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No.5286の一覧
[0] 恋姫語  (習作:恋姫無双×刀語 ちょっちオリジナル&戯言シリーズ含む)[落鳳](2010/01/03 23:15)
[1] 恋姫語第1話<否定>[落鳳](2008/12/21 15:42)
[2] 第2話<初陣>[落鳳](2008/12/23 15:53)
[3] 第三話「虚刀乱舞」[落鳳](2008/12/28 19:35)
[4] 第4話<県令任命>[落鳳](2009/10/07 23:32)
[5] 第5話<天命王道>[落鳳](2009/01/18 23:49)
[6] 第6話<日和快晴>[落鳳](2009/01/15 21:35)
[7] 第7話<日和落陽>[落鳳](2009/01/25 23:56)
[8] 第8話<剣槍演武>[落鳳](2009/02/11 21:22)
[9] 第9話<連合結成>[落鳳](2009/02/22 21:45)
[10] 第10話<汜水関決戦・前編>[落鳳](2009/03/29 00:18)
[11] 第11話<汜水関決戦・後編>[落鳳](2009/04/05 22:35)
[12] 恋姫語オリジナルキャラ設定[落鳳](2009/04/05 23:19)
[13] 第12話<天下無双・前編>[落鳳](2009/04/27 23:01)
[14] 第十二話<天下無双・中編>[落鳳](2009/05/06 15:36)
[15] 第12話<天下無双・後編>[落鳳](2009/05/25 23:27)
[16] 第13話<百花繚乱>[落鳳](2009/06/20 22:14)
[17] 第14話<洛陽事情>[落鳳](2009/07/19 23:01)
[18] 第15話<人形演武・前篇> 注意:グロ表現アリ[落鳳](2009/08/03 23:31)
[19] 第15話<人形演武・中篇> 注意:グロ表現アリ[落鳳](2009/09/05 11:07)
[20] 第15話<人形演武・後編その1>[落鳳](2009/10/06 23:05)
[22] 第15話<人形演武 後編その2>[落鳳](2009/11/03 23:31)
[23] 第16話<乱世開幕>[落鳳](2009/12/20 23:02)
[24] 恋姫語17話<日常平穏>[落鳳](2010/01/03 22:00)
[25] 恋姫語18話<怪力乱心>[落鳳](2010/01/11 22:50)
[26] 第19話<怪力合戦>[落鳳](2010/02/14 22:08)
[27] 第20話<殺人定義>[落鳳](2010/02/27 14:35)
[28] 第21話<花蝶乱舞・前篇>[落鳳](2010/03/24 23:10)
[29] 第21話<花蝶乱舞・中編>[落鳳](2010/04/07 20:43)
[30] 落鳳寄道嘘予告①<悪鬼語>[落鳳](2010/04/24 22:42)
[31] 第22話<花蝶乱舞・後編>[落鳳](2010/04/30 23:51)
[32] 恋姫語23話<風林火山>[落鳳](2010/05/16 22:53)
[33] 第24話<信念相違>[落鳳](2010/07/27 23:15)
[34] 第25話<同盟申請>[落鳳](2010/08/29 21:05)
[35] 第26話<恋娘暴走>[落鳳](2010/09/23 23:34)
[36] 第27話<張遼跋扈>[落鳳](2010/10/31 23:26)
[37] 第28話<火艶槍聖>[落鳳](2010/11/23 23:22)
[38] 第29話<回天流浪>[落鳳](2010/12/05 01:27)
[39] 第30話<裏切同盟>[落鳳](2010/12/31 22:00)
[40] 第31話<戦線崩壊>[落鳳](2011/01/10 17:34)
[41] 第32話<百万一心>[落鳳](2011/02/28 23:18)
[42] 第33話<許昌強襲>[落鳳](2011/03/31 21:04)
[43] 第34話<策謀暗躍>[落鳳](2011/04/30 17:30)
[44] 第35話<許昌決戦その1>[落鳳](2011/05/29 20:01)
[45] 恋姫語番外編 オリジナルキャラ設定集[落鳳](2011/07/31 20:59)
[46] 第36話<許昌決戦2>[落鳳](2011/08/28 22:58)
[47] 第37話<許昌決戦その3>[落鳳](2011/10/30 22:24)
[48] 第38話<許昌決戦―禅譲快諾―>[落鳳](2011/12/23 23:51)
[49] 第39話<黒幕来々>[落鳳](2012/02/29 23:28)
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[5286] 第25話<同盟申請>
Name: 落鳳◆5fe14e2a ID:bd8c6956 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/08/29 21:05
 鑢七花率いる鑢軍と曹操率いる曹操軍との戦は、一進一退の、これまでにない苛烈で、熾烈な戦となっていた。
 初戦は、魏の誇る猛将:夏侯惇と剛将:許緒、筍彧率いる曹操軍2万5千が、鑢軍が築いた前線基地に攻め込み、一時、城を奪い取られた。
 しかし、一時後退した鑢軍側の守将である黄忠(真名:紫苑)や厳顔(真名:桔梗)、魏延(真名:焔耶)、そして、星率いる鑢軍1万7千による再度の奮戦と、城に取り付けられた自爆装置を、夏侯惇が芸人魂―――もというっかりで、押した事により、崩壊した城の瓦礫に巻き込まれ、曹操軍に重傷者を多く出したことで、これを撃退する事に成功した。
 その後、紫煙らと合流した鑢軍本隊は、曹操の本拠地である許昌へ向けて、進撃を開始し、魏領内の支城や砦を攻略しつつ、侵攻をしていった。
 もっとも、連戦連勝というわけではなく、筍彧や郭嘉は、遠征軍である鑢軍にとっての最大の弱点である補給線を狙い、変態だけど強い殺人鬼:双識や神速と名高い張遼を中心とした部隊でゲリラ戦を仕掛けた。
 そのため、鑢軍は、何度か補給線を寸断され、兵士らが疲弊したところを一斉に襲われるなど、手痛い敗北を幾度か受ける事になった。
 互いに譲らぬ互角の戦―――君主である七花を筆頭に有能な武将を多く持つ鑢軍も、大国としての力を総動員し、迎え撃つ曹操率いる曹操軍も決め手となる一手が打てずにいた。

