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No.5286の一覧
[0] 恋姫語  (習作:恋姫無双×刀語 ちょっちオリジナル&戯言シリーズ含む)[落鳳](2010/01/03 23:15)
[1] 恋姫語第1話<否定>[落鳳](2008/12/21 15:42)
[2] 第2話<初陣>[落鳳](2008/12/23 15:53)
[3] 第三話「虚刀乱舞」[落鳳](2008/12/28 19:35)
[4] 第4話<県令任命>[落鳳](2009/10/07 23:32)
[5] 第5話<天命王道>[落鳳](2009/01/18 23:49)
[6] 第6話<日和快晴>[落鳳](2009/01/15 21:35)
[7] 第7話<日和落陽>[落鳳](2009/01/25 23:56)
[8] 第8話<剣槍演武>[落鳳](2009/02/11 21:22)
[9] 第9話<連合結成>[落鳳](2009/02/22 21:45)
[10] 第10話<汜水関決戦・前編>[落鳳](2009/03/29 00:18)
[11] 第11話<汜水関決戦・後編>[落鳳](2009/04/05 22:35)
[12] 恋姫語オリジナルキャラ設定[落鳳](2009/04/05 23:19)
[13] 第12話<天下無双・前編>[落鳳](2009/04/27 23:01)
[14] 第十二話<天下無双・中編>[落鳳](2009/05/06 15:36)
[15] 第12話<天下無双・後編>[落鳳](2009/05/25 23:27)
[16] 第13話<百花繚乱>[落鳳](2009/06/20 22:14)
[17] 第14話<洛陽事情>[落鳳](2009/07/19 23:01)
[18] 第15話<人形演武・前篇> 注意:グロ表現アリ[落鳳](2009/08/03 23:31)
[19] 第15話<人形演武・中篇> 注意:グロ表現アリ[落鳳](2009/09/05 11:07)
[20] 第15話<人形演武・後編その1>[落鳳](2009/10/06 23:05)
[22] 第15話<人形演武 後編その2>[落鳳](2009/11/03 23:31)
[23] 第16話<乱世開幕>[落鳳](2009/12/20 23:02)
[24] 恋姫語17話<日常平穏>[落鳳](2010/01/03 22:00)
[25] 恋姫語18話<怪力乱心>[落鳳](2010/01/11 22:50)
[26] 第19話<怪力合戦>[落鳳](2010/02/14 22:08)
[27] 第20話<殺人定義>[落鳳](2010/02/27 14:35)
[28] 第21話<花蝶乱舞・前篇>[落鳳](2010/03/24 23:10)
[29] 第21話<花蝶乱舞・中編>[落鳳](2010/04/07 20:43)
[30] 落鳳寄道嘘予告①<悪鬼語>[落鳳](2010/04/24 22:42)
[31] 第22話<花蝶乱舞・後編>[落鳳](2010/04/30 23:51)
[32] 恋姫語23話<風林火山>[落鳳](2010/05/16 22:53)
[33] 第24話<信念相違>[落鳳](2010/07/27 23:15)
[34] 第25話<同盟申請>[落鳳](2010/08/29 21:05)
[35] 第26話<恋娘暴走>[落鳳](2010/09/23 23:34)
[36] 第27話<張遼跋扈>[落鳳](2010/10/31 23:26)
[37] 第28話<火艶槍聖>[落鳳](2010/11/23 23:22)
[38] 第29話<回天流浪>[落鳳](2010/12/05 01:27)
[39] 第30話<裏切同盟>[落鳳](2010/12/31 22:00)
[40] 第31話<戦線崩壊>[落鳳](2011/01/10 17:34)
[41] 第32話<百万一心>[落鳳](2011/02/28 23:18)
[42] 第33話<許昌強襲>[落鳳](2011/03/31 21:04)
[43] 第34話<策謀暗躍>[落鳳](2011/04/30 17:30)
[44] 第35話<許昌決戦その1>[落鳳](2011/05/29 20:01)
[45] 恋姫語番外編 オリジナルキャラ設定集[落鳳](2011/07/31 20:59)
[46] 第36話<許昌決戦2>[落鳳](2011/08/28 22:58)
[47] 第37話<許昌決戦その3>[落鳳](2011/10/30 22:24)
[48] 第38話<許昌決戦―禅譲快諾―>[落鳳](2011/12/23 23:51)
[49] 第39話<黒幕来々>[落鳳](2012/02/29 23:28)
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[5286] 第15話<人形演武・後編その1>
Name: 落鳳◆5fe14e2a ID:bd8c6956 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/10/06 23:05
 ―――洛陽付近
 七花達が、李儒の操る人形らに襲撃されている頃、洛陽付近で待機していた連合軍に対しても、李儒の操る人形たちは攻撃を仕掛け、敵味方が入り乱れての乱戦状態となっていた。

