びすぎたなぁ…危ない危ない。
「つーぎーはー…んー必要最低限な分はもうこれで集まったし、次はアレいってみよっと」
<<アレ…ですか?>>
「まぁ久しぶりのちょっとした息抜きと言うかお遊び?」
一度やってみたかった、というかスピカの能力的にも何となく『アレ』は欲しい。
別に戦闘に使えるわけじゃないんだけどね~と言うわけで『アレ』れっつらごー。
俺の手に再びモノクロのカードが生まれる。アレ?意外と時間かかるなこれ。
そんなやり取りをしながらケーキに舌鼓を打っているとスピカが訊ねてきた。
<<そういえば井上織姫の身請けですがよろしかったのですか?>>
「身請けって…まぁ残るは能力覚醒だけだし…と言っても嫌~なイベント戦だけど、
なんだったらもうウチにこのまま住んでもらっても問題ないくらいでしょ」
<<なるほど、確かに井上兄の魂葬も終わりましたし、特に問題はありませんね>>
「でも問題はイベント戦だよねぇ…たつきちゃんも結構ケガしてた気がするし、
学校の皆を巻き込むのもなぁ…それに織姫ちゃんを追い詰めるのも余りやりたくはないし…」
<<それならば私に考えがあります>>
「どんな?」
<<このような>>
そう言ってパチンとスピカが指を鳴らすと同時に突然扉が現れ、
驚く俺を無視するかのごとく扉は音も無くすべるように開き、そして中から人が現れた。
「えーと…こんばんわ?優姫ちゃん」
あ、あるェー!?
dream 6. 『Hello My Master』
「いやいやスピカさん!?これどういうことですか!?」
<<落ち着いて下さいマスター>>
「もしかして…きちゃダメだった?」
「え!?あ!ゴメン織姫ちゃん、ちょっと待って!」
驚きつつも俺はスピカの腕を取って庭の方に連れ出した。
えー!ナニコレ!何で織姫ちゃんいるの!?
井上の一族が我が夢の世界に入門してくるだとォ!?
思わずDIO様になる程に焦りながら小声で問いただす。
「スピカ、説明!」
<<彼女も寝ていたようですので、ちょうど良いと思い連れてきました>>
「そんな事出来たのか…で、目的は?」
<<能力覚醒を私の方でお手伝いしようかと>>
「出来るの!?」
<<はい、今までに貯まったオリ主ポイントを使えば余裕です>>
「どうしましょうスピカ…私たまにスピカの言うことが良く分からないわ」
<<ああ…マスターが衝撃の余り素で女性の口調に…REC、REC>>
「ちょっと待ちなさい、いや、録画もなんだけど、何?今の人生に大きく関わりそうな単語は」
<<ジョークです、小粋なガリアンジョークです>>
「ホント!?今更知らないシステムとか出てこられても困るよ!?」
<<嘘は申しません>>
「信じたぞ!?その言葉信じたからな!?」
<<ご安心下さい>>
「あ、それと今更な話なんだけどちょうど良い機会だからマスターじゃなく名前で呼びなさい。変な趣味と思われたら困るわ」
<<了解しました、ユウキ>>
う~む…まぁとにかく覚醒できるなら良いのかな?
この先の大きなイベントは石田くんの湧く湧くホロウランドと、死神ズ登場でルキアさん里帰りの巻だもんな。
特に先の展開が大きくずれる様な事は無いはずだ。
にしてもマスターと呼ばれるのに違和感無く慣れすぎてたな俺。
なんだ?運命に出会った夜的な話か?あ、単に名前で呼ばれるのが恥ずかしかっただけなのかもしれん。現に今頬が熱を帯びてるし。
くそう、なんか今更スピカに名前呼ばれるのは恥ずかしいぞ…っと、そんなことより向こうで不安そうにしてる織姫ちゃんに現状を説明しないと。
スピカと共に再びテラスへ。
「ゴメンねー織姫ちゃん、お客様を待たせちゃって」
「え?ううん!あたしやっぱり帰った方が良い?」
「いやいや、ゆっくりしていってよ。スピカ、お茶お願い」
<<かしこまりました>>
織姫ちゃんを席に着かせて、スピカがティーポット片手に奥へ入っていった。
さて、戻ってくるまでには説明しておくか。
「えーと、何となーく分かるかもしれないけど、ここは夢の世界、OK?」
「お、おーけー」
「で、さっきのは私の」
<<妻のスピカです>>
戻ってくるの早いな!
