UC 0082.04
「は? ジム再開発計画?」
思わず私が素っ頓狂な声を上げてしまったのも、無理な話ではないと思います。ガンダムじゃなくて、なんでジムなの? GPシリーズはドコに行ったのよ?
ガンダム開発計画じゃないと、私にガーベラ・テトラが回ってこないじゃない! 私がガンダムを虐めすぎたのが響いて、ガンダムが過小評価されてしまったの
でしょうか? むむむ・・・ これは良かったのか悪かったのか、判断に迷いますね。
そうじゃなくて、
お元気ですか? ジオン公国の公女で、みんなのスーパーテラアイドルこと、マリア・イレーネ・ザビです。誕生日を迎えて私も今年で15歳になりました。
ミドルティーンですね。この二年で身長も少し伸びて、156cmになりました。まあ、身長の伸びはそろそろ頭打ちっぽいですけど。胸も大きくなりましたよ!
Cです。普通でしたね・・・ しょぼん。
ま、まあ、あまり大きすぎても、肩が凝るとか汗疹ができるとか垂れやすくなるとかの弊害もあるし、これぐらいで丁度いいのかも知れませんね。
べ、べつに悔しくなんて本当に思ってませんよ? 挟むことがやりにくいというかほぼ無理なのが、ほんの少し残念ではありますけど・・・
あ、ちなみに、まだ産んでませんよ? その代わり昨年にシーマさんが男の赤ちゃんを産みました! 名前はルートヴィッヒです。愛称はルヴィですね。
これがまた、ルヴィが可愛いのです! 将来はイケメンになりそうな予感がしますね。それで、シーマさんは来年まで産休と育休です。
我がジオン軍は福利厚生がしっかりしている、女性でも働きやすい職場なのです。
っと話が逸れた。
私は現在、アナハイム・エレクトロニクスの会長である、メラニー・ヒュー・カーバインさんと会談しております。まあ、ぶっちゃけると、この親父は死の商人ですね。
でも、戦争で肥大した経済は生半可な政策では、方向転換ができないのも事実なのであります。
資本主義が恐竜の身喰いとは良く言ったものですね。まあ、そんな格言は多分ないんですけどね! いま私が作りましたから。
実際に、リーア軍縮条約でジオンは軍備の縮小を余儀なくされ、軍縮といっても、軽巡洋艦以上の戦闘艦艇のみの軍縮なのですが、これがジオンの上限が150隻に対して
連邦が300隻。戦力比は1対2。まあ、全体の数は減ったけどソロモンの戦い以前と比べても、変わらないといえば変わらない戦力比なんですけどね。
それで、軍備の縮小で余剰になったジオニック社の人員をアナハイムに引き取ってもらってますから、我々ジオンもアナハイムには頭が上がらないのが現状なのです。
まあ、アナハイムも弱かったMS部門を強化できて、お互いにメリットがあったんですけどね。そうでなければ、営利企業のアナハイムが人員を受け入れるはずが
ないですし。
「はい、連邦軍再建計画の一環として、昨秋から北米のオーガスタ研究所が中心になって開発しています。私どもの方は既存のジムを改良したプランを提案したのですが、」
「連邦軍からは、あまり色よい返事はもらえなかった、と」
ありゃりゃ、これは地球派閥による宇宙派閥に属するアナハイムの締め出しかな? これがグリプス戦役の遠因でもあったはずだしね。
「はい。その通りです」
「それで、そんな裏の話を聞かせて、私にナニをさせたいのかな? 言っとくけど、ジオンは連邦に表だって喧嘩は売らないわよ? もう、戦争はこりごりですから」
もう、戦争はこりごりだなんて、どの口が言う。そう思われても仕方はないんですが、平和が一番なのは事実ですからね。
「それは十分に理解しております。ですから、表だってではなく裏から協力して頂けたらと」
「アナハイムには我がジオン国民も世話になってますから、協力するのは私もやぶさかではないけれども、出来ることと出来ないことがあるわよ?」
「はい、それはもう十分承知しております。それで、出来たらMS-17の設計図をお譲り頂けたらと・・・」
「ガルバルディかぁ。ガルバルディを改良したのを作って連邦にも売るというわけですか? でも、あまり数は売れないと思いますよ? 元は敵国ですしね」
史実ではガルバルディってルナツーで改良されて、ガルバルディβになったんだよね。この世界ではジオンが負けなかったから、連邦にジオンの技術が流出してないから
連邦もアナハイムもMS技術が遅れているのか・・・ ジオン経済の為にも、モンキーモデルの輸出ができるのはありがたいけど、ガルバルディって基礎がしっかりして
いるから、改良次第では十分に第二世代MSに対抗できるMSに化けるんだよね。
でも、連邦にジオン製のMSが売れるのかは疑問ですね。いくら性能が良くても感情的なしこりとかがありますから。試験的に少数を買うに止まる気がしますね。
