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No.41005の一覧
[0] 【習作】えみやさんはようせいさん、なのです(艦これ X Fate)[かえで](2015/02/21 02:54)
[1] 02[かえで](2015/02/23 01:03)
[2] 03[かえで](2015/02/27 10:09)
[3] 04[かえで](2015/03/02 00:45)
[4] 05[かえで](2015/03/07 02:10)
[5] 06[かえで](2015/03/15 01:02)
[6] 07[かえで](2015/03/29 00:40)
[7] 08[かえで](2015/04/12 18:02)
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[41005] 03
Name: かえで◆eb5dd369 ID:9a1078fe 前を表示する / 次を表示する
Date: 2015/02/27 10:09
「紅茶のおかわりはいかがかね?」

少し緊張していたのか、電は口の渇きを覚えていた。

「いただきます」
「私もお願いできますか?」
「ああ、構わないよ」

二人のカップを受け取ったエミヤを良く見ると、口の端に笑みが浮かんでいるのが見える。
手際よく淹れられて行く紅茶とエミヤの楽しそうな姿を見て、電は家庭的な人なんだな、と思った。
穏かな雰囲気の中、三人はしばし無言で紅茶を啜る。

緊張感が程よく抜けてきた所で、再びエミヤが口を開いた。

「電君、君が手を貸してくれるなら、役割分担をしたいと思うのだが」
「役割分担ですか?」
「現在、私と間宮君付きの妖精がこの鎮守府の復旧に当たっているが、君の妖精も借り受けたい。
この島の防衛施設を最低限修復し、その後は二手に分かれる。この島に残り開発を進める側と、この島の外へ出て探索を行う側とだ。
探索の目的は二つ、艦娘の捜索と物資の調達だ」
「戦力の拡充を優先するのです?」

電の言葉に、エミヤは力強く頷いた。

「油田は外洋の方に有る、何よりも真っ先に確保したい」
「確かに、そうなると哨戒に当たる艦娘は必須なのです」
「そうだ。だから艦娘の勧誘も優先したい。
燃料が無ければどうしようもない。発電機も動かせないし、艤装を動かす事も出来ない。
だが、逆に言えば燃料さえあればどうとでもなる」

一旦逃げ出して再起を図る事だって可能だろうさ、とエミヤは笑った。

「探索に出るのは電ですね」

電はちらりと間宮の方を見た。
間宮は補給艦としての側面が強く出ているせいか、戦闘には向かないだろうと電は思った。

「そうなるわね。申し訳ないけれど、私を戦力として期待しないで欲しいの」
「いえ、探索側に回るのは異論は無いのです。ただ、その、今の電はあまり戦力として役に立たないのです」

肩を落とし、意気消沈した様子の電に、エミヤは心配するなと笑いかける。

「代わりと言ってはなんだが私が同行しよう。君達のように海上での直接的な戦闘は無理だが、支援なら任せて欲しい」

こくりと頷いた電であったが、エミヤがどうやって支援をするのか想像がつかないでいた。

「海上での支援とはどのようなどのような事をしてくれるのですか?」
「それに関しては、まず私の事について話さなければならない。
私は妖精として呼び出されてはいるが、本来ならば君達と同じ英霊の座から召喚された存在だ」

その言葉に、電は思わず目を剥いた。
ただの妖精ではないと思っていたが、まさか英霊であるとは思いもしなかったか
らだ。

「英霊って、エミヤさんは私達と同じように一度死んでいると言う事ですか?」

電の疑問にエミヤは頷いて肯定した。

「でも、能力を貸すってどうするんですか?」
「私は君達と違って受肉をしていない、どちらかと言えば霊体寄りだ。今のこの肉体も仮初の物に過ぎない」

そう言って、エミヤの体が消え去った。
電は突然の事に思わず息を詰まらせ立ち上がり、慌てて周囲を見渡した。
だが、エミヤの姿はどこにも見えない。

「視線を下に向けたまえ。テーブルの上だ」

声がする方へと電が視線を向けると、そこには二頭身になったエミヤが居た。

「えええええええええええ!!??」

匠の技でも不可能な劇的ビフォーアフター。
思わず電は腹の底から叫び声を上げた。

「ああ、電ちゃんはそっちの姿を見るのは初めてだものね。
むしろ私、最初は小さかったエミヤさんしか知らなかったから、大きくなったエミヤさんを見た時、心底驚いちゃったわあ」
「あの時は驚いた所か卒倒しただろう、君」