織姫ちゃんの分の紅茶とケーキをテーブルに並べつつ、スピカが俺の代わりにそう答える。
「つ!妻!?優姫ちゃん!どういうこと!?」
フフフ、ビックリしてるなぁ織姫ちゃん。まぁいきなりこんな事言われたらビックリするよねぇ。
でも残念、この世界じゃあ二番目だ。
一番ビックリしてるの俺だもん。
なに真顔でサラッと嘘ついてるのさスピカさん。
しかもいつの間にメイド服!?ヴィクトリアンで由緒正しそうなデザインですね!
ああもう!初期のスピカさんに戻って!
俺のせいか!?俺のせいなのか!?俺のダメ人間としての性質が影響を及ぼしてるのか!?
そんな苦悩はおくびにも出さず織姫ちゃんにフォローする俺。
「場を和ませる軽いジョークだから落ち着いて織姫ちゃん、あとスピカはその服着替えてきなさい」
「あ、アハハ…だよねぇ」
<<スオムスジョークです>>
ウソダナ
「それで、今回織姫ちゃんを呼んだ件なんだけどね、昨日の事件で分かったと思うけど、
実は見えないだけで、世の中にはオバケがうようよしてるわけよ」
「あ、うん。実は今朝からぼやーっともやみたいなのが見えるの」
「ああ、やっぱり昨日ので霊力が上がり始めてるみたいね」
「そうなの?」
「だから今日呼んだのは、こっちのスピカ、えーと…私の能力なんだけど、
身の安全のためにも彼女に織姫ちゃんの力を引き出してもらおうと思うの」
「能力?能力ってどういう…」
<<それは貴女ご自身の能力をご覧になればお分かりになられると思います>>
スピカが立ち上がり、織姫ちゃんの前に立つ。
そして右手を織姫ちゃんの額に当てる。
<<目を閉じて集中してください>>
「は、はい」
<<自分の中に在る声が聞こえませんか?力のうねりを感じませんか?>>
スピカの体から透き通るような青いオーラが立ち上り、それと同時に蒼銀の髪もふわりと広がっていく。
元ネタ的にはこのままお腹が開いてビームでも打ち出しかねん勢いだな…。
さらにスピカのオーラが織姫ちゃんを包んでいく。
その光景を俺はただ見守るのみ。
「あ、分かります…急に声が大きくなったみたい…」
<<では呼んであげてください、『彼ら』の名前を>>
「はい…おいで…『盾舜六花』」
織姫ちゃんが名前を呼ぶ。
魂の奥から引き出された自らの力を。
守り、癒し、引き裂く、全てを拒絶する力を。
瞬間、風が織姫ちゃんを中心に巻き起こり、庭の花々が周りを舞う。
そして花の意匠をあしらった、兄から貰ったと言う肌身離さずつけているヘアピンが輝き、弾ける。
パキィン!
