黄巾党討伐戦……もとい日和号捕獲作戦から、いくばくかの日が過ぎた頃、大陸全土を揺るがす大事件が起こった。
──漢王朝の皇帝である霊帝の死。
その支配力は黄巾の乱にて地に落ちたと言われる王朝ではあったが、霊帝の死によって起きた後継者争いが状況を悪化させた。
霊帝は後継者を決める前に亡くなった為、2人居る後継者候補を巡り、朝廷が真っ二つに分かれてしまったのだ。
その2つとは――大将軍何進の一派と、宦官達の一派による暴力と謀略が渦巻く朝廷での愚かとも言える権力争いの末に、大将軍何進は謀殺されてしまう。
だが何進派の戦力はまだ健在と言って良かった。
何進派の報復を恐れた宦官達は、自分達の手駒となる者達を加えようと躍起になっていた。
そんな時に目を付けたのが、何進の呼びかけに応じて都に一軍を率いてきていた併州の牧“董卓”だった。
何進亡き後、身の振り方を考えていた董卓は宦官達からの頼みに快く応じ、自身の力を貸した。
しかしこの董卓は宦官達が操れる程の甘い人物ではなかった。
宦官達によって朝廷に踏み入る権利を手に入れた董卓は、恐怖と暴力で朝廷を思うがままに支配し始めた。
これにより、帝を擁して権力を振るう董卓の一派と、董卓を何としても排除しようと反抗する一派。
今度はその2つに分かれて争い、やがてその騒乱は大陸全土に広がっていった。
そして、ついに打倒董卓を掲げた諸侯の大連合が組まれると言う話が持ち上がってきたのである。
大陸北東部を支配下に置く袁家の当主“袁紹”が諸侯に呼び掛け、その下に次々と各地を治める将達が集まっていた。
それは、七花達にとっても無関係な話ではなかった。
朱里が先に戻ってきてから3日後、袁紹の使者が連合参加の檄文を携えてやってきたのだ。
「まぁ、そういうわけで、姫さんがいない間に使者が来たんだけど、どうする?」
とりあえず、政治に疎い七花は、自分一人で決めるわけにもいかず、桃香達の意見を聞くことにした。
「当然、賛成だよ!!董卓さんって、都中の人たちに略奪したり、重税を課してるって聞くし、そんな酷い人たちを放っては置けないよ!」
「鈴々も賛成なのだ!悪い奴らは、鈴々がぶっ飛ばすのだ!!」
「私も同意見です!そのような悪逆非道な輩を見て見ぬ振りなど出来ません!!」
基本的に正義感の強い桃香・鈴々・愛沙は、連合への参加に賛成の意を唱える。
「確かに、非道な振る舞いは許せぬが…全てが事実とは限らぬからな」
「私もです……この書状はあくまで、袁紹さんの主観でしか書かれているだけですし」
「後々のことを考えれば、少しでも国力を高めるべきだと思います。」
対する朱里や雛里、星は書状の内容や現時点の状況の厳しさなどの理由から、連合への参加には難色を示していた。
「ううん…難しいもんだな。」
「そういえば、否定姫さんからは何か連絡はないの?あの人なら、良い意見が聞けると思うんだけど。」
「あの…それについてなのですが、私が帰るときに否定姫さんから、渡された手紙があるのですが。」
朱里は、恐る恐る否定姫から手渡されたその手紙を開けて、中身を読んだ。
手紙に書かれていたのは……
<絶対、参加しなさい。不参加は否定する。(なぜか血文字で)>
……だけだった。
「……えっと、とりあえず、参加ということで良いか」
「そうだね」
とりあえず、物語は次のステージへ、恋姫語第9話はじまり、はじまりv
第9話<連合結成>
連合への参加を決めてから数日後、七花と桃香率いる幽州の軍は、連合に合流した。
七花達は、連合の主軸となる有力者達との軍議に出席する事となった。
軍議には、七花と桃香、そして、軍師である雛里と朱里が出席することになった。