「我がアナハイム・エレクトロニクスは、まだモビルスーツ製造の実績が足りません。ガルバルディで、そのノウハウの蓄積が出来たらと思いまして」
「なるほどね。当然ですが私の一存では決めれないけど、話は通してあげるわ」
「おおっ! ありがとうございます。それだけでも二歩も三歩も前進します」
ただ単に私は話を持って行くだけなのに、そんなに喜ばれてもねぇ。それだけアナハイムのMS技術が遅れているということですね。まあ、それでマラサイが完成するの
ならば、ガルバルディの設計図ぐらい安いモノなのかも知れませんね。
というか、それならジオニックだけで開発してもいいのか? あー、でもそうしたら経済が上手く回りそうにないか。うーん、ジレンマですね・・・
「ただし、条件があるわよ」
「その条件とは?」
「話が纏まったらアナハイムとジオニック、二社で株式の等価交換をしてもらうわよ。そうね、発行済み株式の12.5%ぐらいが丁度いいかしらね?」
うん、お互いの利害を一致させるには、株式の持ち合いが一番良い方法の気がしますね。アナハイムをダミー会社にして連邦と月とサイド6にMSを売りさばくのです。
なんだか私も、死の商人まがいの事をやっている気がしないでもないけど。サイド3の安寧の為には、これは止むを得ない行為なのであります。純粋な経済活動ですし。
武器、兵器は人を殺さない。引き鉄をひくのは、いつの時代も人間である。そう言い訳をしておきましょう。誰だって自分の国が一番大事ですしね。
「と、等価交換ですか? それでは我が社の損失が10億$近くに上るかと・・・」
おう、メラニーさん計算速いね。伊達で大企業の会長は勤まらないということですね。256ビットCPU搭載してそうですね。私は精々16ビットでしょうか。
「あら? ガルバルディが、たったの10機分よ。先行投資だと思えば安い買い物だと思うけど? 最終的に儲かればいいじゃないの。まあ、あくまでも私の私案ですけども」
「ふーむ、それは確かに・・・」
「それに、僅か10億$でジオニックの第二位の株主になれるのよ? 悪い話ではないと思うけどなぁ」
ただでガルバルディの設計図を渡すほどお人好しでもないですよ。こちらもアナハイムを利用しないとね。
最終的には、ジオン公国が軍産複合体の筆頭株主に成るのが理想的ですかね。政府のコントロールを離れた超巨大企業だなんて、恐ろしすぎますし。
市場の原理原則に自由主義経済ですって? なにそれ食べれるの? 美味しいんですかね? 私情の原理の間違いじゃないですかね? 国家社会主義、美味しいですよ?
「うーむ、それをするにしても自社株買いにするのか公開買い付けにするのか、新規に発行する分を割り当てるのかでも違ってきますな」
「それは任せるけど、ジオニックと協議しないとね。それか、いっそのことジオニックを子会社化するとかさ。まあ、これはさすがに議会がノーって言いそうだから無理か」
今のうちに、お姉ちゃんに言ってインサイダーを仕込んで儲けようかな? 裏の情報を知っていたら自由に株の売買ができないのも、私的にはおかしな話の気がしますし。
株取引で損をした云々なんて馬鹿ですよ。株価が下がった段階で売るから損をするってだけなんだと、素人から見たら単純な話の気がするんだけどなぁ。
「はははっ、それが出来れば我が社としては幸いですな」
「我がジオンとしましても、月との友好関係は大事ですからね」
「マリア様から、そのお言葉を頂けて私も安心しました」
「ガルバルディが無理だとしても、最悪でもゲルググは回せると思います。私からも頼んでみますから」
「お願い致します。それと・・・ これは些少ですけど、お納め下さい」
メラニーさんがドンっとテーブルに置いたのは、ジュラルミンケースでした。お、重たそうですね・・・
ジュラルミンケースの中身は金のインゴットが入ってました。横に4本で縦に2本の二段重ねです。合計16本ですね。このインゴット1本が1kgとすると全部で16kgです。
金の相場が1gあたり50$としますと、えーと・・・ 80万$相当ですかね?
「あら? これは俗に賄賂と言われるモノですか?」
「いやいや、これは寄付でございます」
「まあ、くれるというなら捨てるのももったいないですし、頂いておきましょうか。お金に貴賤はありませんし。オホホホ」
「左様ですな」
俗物が! でも、俗物万歳なのであります! 越後屋、お主も悪よのぉ。オホホホホ。
こうして、私はアナハイムのメッセンジャーの役目を授かって、サイド3に帰るのでした。人はそれを使いっパシリともいいますけど・・・
結局のところジム再開発計画とは、なんだったんでしょうかね? ちゃんと聞くのを忘れてしまいました。まあ、重要な事でしたら諜報部が掴んでいると思いますから
多分大丈夫なんでしょうけども。
はぁ~、なんだか疲れました。帰ったらアムロに癒してもらいましょうか!