「はぁ!!これで、14体目…まったく、二回も人形と遣り合うとは…!!」
「まったくだ…!!今度の人形は、日和号よりましなようだが…」

 愚痴をもらしながら星は、迫りくる人形達をひらりひらりと華麗にかわしながら、槍を振い、鋭い一撃でもって、手足を破壊していった
 これに負けじと、公孫讃も白馬義従らを引き連れ、鑢軍と連携しながら、迫りくる人形達を次々と討ちとっていく。
 動き自体は緩慢で、行動基準も日和号に比べれば、単調であるため、冷静に対処すれば、やすやすと倒せるのだが…

「しかし、こやつら、それほど強くないとはいえ、少々厄介ですな」
「そうだな。何せ、相手は人形だ…死というものがないからな…!!」

 星と公孫讃の言葉を肯定するように、頭を貫かれた人形や、腕を斬り落とされた人形、上半身と下半身が分断された人形など、人形たちは亡者のごとく立ち上がり、再び襲いかかってきた。
 たとえ、頭を砕かれようが、胴を切り捨てられようが、人間のように死なない人形は、完全に破壊しない限り、何度でも戦える。
対するこちらは、生身の人間、疲れもすれば、傷つきもする。
 このまま持久戦に持ち込まれた場合、屈強な兵士といえども、疲労と怪我により動きも鈍くなり、疲れ知らずの人形らに攻められれば、流れが一気に変わり、連合軍そのものが瓦解しかねない。

「しかも、人形の中に、人質まで紛れ込ませてあるという徹底ぶり…なんとも小悪党なものだな」
「くっ…七花や桃香らは、大丈夫だろうか…無事であるといいんだが」
「そうですな…まぁ、こちらも心配する余裕もないでしょうが…!!」

 先に洛陽に侵入した七花らの安否を心配する公孫讃をよそに、星は再び人形たちに向って飛び出し―――殺到する人形達が、何かがはじけ飛ぶ音とともに宙を舞った。

「何が起こったんだ…?」
「もしや、主殿達が…」

 いぶかしむ趙雲と公孫讃だったが、捲き上がった砂煙がおさまると、そこには、七花らとともに同行した汜水関において活躍した驢馬:的櫨とそして、桃香だった。

「「桃香(様)!!」」
「星さん、白蓮ちゃん!!否定姫さんからの伝言、伝えにきたよ!!まず―――」

洛陽決戦もいよいよ終盤というところで、恋姫語、はじまり、はじまり


                     第15話<人形演武・後編その1>


 ―――連合軍本陣
「報告!!魏軍、呉軍の主力部隊が押されています!!」
「報告!!袁術軍並びにわが軍の左翼部隊が壊走をはじめました!!」
「報告!!洛陽から続々と人形たちが溢れんばかりに出撃しています!!」

 慌ただしく本陣に駆け込んでくる兵士らの報告は、状況が悪化してることを如実に表していた。

「きぃいい!!何なんですの、あれは!?あのような物があるなんて聞いてませんわよ!!それよりも、さっさと蹴散らすように曹操さん達に伝えなさい!!」
「し、しかし…敵は、人形の中に洛陽の民を紛れ込ませているらしく、迂闊に手を出せずに…下手に攻撃をすれば、人質を巻き込みかねません」
「猪口才な真似を…」

 悔しさの余り、歯ぎしりする袁紹であったが、良い作戦が浮かぶわけもなく、ただ喚き散らすしかなかった。
 とそのとき、前線で指揮を執っていた曹操と孫権、雛里が、状況を打破するために、本陣の方へ駈け込んで来た。

