―――鑢軍本陣
「なるほどねぇ…桃香達が、捕まちゃったって訳なのー」
「はい…それで、七花さん達が、桃香様達を助けようと、出て行っちゃって…」
「否定姫殿!! もはや、七花殿や恋の行動に我慢できません!! あまりにも身勝手がすぎます!! 」
愛紗達から、これまでの経緯を聞いた否定姫は、別段怒るでも、哀しむでもなく、あっさりと現状を理解した。
そんな否定姫に対し、鑢軍の指揮を任されていた朱里は、自分の力不足を悔いるように、深くうなだれた。
独断専行としか言いようのない七花達の行動に我慢の限界だった愛紗は、怒りをあらわにしながら、否定姫に訴えた。
そんな二人の言葉を聞きながら、否定姫は徐に言った。
「ふーん…ま、問題ないわね。いえ、むしろ好都合とでも言い直すべきかしらね」
「はわ? 」
まるで、否定姫には、この絶対的不利な状況を、絶好の機会だと言わんばかりの口振りだった。
それに対し、どういう事なのか訳が分からない朱里達は、思わず間の抜けた声を上げた。
そんな中で、いの一番に立ち直ったのは、愛紗だった。
「何を言うのですか!! この状況の何処が、好都合だというのですか!! 」
「だって、愛紗…今、ちょうど、七花君達が、許昌で大暴れしているって事は―――」
気でも違ったかと喰ってかかる愛紗に、否定姫は勿体ぶった口調で答えようとした。
もっとも、その答えを、否定姫が告げる前に、横やりが入った。
「―――残った私達には、敵は、完全に注意を向けていないってことですわね」
「あ…って、あんたは!? 」
―――不意に陣内に入ってきたとある人物によって、先に答えられてしまった。
色々と良く知っているその人物を見て、翠は思わず声を上げた。
「ちょっと、私の言葉をとらないでよねぇ。まぁ、いいわ。とりあえず、桃香達を助けに行くついでに、先の戦での御返しをしないこともないわ…それに、ちょっと気になる事もあるしねぇ」
一方の否定姫は、答えを先に言われたのが気に入らないのか、唇を尖らせながら、不満そうに呟いた。
とはいえ、敵が七花達に気を取られている以上、否定姫達の方を気にする余裕などない筈だ。
許昌に攻め込む機―――すなわち、桃香達を助けるのは、今をおいて、他になかった。
「乗り込まない訳にはいかないわね、許昌に」
―――その前に決着が付いてるかもね、と笑みを浮かべた否定姫は、ここにいる全軍に許昌への進撃を決定した。
その後、否定姫らが許昌に到着した際、否定姫の予想はある意味で的中する事になるところで、恋姫語、はじまりはじまり。
第35話<許昌決戦その1>
許昌での闘いで、最初に決着が付いたのは、二人の零崎による殺し合いだった。
「はぁ、はぁ…ちっ、まだ、壊れないちゃか…」
『ボディは、頑丈に作っておいたのですよ』
激しい攻防の中で、苦しそうに息を整える軋識に対し、李儒は、余裕で答えを返した。
その余裕に反し、李儒の体は、何度か<愚神礼讃>を叩き込まれ、体のあちこちがくっきりと陥没していた。
しかし、李儒の体が、如何に痛みを感じない機械の体とはいえ、その内部の部品は、少しの衝撃でさえ精密機械の塊であるはずなのだ。
それでも、李儒は故障一つさえ起こっていなかった。
その事を不審に思った双識は、ある決定的な敗戦をふと思い出した。
次の瞬間、ある事実に気付いた双識は苦虫を潰したように、顔をしかめた。
「なるほど…あのメイド仮面と同じ手口っちゃか。そいつは、何度、打ち込んでも、効かない筈だちゃ」
『まぁ、精密機器を収納したボディを破壊されては、元も子もありませんからね。双兄から、その話を聞いて、参考までに、改造してみました 』
「あいつかよ!? まぁ、つまり、どんだけ打ち込んでも、効果は薄いってことかちゃ」
助ける筈の双識の性で、李儒に苦戦を強いられている事を知った軋識は、思わず愚痴を零した。
つまるところ、李儒は、外部装甲を二重構造にし、その間を隙間なく、衝撃を非常に良く吸収するゲル状の物質で埋めているのだ。
