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No.41005の一覧
[0] 【習作】えみやさんはようせいさん、なのです(艦これ X Fate)[かえで](2015/02/21 02:54)
[1] 02[かえで](2015/02/23 01:03)
[2] 03[かえで](2015/02/27 10:09)
[3] 04[かえで](2015/03/02 00:45)
[4] 05[かえで](2015/03/07 02:10)
[5] 06[かえで](2015/03/15 01:02)
[6] 07[かえで](2015/03/29 00:40)
[7] 08[かえで](2015/04/12 18:02)
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[41005] 02
Name: かえで◆eb5dd369 ID:9a1078fe 前を表示する / 次を表示する
Date: 2015/02/23 01:03
電は先の戦闘時の高揚で忘れていた傷が今になってうずき始めていた
全身は煤に塗れ、体の内側もボロボロだ。

「後、少しなのです……!」

幸いな事に、艤装の航行能力だけは失われておらず、全力稼動しなければ十分陸地まで保つだろう。
目の前の砂浜には二人の男女が走ってきているのが見える。
女性の方は電の記録に残されている。

給糧艦間宮。
姿かたちは変われども、電にははっきりと認識できていた。

男性の方はとんと心当たりが無い。
褐色の肌、白髪をオールバックにし精悍な顔を晒した鋭い目付きを持つ男性。
ノースリーブの黒いボディスーツに身を包み、そこから伸びる太い腕はまるで丸太のようだ。
黒塗りの武骨な弓を手に持ち、電の後方を警戒している様にも見える。

男は波打ち際で立ち止まり、間宮はそのまま電の方に向かって走り出した。

(あの弓で何をするつもりなのでしょうか?)

深海棲艦には妖精を介した武器しか通用しない。
人の持つ弓など輪ゴムの銃よりも威力が無いものである。

(気休めでもに刀や銃を所持する人も居るものですし、きっとあの男の人は人間で、司令官さんなのです)

つまりは艦や妖精ではないと電は結論付けた。

「ああ、電ちゃん無事で良かった……!」

そうこうしている内に間宮は電の目の前まで近付き、嬉しそうにその手を取り、電をゆっくりと曳航し始めた。
正直な所、電も限界に近く、間宮の配慮は本当にありがたかった

「間宮さんありがとうなのです」
「良いのよ。今の私にはこれぐらいしか出来ないから」

間宮に手を引かれ、電は砂浜へと上がり、そして男に向き直ると敬礼をして見せた。

「電です。どうか、よろしくお願いいたします」
「私の名はエミヤだ、こちらこそよろしく頼む」
「司令官さんの名前はエミヤさんと言うのですね」

その言葉に、思わず男は難しい顔をし、それを見た電は困惑した。

「えっと、電に何か変な所でもありますか?」
「いや、君に不手際等は無いし、私にその様に畏まる必要も無い」

その言葉を聞くと、電はますます困惑する。

「ですが、電は艦娘で、司令官さんは司令官さんなのです」
「いや、私は司令官ではない」
「えっと……憲兵の方ですか?」

なるほど、と電は頷いた。

(きっと鍛錬中に敵襲の報があって、そのまま弓を持ってきてしまったあわてんぼうさんのですね)

うんうんと電が頷く様子を見て、エミヤは更に誤解が深まったのではないかと頭を悩ませる。

「私は憲兵ではないし、そもそも人間ではない――そうだな、区分するならば装備妖精になる」

「えっ?」

電は一瞬にして思考回路のほぼ全てをショートさせられた
そう、目の前の八頭身筋肉ムキムキマッチョマンは妖精なのである。
二頭身の愛らしい妖精とは似ても似つかない対極とも言える存在だが妖精なのである。

「電ちゃん、気持ちは分かるけど、本当の事なの。彼、装備できるのよ」

間宮はそっと電の肩に手を置く。
それは、とても労わりに満ちていた手だった。
だが、明後日の方を向き遠い目線をしているのが何もかもを台無しにしていた。

「よ、妖精さんなのです?」
「確かに、本当に不本意ながら、今の私は妖精として存在している。何と言うか、我が事ながら認めたくないが。いや、本当に
実際に奴隷扱いや使い魔として召喚された事はあるが、これは無いだろう……!」