「麗羽(袁紹の真名)いるわね。敵の攻勢が激しくなってきているわ。このままだと、全滅するわよ」
「今は、前線で押しとどめているが、正直どこまでもつか…」
「あわわ…人形達が甦ってしまので、兵たちの士気も落ちています」
「わ、分っています!!ですが、人質が…」
「ぬるい!!」
「ひっ!!」

 思わぬ曹操の鋭い𠮟咤に、袁紹は、曹操の気迫の押されて、思わず悲鳴を上げた。

「ぬるすぎるわよ、麗羽。敵の攻勢が激しくなる以上、こちらも奴らより早く激しく攻勢に出るしかないわよ。時間が経つほど、生身の人間のこっちが不利になるのよ」
「むう、で、では…」
「待て!!それでは、連合軍の大義はどうなる!!我らは、圧政に苦しむ洛陽の民を董卓から救いに来たのだぞ。それが、民を巻き込んでしまえば、連合軍の名目、存在意義そのものを失いかねないぞ!!」
「むむむ…」

 民の犠牲を出すことを懸念する孫権に、全軍総攻撃の指示を出そうとした袁紹はまたもや、言葉を詰まらせた。
 孫権の言葉にも一理ある。
 確かに、この連合軍は、圧政を行う董卓を討伐し、民を救いだすという大義のもと、結成されたのだ。
 その連合軍が、民への犠牲をいとわず、攻撃すれば、たとえ、勝利を得たとしても、世評は連合軍を非難するものになりかねない。
 これでは、本末転倒である。

「甘いわよ、孫権。すでに洛陽の民のほぼ全てが敵に回っているのよ。練度が低くても、数に勝っていた連合軍の唯一の利が失われた以上、なりふり構っていられないわよ」
「だが、あの中には、まだ、生存者だっている…それを見捨てるなど…恥を知れ!!」
「結構よ!!でもね、理想じゃ戦に勝てないわよ。先々代と先代なら迷うことなく、英断を下していたわよ」
「貴様ぁ!!私を侮辱するつもりかぁ!!」
「あわわ!!孫権さん、曹操さん、落ち着いてください!!」

 意見が真っ二つに分かれ、互いに譲ろうとしない曹操と孫権が、激しく口論をする中で、ついには、お互いの得物に手を伸ばすのを見て、雛里が小さな体をはって、それを押しとどめようとしたその時…

「要するに、人質を傷つけることなく、人形達をやつければいいんですね~」
「だから、それができれば苦労は…って、誰?」

 聞きなれない第5者の声に、思わず一同は声のした方に目を向けた。
 そこにいたのは、刀身が黒い抜き身の刀を背中に差し、全体が黒と赤で構成された変わった衣装の着物を羽織りながら、満面の笑みを浮かべた少女が堂々と立っていた。

「あややや…申し遅れましたですぅ。私、曹操様のところで、軍師をさせてもらっている、魔法狼顧少女、性は司馬、名は懿 字名は仲達と言うですぅ」
「司馬?聞きなれませんけど、華琳さん、あなたの配下で?」
「一応ね…」
「?」

 普段ならめったに人前で見せることのない曹操の渋面顔に、幼馴染である袁紹は首をかしげた。
 有能な才或いは稀有な才を持つ者(女性限定)を愛し、思想身分にかかわらず、人材蒐集するあの曹操の配下であるならば、司馬懿という少女も相当優秀であるはず…。
 だが、曹操の様子を見る限りでは、何やら問題を抱えている気もしないではないが…。
 いぶかしむ袁紹だったが、話の腰を折られた孫権は、苛立たしげに司馬懿向け、値踏みするように睨みつけた。

「で、司馬懿と言ったか?先の言葉、人質を傷つけず、人形を討ち取る手段があるようにみえるが…ふざけた戯言ならば、早々に立ち去れ」
「おっかないですぅ~ちょっとばかり、お時間を頂ければ、見事にやり遂げてみせるですぅ。ですから…」

とここで、司馬懿は懐に隠していた仮面を被り、先ほどの笑みとは明らかに違う―――少女らしさがまったくない、極めて嘲笑を込めた表情で、孫権に言い返した。

「ちゃちゃっと、軍を退かせな、三代目殿」


―――洛陽:市街地中央

「でええええぃ!!」
「うりゃりゃりゃりゃ!!」

董卓を人質にとり、逃走した李儒の行方を追う七花らは、愛沙と鈴々、七花らの三人が各々武器を手に、立ちはだかる人形達を蹴散らし、どうにか市街地の中央までたどり着いていた。