ゆえに、何度、<愚神礼讃>を叩き込まれようと、李儒を動かす内部の精密機器に損傷はなかったのだ。
『さぁ、理解したところで、続きといきますかね!! 』
「はん、舐めるなちゃ…片腕だけの相手に殺されるほど甘くはねーちゃよ!! 」
幾ばくの間をおいた後、李儒は、左腕の鉤爪をちらつかせながら、軋識に襲いかかった。
対する軋識も、壊れるまで、何度でも叩き込まんと<愚神礼讃>を振りかざした。
『もっとも、その一撃を打ち込む為に、私の間合いに潜り抜けたらの話ですがね!! 』
「ちっ…また、伸びるバネ腕っちゃか!! 」
再び、李儒は、先ほどと同じく、バネ腕を伸ばしながら、鉤爪で斬り裂こうと仕掛けてきた。
リーチの差に苦戦し、悪態を付いた軋識は、伸び縮みするバネ腕の弱点を付く事にした。
「…いい加減、曲芸遊びには、付き合いきれないっちゃよ!! 」
李儒のバネ腕が伸びきった瞬間、軋識は、バネの隙間に、<愚神礼讃>を打ち込んだ。
そのまま、軋識は、<愚神礼讃>―――鋼鉄製の釘バットに取り付けられた釘に、引っ掛かったバネを絡め取った。
そして、軋識は、絡め取ったバネごと、李儒の左手の付け根のあたりからもぎ取った。
「両腕取っ―――っ!!」
『では、代わりに、足を頂く事にしますかね』
これで、李儒の武器を奪った―――そう確信した軋識は、斬り裂かれた両脚から激しい痛みと共に飛び散った返り血を受けた。
切り落とされるまではなくとも、軋識は、予期せぬ反撃を受け、痛みと出血で蹲った。
そして、軋識は、武器を失った筈の李儒の姿を見て、思わず目を疑った。
何時の間にか、李儒の破壊された筈の右腕には、手の代わりに血を滴らせる大鎌を持つ新たなバネ腕が取り付けられていたのだ。
「くっ…!!」
『残念でしたね。ボディは破壊されないように頑丈に…手足は、いくらでも換えが用意してあるんですよ…何処にでも、ね』
思わぬ不覚をとった軋識を見ながら、李儒は破壊された左腕を取り外すと、予め準備しておいた予備の左腕を新たに取り付けた。
人間ならば壊されたからといって、手足の交換などできるはずもない。
だが、機械の体となった李儒にとって、破壊された手足の交換など容易い事だった。
その為に、何時何処で破壊されても交換できるように、李儒が、許昌の至る所に用意され替えの手足―――仕込んだのは、七花達が乗り込んでくる前のことだった。
「人形だからできる芸当ちゃね…こりゃ、やばいちゃね」
機械の体という特性を武器とする李儒に、殺す事を優先するあまり、相手が人形である事忘れていた軋識は思わず苦笑した。
―――普段の自分なら、この程度の事など簡単に見抜ける筈なのに。
―――どうやら、家族と殺し合うという事に、いつの間にか熱くなっていたようだ。
『初めてです、軋兄。そんな弱気な事を言うなんて…それとも、零崎一賊でもっとも苛烈な殺人鬼も観念しましたか』
「はん…」
対する李儒は、弱気ともいえる軋識の態度を見て、少々失望しながらも、止めを刺そうとした。
左右の建物の壁に両手を突き刺した李儒は、そのまま、両腕のバネを伸ばしつつ、後ろに下がっていった。
同時に、<愚神礼讃>を杖代わりにして立ちあがった軋識も、反撃のタイミングを計っていた。
幸いなことに、李儒は、すでに勝ちを確信した事で、軋識の狙いに気付いていない。
一賊の裏切り者を倒す為、軋識は、脚の痛みに耐えながら、最後の攻防に全てを賭けた。
『まぁ、諦めが付いたのなら、構いません。あなたを殺して、私は、自己を得るだけですから。これで―――さよならです!! 』
「そう言うと―――」
両腕のバネを限界まで伸ばしきった李儒は、己の渇望を叶える為、軋識に襲いかかった。
李儒が徐に飛び上がった瞬間、両腕のバネによって勢いよく飛び出した李儒の体は、軋識に向かって、弾丸のように放たれた。
もはや、身動きをとる事も出来ない軋識に、これをかわす事は不可能!!