妖精サイズの姿のままで半眼で睨むエミヤ。
これが普段のサイズならば威圧感もあろうが、今の姿では愛嬌しか感じない。

「話を戻すぞ――私は妖精として召喚されている。君の艤装に乗り込み手助けをしよう。
なに、目の良さなら自信が有るぞ、観測手としても砲手としても期待してくれていい。それと」

エミヤはそこで言葉を切り、元の姿に戻ると間宮へと視線を送った。
間宮は少し悩んでいたが、目を伏せ、小さく頷いた。

「私の持つ技術や経験、それと特殊な能力を君に貸す事が出来る」
「技術と能力、ですか?」
「そうだ。とは言え、これは君にかなりの負荷がかかる。いざと言う時の奥の手と考えてくれ。
間宮君はそれで体を壊し――いや、死にかけた。今もその後遺症が残っている」

エミヤのその言葉に、電は思わず間宮へと視線を向けた。

「外傷は癒えているから見た目には分からないだろうが、神経に異常をきたしている。
艤装と接続するだけなら問題ないが、全力稼動は不可能だ」
「どうして、そんな事に……」

電は間宮を痛ましいものを見る目で見た。
だが、間宮は穏かに微笑んで首を横に振る。

「仕方が無いのよ。だって、そうしなければ私は死んでいたわ」
「君と同じく敵地のど真ん中に落ちたんだ。最初はなけなしの砲でなんとかしていたんだが、途中で弾薬が切れてしまってな。
あの窮地を切り抜けるには使わざるを得なかった」
「でも大丈夫よ。少しずつ良くなってるの。こう言う時、真っ当な肉体じゃなくて良かったと思うわ」
「普通の人間だったら自我の消失も有り得たがね」
「……完治、するんですか?」

深刻な顔をして問う電に、二人は軽く答えた。

「まあ、きっと治るわよ」
「完全に壊れない限り、問題は無いはずだ」

どうにもお気楽な二人に、電は思わずため息を吐く。

「私達は基本的に人より上の性能を与えられているのです。一体どんな事をすればそんな風になるのですか?」
「妖精として艤装に乗り込むのではなく、私が艦娘に憑依する形になる。夢幻召喚と言うシステムらしい」
「らしい?」
「私も全てを把握しているわけではないのさ」

そう言ってエミヤは軽く肩をすくめた。

「あくまで私のスキルや身体能力を貸し与えるだけで、主動は艦娘が優先される。
憑依してしまえば私自身に出来る事は殆ど無いと言っていいだろう」
「あの力は凄かったけど、反動もまた凄かったわ。本当に死ぬかと思ったのよ」
「長期に渡って使い続けたのも原因の一つではあるのだろうがね」
「一睡も出来ずに強行軍でしたからね」
「今思うと良く生きて帰れたものだ」

脱線した話を戻すために、顔を見合わせて笑う二人の前で電は小さく手を挙げた。

「あの、エミヤさんは具体的にはどんな事が出来るんですか?」
「そうだな、論より証拠と行こう」

エミヤが手を掲げ小さく呟くとその手が光る。
発行は一瞬で終わり、その手には黒塗りの弓が握られていた。

「今のは艤装の展開のようなものですか?」
「いや、違う。これは新たに創り出した物だ。収納してある物を出してるわけじゃないんだ」
「創り出すって……」

電としては半信半疑と言った所だ。
エミヤを疑いたくは無いが、創り出したと言われても信じきれない。

「君は魔術師と言う存在を知っているか?」
「魔術師ですか? おとぎ話なんかに出てくる魔法を使う人達ですよね」
「ふむ、おとぎ話か。それが実在すると言ったら、君はどう思う?」
「……電達のような存在が居る以上、居ないとは言えない思うのですが、その」

