はじめまして。落鳳といいます。
この小説についての以下の注意点を読んでOKでしたら、読んで下さい
1. この作品は、刀語の主人公である七花を主人公にした恋姫無双と刀語のクロスオーバー作品です。クロスオーバー作品に嫌悪感を抱いている方はご注意ください。
2. 刀語は最終巻終了後からの流れとなります。七花以外の刀語キャラも複数人参戦する予定となっております。
3. 原作と違った展開になる場面もありますのでご了承ください。
「歴史の真実とは、過去の事実ではなく、後世の人々が描く想像で形作られる」
そんな言葉と共に嘘歴史冒険恋愛活劇<恋姫語>、はじまり、はじまり。
第零話<物語の始まり>
「どこだよ、ここ・・・・?」
そう呟いて、一人の男が延延と広がる荒野のど真ん中で呆然と立ち尽していた。
絢爛豪華な十二単衣を二重に重ねたような、女物の派手な着物を羽織った男はぼさぼさ頭を掻きつつ、ここは何処かと辺りを見回す。
「おかしいな・・・何で、俺、こんなところにいるんだ?」
どうなっているんだと、首をかしげる男は自分の目が覚める直前の記憶を思い出していた。
「さっきまで、船の上にいたはずなのに・・・・っと、あいつはどこいったんだ?」
普通ならありえないことを呟きながら、ここにはいない連れ合いを探そうと歩き始めた。
――が、すぐにその歩みは止まる事になる。
「おいあんた。命が惜しけりゃ身包み全部おいてきな。」
男の前に現れたのは、頭に黄色いパンダナ巻きつけ、首元にも黄色いスカーフを巻いた三人の盗賊―――――その手には、男が初めて目にする変わった形の太刀を持ち、獲物である男に下卑た笑いを浮かべていた。
「俺達も情けが無いわけじゃねぇ。ただ、あんたの持ってるもの全部・・・・」
男の正面にいた恐らくこの盗賊のリーダーが、刃物をちらつかせ、お決まりの言葉を口にするが・・・・
「いや、それ、無理だから。俺、金ねぇし。それに、この着物も大切なもんだから。」
おびえる事無く、平然として男は、盗賊のリーダーの言葉を一蹴した。
男の反応に舐められていると感じたのか、三人の盗賊は激昂し、武器を構え突き付ける。
「ってめぇ、何様のつもりだ!?このトンチキやろうがぁ!?」
「兄貴、こうなりゃ、実力行使!!こいつ、ぶっ殺して、身包みはいでやりやしょうぜ!!」
「けっ!!この命知らずがぁ!まあいいや、冥土の土産ついでに、てめぇの名前を聞いてやるぜ!!!」
まるでお約束のようにフラグを立てていく盗賊三人を尻目に、男はぼやきながら、最後の問いに答える。
「名前か・・・・・まあ、おおぴらに言えないんだけど、ここならいいか。俺は――」
今にも襲い掛からんとする盗賊三人を尻目に、男は足を大きく開き、腰を深く落とし―――
左足を前に出して爪先を正面に向けて。
右足は後ろに引いて爪先は右に開き。
右手を上に左手を下に、それぞれ平手で。
敵に対して壁を作るような構えを取り、男はここで初めて自らの名と止めの決め台詞を盗賊三人に告げる。
「虚刀流七代目当主―――鑢七花。ただし、その頃には、あんたは八つ裂きになっているだろうけどな」
鑢七花――――伝説の刀鍛冶、四季崎記紀の打った千本の変体刀によって作り出された完了型変体刀・虚刀<鑢>であり、無手にして1本の刀と言う異端の流派:虚刀流の七代目当主にして、現日本最強剣士―――只今、将軍暗殺の下手人として幕府に追われつつ、流浪の旅の真っ最中であった。
「一応、手加減はしといたけど・・・それにしても妙な格好をした盗賊もいるもんだな。」
結果として、ものの一瞬で七花を取り囲んでいた三人の盗賊は、地面に倒れ伏していた。全員が白目をむいて、完全に意識を失っていた――立ち上がれる者は一人もいない。
あまりのあっけなさに気の毒そうに三人の盗賊見つつ、その場を去ろうとする七花だったが・・・・
「お見事です。まさか・・・・武器を持った相手を素手で倒してしまうとは。」
「―――――お、あんた、誰だ?」
不意に背後から聞こえた女の声に、何だというように七花は振り替える。
七花の背後にいたのは、七花が見たこともないような――あえて、例えるなら刃の部分が分厚い薙刀を持った一人の少女だった。
「我が名は関羽。字は雲長と申します。天の御使いであるあなたを迎えに参りました。」
「て、天の御使いって・・・・それ、俺の事?」
「もちろんでございます。他に誰がおりましょうか。」
この後、七花は、自分を天の御使いと呼ぶ関羽との話し合いの中で、以下2つの事が判明した。
一つは、ここは日本ではなく、異国地であること。
二つは、関羽と名乗った女性は、戦乱に苦しむ民を救うために、天の御使いの予言を聞いてここまでやってきたこと。
「では、あなたは、天の御使いではないのですね・・・」
「多分だけど、人違いだと思うぜ。そんな大した肩書き、名乗ったこともねぇし。」
「残念です。天の御使いの予言こそ、戦乱の世を治める唯一の手立てと信じ、この地までやってきたのですが・・・・」
肩を落とし、打ちひしがれる関羽に、七花は居心地が悪そうにしながら、隣を歩いていたが、途中道が二手に別れたところで、関羽が七花に別れを告げた。
「申し訳ございませんでした、七花殿。私はこれから、近くの村々を荒らす黄巾党の一味と戦います。天の御使いを連れて来る事は出来ませんでしたが、絶対に勝利し、民を救ってみせます。それでは・・・」
村へと歩を進めようとする関羽だったが――
「なあ、俺も一緒にいってもいいかな?なんなら、天の御使いってことでもいいからさ。」
七花からの突然の申し出に驚き、足を止め振り返った。
「七花殿・・・しかし、それでは、あなたに迷惑が掛かります。何より、あなたには戦う理由が・・・・」
「理由ならあるさ。」
それは、かつて七花が惚れたていたあるじである彼女が残した最後の命令だった。
『私のことは忘れて――好きなように生きろ』
そう言い残して、七花のあるじである彼女は逝った。
恋でもなく、愛でもないと言われたこともあったが、それでも、自分は確かに彼女のことが好きだった。
だから、七花は世間を知り、人と出会い、覚悟を決めて――好きに生きようと誓った。
そして、七花は、誰かの命令でも、指図でもなく、目の前にいる女の子を自分の意思で助けてあげたくなった。
まあ、とりあえず――
「勘違いしないでくれよ。これは俺が天の御使いだからじゃない。ただ、あんたのために、したくなっただけなんだからな。」
そして、七花は、戸惑う関羽に対して笑い掛ける。
これからともに戦うことになる少女に。
かつて、七花がともに旅すると、あるじに宣言した時の言葉ともに。
「俺はあんたにほれることにしたよ。」
これが、鑢七花にとって、関羽との最初の出会いであり、のちに訪れるもう一人の完了型変体刀・虚刀<鑢>真打との三国を巻き込んだ動乱の始まりであるとは――たった一人を除いて、知るよしも無かった。