直撃を受ければ、軋識の体を粉砕するであろう李儒を前に、軋識は、<愚神礼讃>を構えた。
ただし、軋識が狙うのは、李儒ではなく―――
「―――思っていったちゃよ!! 」
『なっ…!! 』
――――軋識が、先ほど破壊した李儒の左手を、ゴルフボールを打つように、<愚神礼讃>を叩き込んだ。
勢いよく飛ばされた左手は、軋識とは別の意味で回避できない李儒の右胸に突き立てられた。
だが、普通の人間ならば死んでいるだろうが、李儒はすでに人間ではなかった。
李儒を動かす内部の精密機械さえ破壊されなければ、機能停止する事はない。
『くっ…だが、この程度の損傷で…!! 』
「だから…こうするっちゃよ!! 」
徐に、軋識は、向かってくる李儒の右胸に、両手でしっかりと握りしめた<愚神礼讃>を突き出した。
突き出された<愚神礼讃>によって、李儒の外部装甲がへこむが、衝撃吸収ジェルが衝撃を防いだ。
だが、李儒の突き刺さった李儒の左手は、外部装甲はおろか衝撃吸収ジェルさえものともせず、深々と突き刺さった。
―――李儒を動かす中枢部分に。
『ぐ、あああああああああ…をぉぉおおおおおおお!! 』
「悪いちゃね、儒識…俺は、一度、その方法で負けた事があるちゃ。…不覚は二度ないちゃ」
そう言い放った軋識の前で、李儒は、自分の左手であった部品が右胸に深々と突き刺さったまま、絶叫を上げながら、仰向けに倒れた。
痛みと言う感覚はない人形でも、中枢機能を司る部品を破壊されれば、もう立ちあがる事さえできない。
「さて…せめてもの、情ちゃよ。何か、言い残す事はないちゃか?」
『ご、ぬ、が、ご、ぎ、ぐ、ががががががが…』
「止めを刺す前に、完全に壊れたちゃか…なら、家族のよしみで、一撃で終わらせるちゃ」
まともな言葉さえ喋れなくなった李儒を見下ろしながら、軋識は、一賊として、家族としてのけじめを付ける為に、<愚神礼讃>を構えた。
恐らく、零崎一賊始まって以来の兄弟殺しなるだろう。
とはいえ、人形であるなら、殺すってのは当てはまらないのか。
そんな意味の無い事を考えながら、軋識は、李儒の右胸に向けて、<愚神礼讃>を一気に振り下ろした。
その直後、機能不全寸前だった李儒は、かすかだが、はっきりと呟いた。
『…あ、りが、とう、軋兄』
―――暴走した自分を止めてくれて。
―――こんな自分を最後まで、家族だと言ってくれて。
軋識は、李儒が、どちらの意味で言ったのか、どういう意味かも分らなかった。
ただ、その末期の言葉らしきものを残して、中枢機能を完全に破壊された李儒は動かなくなった。
零崎儒識の、二度目の死だった。
「はぁ…自分を壊した相手に感謝する奴がいるかよ、馬鹿野郎」
そんな李儒だった残骸を前にして、軋識は、その場に座り込みながら、溜息をつくようにぼやいた。
零崎軋識は勝利した―――ただし、満足に動けそうになかった。
一方、春蘭は、闘うどころか、相手と対峙する事さえままならない状況だった。
それほどまでに、春蘭は苦戦を強いられていた。
「くっ…はぁはぁ…何とか、逃げ込めたか」
どうにか近くの建物の中に逃げ込んだ夏侯惇は、息を整えながら、体を休めていた。
ここに筍彧がいれば、<体力だけが取り柄のくせに>などと、皮肉の一つも言ったであろうが、春蘭が身を隠すのも無理もなかった。
ここに着くまで、煙によって視覚を遮られた中、春蘭は四方八方から飛んでくる矢を切り返し、かすり傷を幾重にも負いながら、ここまで辿り着いたのだ。
そして、何より春蘭を悩ませていたのは、矢を放ってくる敵の居場所だった。
「…しかし、敵が何処にいるのか分からないんじゃ、どうしようもないな」
最初は、一人だと思っていた春蘭は、次々と射られてくる矢を見て、複数の敵がいるのだと思っていた。
しかし、春蘭が、矢の射られた方向を頼りに、何処を探せども、矢を打ってきた敵の姿は何処にもなかったのだ。
結果として、春蘭は、見えない敵によって、消耗戦を強いられる事なり、今に至るという訳なのだ。
「なぁ、おい…何か良い案はって、驢馬に聞いても無駄だったなぁ」
「…」
打開策が見つからず、春蘭は、的櫨に話しかけながら、溜息をもらした。
一方の、的櫨の方は、その場で足踏みをしながら、カッポ、カッポと蹄を鳴らしていた。
その間にも、どこらともなく飛んできた矢が、向かいの建物の壁に突き刺さった。