「―――以上が、鑢軍と曹操軍の戦に関する動向なのですが」
「まさか、あの小国が、曹操軍と互角に渡り合えるまでになるとは、油断ならんな…」

 地図を広げながら、周辺諸国の状況についての説明をする陸遜の話を、聞きながら、呉の当主である孫権は、口に手を当てながら、喉を唸らせた。
 今や、名実ともに大国と言って差し支えない魏を相手に、互角の戦に持ち込んだ幽州に居を構える鑢軍に予想外の驚きを感じていた。

「それで、呉としては、どのように動くかですけど…」
「そうだな…今後の事を考えると、魏と同盟を結んだとしても、旨みはないか。とはいえ、中立を守ると言う訳にも行きませんから…」

 今後の事をどうするかという陸遜の言葉に、呉の正軍師である周愉は、即座に魏との同盟とこのまま中立の立場を取ると言う選択肢を消した。
 大国である魏と同盟したところで、良いように使われ、鑢軍を倒した後、攻め込まれる可能性が高い。
 とはいえ、このまま、両者の争うに我関せずと中立の立場をとるなら、勝ち残った方の餌食になるだけだ。
 ならば、残された手段は…

「では、やはり、鑢軍との同盟しかないか」
「そうじゃな…じゃが、こき使われるのだけは、勘弁してほしいところだがのう」
「あ~それは、ありえそうですねぇ…」

 鑢軍と同盟を結ぶ―――孫権の言葉に、初代当主である孫堅の頃から使える重臣の一人:黄蓋は、一応は納得するものの、利用されるだけ利用される事に対し懸念し、否定姫のやり口を反董卓連合にて体験している陸遜も、黄蓋の意見に賛同した。

「何とか、対等な関係での同盟を結べればいいのですが…あのぉ…」
「…呉には、人外めいた武を持つ者が、少ない故か」

 理想としては、一方的に不利な同盟を避けたいところだが、どうもできない問題があるため、口ごもる陸遜であったが、孫権はため息を吐きつつ、はっきりと言い切った。
 現在、呉には、優れた軍師や文官を多く抱えているものの、孫権の懐刀である元江賊の甘寧や、潜入任務や隠密任務に長けた周泰、弓矢の扱いに長けた黄蓋を除けば、武に優れた人材に乏しかった。
 対する鑢軍は、君主である七花を筆頭に、呂布や関羽など武に優れた武将を多く抱えていた。
 もし、力で訴えられたら、こちらに対抗する手立てなど無い。
 まあ、一応ではあるが、鑢軍の武将達に対抗できるかもしれない人材はいるにはいるが…

