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No.41005の一覧
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[41005] 【習作】えみやさんはようせいさん、なのです(艦これ X Fate)
Name: かえで◆eb5dd369 ID:9a1078fe 次を表示する
Date: 2015/02/21 02:54
凪いだ海に轟音が鳴り響く。
海上に着弾した砲弾が水柱を上げ、その飛沫を浴びながら一人の少女が水上を走る。
表情に焦燥を浮かべ、狙いを絞らせない様に蛇行を繰り返す。

彼女は見た目こそ可憐な少女ではあるが、身に付ける物は物騒の一言に尽きる。
艦橋を背負い、連なる鉄の大砲を腰に下げ、それを苦も無く振り回している事から、少女がただの人間ではない事が容易に窺える

逃げ惑う少女を追う一つの異形。
赤黒いオーラを全身に纏い、上部には複数の艦砲、歯型のような頭部を前にせり出し太い腕が目を引く。

異形の名は深海棲艦と言う。
突如として海より現れ、人類に牙を剥いた化け物に人が名付けたものである。
深海棲艦は人の持つ武器では破壊する事はおろか、かすり傷一つ負わせる事が出来ない、正しく人知を超えた化け物であった。

その一種である軽巡ホ級は執拗に少女に追い縋る。
少女が憎いのか、それとも何かを訴えたいのか、化け物は執拗に少女を追い立てた。

少女もまた人間ではなく、艦娘と言う存在である。
彼女達もまた深海棲艦と呼応するかのように海より現れ、深海棲艦と終わり無き戦いを繰り広げている。

艦娘は深海棲艦に対して唯一対抗できる存在である。
と言うのも、人類では歯が立たない化け物を唯一沈める事が出来る存在だからである。

艦娘と言う存在の出現により、人類は再び地球の覇権を握るかに思えた。

だが、海底より無尽蔵に現れる深海棲艦との戦力差は圧倒的だった。
それだけならまだしも、人類は圧倒的な脅威を前にしてもまだ人類同士の争いを止める事が出来なかったのだ。

結果、世界の荒廃は加速度的に進み、滅亡間近になってようやく一致団結した。
それも争うだけの余力と国が無くなった故の結果である。

海域の殆どは異形の化け物で溢れ、人類に残された領域は極僅か。
人類の命運は今や風前の灯と言った風情である。

運悪く人類の勢力圏から外れた海域に生まれてしまった艦娘の名は電。
日本の艦の魂を継ぐ存在、特Ⅲ型駆逐艦の末妹は、今その命を人知れず終えようとしていた。

「このままでは撃沈されてしまうのです……!」

電は戦いを好まない。
しかし、ただ無抵抗に殺されるつもりも無かった。
蛇行を繰り返し、敵の艦砲が体を掠め水面を叩くその刹那、電は横目で敵の位置を確認した。
水飛沫が舞う中、水面を蹴り強引に体の向きを変え、ホ級を正面に捉えた。

(妖精さん、今なのです――!)

主砲に宿る妖精に発射命令を下す。
12.7cm連装砲より放たれた砲弾は、違わずホ級に直撃し炸裂した。

「やったのです!」

喜ぶ電だったが、すぐにその表情は凍りついた。
爆煙の中からホ級が無傷で現れたからである。

「あ、う……」

ホ級の砲塔が、呆然とする電を捉えた。











リボンで結ばれた栗色の髪をたなびかせ、割烹着を着た女性が深い森の中を走る。
彼女がこうも慌てて走るのは、レーダーに敵と味方の反応を同時に捉えたからであった。
最悪な事に両者の距離は近い、艦種までは分からなかったが、下手をすると轟沈させられる恐れがある
だが、彼女自身に戦う力は無い。
だからこそ、戦えるものに頼る為に走っていた。

森を抜けた先には崖がある。
そこには、以前住んでいた者達の残していった機械等が放置されていた。

「ふむ、これならば多少手を加えれば直るかもしれないな」

そこでは群青色の作業着を着た男が座り込み、工具を片手に何かしらの作業を行っていた。





「む――?」

異音に気付き作業の手を止めて振り返ると、女性が森を掻き分けてきた。
ただならぬ様子に訝しげな表情を浮かべ、男は女性へと声をかけた。

「そんなに慌ててどうした。何かあったのかね?」
「レーダーに感あり!! 敵味方共に近い位置に!」

その言葉に瞬時に男の顔が引き締まる。

「方角は?」
「11時の方向、距離およそ2海里から3海里!」

その報告に男は思わず顔を顰めた。
修理はしたが、思った以上にレーダーの反応が悪かったからだ。

「全く電力が足りないか、それともレーダー自体に異常があるのか、さて、どちらかな。それとも両方か」

男は思わず思案に耽りそうになり頭を振った。

「と、そう言う事を言ってる場合ではないな。すぐに向かおう。
君も直ぐに施設内に入ってくれ、まだ他に敵が居るかもしれないからな」
「はい」

女性は小さく頷いた。
それを見た男はもまた頷き返すと、立ち上がった。

「あの、ご武運を」
「ああ、任せたまえ」

そう言うと男は女性を置いて即座に走り出した。

「やれやれ、非常時に彼女を一人で出歩かせるわけにも行くまい。
防衛施設やレーダーの設置よりも先にインフラの復旧を急がねばならないな」

目にもとまらぬ速度で森を駆ける男はそう一人ごちた。














それは咄嗟の事だった。
電は身を捻り、装甲のある背面ユニットをホ級に晒した。
鉄塊が装甲を貫通し、その運動エネルギーで電は吹き飛ばされ、次に火薬が炸裂し衝撃と熱波が襲う。

