ソーラーシステム破壊任務での戦闘で、04小隊の三番機のゲンダ伍長が戦死しました。いまのところ、私たちのMS増強中隊での戦死者は04小隊ばかりから出ている
から、04小隊は被害担当小隊とも揶揄されています。
だけども、これからの戦闘で他の小隊から犠牲者が出ないとは、言い切れないのが戦争だ。
「ドズルさん、こんなトコでなにしてるんですか! エネルギー切れのビグザムなんて、ただの大きい的ですよ!」
「マリアか? いや、推進剤が切れてな?」
「だったら援護しますから、そこら辺にいるムサイにでも曳航してもらいなさい! 死にますよ!」
「お、おう」
サイド1宙域から大急ぎでソロモン宙域に戻ってきてみれば、ソロモンでは激戦が繰り広げられていたのです。
私たちが善戦したおかげで、ソーラーシステムの照射能力が低下したみたいで、ソロモン内部までは被害が及ばなかったらしく、
史実みたいにソロモンの放棄をする必要がなかったみたいです。
しかし、連邦のMSがソロモン周辺とソロモン本体に取り付いて、そこらじゅうでMS同士の戦闘が起こっています。
こんな乱戦では、中隊単位でのMSの指揮系統は成り立ちませんので、各小隊ごとに近くにいる敵を殴るだけです。
そんな中で、ドズル中将のビグザムが戦場で突っ立っていましたので、駆け寄って叱ったところです。
エネルギーと推進剤が切れるまで戦うアホだったとは・・・ 猪突猛進は顔だけにして下さい。
「そこのムサイ! マグネットワイヤーを射出してビグザムをソロモン内部まで曳航して下さい!」
「こちらクワメル。了解した!」
「貴艦の援護は私がします!」
「コスモスの蝶の援護なら心強いですな」
「こんな激戦では気休めですけどね! 04から05、06へ。周囲の警戒を怠るな! 近寄る敵は排除せよ!」
「05了解!」
「06了解ー!」
こうして、ビグザムを曳航したムサイと共に一時ソロモン内部へと撤退を始めたとき、
「クワメル! 取り舵10°上げ5°はやく!」
「え? は、はい! 取り舵10°上げ5°よーそろー」
よーそろーじゃねえよ! さっさとやれ!
私が毒付いた直後に、ムサイの艦首真下をメガ粒子砲が通っていった。ふぅ、ギリギリセーフ。
「こちらクワメル。助かった、感謝する!」
「対空監視もっとしっかりなさい!」
クワメルの危機は、一番の原因はドズルだな。アイツに首輪を付けないと、多くの部下が巻き添えになって戦死しちゃいますね。
「ソロモン管制、聞こえますか? こちら、親衛隊第一独立遊撃艦隊所属、マリア・アイリーン特務大尉です」
「こちらソロモン管制。特務大尉殿、どうぞ」
「ラッコク大佐に繋いでちょうだい」
「少々お待ち下さい」
「ラコックだ。マリア殿、どうしたのかね?」
「あのバ、じゃなくて、ドズル中将に首輪を付けて司令室で指揮を執らせて下さい」
「私も出撃は止めたのだがね・・・」
「アレが戦場に出ると、」
「マリア聞こえているぞ! バカって言おうとしただろ!」
誰だ? 気を回してドズルに転送した馬鹿は。まあ、この際だからはっきりといってしまえばいいか。
「聞こえていたのでしたら丁度いいです、ビグザムから降りたら、今度はザクにでも乗って出撃しようだなんて、考えてませんよね? 閣下?」
「そのつもりだったが、なぜ分かった?」
「06! 7時の下! ・・・閣下が戦場に出る必要はないでしょ? 指揮所で戦場全体の指揮を執って下さい」
クレア機の下方から接近するジムがいたので、危険と判断して伝える。連邦軍も多少は宇宙でのMSの使い方を覚えてきたみたいだ。
さすがに歴戦のクレア中尉でも、この戦場は激戦で厳しいみたいですね。
「しかしだなマリア、兵の士気を上げる為にも俺が前線に出る意味も、」
『こちら06、隊長、助かりましたー!』
「06、気を付けて! ・・・しかしも、かかしもないです! はっきりといいますけど、ドズルさん、あなたが戦場に出ると護衛の部下が巻き添えで多く失われます!」
「む、むう・・・」
「あなたが一兵卒なら勝手に死ぬのは止めませんけど、大将が前線で戦死でもしたなら、それこそ士気はガタ落ちになりますよ? そこんトコを考えなさい!」
「わ、分かったから、そう怒るな」
「怒ってません、叱っているのです。ドズルさんが死ねば、ゼナさんとミネバも悲しみますから、大人しくしていて下さい」
止めの一撃は、ゼナさんとミネバちゃんです。愛妻家のドズルには、この言葉は効果覿面でしょう。愛妻家のわりには、ハマーンのお姉ちゃんも囲っているんです
けどね! モゲなさい。
「りょ、了解した・・・」
「分かればよろしいです。分かれば」
まあ、前線に出て士気を上げるのは有効ではあるんですけどね。でも、それも時と場合によりますし。
「マリア殿、感謝します。助かりました」
「ふふ、ラッコク大佐も、大きな子供のお守りは大変ですね」
「はぁ、返答に窮しますな・・・」
彼の立場では、答えられない難問でしたかね? お詫びに、今度彼にも落雁をプレゼントしよう。
というか、私は特務大尉の立場で中将閣下に命令しちゃった? これって不味くないですかね・・・?
