「シ、シーマ大佐、姫様は一人だけ、まだ模擬戦のつもりだったようですぞ・・・」
「そ、そうみたいですね・・・ あんバカ娘がっ! マリアっ! そいつらが撃ってきているのは実弾だ! 全機ダルマにしておやり!」
「え? 実弾? ペイント弾じゃなくて? ということは、シーマさんこれって実戦だったんですか?」
「そういう事だ!」
「ありゃりゃ、なんか私もおかしいとは思ってたんですよー!」
なんということでしょうか、模擬戦だと思っていたら、いつの間にか実戦になっていたとは・・・
な、なにを言っているのか分からないと思うが、私もなんでこうなったのか分からない・・・
頭がどうにかなりそうだよ・・・ 催眠術だとか超スピードだとか、そんなチャチなもんじゃ断じてない。
まさに、ポルナレフ状態を現在進行形で味わっているのです。
「気づけよ! そいつら全部、マリアを暗殺する為に、はるばる地球から来たエネミーだよ! 私もゲルググで直ぐに向かうから、取り敢えず適当にあしらっとけ!」
「了解、わっかりましたー! 私を暗殺するなどと穏やかでないですね・・・ うしっ! そうと分かれば、マリアさんも久々に漲ってきましたよ!」
でも、こっちの武装は、出力を通常の5%位に弱めてある模擬戦専用のビームライフルとビームサーベルに、無炸薬シールドミサイルのみ・・・ どうしましょうか?
これは、詰んだかな?
逃げる? いや、私の辞書に敗北の文字は存在しないのです! 武器がなければ相手から奪えばいいんじゃない? うん、これは名案ですね!
「マリア・イレーヌ・ザビ、吶喊します!」
そういうことで、私は一番近くにいるジム目掛けて突撃を敢行した。
「死にたくなくば、そこをどけー!」
いや? 本当にどいってもらったら困るんですけどね? とりあえずマシンガンを奪わないと話になりませんし。
「アワナゲトチャン!」
欲望の宇宙に絶望の宇宙に駆け抜ける吹き抜ける嵐! 頭の中で、なんとかディスティニーがリフレインして、私は一人勝手に盛り上がってきました!
チャンスは確実にモノにしなければいけません。
「未来は誰の為にあるって? そんなの私の為に決まっているでしょ!」
弾丸をかいくぐってジムに接近し、私は右脚を横に蹴り上げジムの腹にぶちかました。格闘技でいうところの、ミドルキックってヤツですかね?
敵は、まさか私が無手で突撃してくるとは思ってなかったようで、完全に慌てていたのが幸いしましたね。不意打ち同然でしたから。
『グボッ!』
キックの衝撃でジムの身体は、くの字に折れ曲がる。体勢の崩れたジムから即座にマシンガンを強奪する。
「悪く思わないでちょうだい。私も死にたくはないのでね」
『ひぃ!』
そういって私は、奪ったマシンガンをジムに向けて三発撃った。頭と両肩が吹き飛んでジムは無力化された。なんか叫んでいたみたいだけれども、気にしません。
敵ですから情けは無用です。しかし、この連邦のマシンガンもMMP-80と同程度の性能があって、かつ使い易くて良いマシンガンですね。
「さて、残るは5機ですか。ちゃっちゃと終わらせるとしますか!」
「えー、こちら地球連邦軍ルナツー司令のワッケイン少将です。マリア公女殿下聞こえますか?」
「ワッケインって、あのワッケイン?」
ワッケインって一年戦争を生き残ってたんだ! そうじゃなくて、連邦が私になんの用なのかな? いま戦っているのも連邦で、通信で話し掛けているのも連邦だ。
なにが、どうなってるんでしょうか?
「姫様が、どのワッケインを差しているのかは存じ上げませんが、私はルナツー司令のワッケインです」
「多分あなたのことで正解よ。それで、用はなんですか? こう見えても私は現在戦闘中ですから、手短にお願いします」
そういいつつも、私は射程に捉えたジムに向かって、流れ作業の如く機械的に引き鉄を弾いていた。爆散。これで2機目、残りのジムは4機。
「それでは端的に申し上げます。姫様を襲った犯人の背後関係を調べたいので、出来るだけジムの生け捕りをお願いしたいのですが」
「ふーん、あなたが敵じゃないみたいってことは理解したわ。でも、生け捕りだなんて無茶を言いますね。私以外でしたら、ほぼ不可能ですよ?」
「姫様が宇宙の魔女だからこそ、お願いしているのであります」
私だからこそかぁ。そう言われたら悪い気はしませんよね。まあ、私だったら生け捕りも可能だしね。おだてられると私は木に登っちゃうタイプなのです!
「ふふ、ワッケイン司令も、おだてるのがお上手なことで。仕方ありませんね。無力化して捕獲します」
「そうして頂けると助かります」
「ただし、捕獲したジムはジオンが貰うわよ? このジムは新型みたいですしね」
もしかしたら、これがジム再開発計画で開発されたジムなのかも知れませんしね。オーガスタで開発していたってメラニー会長は言っていたから、いま戦っているのは
ジムカスタムとか、ジムクゥエルなのかな? ジムクゥエルはティターンズカラーで濃い紫か濃い紺色だったっけ? それに、まだティターンズは部隊として表だって
活動しているとは聞いてないから、戦っている相手はジムカスタムになるのかな? まあ、敵は排除するのみですから、どっちでもいいけど。
「それに関しましては、ルナツー宇宙軍は関与いたしません。元々の所属も違い、我々の指揮下にありませんので」
「ふふ、物分かりが良い大人って好きよ。それでは商談成立ってことで、頑張りますかね!」
生け捕りということで、私は1機目に倒したジムとおなじ要領で、相手の肩を狙ってマシンガンの引き鉄を弾いた。刹那、小さな爆発と共にジムの両腕が胴体から分離する。
これで両脚も切断したなら、ダルマの出来上がりですね。そういえば、シーマ様がダルマにしておやり! とか言ってたような?