うめきながら肯定するエミヤに引く電。
電が思わず引きつった表情をし、自分の妖精と目の前の男を何度も見比べたのも仕方ない事だろう。

彼自身、妖精扱いを受けた事はあるにはあるが、既にそれは遠い記憶の彼方。
穂群原のブラウニーとは彼のあだ名の一つである。

「ああ、そんな目で見ないでくれ、頼む」

エミヤの方はと言うと、凄まじく煤けていた。
何時の間にか現れたのか、男の肩の上の妖精が元気出せよと言わんばかり肩を叩いていた。

「おほん」

と、間宮が咳払い一つ。
場の空気を変える為。
また、話を先に進める為にわざとらしく大きくして見せた。

「さ、話はともかく電ちゃんを入渠させませんと。電ちゃんも疲れたでしょう?」
「む、すまないな、君も疲れているだろうに、変な事に時間をとってしまったな」

ぐいぐいと手を引く間宮にエミヤも頷いた。

「あ、でも、まだ司令官さんに着任の挨拶をしていないのです」
「その事は後で話そう。間宮君、案内を頼む。私は食堂へ向かう」
「ええl修復剤も使ってしまいますね」
「ああ、惜しまず使ってくれ」
「えっ? えっ?」

司令官でもないのに備品を使う決定をしてしまうのはいかがなものかと混乱する電。
去っていくエミヤを尻目に、間宮は握っていた手を離すと、素早く電の後ろに回り、その背を押し始めた。

「ちょ、ちょっと待って欲しいのです」
「まあまあまあまあ」

間宮はにこにこと人の良い笑みを浮かべ、しかしながら強引に入渠施設に押し込んでいった。


















「……気持ちよかったのです」

入居を終えた電は憮然としながらも、思ったままの事を呟いた。
裂傷や打撲、火傷に骨折、痛めた内臓さえも完治しており、体の疲労もさっぱりと取れていたのだ。

「そう、良かったわあ」

にこにこと笑う間宮を思わず電は半眼で見てしまったが、それも仕方の無い事だろう。

「司令官さんに断りもいれずに勝手な行動を取ってしまったのです」

思わず電はため息をついた。

「大丈夫よ」
「大丈夫って、どうしてですか?」
「ここ、司令官居ないのよ」
「えっ?」

電は半眼だった瞳を大きく見開いた。

「見てもらえれば分かると思うけど、ここはもう放棄されてるの」
「で、でも、さっき崖から援護があったのです!
それに、入渠施設だってあるのに――」
「入渠施設なら、ここに来た時に真っ先にエミヤさんが直してくれたわ
それと、きっと電ちゃんを助けたのはエミヤさんの弓ね」
「で、でも、あの位置からこの島まで、2海里ぐらいはあったのに……」
「まあまあ、詳しい話はエミヤさんを交えてしましょう――さ、付いて来て」

混乱する電に間宮は苦笑を向けると、再びその手を取って歩き始めた。













(確かに、ここは放棄されている鎮守府なのです)

落ち着いて周りを見ればそれが分かった。
戦火の後が、まざまざと残っているのだ。
破壊された港に道路、こびり付いた血の跡が生々しい。

「ここよ」

手を引かれて着いた場所は住居区の一つであった。
だが、そこも壁も壊れ、中が露出している有様だ。

「さあ、入って入って」

電が間宮に手を引かれて案内された場所は食堂だった。
凝った内装の食堂ではなく、どちらかと言えば大衆食堂のような場所だった。

「あ、良い匂いなのです」

匂いに釣られて調理場の方に目を向けると、大柄な男があくせくと働いていた。
鍋を振るう様が妙に似合っていると言うか、何と言うか。

「――ってエミヤさん!?」
「ん? ああ、もう来たのか。少し待っていたまえ、もう仕上がる」
「よそいますね」
「頼む」

あれよあれよと席に座らされ、目の前にはとても美味しそうなご飯が準備されていく
チキンライスにエビフライ、キャベツの千切りにハンバーグとポテト、そして極めつけのたこさんウインナー。
いわゆるお子様ランチである。
色とりどりの料理が電の目を楽しませる。