「一応、わしらにも居るにはいるのだが、あやつは気紛れだからのう」
「気まぐれと言う限度を超えています。今日だって、軍議だというのに姿を―――四(よん)だか?―――なっ!?」

 その人材の事を思い浮かべながら、苦笑する黄蓋に対し、静かに軍議を聞いていた甘寧は、不意に忌々しげに顔をしかめた。
 真庭白鷺―――任務成功率十割という驚異の数字を誇る有能なしのびではあるが、あまりにも他者と噛み合わない為、呉の武将や文官はもちろんのこと、呉の王である孫権ですら、出来れば関わりたくないほどの、少々扱いづらい人物でもあるのだ。
 毎度のことながら、軍議に姿を見せない白鷺に、不満の声を上げる甘寧であったが、突如、聞こえた周囲を不愉快にさせるような独特の発音―――いつの間にか、部屋の入口に立っていた真庭白鷺の声に、思わず驚きの声を上げた。

「…白鷺、今まで、何処にいたんだ?」
「蔑に異うほどの琴でもない。名煮(なに)、ちょっとした参補(さんぽ)だ。」
「…それは、軍議に遅刻するほど、重要なことか」
「血哭(ちこく)?ああ、そういえば、そうだな。うっかり、うっかり、和瑠(わる)かった」

 君主の咎めるような詰問にさえ、動揺するどころか、まるで反省の色さえ見えない白鷺の言葉に、はぁとため息を吐きつつ、孫権は肩を落とすしかなかった。
 何時もの事だが、やはり慣れない―――誰かを立てることもなく、慮る事もない傲岸不遜な白鷺は、生真面目な孫権にとって、もっとも苦手とする相手だった。

「貴様、今、この大事な時期に…!!そうでなくとも、蓮華様の前で、無礼がすぎるぞ!!」
「歩零(ぶれい)?藻図(もと)壊属(かいぞく)からそんなことが奇(き)けるとはな。まあいい、そんなことより、尾喪城(おもしろ)い矢津(やつ)を吊れてきた。亜うだけ亜ってやれ」
「面白い奴だと?」

 そんな白鷺の態度に、孫権に忠節を誓う甘寧は、いきり立って、白鷺を睨みながら、怒鳴りつけた。
 もっとも、白鷺は、甘寧の怒りさえも軽口をたたきながら、聞き流すと、用件を思い出し、部屋の入口の方へ、顎で指した。
 白鷺の言う面白い奴―――大凡、碌でもない輩かと、怪訝そうな顔しながら、周愉が呟くと―――。

「どうも歓迎されていないみたいですけど…いいんですかね?」
「蚊舞(かま)うことはない。折の土岐(とき)もそうだった」
「「「「「「―――っ!!」」」」」」

―――次の瞬間、その場にいた全員が、思わず息をのんだ。
 現れたのは、声から察した通り、十歳前後の子供だった。
 見慣れない服―――子供らしい半ズボンと大人しめのシャツを着た、黒髪が長く、一見しただけでは、少女と間違えそうな、血も凍るような美しさを兼ね備えた少年だった。
 唯一、少年がその両手で握って、肩に乗せている、水玉模様の大鎌が異彩を放っていた。
 だが、孫権をはじめとする全員が、驚いたのは、少年の容姿ではなく、彼の抱える異質なモノを感じてしまったからだ。
 それは、戦場に於いて大いにその力を発揮するであろう神―――

「まあ、とりあえず、名乗らせてもらう事にしましょうか―――こんにちは、お姉さん。僕は石凪萌太というものです」

―――魂を冥府へと誘う死神だった。
 <殺し名>序列七位の登場を持って、恋姫語はじまり、はじまり


                           第25話<同盟申請>


―――数日後
 呉の使者と名乗る少女が、鑢軍を訪れたのは、曹操軍との一大決戦の為に許昌を目指す鑢軍が、現在、物資の補給や遠征の疲れを癒す為に、攻め落とした支城にて、休憩を取っていた時のことだった。