「どうにか、ここまでたどり着いたが…くそ、遣りづらい」
「敵の数が多すぎなのだ~」

しかし、いくら倒しても次々と現れる人形達の前に、最前線で戦う愛沙や鈴々、七花をはじめ、鑢軍の兵士らにも疲労の色が見え始めていた。
というのも、人形の中に人形に変装させられた人質である洛陽の民が紛れ込んでおり、どうしても、受け身にならざるをえず、結果として、体力の消費を招いていた。

「はわわわ、さすがに皆さん、疲れてきています。」
「そうね。このままだと、桃香が戻ってくる前に、全滅しかねないわね…」

休みなしの繰り返される戦闘に疲労していく武将や兵士たちを前に、朱里と否定姫は、どうすることもできず、先ほど送り出した桃香に頼んだ例の物を待つしかなかった。
とここで、宮殿に続く道から新手の人形達がこちらに向かってきた。

「ちっ、見つかったか!!関羽、やるぞ!!」
「了解した!!我が身命を賭け、奴らを蹴散らすぞ!!」
「おう、なのだ―――!!」

七花の声に応じるように、愛沙と鈴々は、息を整えると、再び武器を構え、こちらに迫ってくる人形達と刃を交える―――

「人間、発見。即刻、排除」
「来たわね」

―――瞬間、本隊に合流した桃香が送り出した<援軍>が、否定姫の声に応じるように、何か金属音を奏でながら、上空からやってきた


―――洛陽:王宮屋根の上

「さて、戦闘開始から大分経ちましたが…戦況の様子はどうですかねっと…」

戦を起こす者としては、緊張感がまるでない言葉を呟きながら、洛陽全体を見渡せる王宮の屋根からあちこちで刃と刃がぶつかり合う音と悲鳴や雄たけびを聞き、戦場となった洛陽を見渡した。
舞台を盛り上げる為の役者として連れて来た董卓を除けば、この王宮には誰もいない。

「李儒さん…お願いです。もう、こんなこと、止めてください!!私が、私が…」
「いやまぁ、お願いされるのはいいんですけど…これも、仕事のうちなので…」
「そんな…」

二体の人形に抑えつけられながらも、懇願するように李儒を止めようとする董卓であったが、当の李儒は、そんなつもりはまったくないのか、いつものように笑顔でやんわりと断った。
李儒の言葉に悲しみのあまり項垂れる董卓だったが、李儒の言葉によって、さらなる絶望に突き落とされることになった。

「でもまぁ、これ、聞いたら、怒ると思うんで、今のうちに白状しますがね」
「え?」
「董卓さんを抑えつけている人形…それ、あなたのご両親なんですよね」
「!!」

李儒の言葉に耳を疑い、或いは悪い冗談だと思いながら、董卓は自分を抑えつけている人形を見た。
まぎれもなくそれは、人形だった―――中身を丸ごと使って、董卓の両親を似せて作った人形だった。

「いやぁああああああああ!あ…」

人質に取られていた両親が既に殺されて、人形として作り変えられたと知り、董卓は悲鳴をあげながら、衝撃的な事実を前に気雑することとなった。
だが、李儒はやれやれといった表情で、見届けると、すぐさま、興味を無くし、戦場の方へと目を向けた。