「…むこうも、こちらの姿を見失ってい―――カッポ、カッポ―――また、足踏みか。まったく呑気なも―――ひゅん―――!? 」
姿を隠したのが功を奏したのか、敵の放ったと思われる矢は、見当違いなところに命中しだしていた。
それを見た春蘭は、相手も見失っている今こそ、攻めの時かと迷っていた。
そんな緊迫した状況の中、何が楽しいのか足踏みをする的櫨に、やれやれと首を振る春蘭は、不意にある事に気付いた。
すぐさま、予想が当たっているのか、春蘭は、もう一度、的櫨の足踏みを聞きながら、耳を澄ました。
かっぽ、かっぽ…的櫨が2回足踏みをすると同時に、再び、複数の方向から、矢が放たれた。
そして、遅れて、もう一本矢が放たれるのを見た瞬間、春蘭は確信した。
「…撃ってくる矢の間隔が、一定すぎる」
これまで、春蘭は、何処から放たれてくるのか分からない矢に、気を取られていた。
しかし、的櫨の足踏みのおかげで、春蘭は、ある方向から撃ってくる矢を除き、矢を放つ間隔が単調すぎることに気付いた。
恐らく、一定間隔で撃ってく矢は、自動的に矢を撃つ機械仕掛けの道具を使って、撃ってきたのだ。
そして、放つ間隔にムラが有る矢こそ、本当の射手なのであろう。
また、建物に逃げ込み、攻撃をやりすごしていた事で、落ち着きを取り戻した春蘭は、これまで見過ごしていたある事実に気付いた。
「敵は、どうやって、この煙幕の中で、私を狙っているんだ…? 」
少し先の景色まで覆い隠すほどの濃い煙幕を張っているにも関わらず、敵の放つ矢は、春蘭を確実に狙ってきていた。
つまり、敵は何らかの手段を使って、春蘭達の位置を補足しているのだ。
視覚以外の何かでもって―――。
「くそっ…柱花でもいれば、良い策を考えるんだがな。生憎、私にできる事は―――」
春蘭は、あまり自覚したくないのだが、考える事が苦手だった。
考える前に、行動する事で、春蘭は、問題を解決してきた。
だから、今回も、春蘭は―――
「―――体を張る事だけだ」
―――自分の得手とする方法で、状況を打開する事にした。
「…さて、建物の中に逃げ込んでから、一向に出てこないっすね」
一方、郭淮は、逃げ込んだままでてこない春蘭をまちながら、暇そうにぼやいていた。
郭淮の目論見としては、李儒の作った自動型弩をあらかじめ設置し、敵を誘い出す。
そして、四方八方から放たれてくる矢と深い煙によって姿を隠した敵という二つで、肉体的にも、精神的にも追込んで、相手が消耗したところを仕留めるはずだったのだ。
だが、こうなってしまうと、出てくるまで待つという、単純な我慢比べである。
ちなみに、郭淮は、性格的に我慢強い方ではまったくなかった。
「まぁ、出てこないなら、城に戻って、鑢七花の首でも取って…!! 」
郭淮は、臆病な敵が動かない以上、ここには用はないと立ち去ろうとした。
次の瞬間、郭淮は勢い良く後ろを振り返ると、徐に春蘭達のいる建物の方向へ目を向けた。
「…動いたっすね!! あの猪武者、ついにやけを起こしたッすか!? まぁ、こっちからは、あんたの居場所は―――」
単細胞の春蘭が、痺れを切らして出てきたのか分からないが、郭淮にとってどうでもいいことだった。
矢を番えながら、郭淮は、とび出してきた獲物に狙いを定めた。
立ちこめる煙が、春蘭の姿を隠しているが、郭淮にとって、何の障害でもなかった。
なぜなら―――
「―――まる聞こえなんっすけどね!! 」
―――郭淮は、春蘭の発する音―――声や心臓の鼓動を聞きとりながら、その音を色として見ながら、春蘭が何処にいるかを察知していたのだから。
共感覚―――五感で受ける情報を通常の感覚器だけでなく、他の感覚器でも感じる事で、郭淮の場合は、音を色として見る事が出来るのだ。
郭淮は、深い霧の中や闇夜の暗闇の中でも、この共感覚により戦場で武功を上げてきたのだ。
「まる聞こえ、まる…あ、あれ? 」
だから、郭淮は、その音を聞いた瞬間、矢を番えるのも忘れるぐらい、思わず困惑した。
「…あいつが、盲夏侯がいない。驢馬だけ、こっちに来てるッす!? 」
見えたのは、黄色と緑色―――郭淮には、あの驢馬と思しき心臓の鼓動音と蹄の足音しか聞こえてこなかったのだ。
春蘭の音はどこにもなく、こちらに向かってくる驢馬の音だけしか、見えなかったのだ。
「…っ!! 逃げた? いや、そんな事より…」
まさか、逃げられたのかと疑った郭淮であったが、その疑念はすぐさま思考の外へ追いやられることになった。