「同盟?」
「はい、呉王孫権様から、鑢七花殿に対し同盟を申し込みたいとのことです。早急に返事を頂きたいのですが…」

 思わず聞き返した七花の言葉に、呉からの使者である片眼鏡をかけた眼光の鋭い少女―――呂蒙は大きくうなずいた。
 ちなみに、今回の遠征には、否定姫は参加しておらず、別件の用があるとのことで、幽州にて、白蓮や麗羽(袁紹の真名)らと共に留守を任されていた。
 故に決定権は、七花と桃香に任されることになったのだが…

「どう思う、桃香?」
「う~ん、私としては、孫権さんの力を借りられるなら、いいと思うんだけど…」

 やはりこういった政略面に対する知識と経験に乏しいに二人には、すぐに決める事ができず、使者である呂蒙には、別の陣で待ってもらい、急遽、愛紗・鈴々、朱里達全員を集め、軍議を開くことになった。

「確かに、魏に対抗する為に、呉が、私達と同盟を組むのは、正しい判断です」
「でもさぁ、朱里?それなら、魏と同盟を組んだって一緒じゃねぇか?むしろ、そっちの方が、勝算がありそうだと思うんだけど」

 ひとまず、七花と桃香が、呉の使者である呂蒙が鑢軍との同盟を結ぶ為に、やってきた事を説明したところ、否定姫の代わりとして、正軍師を務める朱里が、深くうなずきながら、呉との同盟について、鑢軍にとって有益なものになると判断した。
 もっとも、七花にとっては、まだ理解しがたいのか、呉にとっては、魏と組んだ方がいいのではないかという意見を出すが、副軍師である雛里が静かに首を横に振った。

「いえ、それだと、同盟を結ぶ意味がないです。自分達より強大な勢力と同盟を結んで、勝利を収めたとしても、結局、同盟国の意のままに動かされるだけなんです。それに、呉が、魏と同盟を結んだとしても、私達を倒したとしても、魏が呉を攻め込まない保証もないですし」
「だから、私達と同盟を組みたいんでしょうね。もっとも、素直に同盟を組めるかと言えば、疑問なんだけど…」

 呉がなぜ、鑢軍と同盟を結ぶのかを詳しく説明した雛里ではあったが、同じく副軍師である詠は、呉との同盟の意義については、賛成ではあるものの、ある可能性を示唆しつつ、険しい表情でうつむいた。
 それに気付いたのは、星だった。

「…魏を倒した後に、傷のいえない内に、我らを叩く可能性もあるということだな、詠殿」
「うん、その可能性は否定できないと思う」

 なるほどといった表情で指摘する星の言葉に、詠はすぐさまそのとおりと肯定し、頷いた。
 確かに、同盟中は、互いに協力関係ではあるものの、あくまでそれは魏という共通の敵を倒す間だけの話だ。
 魏を倒したならば、すぐさま、敵対者として対峙しなければならない可能性だってあるのだ。

「何ぃ、桃香様の信頼を裏切るだと!!許せん!!即刻、使者とやらを叩きだ、いたっ!!」
「落ち着かんか!!あくまで、可能性の問題と言うとろうが!!」
「脳筋女は、これだから…でも、確かに無視できないよね…」
「後から、裏切られるのは嫌なのだ…」

 星と雛里の言葉に、真っ先に反応したのは、焔耶だった。
 すぐさま、いきり立ちながら、怒り心頭で席を立とうとするも、抑え役である桔梗の物理的強制阻止―――後頭部を狙った後ろ廻し蹴りによって、すぐさま抑えられた。
 その様子を呆れた表情で馬鹿にする蒲公英であったが、呉との同盟についての不安要素に対する意見は同じだった。
 鈴々の方も、裏切られる可能性があるのではと、頬を膨らませながら、不満の声を上げた。

「でもさ、今の私たちじゃ、魏と戦うっつーの苦労だろ?だったら、同盟もありじゃねぇかな?」
「そうね、例え、裏切られたとしても、それを計算に入れたうえで、行動すれば、被害を最小限に抑えられるわ」
「そうだな…乱世に苦しむ民を一刻も早く救う為ならば、この申し出をむざむざ断るわけにもいくまい」

 しかし、今のまま、鑢軍単独で魏を打ち倒すのは、至難であるのも、また事実であるのだ。
 曹操を仇としている翠は、確実に勝てる一手が欲しいということで、紫苑も最悪の可能性を考えたうえで、動くならばという事で、愛紗もそれが乱世を終わらせる最善の方法という事で、呉との同盟に賛成の意を唱えた。
 同盟を組むか、組まないか―――鑢軍の中で意見が分かれるが、それを決めたのは、桃香だった。