「さて、まずは、洛陽の外の方はっと…」


――――洛陽の外で人形達が連合軍と戦っている戦場では…

「どうもどうもですぅ~おかげで、準備は整ったですぅ」
「良かったのです、華琳さん?」
「良くないわね。でも、ここは任せるしかないわね。例え、インチキ臭くても」

もはや慣れているのかやれやれといった表情で曹操は、こちらへと向かってくる人形達を尻目に、見たことない鎧と鳥のような面をつけた兵士―――司馬懿直属の私兵:<狼人>らを整列させる少女に目を向けた。
司馬懿―――黄巾党での一件で、曹操軍に仕えた後、司馬懿は自身の配下と共に、各地に飛び回り、領内を荒らす盗賊や黄巾党の残党を打ち破り、曹操配下の武将たちからも一目置かれる存在となっていた。
それは、漢王朝を悩ませてきた異民族集団:五胡との繋がりや敵味方に恐れられる恐怖の平和主義者を独自の配下としていることもさることながら、一つの肉体に二つの精神を持つ司馬懿の特性だった。
一つは、軍議に割り込む際に見せた、筍彧や郭嘉をも唸らせる知略と人前で堂々と魔法少女と名乗る少女じみた天真爛漫さを持ち合わせた少女としての人格。
そして、仮面をかぶることで人格を交代し、現れるもう一つ人格…君主である曹操にすら軽口を叩く傲岸不遜さもさることながら、森羅万象の全てを的中させる驚異の読みを持つ、極めて否定的な性格をした男としての人格。
司馬懿は、二つの人格を互いに組み合わせ、使い分けることで多くの戦果をあげてきたのだ。

(さぁ、今度はいかにこの窮地を打ち破るのか、お手並み拝見ね。失敗すればただじゃ、すまないわよ…)

すでに連合軍のほぼ全てが突然の後退命令に不信と不満を抱きつつも、後方まで後退している。
もしここで、宣言通り、状況を打開できなければ、死罪は免れない…

「大丈夫ですよ、曹操様v」
「!?」

司馬懿の言葉に曹操は思わず息をのんだ。
まるで、曹操の心を読んだかのように答えた司馬懿は、東方より伝わる巫女服(袖なし)に着替えると、愛用の扇子(烏の羽を使用)を構える。
先ほどまでの天真爛漫さはなりを潜め、聖女のような清廉さに連合軍の一同が息をのむ中、司馬懿は、司馬懿の気迫に動きを止めた人形たちには目を向けず追い風を受けながら、腕を高らかに上げて―――同じく、<狼人>らも、司馬懿に動きをあわせて、一気に振り下ろしながら、唱えた!!

「「「ソーソー、ソーソー!!助けて、ソーソー!!」」」
「「「ぇ?」」」
「「「ソーソ―、ソーソー!!助けて、ソーソー!!」」」
「「「あれぇ――――!!!」」」

先ほどまでの清廉さは見る影もなく、なんか異様な興奮状態で、腕を振りまくる司馬懿と愉快な仲間たちに、連合軍から盛大な突っ込みが入った。
なんかもう、色々台無しだった。

「華琳さん、もしかして、あの方…馬鹿ですの?」
「…そうじゃないの」

司馬懿の奇行に思わず呆れる曹操と袁紹・・・二人とも平静を装っているが、鼻から血が垂れている。
なんかもう、こっちでも、色々と台無しである。
ちなみに、某凸凹姉妹と某マゾ軍師は、そういう手もあったのか―――!!と、上司の視線を一身に浴びる司馬懿を悔しげに見ていたのは、関係ない話である。

「ふ、ふざけるなぁ!!!このような戯事をやるために、貴様は軍を動かしたのか!?恥を知れ!!」

司馬懿の行動に怒りを露にした孫権は、剣を手に取り、未だ、腕を上下に振っている司馬懿に斬りかからん勢いで、声を張り上げ、近づこうとするが…

「もう慌てんぼさんですぅ~そんなに怒ると長生きできないですよ~先代や先々代もそれで死んだのですし~」
「…貴様っ!!私だけでなく、ねえさまやかあ様まで、侮辱を…!!」

あくまで、平然とした態度で聞き捨てならない軽口をたたく司馬懿に、孫権の怒りは頂点に達し、剣を振りかぶり、切り捨てようとするが…
が…

「それに…もう勝負はすでについているですよv」
「え?」

呆気に取られる孫権が、ふと司馬懿が目を向けたほうを見れば、人形達の中に妙な行動をとるものが何体も出てきた。
他の人形がその場に立ち止まっているのに、問題の人形たちは、腹を押さえながら、ひくひくと痙攣しながら、蹲っていた。
そう、あれは、まるで、人間の―――!!!
そのことに気づいた孫権が、再び司馬懿のほうに視線を向けたとき、司馬懿は再びあの仮面を被り、ニヤニヤと笑いながら、答えた。

「ようやく気づいたか、三代目ちゃんよ?どうだ、俺の魔法は?」

いつの間にか仮面をつけた司馬懿は、とても悪役じみた笑みを浮かべた。
彼女らの背後では、<狼人>らがあぶり出された敵を狩らんと、武器を手に一斉に、人形たちに襲いかかっていた。