「あ、ぐっ……」

電は激痛に顔を歪めた。
ホ級の艦砲射撃は電の背部の甲板に直撃。
右側の連装砲は壊れ、誘爆こそしなかったものの、被害は甚大である。
電は苦痛に悶えながらも妖精から艤装の被害状況を拾い上げる。

「こ、航行能力に問題は無し。でも……」

問題は電の武装が通じなかった事だ。
12.7cm連装砲は電の持つ武装の中でも取り回しやすく、生まれたばかりで錬度の低い電が何とか使える物であった。

「連装砲がダメなら魚雷が……」

最大火力である魚雷を直撃させれば、一撃で轟沈させる事は不可能でも、二発三発と束ねればあるいは。
そこで電は息を呑む。

「あ、う……」

電には魚雷を当てるまでの道筋が見えなかった。
魚雷の速度は遅い。
ただ撃つだけでは直撃は見込めない。

ホ級も魚雷を警戒しているのか、必要以上に電に近づこうとはしなかった。
敵艦からすると、このまま適度な距離を保って電を嬲り殺しにするだけで良いだけの話である。
電が踏み込もうとする素振りを見せるとすぐさま回頭。
徹底して電を近づけさせなかった。

(このままでは、何も出来ないまま死んでしまうのです)

また、ホ級の砲火が精度を増した。
ホ級の艦砲が度々電の身を掠める。

苦痛と緊張により機動が単調化し、動きが読まれつつあるのだ。
最早、完全に捉えられるのも時間の問題。

そこに、最悪の事態が発生した。
内部で燻っていた火種が引火。
それによって主機の出力が著しく低下、航行不能状態に陥った。
電の速度が見る見るうちに下がる。
乗組員である妖精が消火に成功したものの、ホ級はその隙を逃そうとはしなかった。

「あ――」

電とホ級の目線があった。
敵艦はこの好機を逃さない。
そう理解し、電が絶望で顔を青ざめさせたその時。
赤光が天より飛来し、目の前のホ級に突き刺さった。

海面を大きく揺らし、その次の瞬間、炸裂。
着弾時を遥かに超える凄まじい衝撃が発生し、思わず電は腕で顔を覆った。

「オ……オォ……」

爆風が過ぎ去った後に電が目を開けると、そこには轟沈寸前のホ級の姿があった。
だが、ホ級はまだ死んではいなかった。
緩慢な動作で主砲を向けようとする様を見て、電は我に返った。
立場が逆転した事を理解した電は即座に妖精に命令を発した。

「主砲発射! 続いて魚雷一斉発射なのです!!」

電の命に妖精は瞬時に答えた。
主砲がホ級の体勢を崩し、そこに魚雷が殺到していく。

「オ、オオオォォオオォォォオオオオ!!」

死の間際、ホ級はおぞましい叫び声を上げ、この世の全てを呪う。

呪いあれ。
全てのモノに呪いあれ。
何もかも汚濁に塗れよ。
お前も、お前も一緒に来いと吼える。

だが、その願いが叶う事はなかった
全ての魚雷はホ級に命中。
死に際の嘆きをかき消し、再び海に静寂が訪れた。

「はぁっ……はぁっ……」

敵艦が完全に沈み切るのを確認し、電はそこでようやく額の汗を拭い去った。
背部の艦橋より妖精が出動し、電と艤装に応急処置を施していく。

「ありがとうなのです」

ちょこちょこと動き回る妖精に礼を告げて笑った。
妖精も初の実戦を乗り越えた事に安堵していた。
電に向かって敬礼すると、すぐさま作業へと戻っていった。

危機を乗り越え、ある程度の冷静さを取り戻した。
そこでようやく電は先ほどの支援射撃について考えを巡らせる事が出来た。
思わず周りを見渡すも、艦娘の影も形も見えない。

「んっと、確か後方から飛来したから」

くるりと電は回る。
遠くに見えるのは島だけだった。

「きっとあそこからなのです!」

ゆっくりとだが、電は島の方へと向けて走り始めた。
きっとそこに、仲間達が居るのだと信じて。















崖の上で弓を携えた男は小さく息を吐いた。

「なんとか間に合ったか」

索敵を続けるも、千里眼を持つ彼の視界内には敵影を確認できず。
そこで初めて男は構えを解いた。
口元に小さな笑みを浮かべ、彼もまた安堵の表情を浮かべていた。

「とりあえずは報告をして安心させる必要があるな。それから迎えに行けばいい頃合だろう」

あの分ではこちらの島に着くまでかなりの時間がかかるだろうと男は見た。

「さて、存分に歓迎しないとな」

今日はごちそうだ、と男は楽しそうに呟いた。


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