本陣には愛紗と鈴々、星が兵士の面倒を兼ねて留守番をしている。
「はうぅ…緊張しますぅ~…」
「あうぅ…朱里ちゃん、しっかり…」
「はぁ、面倒だな。姫さん、もしかして、これを見越して遅れてきてるんじゃねぇのか」
「大丈夫だよ、二人とも。もっと力をぬいてね。ご主人様は…もっと緊張しようね」
七花達は、連合軍の発起人である袁紹の本陣へとやって来ていた。
とりあえず、難しい話は、朱里と雛里に任せるかと、基本的に考えることが苦手な七花は思いつつ、天幕へと入った。
「…………」
「…………」
「…………」
瞬間、3人の女性の視線が、七花へ一斉に集中した。
それ等の女性はいずれも、上座に座っている。
上座の中央に腰を落ち着けているのは金髪縦ロールの派手な女性。
その派手な女性の左に陣取るのは金髪をドクロの髪留めで纏めている少女だった。
最後に右手の方に陣取るのは浅黒い肌に、頭に飾り物を付けている女性である。
七花は3人を眺めつつ、どの人物も只ならぬ風格を纏っている事をなんとなく感じた。
朱里が小声で説明してくれた話によると、中央に居るのが袁紹、左が曹操、右が孫権らしい。
「……コホン。貴方が近頃、庶人達に“天の御遣い”なんて噂されてる方ですの?」
派手な女性――袁紹が、何処か嘲りを含んだ言い回しで訊いてくる。
だが、にぶい七花はそんなことにも気に掛けず、いたって平然と話し返す。
「ああ、一応、そういうことになってるけどな。ところで、あんた、すげぇ寝癖だな。櫛で髪を梳いたほうがいいんじゃねぇか?」
意外にずぼらなんだなぁと言い、七花は袁紹の金髪縦ロールを指差して、初対面の感想を洩らした。
「なっ……失礼な方ですわね!!これは、寝癖じゃありませんわ!!それに、あんた呼ばわりも止めなさい!!」
「ご、ご主人様!!いくら、すごい派手な髪型だなぁとか、実はヅラじゃないかなって思っても、それは言っちゃ失礼だよ」
「あなたも充分失礼ですわよ……」
袁紹が気分を害したように腕を組むと今度は、左手に座る少女――曹操が小さい声で呟いた。
その表情は七花を見下しているような感じである。
「…ブ男ね」
「いきなり辛辣だな、おい。とがめや姫さんでも、初対面の相手にここまで言わないぞ。いや、あの二人の場合は、初対面の後からいうほうだけど」
「へぇ…上には上がいるもんだね」
「まあな…多分、俺じゃなかったら、鬱になるんじゃねぇか?」
とがめ、姫さんって誰のことよ?―――といつの間にか蚊帳の外に置かれていることに気づいた曹操が顔を顰める。
「…………」
残る浅黒肌の女性――孫権は全く興味無しと言わんばかりにそっぽを向いている。
早速、おまえら喧嘩売ってるだろ?といわれても、おかしくない七花と桃香のやりとりに、朱里と雛里は、「「もうこれ以上しゃべらないで下さい」」と、そそくさと七花と桃香を席に誘導した。
「よっ、久し振りだな、二人とも」
席へとついた七花と桃香が、この連合で唯一の顔見知りである白蓮が気さくに話しかけてきた。
「あ、白蓮ちゃん、久し振りだねv」
「日和号の時は、世話になったな。」
「ああ、そうだな。っと、また、始まったみたいだな。」
うんざりとした表情を浮かべた白蓮が目をむけた先を見れば、曹操と袁紹が火花を散らして、互いの悪口を言い合っていた。
言い合ったといっても、袁紹が一方的に噛み付いてくるだけで、曹操がそれを受け流し、皮肉で返しているのだが。
「まったく、互いに協力しなくちゃいけないって時に…」
「つうか、大丈夫なのか、こんなことで?」
「うう、不安だなぁ…」
「はぁ、しょうがないな」