口を濁す電を見て、エミヤはそこで言葉を区切り考え込んだ。

(どう言う事だ。何故こうも彼女達に知識の偏りがある。
英霊の座に召し上げられたのならば、あらゆる時代の英雄の存在を知る事が出来る筈だ。
なのに、彼女達にはその知識が無い。
もし有るのならば、魔術師の存在に疑問を覚える事など無い筈だ)

眉間に皺が寄りそうになるのをこらえつつ、エミヤは思考を深めていく。

(電君だけではなくも間宮君も魔術師の存在を知らなかった。
最初は間宮君に異常があるものだと思っていたが、電君も知らないとなると話は変わってくる
彼女達は深海棲艦に限定された即席のカウンターとでも言うのか?)

エミヤは思わず眉間に皺が寄りそうになるのをこらえた。

「まあ、おおむねその認識で間違っていない。私は生前、魔術師だった。この弓は私の魔術によって創られたものだ。
ちなみに、あのエリートホ級に一撃与えたのもこの弓で放ったものだよ」

この男、およそ4km先の動体標的を射抜いて見せたというわけである。
電はしばらく考え込んだ後、間宮へと向き直ると真顔で言葉を発する。

「間宮さん、思った以上にエミヤさんがふぁんたじーなのです」
「まあ、エミヤさんでたらめだから」
「君等も大概でたらめファンタジーな存在だからな!?」

エミヤがそう突っ込むも、間宮は遠い目をしたままで、電に至っては半眼でエミヤを見つめていた。

「まったく、規格外の神秘の持ち主達が何を言っているのか。
外付けの魔術炉心をただの燃料で動かすわ、無意識に各種魔術礼装使うわ、多数の妖精との視覚を平気で共有をするわでそちらの方が余程でたらめだ。
初めて見た時は驚きのあまり死ぬかと思ったぞ」
「えっと、そのぉ……?」
「そう言われましても……」
「どういうことか分かっていないようだな」

まるで遠い昔の自分を見ているような気分だとエミヤは深いため息を一つ吐く。
だが、直ぐに意識を切り替えて、真面目な顔をして話し出した。

「君達は存在自体が一つの神秘――魔術の塊のようなものだ。
何せ艦と言う概念が人々の想念によって形を成し、この地に受肉して出てきているわけだ。
しかもだ、軍艦を人間大のサイズに押し込めたものだから出力が規格外にも程がある」

間宮は展開させた艤装を弄りながら頷く。

「それは、まあ、分かります。元の状態よりもかなりの機能がオミットされていたり、制限こそされていますが、艤装のそれぞれがオーパーツと言うか何と言うか」
「けど、弓であの距離を射抜いた上に大破させるとかありえないのです。
まだ投石器を擬人化させた英霊で砲弾ブン投げましたとか言われた方が説得力があるのです」
「大砲でも良いんじゃないのかしら」
「君等は人をなんだと――まあ、良い。それより、電君、私も君に聞きたい事がある」

エミヤは居住まいを正し、電に声をかけるエミヤ。
今までの軽い話と違い、真面目な話をするのだと理解した二人もまた、真剣に話を聞くべく姿勢を正す。

「なんでしょうか?」
「君は英霊の座に召された後の記録はあるかね?」
「いえ、無いのです」

その言葉に、エミヤはついに眉間に皺を寄せた。

「君にも無いのか……思ったよりも不味い状況かもしれないな」
「どう言う事ですか?」

間宮は一ヶ月間エミヤと行動を共にしたが、このような感情を表したのは初めてだった。
どんな苦境の時でも余裕のある態度を貫いていた男がである。
彼女は自分が思う以上に危うい状況に置かれているのではないかと言う不安がよぎる。

「聖杯戦争と呼ばれる儀式がある」
「……聖杯戦争、ですか?」
「七人の召喚者と、彼等と契約した七騎の英霊が聖杯と呼ばれる万能の願望機を巡って殺しあう儀式だ」
「万能の願望機……そんな物が実在すると」