「うわぁ!な、何!?」
おお、これが覚醒の瞬間か。
実際イベント戦じゃじっくり見れなかっただろうからラッキーかもしれん。
かっこよくホロウに立ち向かう織姫ちゃんも見たかったのだけれども。
「やぁ、始めまして織姫さん。僕らが『盾舜六花』。キミの魂から生まれてきた、キミの力さ!」
織姫ちゃんの周りを舞っていた6つのうち1つが織姫ちゃんの肩に止まり挨拶をする。
へー、マジで小人サイズだな。
織姫ちゃんは目をぱちくりさせている、そりゃ驚くわ、おお、気を取り直してそれをぐにぐに弄る弄る。
そしてその様子を尻目に六花それぞれの自己紹介が始まった。
まとめるとこうだ。
中国ファンタジーの若い役人なんかでいそうな感じの着物を着たリーダー格の男「舜桜」
腰より下に届く大きな頭巾を被った大人しそうな女の子「あやめ」
スキンヘッドで尖った耳や鼻を持つ悪魔めいた容姿のオカマ「火無菊」
がっしりした体型で肩と顔の下半分を鎧で覆ったオッサン「梅厳」
お団子髪、バイザー、競泳水着のような衣装のギャルといった感じ満載の「リリィ」
黒いライダースーツ?に身を包み、口元をマフラーで隠し、顔の傷が特徴の不良っぽいツンデレ候補生「椿鬼」
これが将来的に神の領域すら侵すことになる織姫ちゃんの能力『盾舜六花』のメンバーか。
やべぇ。舜桜、あやめ、リリィはまだ分かるけど、残りのメンバーは織姫ちゃんからは想像もつかんビジュアルだ。
「ありがとう!本当ならもう暫く時間が掛かると思ったけど、お姉さん達のお陰でこんなに早く織姫さんと会えたよ」
「気にしない、気にしない。織姫ちゃんの身の安全のためですもの」
<<ユウキの為にした事ですので、謝辞は必要ありません>>
「ありゃりゃ。それじゃ早速僕らの使い方を織姫さんに教えたほうが良いのかな?」
「そうしてくれると助かるわ。いい?織姫ちゃん」
「え?うん、お願いします」
ペコリと頭を下げる織姫ちゃん。ちなみに手は舜桜を人形のように弄ったままだ。
実は今の会話の間、大興奮の織姫ちゃんは物珍しげにずーっと舜桜を弄っていた。
好奇心旺盛で良いね!
その後俺とスピカはこの後の計画を詰めつつ、織姫ちゃん達の練習を眺めていた。
さーて、コン捕獲とボハハハハー観覧は特にすること無いから、当面残るは石田くん関連のイベントによるチャドくん覚醒か。
そして暫くすると流石に疲れたらしく織姫ちゃん帰還。
スピカ初登場時は俺もすぐ夢から覚めることになったし、それを考えると織姫ちゃんは優秀なのかな?
「はぁ…はぁ……結構…疲れる…ね…」
「ハハハ、まぁ初めてにしては上手くいきすぎてるくらいだよ。スピカさんのお陰かな?」
「そうなんですか?」
<<はい、能力を引き出した際の私の力がまだ残っているのでしょう>>
あーなるほど。霊力の譲渡とか供給ってやつか。
そういうことも出来るんだねぇ。
ふと横を見ると、既に用意されている『盾舜六花』用のティーセットで大喜びの六花達。
「うわぁ!このケーキとっても美味しい!」
「本当だね。ああ…こっちの紅茶も美味しい…いやぁ生まれてきてよかったよ」
「んまぁ!そんなにがっついて!リリィさん、乙女がはしたないんじゃありません!?」
「うるさいわねオカマ!生まれて初めての食事なんだから好きに食べさせなさいよ!」
「あの…ケンカは…」
「ったくうるせぇ奴らだ…」
「ハッハッハ、元気でよいことだ」
原作じゃほぼ出番の無いこいつらだけど活躍する日は来るのだろうか。
まぁこちらの世界でもこの先、まともな出番があるかどうかは不明だが。
ワイワイ騒いでいるのを微笑ましく見守りつつ、この先の尸魂界での戦いで、いかに能力を上手く使うかを考える。
その活躍シーンを思い浮かべて思わず顔がにやけてしまうのは罪ではないだろう。
なんだか忘れたい思い出が増えそうな気がするけどこの際無視しておく、今は良い気分でいたいの。
「優姫ちゃんどうしたの?なんか嬉しそうだけど」
「フッフッフ、秘密~♪そのうち分かると思うからそのときをお楽しみに♪」
<<そうですね>>
「あー!二人だけの秘密ってやつだー!」
<<私とユウキは一心同体ですので>>
むぅ…ユウキと呼ばれるとまだムズムズするな…慣れねぇ…。
ま、能力に関してはホントは分からないまま過ごせるのがベストなんだけどなぁ。
世の中ままならないわ、あの腐れエセ眼鏡め。
待ってろよ…生まれてきたことを後悔させてやる…。
私が天に立つ!フハハハハハハハハ!!!!!