とりあえず、白蓮は不毛ともいえる言い争いをなだめるように、いさめた。
「はぁ……あのな、今は皇帝を擁している董卓にどう戦を仕掛けるかを相談、だろ?」
声を大にして現状を語り、2人を軍議へと引き戻そうとする。
2人の醸し出す殺気が先程と違って徐々に弱くなっていく。
「大義はどう作るのか、難攻不落として知られる汜水関や虎牢関をどうやって抜くのか。それ以前にこの連合をどう編成し、どう率いていくのかを決めなくちゃ、だろ?」
公孫賛の声がやっと届いたらしく、睨み合いを続けていた2人の意識が軍議に向いた。
「……そうですわね。伯珪さんの言う通りですわ。ふふっ……私とした事が、可愛げのないおチビに感けて軍議の本質を忘れる所でした」
「忘れる所じゃなくて、忘れてたんだろうが……」
公孫賛が疲れたような溜息を漏らす。
こうして軍議に意識を戻した袁紹は再び高らかに言い放つ。
「この連合に1つだけ足りない物がありますわ」
突然の意味深な言葉に、全員の視線が袁紹へ一斉に向けられる。
「……そう。この軍は袁家の軍勢を筆頭に精鋭が揃い、武器糧食も充実し、気合いだって充分に備わっています。けれど、たった1つだけ足りない物があるのですわ。その足りない物が何か、お分かりになります、七花さん?」
「ん、え?俺、基本的に考えるのは苦手なんだけど…えっと…」
いきなり話を振られて、考え込んで、数秒後―――
「わからねぇ。」
「そうわからねぇ―――って、お待ちなさい!!もう少し、頑張って、考えなさい!!話が進まないじゃありませんか!!」
「あの、ご主人様、多分だけど、これだけの連合を率いるんだから、優秀な統率者が必要じゃないかな?」
あっさり考えることを放棄した七花に、ノリツッコミ気味にあわてて袁紹が噛みついてくるが、一緒に考えていた桃香があわててフォローをいれた。
「ええ…そのとおりですわ。この連合に足りない物……それは即ち、優れた統率者です。」
再び袁紹の口上が始まった。
七花は――最初からそういえばいいじゃねぇかと思いつつ――溜め息を吐いた。
「そう。この軍は諸侯達の、言わば私軍。その私軍を大義によって糾合し、共通の目的の為に一致団結させるには優れた統率者が必要なのです。それは強く、美しくて、高貴で、門地の高い……そう、それは――」
自分だという前に―――
「この否定姫以外にやるしかないってことね。まあ、やってあげなくないわ。」
「そう、そのとおりですわ―――って待ちなさい!!」
いつのまにやってきたのだろうか、いきなり天幕へ乗り込んできた否定姫は、まるで空気を読むことなく袁紹の言葉を遮るように堂々と宣言した。
「あなた、いきなり、乗り込んできて無礼じゃございませんか!」
「ああ、そうね。ところで、久し振りね、七花君。元気にしていたかしら?」
「おう。そっちはどうだったんだ?」
「大体の用事は済ましたわ。城の改築も手はずを整えてきたから。まったくもって問題ないわ。」
「私を無視している時点で、問題大有りですわ――!」
横槍を入れられて、激昂する袁紹だったが、否定姫は袁紹を一瞥するが、まるで無視するかのように、七花に話しかけたため、ほとんど叫び声のようなツッコミがはいる。
「ああ、ごめんなさい。無視してたわね、わざとだけど。とりあえず、連合軍の副大将は、あなたに任せるわ。私達は大事な話があるから、いなくなるけど、後で、報告よろしくね」
「え、ちょっと…」
「ああ、拒否権はないから。むしろ、その拒否を否定するわ。それじゃあ、統率者も決まったから、私達は、さっさと帰りましょうね。いくわよ、七花君、桃香、朱里、雛里」