―――洛陽王宮屋根の上
洛陽城外での様子を見ていた李儒は、なるほどといった様子で、納得していた。

「なるほど…人形と人間の区別をつけるのなら、どれが人形かではなく、どれが人間かに目を向けたわけですか…」

人形に変装させた洛陽の民をどうやって、笑わせたかは不明だが、司馬懿の狙いには、おおよその見当がついた。
如何に、李儒の生み出した死体人形が精巧であったとしても、表情や眼球の動きなど、顔の動きについては再現できない。
故に、本物の人間には、人形の仮面を被せて、見分けはつかないようにしたのだ。
しかし、落とし所もあった。
如何に精巧に作られた人形であっても、生き物でない人形は息をしないのだ。
生身の人間とは違って。

「最初の方の、妙な動きは、こちらの足止めをする必要があったからですか。まんまと引っ掛かっちゃいましたねぇ…ま、逃げちゃいましょうか」

城外では、いつの間にか、後方で待機していた連合軍が、一斉に人形たちに襲いかかっていた。
これで、人形の中に紛れた人質を簡単に見分けられると分かった以上、もはや勝敗は決した。
白装束との依頼も十分果たした―――これ以上かかわる義理はない。
荷物をまとめ、未だ気絶する董卓を抱えて、その場から立ち去ろうと、李儒が振り返ると…

「否定する。逃げるですって?逃げ場なってもうないわよ」
「誰がやって来たかと、思えば…何で、ここにいるのですか、おたくら?」

李儒の目の前に立っていたのは、炎刀<銃>を李儒につきける否定姫と、青龍堰月刀を構え、今にも斬りかからんとする愛沙や蛇矛を構え、一歩もとさないという気を放ち、仁王立ちする鈴々、剣を手にした七花、そして、兵士らを引き連れた朱里だった。
賈駆や呂布、狂犬や蝙蝠の姿は見えないところを見ると、董卓を捨て逃げたのか、そう思案する李儒は、ある事に気付いた。
見れば、彼女たちのいずれも、全身に浴びた返り血と李儒に対する怒りにより、先ほどであった時よりも数段凄味を増していた。

「へぇ…随分と早いようですが、その様子では、人質ごと斬り捨てて、ここに…」
「生憎だが、我らは、一人も人質を傷つけてはいない。貴様の人形だけを破壊してここに来たのだ!!」
「なん…ですって…?」

一先ず、この窮地を脱するために、李儒は相手の気をそらすために、軽く挑発をかけるが、血に濡れてもなお、凛とした愛沙の放った言葉に、逆に驚愕した。
愛沙の言葉を信じるならば、彼女達が浴びた返り血は全て人形に仕込んだものということになる。
だが、それが事実ならば―――愛沙らはどうやって、人質と人形を見分けたのか?

「ありえない…私の人形は全てにおいて精巧に作られたものです。それを見破るなど…」
「否定する。あんたの人形は確かに精巧だった。ともすれば、芸術品とさえいえるものだった。けど…本物の人間ではない。ならば…」

窮地を忘れ思案する李儒に、否定姫は人を食ったような笑みを浮かべ、その答えを見せた。
刀の代わりに木刀を持たされた4本の腕に、4本の脚をもつ人形にして、完成型変体刀において、もっとも人間を似せて作られた<刀>を―――!!

「人間だけを、標的にするこの、微刀<釵>こと日和号なら、仮面をかぶった程度の偽装をものともせず、充分見極めることができるのよ!!」

完成型変体刀十二本が一本―――微刀<釵>:日和号。
かつて、鑢軍と公孫軍が、黄巾党の残党勢力の討伐のために、残党が潜んでいるという森に向かった際に、<森の中に入った人間を即刻斬殺>という命令を守り、森の番人として現れた。
変体刀の中においても、高い戦闘能力を持ち、森の中に入った黄巾党の残党を壊滅させ、七花、鈴々、愛沙、星の四人を一度は撤退させたこともある。
最終的には、鑢軍・公孫軍を総動員し、日和号の動力切れにより、なんとか捕獲することができたのだ。
その後、否定姫は、森の中に隠された研究所で、回収した日和号を修理・改造し、ある程度の操作できるようにした。
今回においても、人質と人形を見分けることのできない人間に代わり、人間だけを攻撃する日和号の特性を活かし、日和号が攻撃をしない人形―――すなわち、正真正銘の人形だけを撃破することができたのだ!!