「まっすぐ、こっちに向かってきている? 何で、居場所が分かるっすか!? 」
あの驢馬―――的櫨は、迷うことなく、郭淮の居る場所へと向かってきていた。
驚く郭淮だったが、周囲を見回した時、すぐさま、その理由に辿り着いた。
わずかだが、立つ込める煙が、郭淮から見て、前へと移動し始めていた。
「こっちが風上ってことは…臭いで判別したっすね。たくっ…鑢軍の驢馬も、化け物仕様って奴っすか」
郭淮は、ぼやきながらも、的櫨が、こちらに向かってくる以上は、驢馬であろうと仕留めるつもりだった。
敵であるならば、なおさらだった。
そして、郭淮は、再び矢を番えた瞬間、ある違和感に気付いた。
「…音が、色が混じり合っている…まさかっ!? 」
これまで、郭淮は、共感覚により、的櫨の心音を黄色として見えていた。
だが、今の的櫨の心音は、青色と黄色が入り混じった色―――緑色に見えているのだ。
これが示す事は―――
「…馬ごとぶち抜くっす!! 」
すぐさま、的櫨を射抜かんと、狙いを付けた郭淮は矢を放った。
これまで、矢を切り返してきた春蘭が居ない以上、的櫨は、四方八方から放たれてくる矢に成すすべもなく、貫かれるはずだった。
しかし、的櫨は、その道理さえもこじ開ける無茶ぶりを発揮した。
「か、壁走りって!! どんだけ、すげぇっすか、あの馬!! 」
郭淮がたじろぐのも無理はなかった。
黄色の音―――的櫨は、建物の壁に張り付きながら移動し始めていた―――すなわち、的櫨は、地面ではなく、建物の壁を走り始めたのだ。
これでは、郭淮が仕掛けた自動発射型弩も発動する事さえ、叶わない。
「や、やばいっす!! あ、あったれぇえええええええええ!! 」
動揺した郭淮は、狙いを付けて撃ち抜かんとするも、的櫨は壁走りをしながら、徐々に郭淮のいる場所に近づいて行った。
「ブぅらあああああああああああああああ!! 」
「このぉ化け物驢馬ぁ!! 」
そして、壁走りという無茶を成し遂げた的櫨は、遂に郭淮の前に現れた。
同時に―――
「うおりゃぁああああああああああ!! 」
「んなぁつ!? 」
―――郭淮の眼を欺く為に、的櫨の腹にしがみ付いていた春蘭が、斬りかかってきた。
春蘭としては、姿を隠す為の苦肉の策だったが、逆に功を奏した。
おかげで、春蘭の心音と的櫨の心音が入り混じる事により、郭淮の共感覚を誤魔化す事が出来たのだ。
とはいえ、郭淮もなんとか、棺桶を破壊されながらも、春蘭の攻撃をかわすと、距離とりつつ、矢を手にした。
「ちっ…浅かったか。上手くかわしたな」
「夏侯惇…!! てめぇ、出鱈目にもほどがあるっすよ!! 」
「ふん、そうだろうな。だが、そんな策のおかげで、近づく事が出来たぞ。さぁ…!? 」
「ん、どうしたっすか? いっ…!! 」
郭淮を仕留められなかった事に舌打ちする春蘭に対し、郭淮は思わず出鱈目すぎると喚いた。
そんな事を意に返すことなく、闘おうとする春蘭であったが、郭淮の姿を見て、思わず息を飲んだ。
怪訝そうな顔をする郭淮も、すぐにその理由が分かった。
「…化け物」
春蘭がそう言いたくなるのも、無理はなかった。
破壊された棺桶の中に居たのは、郭淮そっくりの少女だった。
ただし、その少女には、下半身と言うものがなく、まさに郭淮の背中から生えていた。
現代で言うところのシャム双生児といったところだった。
三国志時代の人間からすれば、化け物と見られても、仕方がないのかもしれない。
だが、春蘭は、その一言だけは言うべきではなかった
「おい…てめぇ、今何て言った…何て言ったぁ!! 何て言ったんだああああああああ!! 」
「っ!!」
―――次の瞬間、郭淮は目を血走らせながら、あらん限りの怒声を、春蘭にぶつけた。
いつものおちゃらけた雰囲気は霧散し、怒り狂う夜叉のように、郭淮は、春蘭を睨みつけた。
「妹は、鄧艾は、私の半分は!! 私みたいな姉を慕う良い子なんだぞ。虫も殺せない優しい子なんだぞ。それを、それを!! どいつもこいつも…!! 」
―――化け物呼ばわりして!!
郭淮は、生れた時から、片時も離れた事の無い大切な妹:鄧艾を化け物呼ばわりされてきた。
何も悪い事はしていないのに、ただ少し人と違うだけなのに―――母や父ですら、 まるで、怪物を見るような眼で、鄧艾を疎ましげに見ていた。
そして、今も―――!!