反論を許さぬ暴君さながらの強引さで話を進めた否定姫は、七花の髪をひっつかむと、そのまま、さっさと自分の陣に戻っていた。
「ちょ、姫さん…髪をひっぱるのは、いた、痛い!!地味に痛い!!」
「えっと、じゃあ、私達はこれで……」
「はわわ!!三人とも勝手に出て行かないでくださ~い!!」
「あわわ……!!え、えっと、失礼しました!」
嵐が過ぎ去ったように七花たちが出て行った後残ったのは、呆然とする袁紹はじめとする諸侯の面面だけだった。
その後、陣に戻った七花達だったが……
「なんてことをしてくれたのですか!!」
軍議から戻ってきた七花達を出迎えた関羽の第一声は、大音量の怒声だった。
「軍議の席で他の代表に無礼をはたらいて、そのまま帰ってくるだなんて!ご主人様や桃香様の立場が危うくなるんですよ!」
「いや、ほんとうに悪かった、愛沙。だから、武器だけはおろしてくれ」
「ううう、ごめんね。愛沙ちゃん…ひ、否定姫さんも何か言ったほうがいいとおもうよ?」
「ああ、そうね。まあ、そりゃ悪くならないわけないわよね。特に袁紹だっけ?今頃、ぶちきれてるんじゃないの?」
「「せめて、建前でもいいから、謝ってくださ――――い!!!」」
ただ只管に、土下座と謝罪をする七花と桃香、対照的に呆れるくらいに堂々と話半分に返事をする否定姫、そんな上司の態度に戦々恐々する朱里と雛里―――ぶっちゃけ、修羅場が形成されていた。
「それを分かっていながら…!?」
どうやら分かっていてやった否定姫の発言に、否定姫をにらみ付ける愛沙…ちょっとやそっとでは収まりそうに無い。
「待て、愛沙。否定姫殿、御主のその口ぶりから察するに、袁紹と諍いを起こすこと自体が目的ではあったのでは?」
「あら、さすがは星ね。やっぱり、気づかないわけないか」
「えっと、どういうこと、何だ?」
自分の考えをどうやら理解しているらしい星の言葉に、否定姫は我が意を得たりという得意げな表情で、星の言葉を二重否定で肯定した。
だが、いまひとつ把握し切れていない七花は、否定姫にどうことなのかと説明を求めた。
「相変わらず、鈍いわね。星、答えあわせの意味もこめて、説明してあげて。」
「つまり、否定姫殿は、この戦の後に起こるであろう群雄割拠において、袁紹との戦をなさるつもりなのであろう」
「それって、袁紹の領地を攻めるってことなのか?」
「えぇー駄目だよ!!そんなの!!」
「桃香様の言うとおりです!!仮にも、名門袁家の当主―――そうやすやすと攻めるなど、今のわれらでは、無理です」
星の言葉に、鈴々が首を傾げつつ答え、桃香と愛沙は自殺行為とも言える無謀な考えに、反対の声上げた。
だが、否定姫はその言葉を聞き流し、不敵な笑みを浮かべた。
「否定するわ。誰が、袁紹とこを攻めるなんて言ったかしら?」
「んにゃ?」
「すまん、姫さん。話が見えないんだけど」
「あの、ご主人様。否定姫さんの狙いは、袁紹さんに攻め込むんじゃなくて、袁紹さんに攻めて来てもらうのが目的じゃないかと思うんです」
「攻めてきてもらうって…でも、普通なら、攻めてきてもらうっても、あんまり意味はないきがするんだけど…」
怪訝な顔を浮かべる七花だったが、否定姫はやれやれといった表情で七花に説明した。
「ええ、普通ならね。でも、正直な話、今の私達の軍と袁紹軍とでは、兵力に差がありすぎるの。だから、ある程度、こちらの陣地で袁紹軍の兵力を削って、五分と五分に持ち込む必要があるわ」
「それって、五分と五分なら、袁紹さんに勝てるって事?」
「はい…兵力が折衷している場合、戦の勝敗を決するのは、将の質が大きな要因になるんです。この場合、将の質については、ご主人様や愛沙さん、星さん、鈴々ちゃんといった武勇に名高い人たちがいる私達の軍勝っています」