「ご主人様。この同盟…結んでみようよ」
「…いいのか?」
「うん。まずは、信じることから始めないと。そうじゃなきゃ…私は、双識さんの言うとおり、口だけで、一歩も進んでいない事になるから」

 真剣な顔つきで問い返す七花に、桃香も真剣な表情でうなずいた。
あの秘密会談の時から、桃香は、考えていた―――どうしたら、皆が笑顔で暮らせる平和な国を作っていけるのかを。
 どうすればいいのか、まだ、分からないけど…少なくともただ言葉だけでは、双識の言うとおり、口だけの理想になってしまう。
 呉との同盟は、桃香にとって、乱世を終わらせ、国と国同士が手を取り合う為の第一歩―――戦の為ではあるが、それでも、桃香の目指すモノを知るために必要なことだった。

―――数十分後

「俺達は、呉と同盟を組むことにしたぜ。孫権にはそう伝えておいてくれ」
「あ、ありがとうございます!!えっと、つきましては、同盟を確かなものとする為に、後日、孫権様との会談と―――」

 とりあえず、魏との戦を早く終わらせることと、呉が裏切った時の対処をすることで、七花達は、呉との同盟を結ぶことにした。
 どうにか、同盟を結ぶことが出来た呂蒙は、安堵の笑顔を見せながら、何度も頭を下げた後、魏との戦での連携と同盟関係をより親密にする為に、今後の予定を説明した。
 そして、ある一言が、七花を含めたこの場にいる鑢軍全員を大きく驚かせることになった。

「―――孫家の姫君であられる尚香様が、七花殿に嫁ぐための見合いを行いたいと思います」
「「「「「「「「………………えっ!?」」」」」」」」」
「え、え、え、ちょ、見合いって、嫁ぐって…ええええ!!」

 呂蒙の、予想外もしていなかった言葉に、驚きのあまり思わず硬直する武将達と、何が起こったのか付いていけず、ただ驚くしかない七花―――つまるところ、これは、こちらは絶対裏切らないという意思表示を含めた、呉からの政略結婚の申し入れだった。

―――魏領内:長安
 一方、魏の領内にて諜報活動をしていた蝙蝠は、鑢軍への領内へ戻る道中、長安に魏の軍勢らしき一団が入城したとの情報を入手した。
 多少、本来の任務とは外れるものの、ちょっとした手土産兼小遣い稼ぎということで、蝙蝠はその足で長安に赴く事になった。
 そして―――

「おいおい…どういう冗談だよ…」

 蝙蝠にとって、手土産の範囲を超えるモノを見る羽目になった。
 確かに、入手した情報どおり、長安の城内には、出陣の準備に取り掛かる魏の軍勢らしき一団がいた。
 だが、問題は、魏の軍勢らしき一団が長安にいたことではなく、その一団の兵士一人一人の装備に合った。

「確か、ここは、魏だよな…大昔なんだよな…何で、日本の鎧武者がわんさかいるんだ?何で、火縄銃で武装した兵士がいるんだよ!?」

 普段は見られない、驚きともいえる表情を浮かべた蝙蝠の眼下では、城の中を、戦国時代の、日本製の鎧を着た上官らしき男が、戦国時代の、下級武士用の鎧を着た部下らしき男に、三千丁は有ろうかと思われる大量の火縄式銃を用意させていた。
 もし、戦国時代の日本であったならば、この光景も普通だったのであろうが、ここは三国志時代の中国である―――火縄銃は、もちろんのこと、戦国時代の鎧兜を生み出す鋳造技術など、この時代のどこの国だってありえないはずなのだ。
 だが、鑢軍に所属する蝙蝠にとっては、それ以上の問題があった。

「…一刻もはやく戻る必要があるな」

 それは、この軍団についての情報が、諜報活動に徹してきた自分や否定姫が全く知らなかったという事にあった。
 まず、どうして、知らないのか?
 魏が長安で情報封鎖をしているからだ。
 次に、何のために?
 恐らく、この時代における最強と言ってもおかしくない強力な軍団がいることを隠す為だ。
 そして、隠して、どうする?
 それは―――!!