「貴様はぁ、お前らは、私の妹を、私の半分を化け物とほざいたかああああああああああ!! 殺すっ!! 残った目ん玉ぶちぬいて、めくらにしてっ!! 両手両足、ぶち斬って!! 達磨にして、的代わりして!! 泣いて命乞いするまで、ブチ殺す!! 殺した後で、心臓動かして、生き返して!! 何度でも、殺して生かして殺してやるっ!! 」
「…ま、真里亜」
「分かってる、花南。私は、私達は―――」
罵詈雑音を捲し立て、殺意をみなぎらせながら、郭淮―――真名:真里亜は、たじろぐ春蘭にむけて、矢を番えた。
同時に、鄧艾―――真名:花南も、背中の矢を入れる包みから取り出した5本の矢を番えた。
「―――二人で一人の無敵の姉妹!! 称号<双身烈風>!! てめぇを狙い撃つぜ!! 」
「…み、乱れ、う、撃つ」
「…上等だ!! 裏切り者に負けられるかっ!! 」
名乗りを上げ、矢を放ってくる真里亜と花南に、剣を構えた春蘭は真っ向から挑んだ。
春蘭は、どうにか、敵の前に立つ事が出来た―――ただし、まだ、闘いは終わりそうになかった。
そして、城に乗り込んだ七花と七実と化した時雨との闘いも決着が付いていた。
というより、他の2戦に比べ、もっとも早く決着が付いた闘いだった。
否、それさえも、正確でもなかった。
「―――あんたは、俺が戦うまでもなく、八つ裂きになるけどな」
「えっ…くっ―――うぅ!! 」
―――厳密にいえば、闘いにさえならなかったと言うべきであろう。
七花はが、戦闘放棄ともいえる言葉を呟いた瞬間、七実―――時雨は、七花に攻撃を当てる前に、崩れ落ちた。
全身と言う全身の皮膚が破れ、肉がずるずるとはみ出し、穴という穴から血を噴き出しながら、時雨は、死を迎えようとしていた。
「それでも、桃香達が無事なのを教えてくれた事には、感謝するぜ」
「そ、そんな…どうして? 何故? なぜ、絶対に勝てない筈の幻想を、最強の幻想が―――こうもたやすく、破られるの…? 」
七花は、すでに決着がついたと、もはや死に体の時雨を通り過ぎようとした。
それに対し、時雨は、体中の生命活動が停止してく中で―――自身の身に起こった理不尽な現象に対し、静かに抗議した。
それを聞いた七花は、ふと立ち止まると、あっさりと答えを返した。
「簡単な事だよ。俺は確かに、姉ちゃんには勝てない。今だって、そう思ってる。けど―――」
もし、あの時、時雨と闘っていたならば、十中八九、七花は負けていただろう。
そう…もし、時雨があの一言さえ言わなければ―――!!
「―――全力を出した姉ちゃんには、負ける気がしない。というか、勝ち負け以前に、勝負にならねぇよ」
「…はっ? 」
七花の答えを聞いた瞬間、時雨は思わず、間の抜けた声を上げた。
―――訳が分からなった。
―――全力を出したから、勝負にならない?
七花の言葉が、まるで理解できずに、時雨は疑問だけが、頭の中を駆け巡った。
だが、七花が、時雨の疑問に答えてくれた。
「姉ちゃんの身体が、姉ちゃんの全力に耐えられるはずがないんだ。それは、俺がよく一番知っている事なんだから」
「な、な…!? 」
呆れたように答えた七花の言葉に、時雨は、目を見開いて、驚いた。
非戦闘集団に属する時宮時雨には、理解できないのも無理はなかった。
事実、時雨の想操術は、狙い通りの効果を発揮しており、術そのものは、間違いなく完璧だった―――そう、完璧すぎた。
鑢七実は、確かに、化け物としか言いようのない天才性を持っていた―――だが、七実の体は、その天才性を発揮するには、あまりに脆かった。
全力を出して、闘ったならば、即座に自壊してしまうほどに!!
無論、弟である七花も、その事は良く知っていた。
だからこそ、全力で襲いかかった時雨は、その弱さも含めて、再現した幻想によって、自壊する事になったのだ。
「正直な話を言えば、あんたが襲いかかってきた時に、迎え撃って、あんたを倒す事も出来た」
「…」
もはや言葉を発する事さえできない時雨に、七花は、独り言をいうように呟いた。
七花にしてみれば、一歩踏み出して、時雨の攻撃をかわしたところで、<七花八裂>を叩き込む事は出来た。
それでも、七花は、攻撃する事は出来なかった。
「けど、出来なかった。俺はもう、姉ちゃんを殺したくないから」
―――二度目は、勘弁してほしい、と呟いた七花は、時雨の死体をそのままにして、その場を後にした。
鑢七花は、勝利した―――否、勝負さえ起きなかった。
一方、劉豹の手引きにより、逃げだした桃香達は、脱出の真っ最中だった。
敵兵に見つからないように、慎重に進んでいた桃香たちだったが、曹操がある異変に気付いた。
「やっぱり、ここにもいないわね…」
