運命論者はかく語る。
運命とは、人が生まれ持った、神から与えられし役割だと。
神はかく語る。
運命とは、当然の摂理であり、それに抗うこと自体が欠陥の証であると。
悪魔はかく語る。
運命とは、運命とは。
吸血鬼はかく語る。
運命とは、障害である。試練である。
「だから、運命を嘆いて、それでも前に進む人間が、とても愛おしい。」
「私たちは人ではなくなったけれども。」
(運命に呑まれてしまったけれども)
「手助けができるなら」
(かつての自分たちと重なるから)
吸血鬼は、全存在をエネルギーに変えてーー放つ。
「命すら、惜しくないーー!」
ーーーーーーーーーー
私の夢は魔法少女。だが、目の前の進路希望調査表には書けないし、戦うべき悪役なんて存在しない。それどこか下手なやり方で倒したらSNSで炎上して、叩かれて挙句の果てに人生まで叩き潰される。あと、納税とか面倒くさそう。
「……でもなあ。」
頰杖をつきながら、かれこれ三十分。
何がどうあれ、私はこの授業中にこの空欄を埋めなくてはならなかった。
チャイムのなる五分前にようやく手を動かした。
母親が勧めた近所の看護大学を一番上にして、東京のどっかの大学の看護部を挟んで。最後にふざけて東京大学の医学部、と書いて前に送る。
なんだか黒い何かがどんよりと胸中に溜まっていたが、窓の外を見てやり過ごす。
そうして、気がつけばホームルームが始まって、終わっていた。
学校では寂しい私。今日も帰宅が早かった。
「ねえ、そこのお嬢さん?」
いつもの帰り道。
ふわふわの雪道をわっせわっせと踏みながら歩いている時、男の人に声をかけられた。
そして振り向く「はいーー」
句読点をつけるその前に。
ーーーー私の左肩が千切られた。
「僕の餌になってくれますか。」
私自身の絶叫で、男が何を言ったのか聞き取れなかった。