俺が怒りに燃えていると、スピカが懐中時計を取り出して別れの時を告げた。
<<そろそろ時間です、ユウキ>>
「ああ、もうそんな時間?」
「え?」
「もう朝だって事」
「ど、どうしよう!私ちゃんと寝てないよ!?」
<<その点ならご安心を。この世界で過ごしてもきちんと睡眠は取れた状態になっておりますので>>
「凄ぉい!凄いね優姫ちゃん!」
「いいでしょー」
「もしかしてずっとこんな感じだったの!?優姫ちゃんだけずるいよぉ!」
ぷぅとむくれる織姫ちゃん。HAHAHA!そんな顔をしてもかわいいだけデース。
「はっはっは、羨ましいだろー。っとそれじゃ起きましょうか」
<<今日はお疲れ様でした。またご招待させていただきます>>
「あ、はい。今日はどうもありがとうございました」
「六花を代表して礼を言うよ。ありがとう、優姫さん、スピカさん」
「どういたしまして。織姫ちゃんはすぐ顔洗って朝食ね。で、六花はまた夜にでもね」
<<お待ちしております>>
PiPiPiPiPiPiPiPiPi
パチン
「ふぁ~よく寝た…」
寝てるんだか寝てないんだか良く分からないけど、
とにかくすっきり目覚められるから本当に不思議だ、夢世界。
と、新しく織姫ちゃんと六花を迎え、賑やかになった夢世界を堪能し始めて数日が経った。
「あれ?今日は茶渡くん遅いね」
「ホントだ、どうしたんだろ」
チャドくんいっつも授業開始前には席にいるのにな。
ああ見えて成績は優等生なのよねチャド&一護。
「ム…おはよう…」
「おはようチャドくん遅かったね、ってその鳥は?」
あちこちバンドエイドを貼ったチャドくん登校。
またケンカでもしたのかね?にしては怪我が多いけど。
それより俺が気になるのは肩にかけられた鳥かごだ。中には…インコかこれ。
<<ユウキ>>
<<どうやら中に人の魂魄が入ってるみたいね>>
なんだ?俺が介入したせいで何か新イベント発生か?
そういうのは勘弁して欲しいんだけどなぁ…。
実は原作の世界じゃなく、原作を基にした二次創作の世界でしたとかはホントやめて欲しい世界だ。
「ム…ひろった…」
「今めんどくさいから適当に言ったね?」
「て…適当じゃない」
おい、そういうのは俺の眼を見てから言いなさいよ。
明らかにその怪我絡みじゃねえか。
ってあれー?そういえばこんな話原作でもあった気がするぞ。
たしか…。
「ねぇねぇ茶渡くん、この鳥さんの名前は?」
「コンニチハ!ボクノナマエハ シバタユウイチ!」
ですよねー。
『あとがきゴールデン』
スピカさん、無理やり能力引き出すの巻。
割とスピカさんやりたい放題です。
この先もっとやりたい放題しかねません。
それと、流石に現世編が長いかなぁ…と少し気にしてるんですけど、
ここまでお付き合い下さってる希少な皆様方としてはどうなんでしょうか?
さっさと兄様出さんかい!このパッキャマラオが!ブリーチSSで十三隊出さんとか正気かコラ!?なんて思われてたりしないでしょうか?
このままダラダラ続けても良いのだろうか?実はこのSS、10人くらいしか読んでないのではないだろうか?とたまに不安になります。
「俺も夢世界いきてぇ…」と思ったあなたは今すぐ布団に入ってみて下さい。
もしかしたら行けるかもしれません。戻ってこれなくなるかもしれませんが。
ちなみにこのSS書き始めてから良くブリーチの夢見るんですけど、今年の初夢が酷すぎて何処にも利用できません。
「クックック…俺のオリジナル『能力』が知りたいか…?」と思ったあなたは今すぐ感想の最後に詳細を書き込んでみて下さい。
どうでもいいですが以前夢の中で見た作者のスタンドは接着面固定の能力でした。地味にエグい。
次回、ボハハハハーッ!炸裂。