「さあ、あんたの、自慢の人形遊びも、ここまでに、してもらうわよ…追い詰めたわよ、零崎!!」
「追い詰めた…?いいえ、少しばかり早計ですよ!!」

否定姫の勝利宣言ともとれる言葉に対し、抱えていた董卓をその場からはなれたところに置いた李儒は否定姫の勝利宣言に対抗するように、背中から飛び出した10本の腕―――複数の人形を操るための義手でもって、<堕落錯誤>を含めたその場にあった人形達を動かし、愛沙らに襲いかかった。

「っ…また、このような小細工を!!」
「いい加減しつこいのだ!!」
「即刻・討伐」
「なんとでも!!そう易々と討ちとれると思わないでください!!」
「あきゃきゃきゃきゃ!!!」

忌々しげに呟き、青龍堰月刀を振り下ろす愛沙や蛇矛を振り回す鈴々、剣を抜き斬りかかる七花、そして、命令どおりに人間である自分を攻撃する日和号に対し、李儒は計12本の腕を駆使し、宮殿内にいる人形達を集結させつつ、巧みに操り、繰り出される攻撃を尽く受け止めた。
ある時は剣を持った人形で、また、ある時は方天画戟をもった人形で、そして、ある時は無手の人形を、さまざまな人形を次々と操りながら、愛沙ら目まぐるしい攻防を繰り返す中で、李儒は撤退の瞬間を図っていた。

「いい加減、うんざりしてきたんですが…!!」
「ほざけ!!貴様を討ち取るまで、この戦の終わりはない!!」
「そういうことなのだ!!」
「っと!!」

だが、李儒に撤退を許すほど、愛沙らは甘くなかった。
思考にふける隙を突かれた李儒は、迫りくる堰月刀と蛇矛の一撃を、堕落錯誤を前に出し、そのまま、両手でがっちりと受け止めさせた。

「くっ…おのれ!!」
「むう!!」
「そんでもって、こっちの方には!!」
「…っ!!」

愛沙と鈴々の攻撃を受け止めた李儒は、すかさず、自分に攻撃を仕掛ける日和号と七花には、残りの人形をすべて差し向けて、総がかりで飛びかかり、激しく攻め立て、動きを封じた。

「ふぅ…これで、どうにか、落ち着けそうですね…」
「…っ」

愛沙と鈴々は、堕落錯誤によって武器を掴まれ、七花と日和号は残りの人形に攻め立てられ、動きは封じられたものの、それは李儒も同様で、下手に動けば、封じられた動きがとかれて、命取りになりかねない状態だった。
互いにけん制し合う膠着状態―――だが、しかし、唯一自由に動ける人間はいた。

「…ああ、そうでしたね。あなたが残っていましたね」
「うっ…っ…」

数歩踏み出せば、李儒の脇腹に刃を突きさせる距離に、普段の彼女を知る者からは、想像できないほどの怒りと憎しみに満ちた瞳と表情を浮かべ―――董卓は、これまで手に取ったことのない剣を手にし、構えていた。

「なるほど。うっかりしていましたね。すっかり、忘れていましたよ。うっかり、うっかり…ですが、良い表情ですよ、月さん」
「その名前で、私の真名で呼ばないでください…私は、あなたを殺します…!!」
「…その上、良い覚悟です。大義とか理想とか振りかざさなければ、人一人殺せない連中に比べたら…そういった生の感情をむき出しにした人間ほど好ましいものはありませんから」
「…っああああああ!!」

これ以上、この殺人鬼をしゃべらせない―――ただ、それだけを思い、董卓は手にした剣を李儒に突き刺さんと走った。
これまで、人を殺すのはおろか、剣を握ったことすらない素人である自分だが、今の李儒は身動きが取れない状態―――ならば、自分でも―――!!

「やれやれ、まったくもって…」

不覚を取り、しみじみと呟く李儒の言葉は最後まで続かなかった。
そして、迫る董卓の手にした剣の刃は、身動きの取れない李儒の脇腹に突き刺さった。



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