これをあの筋肉のお化けのような男が作り出したのかと思い、ちらりと目線を向ければ、そこにはエプロン姿のエミヤが居た。

「どうかしたかね?」
「い、いえ! なんでもないのです」

さっと目をそらす電。
一度しっかりと見てしまえば違和感など無くなっていた。


そう、恐ろしいほどにエプロン姿が似合っていたのだ。


「色々聞きたい事は有ると思うが、今は腹ごしらえをしてくれ。長い話になるしな」
「……はい」

見当違いな事を言っているが、電はもう訂正する気も無かった。
彼女は考える事を放棄して、目の前の料理に挑み始めた



本日三度目の思考停止であった。







「……美味しかったのです」

食後のデザートを終え、満足気な電を見て、間宮もエミヤ大満足。

「気に入ってくれたようで何よりだ。さあ、これもどうぞ」

そう言ってエミヤは紅茶を差し出した。

「あ、美味しいのです」

三人はしばし無言で紅茶を啜っていたが、人心地つくとエミヤがおもむろに切り出した。

「さて、現状の把握といこうか」

エミヤの言に二人が頷く。

「まずこちらだが、私と間宮君は一ヶ月ほど前に海上に召喚された。
それから何度か敵と交戦しながらこの鎮守府に辿りついたが、その時には既にここは滅んでいた。
何時陥落したのかは知らないが、機能は全て停止していてね。
いやはや、流石に我々も困ったものだ」

そう言ってエミヤは肩を竦めた。

「間宮君も大分酷使してしまってね、消滅寸前だったから入渠施設だけは真っ先に直した。
その後は最低限暮らせるだけのライフラインを確保し今に至ると言った所だ。
君の方はどうだ?」
「電も海上に召喚されたのですが、その――」
「うん?」

そこで電は口ごもった。
言い出しにくいと言うか、思い出したくないのか。
かなり微妙な表情をしていた。

「目の前に深海棲艦が居たのです」
「それは」
「何と言うか」

死んだ目をした電の言葉に思わず目を覆う二人。
軽巡となると駆逐艦よりも性能は一回り上となる。
その上赤黒いオーラを纏うとなると、それはエリート級と呼ばれる上位種。

「召喚直後と言えば魂の格も相当落ちている状態だろうに、よくもまあ生きてここまで来れたものだ」

深海棲艦と言う無尽蔵に出てくる敵に対抗するためか、少ない代償、と言うか自然現象のように召喚される彼女達だが
やはりそれ相応にスペックダウンしている。
元の力を取り戻すにも、それ相応に魂を取り込む必要が有るだろう。

「本当に死ぬかと思ったのです」
「よしよし、もう大丈夫よ」

どんよりと暗雲を背負う電を慰める間宮。
電が落ち着くの待ってから、エミヤは話し始めた。

「さて、これから君はどうする?」
「どうする、とは?」

頭の上に疑問符を浮かべるような表情で電は聞き返す。

「ここは完全に敵の勢力圏内と見ていいだろう。
友軍も居らず、援軍が望めるような環境でもないと私は見た。
かと言って人類の勢力圏がどこまで残っているのか正直分からない。
単艦で彷徨うのも現実的とは言えないだろう」

単艦と言う言葉に反応し、電は思わず間宮を見た

「えっと、間宮さん達はどうするんですか?」
「私達はここを拠点として動こうと思ってるわ。
食糧の備蓄は私が保有している分があるから一時は大丈夫。
深海棲艦は地上の資材は全て持っていってしまったけれど、幸いな事に、地下に隠し倉庫があって、そこに資材があったの」
「全ての資材が尽きる前に防衛施設を復旧と平行して食料を自給できるように準備を始め、それから鉱山や油田、工廠などの設備の修復を始めるつもりだ」

電は少し考える素振りを見せたが、直ぐに考える事をやめた。

「あんまり考える余地が無いと思うのです」
「まあそう言わないでくれ。やはり、本人の意思と言うのは大事だろう?」

がっくりと肩を落とした電にエミヤは苦笑する。

「これからよろしく頼む。君が我々と共に行動してくれるのなら、取れる手段も大幅に増える」
「よろしくね、電ちゃん」
「はい、こちらこそよろしくお願いするのです」

電は間宮が差し伸べた手を取り、そしてエミヤへと視線を向けた。
エミヤも一つ頷くとその大きな手を二人の手に重ねた。
不思議と、電は不安に感じていた心が軽くなったような気がした。


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