「んじゃ、ダルマにして逃げれないようにして差し上げますかね」
カチッ
「おろ? 弾切れですか? 仕方ありませんね。もう一度マシンガン強盗をさせていただきます!」
私はガルバルディβのバーニアを加速させて、宙を漂っているジムの腕から再度マシンガンを奪って、逃げようとしていたジムの両脚目掛けてマシンガンを連射した。
うん、ハマーンのキュベレイとシロッコのジオにフルボッコされたシャアの百式ばりに、見事なまでにダルマですね。哀愁が漂ってますね。
ついでに、ビームサーベルもいただいておきましょうか。
『ひぃ! く、くるなー!』
「死にたくなければ、戦闘終了まで大人しくしてなさい!」
ジムのパイロットは私に捕まった恐怖で叫んでいるけど、失礼なヤツですね。殺されると勘違いしているみたいだから、仕方ないのかも知れませんが。
しかし、このガルバルディβのマニピュレーターのビームサーベルとの接続部分が連邦と共通で助かりました。まあ、連邦向けに開発したんだから当たり前といえば
当たり前なんですけどね。でも、これからはジオンのMSも共用で使えるようにした方が、なにかと便利そうですね。コストも削減できそうですし、これは提案しておく
価値がありますね。うん、心のメモ帳にメモっときましょう。
私はジムからビームサーベルも奪って、残りのジムに向かった。
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「し、新型のジムカスタムがまるで歯が立たないとは・・・」
「うむ、しかし、姫様の動きはなんだ? あの動き方は無茶苦茶だな」
「戦闘中の敵のモビルスーツから、マシンガンとビームサーベルを奪うとは・・・」
「閣下、あんなモビルスーツの動かし方は教本には載っておりません」
「この戦闘映像を見たら、ジャブローのモグラ連中は震え上がるだろうよ」
「はい、我々ルナツーの宇宙軍は、ジオンと敵対しなくて良かったと心から思います」
「一年戦争の時に、彼女と相対して生き残れたのはアレックスただ一機のみだ。それも、わざと見逃しただけらしいのだがな」
「そ、それは、つまり・・・」
「彼女と敵対して生き残るのは、ほぼ不可能という事だよ」
「まさに宇宙の魔女ですね・・・」
「死神が正解かも知れんな・・・」
~~~~~~~~~~~~~~
私は残っていた敵のうち、2機のジムも既にダルマにして無力化しています。
「これで、残りのジムは1機のみ! さあ、そろそろパーティーもお開きの時間ですよ!」
そういって、マシンガンのトリガーを引いた。
カチッ
「ちっ、また弾切れですか? それならそれでビームサーベルで、けりを付けるだけです!」
後退しながら弾幕を張る最後のジムに向かって、私は機体を寝かせながら突っ込んでいく。相手も途中で慌ててビームサーベルに持ち替えようとしたけど、遅い。
遅すぎる。既に私は、キルゾーン、接近戦の間合いに入ってビームサーベルを振り抜く寸前なのだから。
「再びジオンの栄光を掲げる為に、フォン・ブラウンよ私は帰ってきた!」
ズバッ ズサッ
「ふっ、なんと他愛のない、鎧袖一触とはこのことか」
あっさりと両腕を肘から斬り落とされて、最後に残っていたジムも無力化された。いやー、ガトーの台詞って格好良いですよね! ばっちり決まりましたよ!
うん、これは自画自賛しても誰からも貶される事のない完璧な決め方ですね!
『あ、悪魔め・・・』
「あら? 私が本当に悪魔だったのなら、あなたたち全員がモノも喋れない骸になっていたわよ」
『それもそうだな・・・』
「あとは軍事法廷で洗いざらい喋って下さいな」
私が最後に倒したジムのパイロットとお喋りしていると、シーマ様がパープルとカーキ色塗装のゲルググ・シュッズスタフェル専用機に乗って駆けつけてきました。
いつ見ても、MS-14FsはカッコイイMSですよね! 4年落ちでも十分に通用する機体ですしね!
「マリア! 待たせ ・・・てないような?」
「もう、シーマさん遅いですよ? 私が一人で全部片づけちゃいましたよ」
「そうみたいだねぇ、私もロートルってことか・・・」
「ロートルですか? まだまだシーマさんは若いと思いますよ? あー、でも、目尻の小皺とルヴィに吸われたおっぱいは垂れてきちゃったかな~?」
そういえばロートルって中国語だったんですってね! 私は最近になって、ようやく知りましたよ。ずっと英語の隠語だとばかり思ってましたから。
「マリアはいつも一言二言多いんだよ! 帰ったら折檻してやる!」
「えー! こう見えても私は一応は公女なのに! 暴力反対です!」
「マリアが寝小便していた時からの付き合いの私には通用しないよ!」
「ジーザス・・・」
なんということでしょうか、ここにも私が勝てない相手が居ましたよ! シーマ様は私の守り役も同然でしたから、私も一生シーマ様には頭が上がりそうにないですね。
まあ、べつにそれでも良いのですけどね!