真剣な表情で頷くエミヤからは嘘は感じられない。
間宮は目線で彼に続きを促した。

「その実態は、膨大な魔力を持つ七騎の英霊を生贄に捧げ、聖杯を満たし、その力で魔術師の目的を果たすという儀式だ。
私が知り得る限り、その殆どが失敗に終わっているがね。中には、聖杯から溢れた力で未曾有の大災害を引き起こした例もある」
「それが、私達に記録が無い事とどう関係するのです?」
「世界から与えられた情報を信じるなら、今のこの戦況で轟沈した艦娘が一人も居ないという事はありえない。
私はまだ君達二人しか艦娘を知らないが。間宮君はともかく、電君は比較的召喚しやすい部類のはずだ。
それが何故、消滅時の情報が座に送られていない」

その言葉に、思わず間宮は声をあげた。

「――まさか!?」
「そうだ、座に還るべき記録が無いと言う事は、未だこの世界に何かしらの形で留まっているのだろう。
問題はその膨大な魔力がどこに行ったかだ。この地に留まっているだけならいい。だが――」



――それがもし、聖杯に捧げられるかのように、どこかに溜まり続けていたら?



ヒュッと電が息を呑んだ。
間宮もまた、顔色を失っていた。

「今の状態が人為的なものなのか、または自然発生したものかは分からない。
だが、もしその魔力を悪意有るものが利用したら――或いは、塞き止めているものが決壊したらどうなる?」
「……世界の滅亡すら有り得ると?」

間宮の言葉に、無言で、だが、エミヤはしっかりと頷いた。

「……まだ、そうだと決まったわではないのですよね」

縋る様に問う電。
また、エミヤは頷いた。

「もちろん、今のは全て推測に過ぎない。だが、これから起こる可能性としては十分有り得る話だ。
まあ、心配するな。私はこう見えても何度も世界の危機を救ってきた。今回の件がもしそうだとしても、君達が手伝ってくれるなら何とかなるだろうさ」

そこで、エミヤは笑って見せた。
不安を打ち消すかのような不敵な笑みを。

「そんな……そんな、世界規模の異常に電達の力なんてちっぽけなものなのです……」
「そうだな。だからこそ、私達は仲間を増やさなければならない――君達は、協力し合うことの大切さを知っている。そうだろう?」

俯く電にエミヤは諭すように問いかけながら、自分の記録にある、ただ愚直なまでに突き進む一人の人間の姿を思い浮かべていた。

往生際の悪さとその頑固さは、きっと自分以上だろうとすら思っている。
どんな時でも諦めず、ただひたすらに前へ進むその姿を知っている。
月の裏側で、生前に叶わなかった夢を果たさせてくれ人を。

間宮はじっくりと時間をかけ、情報を咀嚼する。
そして、おもむろに深呼吸をし、気丈にも微笑んで見せた。

「そうですね。時間がどれだけ残されているかは分からないけれど、今から出来る事からやっていくしかないものね」

間宮の言葉に、電もまた呼応した。

「そうです――その通りなのです」

やはり、彼女達も闘う者なのだろう。
語調こそ静かなものの、確かな闘志を感じられる。

「そうだとも。まあ、私がそんな簡単な事を知ったのは、死んだ後からだったがね。どれだけ遠回りをしてきた事やら」
「ふふっ。でも、貴方は見つけられたのでしょう? それはきっと、誇って良い事だと思うわ」
「誇れるものではないさ。本来なら、誰もが知っている事だからな」

もう止めてくれとエミヤは両手を挙げて首を振った。

「さて、もうそろそろ休んだらどうだ? 初戦闘の後に長々と重い話をして済まなかったな」
「いえ、必要な事なのです」
「そうか。部屋は間宮君と同室を使ってくれ。まだ、修繕がきちんと終わってないんだ。間宮君もそれで良いかね?」
「ええ。じゃあ、行きましょう」
「はい。お休みなさい、エミヤさん」
「ああ、お休み」

二人が去った後、エミヤは椅子から立ち上がると、外を目指して歩き始めた。












やるべき事は山積みだ。
どこもかしこも問題だらけで、考えるだけでも頭が痛くなるが――

「さあて、やりがいの有る仕事だ。きっちりと仕上げて見せようじゃないか」

――今はただ、彼女等を守る為に戦おう。


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