「隠しておいたこの軍を、今、魏と鑢軍の戦いに、横やりを入れられる前に―――!!」

 隠しておいた長安の軍団を、魏軍と鑢軍の戦に、投入する為に決まっている!!
 現在、魏軍と鑢軍が、一進一退の拮抗状態になっているならば、この軍団の参入で、勝負が魏軍の勝利という結末を迎えかねない。
 故に、蝙蝠は、急いで、その場から立ち去ろうとした瞬間―――

「お還りなさいませ、ご主人様」
「―――っ!!」

 まるで蝙蝠を出迎えるように、驚愕の表情を浮かべた蝙蝠の背後に、何かが現れた。
 蝙蝠が驚いたのは、真庭忍軍の頭領である自分の背後を簡単に取られたから―――ではなく、自分の背後にいる何かから殺気や気配といったものが、背後にいる何かに気付いた後も、まったく感じられなかったから、それも蝙蝠が何度も経験した事のある感覚だったからだ。
 まさかと思いつつ、振り返った蝙蝠が目にしたのは、見慣れない西洋風の服――― 現代で言うなら、メイド服を着たメイドがいた。
 そのメイドは戸惑う蝙蝠に構うことなく―――

「逝ってらっしゃいませ、ご主人様」
「っと、やっぱり、そうか―――!!」

 ―――手のひらから、銃弾を発砲した。
 すぐさま、蝙蝠も、咄嗟に口の中に隠していた棒手裏剣を噴き出し、銃弾の弾道を辛うじて逸らし、すれすれで避ける事が出来た。
 何も知らない状態であったならば、すぐさま、対応できなかったが、手のひらから銃弾を撃ち出したメイドの正体に心当たりがあったために、動揺することなく、避けられた。
 だが、このメイドの正体がそうであるなら、卑怯卑劣を得意とする忍者である蝙蝠にとって、最悪の相性である天敵ということになるのだ。
 そんな蝙蝠の予想を肯定するかのように、メイドの手首が取り外され―――その手首の内側から鋭く細い抜き身の剣がとび出してきた。

「おいおい、どういう仕掛けなんだよ」
「申し遅れました、ご主人様―――」

 大凡人間離れした仕掛けに、蝙蝠はうんざりした表情で呟くと、そのメイドはお辞儀をしながら、自己紹介をした。
 蝙蝠の予想は当たっていた―――。

「―――わたくし、メイドロボの、由比ヶ浜ぷに子と申します」

 このメイド―――由比ヶ浜ぷに子は、日和号と同じからくり人形だということに!!

「以後お見知りおきを」
「できれば、遠慮してぇよ!!」

 言うが早いか、蝙蝠はすぐさま、丁寧なお辞儀をするぷに子を跳びこすと、そのまま振り返ることなく、一気に逃げだした。
 蝙蝠には、真っ向勝負はもちろんのこと、卑怯卑劣の勝負という選択肢すらなかった。
 なぜなら、日和号と共通している事だが、意思や思考を持たないからくり人形に、意表を突く為の不意打ちや裏をかいた騙し打ちなんぞ通用するはずもない。
 故に、不意打ちや騙し打ちに特化した忍者にとって、からくり人形ほど戦闘を回避しなければならない相手は存在しないのだ!!

「お待ちください、ご主人様」
「誰が待つかよ!!」

 当然のことながら、侵入者を逃がす選択肢などからくり人形であるぷに子はあるはずもなく―――靴に取り付けられた車輪を唸らせ、手のひらから次々に銃弾を発射しながら、侵入者である蝙蝠を抹殺せんと追跡を開始した。
 後ろから撃たれる銃弾を回避しながら、追いかけてくるぷに子に悪態をつく蝙蝠であったが、何としても、逃げ続け、逃げ切るしかなかった。
 できうる限り、少しでも、長く敵を引きつけ、長安に足止めさせる為に、少しでも、早く、鑢軍に合流し、長安にいる謎の軍団についての情報を届ける為に―――!!
 ―――事の結論からいえば、蝙蝠は、ぷに子や警備兵らに追われながらも、半数以上の敵軍団を足止めしつつ、辛くも長安から命からがら脱出する事が出来た。
 代償として、半数以下の敵軍が長安から出撃した事と、その敵軍が鑢軍と魏軍との戦に介入する前に、鑢軍と合流できなった事という致命的な代償を支払う事になったが。


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