あー、これは義理の身内が身内に話したことにしておきますか! 私とドズルの関係って、なにになるんだろ? ギレンは義兄でしょ。義兄の弟だから義弟?
お姉ちゃんからすれば、ドズルは義弟だけれども・・・ もしかして、私とドズルは他人ですかね? もしかしなくても、血も繋がってないし他人ですか?
ややこしいです!
そんなこんなで、
無事にビグザムをソロモンに送り届けて、ドズル中将閣下は、ラコック大佐の部下にドナドナされて司令室に直行です。
私たちのゲルググも補給を受けて、ソロモンの防衛戦闘に再出撃です!
「ローレライ04よりローレライ01、聞こえますか? 戦線に復帰しました!」
コールサインは、一週間戦争とルウム戦役で使ったコールサインの使いまわしで、ローレライです。そんなに名前なんて浮かばないしね。
「こちらローレライ01。NフィールドのSWに回ってくれ! 敵の数が多いから選り取り見取りだ!」
「ローレライ04了解。NフィールドのSWに向かいます!」
「マリアが来てくれたら、私たちの小隊は補給に戻らせてもらうよ」
04と呼ばないあたり相当、戦闘に神経を使ってたんだろうなぁ。シーマ様いま行きますからね!
「01、お任せ下さい! 05、06行くわよ!」
「「了解!」」
NフィールドのSWポイントに辿り着くまでに、5機のジムをサクっと片づけながら現場に急行した。うん、乱戦です。
「よりどりみどり、派手にドンパチ楽しもうじゃないか、掛かってきな!」
「その言葉は、私が小一時間前に此処で言った台詞だけど、マリアにも聞こえてたのかい?」
あちゃー・・・ シーマ様の台詞だったんだっけ?
「アハハハハ、アドレナリンが出ると、みんな似たような思考になるのです」
「ふーん、それもそうかもねぇ。私たちは、一旦下がらせてもらうよ」
「はい、お気を付け!? あぶない!」
私は咄嗟に、シーマ様の機体の前に立ちふさがってシールドを構えた。刹那、ビームライフルの衝撃がシールドから伝わる。が、ビームコーティングが施してある
ゲルググの大型シールドは破壊するまでには、いたらない。コーティングは剥がれちゃったかも知れないけど。
どうやら私のバカな台詞で、シーマさんも気が抜けてしまっていたようだ。これは、私の所為ですよね?
危なかった。でも、結果オーライなのです。持ってて良かった大型シールド。
「ふぅ、助かったよ。油断大敵だねぇ」
「大丈夫ですか? シーマさんは補給に行って下さい」
「01了解した。マリアも油断しないように!」
「04了解です!」
そう、この淡い灰色の機体はガンダムだ。それも、恐らくはマグネットコーティングを施された、G-3といわれる機体だ。
乗っているのは誰だ? いくら油断してたとはいえ、シーマさんに直撃コースの射撃の腕は確かだ。
「05から04へ。あのガンダムは捕獲したガンダムよりも動きが速いです! 三割はスピードが増してます!」
「アクト・ザクに使っている、マグネットコーティングってヤツと、同じ原理なんだろうね」
セミ・モノコックにフィールドモーターにマグネットコーティング。ジオンが苦労した技術が連邦にはあったのに、なぜ、ジムみたいなカスを量産したのか謎ですね。
「05、06はコイツに構うな、コイツはエースだ! コイツは私の獲物だ!」
「05了解! 周囲の敵を排除してきます」
「06了解ー! 隊長の邪魔はしませんよ!」
二人とも、いい子ですね。彼女たちでもコイツを倒せるだろうけど、時間が掛かる。私なら時間を掛けずに一気に殺れるのです。
なぜなら、おじいさんにキャンディーを貰えた私は、特別な存在なのです!
「さあ、ラウンドツーです。見せてもらおうか、改良したガンダムの性能とやらを!」