物陰に隠れて移動していた曹操は、人っ子ひとりいない物静かな城の様子に首をひねった。
「えっと、曹操さん…何か変なの? 」
「これ以上になくよ。劉備…ここに来るまでに、何人の晋軍の兵を見かけたと思う? 0人よ、そんなことあると思う? 」
とここで、曹操が何か思案しているのか、気になった桃香が、尋ねてきた。
曹操は、この異常事態に気付いていない桃香に、やれやれといった様子で、答えを返した。
如何に、外の襲撃者に兵を向かわせたと言っても、誰ひとりとして、城の守りを固めないというのは、確かにおかしな話だった。
「そうだね…もっとも、城だけじゃなくて、許昌からも逃げ出したと見るべきだろうね」
「でも、それって、変じゃないですか? 折角、許昌を占拠したのに、手放すなんて…許昌を手に入れる事が目的じゃないとすれば、他にどんな理由が…」
双識もその事に気づいていたのか、まったく銃声の聞こえない事から、晋軍の兵士が既に、許昌に居ないと言う事を直感した。
許昌を手に入れる事が目的でなければ、いったい、何を企んでいるのか…桃香は、まったく見えぬ敵の思惑に困惑した。
「その事については、彼らに尋ねるのが一番の近道だろうね」
「え、え!? 」
「正面よ…ようやく、お出ましと言ったところね」
とここで、双識は、ようやく目当ての人物が現れた事に気付いた。
双識の言葉に驚く桃香に、曹操は、前の方を指さした。
「ようやく見つけましたよ、御三方。まったく、まったくもって、してやられましたよ」
「奴が何を企んでいようと関係ない…貴様らを捕らえれば、充分巻き返せる!! 」
「なるほどね…どうやら、ここにいる全員が、劉豹君にまんまと踊らされてしまったようだね」
そこにいたのは、白装束を纏った短髪の青年と眼鏡をかけた青年―――劉豹によって、置き去りにされた左慈と于吉の二人だった。
両者ともに、多少の温度差はあるものの、苛立っているようだった。
そして、双識は、左慈と于吉の様子から、全てが劉豹の謀である事を確信した。
「え、えっと…どういう事なんですか? 」
「簡単なことよ。劉豹は、そこの二人の眼を、自分から背ける為に、私達を逃がしたのよ」
事態を把握できていない桃香に、曹操は、手短に説明し始めた。
まず、手始めに、晋軍の兵士は、許昌から逃げだす民に変装して、、郭淮らを除いて、すでに許昌から抜け出していたのだ。
城の何処を探してもいないのもちろん事、七花達にやられたという報告もないのも当然だった。
すでに、晋軍の兵士は、その時点で、許昌から離脱していたのだから。
「付け加えて、劉豹君は、この襲撃という偶然の機会を活かし、実にうまく立ち回ったんだ」
そして、劉豹は、桃香達を助けに来た七花達の襲撃に際し、この偶然さえも利用しようと考えたのだ。
白装束の大部分は、七花達の迎撃に回っており、とても桃香達を探す余裕はない。
当然、左慈達が直接探すしかなく、その間は、劉豹に目を向ける間も無くなる ―――劉豹がこっそり、許昌から抜け出しとしても!!
後は、桃香達を助けに来た七花らか、後から、ここに駆けつけてくるであろう鑢軍と曹操軍に、左慈らを倒してもらえばいいだけの事―――劉豹らは、自分達の手を 汚さずに、左慈達を仕留められると言う訳なのだ。
「そして、この状況に至るというわけさ。ここに、攻めてくる鑢軍と曹操軍に、君達を倒す為の御膳だてとしては、上出来だろうね」
「ええ…ですが、こちらも、劉豹さんの思惑通りになるつもりはないですよ」
「その為に、貴様らを探していたのだからな!! 」
まんまと手玉に取った劉豹に感心する双識だったが、左慈も于吉も、劉豹の思い通りのまま、やられるつもりはなかった。
左慈達は、逃げだした桃香と曹操を人質とする事で、鑢軍と曹操軍を牽制しようと考えていたのだ。
「ふむ…随分と、小悪党な真似をするものだね。劉豹が、君達を切り捨てるのも、無理はないか」
「黙れ…!! 紛いモノの歴史に呼ばれた異分子どもの分際で!! 」
「紛いモノ? 異分子? 言葉から察するに、どうやら、僕とアスは、君達にとって招かねざる存在というみたいだね。それに、紛いモノの歴史というからには、ただ過去の世界というわけでもないと考えるべきかな」
なんとも小悪党の真似ごとをすると呆れる双識に対し、激高した左慈は、思わず怒鳴りつけた。
その際、左慈から出た言葉から、双識は、左慈らが、この世界について重大な事実を知っている事に勘づいた。
「…知る必要の無い事ですよ。時間稼ぎのつもりでしょうが、無意味ですね。鑢軍と曹操軍が、許昌に辿り着くまでに、事は済んでいますよ」
「やれやれ、随分と見くびられたものだね。まぁ、この場合は、命知らずと言うべきかな。なにせ、このマインドレンデルを相手に、二人だけで挑もうなんて思うのだから」