「だから、否定姫さんが合流に遅れたのも、来るべき袁紹さんとの防衛戦にむけて準備をしていたんです」
「朱里、少しだけ否定するわ。ただの防衛戦じゃないわ。これはあくまで、攻め込んでくる袁紹軍を攻撃で持って向かえ撃つ攻撃的防衛戦よ」
「相変わらず、すげぇな…姫さん。んで、何で、俺や桃香には、相談無しなんだ?」
「一応、私達、君主なんだけど……」
「そんなの決まっているじゃない」
隠し事をされていた事実に、不満そうな顔を浮かべる二人に、否定姫はしてやったりの表情を浮かべて――
「その方が面白いからに決まっているからよ。」
とんでもない事を言い切った。
外で聞き耳を立てている来訪者達にもしっかりと聞こえるように。
「なるほどね……随分と面白いことを考えるじゃない」
「あの、華琳様?どうなさいました?中では何が…?」
愛沙―――もとい関羽を勧誘しに来た曹操―――真名は華琳―――だったが、天幕から聞こえてきた愛沙と否定姫らのやり取りに興味を持ったのか、中に入らず、そのまま聞き実を立てていたのだが、一緒についてきた夏候惇―――真名は春蘭―――はどうしたものかとたたずんでいたが、意を決して、華琳に話しかけた。
「う~ん、そうね。とりあえず、帰るわよ。」
「え、帰るって…よろしいのですか!?」
「落ち着け、姉者。それで、華琳様、いったい、中で何が行われていたのですか?」
声を上げる春蘭であったが、すぐさま、妹である夏候淵―――真名は秋蘭―――に諌められる。
いったん、春蘭をいさめた秋蘭は、華琳に向き直り、天幕の中で何が話されていたのか、華琳に尋ねるが…
「そうね、しいていうなら、鑢軍はただの弱小勢力じゃないってことかしらね。もしかしたら、案外、この戦面白いものが見られるかもしれないわね」
不敵な笑みを浮かべて、その場から去っていく華琳を呆気にとられた表情で、春蘭と秋蘭は顔を見合わせ、首をひねった。
(攻めるのではなく、あえて敵に攻め込ませて、兵力を削るか。どうやら、一筋縄ではいかないようね。優秀な軍師に、武勇に名高い武将。そして、なにより……)
普通なら、癖のあるメンバーを束ねる二人の君主―――鑢七花と劉備の存在がなによりも大きいのだ。
「いつでも掛かって来なさい。この曹孟徳が相手をして上げるわ」
それは対峙するであろう未来の好敵手にむけた静かな宣戦布告だった。
草木も眠る丑三つ時、汜水関の城壁に大人一人分は入りそうな大きな鞄を、李儒が一人でぼやきながら、いじっていた。
「しかし、まいったもんですね。給料良いから就職したはいいものの、即効で攻め込まれるんですから」
連合軍の陣内に潜り込んだ蝙蝠からの報告では、弱小勢力の鑢軍が総大将に立候補したらしいこと(当然ながら、後で辞退した)や連合内での諸侯の連携が上手く取れていないなどのことが判明した。
しかし、それらの報告よりも気になったのが、この連合軍が解散した後の対袁紹軍を想定した方針の内容だった。
「敵を自国へ攻めこませて、逆に相手の戦力を削る…大勢力が取るならともかく、弱小勢力の鑢軍がとれる作戦じゃないですよ」
何考えがあるのか、それともただの馬鹿なのか…なんとも理解しがたい軍師がいたものである。
ただの烏合の衆だと思っていた連合軍だが、烏合と呼ぶには、あまりに異質な存在だ。
「まぁ、でも、この時代に来てから、今日まで我慢して来たのです。精々楽しませてもらいましょう。明日は今までの鬱憤を晴らさせてもらいます」
そして、李儒は夜空に輝く月を見ながら、李儒はかすかに笑みを浮かべながら呟いた。
「ひとまず、明日は……零崎を開幕しましょうか。」