「ええ、確かに、そうでしょうね…もっとも―――」
なおも話を続けようとする双識に対し、于吉は、無理矢理話を打ち切ると、呪符のようなものを取り出した。
戦闘態勢に入った于吉に対し、牽制をしかける双識であったが、すでに、昨日の戦から、于吉は見抜いていた。
「―――あなたが万全の状態ならの話ですがね」
「…何のことやら? 」
「とぼけなくともいいですよ、双識さん。如何に殺人鬼と言えど、人間です。たった1日で、時宮時雨に受けた傷は治る筈ないですからね」
―――零崎双識の傷がまだ、治っていないと言う事に。
白を切ろうとする双識であったが、双識のとぼけなど意に反さず、于吉は不敵な笑みを浮かべた。
確かに、双識が、万全の状態ならば、二人がかりでも危ういかもしれないが、怪我をしたままということであれば、話は別だ。
「…気付かれちゃったみたいだね」
「傷自体は浅くとも、戦闘には充分支障が出る筈です。今のあなたなら、私と左慈だけでも、充分仕留める事は出来ますよ」
「劉備と曹操は生きていてもらわねば、困る。だが、双識…貴様は別だ」
怪我の事を指摘され、観念したように呟く双識に、于吉が嘲笑い、左慈がゆっくりと構えた。
人質として、必要なのは、あくまで、桃香と曹操だけ―――人質の価値のない双識は、どう殺そうが関係ないのだ。
「劉豹に化かされた俺達の鬱憤を晴らしたかったところだ。楽には殺さないぞ」
「随分と血気盛んなことで。けれど、そう言う台詞は、三下の小悪党が言う負けの決まり文句だと分かっているのかな? 」
「ならば…その身で存分に味わってみろ!! 」
劉豹に騙された苛立ちから残虐な笑みを浮かべる左慈に対し、双識は、尚もとぼけた様子で、呆れたように挑発した。
次の瞬間、我慢の限界に達した左慈は、一気に仕留める為、双識に襲いかかった。
必殺の拳が迫る中、双識は―――
「だからこそ、僕は待っていたのさ…わざわざ時間稼ぎをしてね」
「なっ―――ドゴォ―――がぁつ!? 」
―――わざわざ、無駄な話をしてまで、待っていた援軍が来た事を告げた。
思わず、たじろぐ左慈であったが、不意に横から飛び込んできた何者かによって、蹴り飛ばされた。
「―――間に合ったか」
「鑢七花!? 」
「ご主人様!! 」
そこにいたのは、桃香達を助ける為に、城に乗り込んできた鑢七花その人だった。
七花の登場に驚く桃香と曹操であったが、于吉達も例外ではなかった。
「虚刀流―――鑢七花!! 既に、この城に張り込んでいたというのですか。まさか、あの時間稼ぎと言うのは…!!」
「鑢七花君が、ここに辿り着くまでの時間稼ぎと言う事さ。ほぼ全ての人間が出払っているからね。大きな声を出せば、すぐに居場所を突き止めるぐらい、簡単な事さ」
左慈君のような大きな声ならね―――そう付け加えながら、双識は、駆けつけてきてくれた七花を見た。
家族を殺した相手である七花に対し思うところがないと言えばうそになるが、今は、なりふり構っている場合ではなかった。
「ところで、あんた。この白装束の連中を倒せばいいんだな」
「大まかなところはそんな感じだろうね。緊急事態だから、儒識君の仇討ちについては、後ほどと言う事にしておこうか。後、僕の名前は、零崎双識だよ」
「分かった、双識」
ひとまず、七花は、とりあえず、蹴り飛ばした左慈の姿から、左慈らが白装束の仲間である事を察して、双識に、左慈らが敵であるのかを尋ねた。
双識はそれに頷きながら、七花との共闘を提案すると、七花もあっさり承諾した。
「劉豹、双識、七花――――どいつも、こいつも、悉く討ち滅ぼす!! 」
「ここまで、プロット滅茶苦茶にされては、もはや仕方ないですね。早々にけりをつける事にしましょう」
「ひとまず、真相云々は後回しだ。華琳ちゃんの義兄ちゃんとして、久しぶりに戦うとするかな―――」
「やれるもんなら、やってみな―――」
劉豹に騙され、双識の時間稼ぎに引っ掛かり、七花に殴り飛ばされた左慈は、自身の誇りをズタズタにされ、痛むわき腹を無視するほど、怒りをあらわにしながら、咆えた。
相方である于吉も、一刻も早く、鑢軍と曹操軍の本隊が到着する前に、桃香と曹操を確保する為、もはや、なりふりを構っていられないと、双識と七花の二人を始末する事にした。
殺意をあらわにする左慈と于吉に対し、双識はとりわけとぼけた様子で、七花はいつものように構えながら、決めの文句を言った。
「―――それでは零崎を始めよう」
「―――ただし、その頃には、あんたは八つ裂きになっているだろうけどな」
殺人鬼と虚刀流―――その二人の言葉を合図に、この許昌における最大の闘いが始まった!!