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No.40796の一覧
[0] 【ネタ】超・女神転生SLIME(女神転生)【完結】[EN](2015/01/15 00:20)
[1] 第二話 積極的に敵を増やしていくスタイル[EN](2014/12/14 01:21)
[2] 第三話 モーレツ!スライム帝国の野望[EN](2014/12/15 00:11)
[3] 第四話 現代の信仰と発端[EN](2014/12/20 23:52)
[4] 第五話 このSSのタイトルを言ってみろ[EN](2014/12/17 00:07)
[5] 第六話 ゲス顔の王子様[EN](2014/12/18 00:57)
[6] 第七話 戦闘準備[EN](2014/12/19 00:16)
[7] 第八話 赤のくまさん[EN](2014/12/24 23:52)
[8] 第九話 メシアよいとこ一度はおいで[EN](2014/12/21 00:00)
[9] 第十話 カップ麺と苦労人[EN](2014/12/22 00:02)
[10] 第十一話 必殺『正統派主人公』の術![EN](2014/12/23 00:06)
[11] 第十二話 引いて駄目なら押してみる[EN](2014/12/24 23:59)
[12] 第十三話 うどんとそばの睨み合い[EN](2014/12/25 23:53)
[13] 第十四話 L-N-C[EN](2014/12/26 00:06)
[14] 第十五話 またスライムだよ![EN](2014/12/27 00:31)
[15] 第十六話 逆襲のくまさん[EN](2014/12/28 00:14)
[16] 第十七話 虚心[EN](2014/12/29 00:05)
[17] 第十八話 悩める少女達[EN](2015/01/03 23:44)
[18] 第十九話 めりくりの日[EN](2015/01/07 23:53)
[19] 第二十話 ライドウは変身するたびにパワーが増します[EN](2015/01/01 23:55)
[20] 第二十一話 尊き月の夜を見て[EN](2015/01/02 00:01)
[21] 第二十二話 秩序と混沌[EN](2015/01/03 00:00)
[22] 第二十三話 迷う人、迷わない人[EN](2015/01/04 00:00)
[23] 第二十四話 楽してズルしていただきかしら![EN](2015/01/05 00:01)
[24] 第二十五話 少女と獣の恋[EN](2015/01/11 23:40)
[25] 第二十六話 天使よりも貴い人[EN](2015/01/07 00:01)
[26] 第二十七話 話し合い(悪巧み)と、話し合い(物理)[EN](2015/01/08 00:04)
[27] 第二十八話 大天使と僕[EN](2015/01/09 23:57)
[28] 第二十九話 月下美人[EN](2015/01/10 00:00)
[29] 第三十話 堕ちて昇るもの[EN](2015/01/11 23:44)
[30] 第三十一話 真・邪神転生SLIME[EN](2015/01/12 00:00)
[31] 第三十二話 世界を滅ぼす男[EN](2015/01/13 00:17)
[32] 第三十三話 終幕[EN](2015/01/14 00:01)
[33] 第三十四話 日々是好日[EN](2015/01/15 23:54)
[34] 【おまけ】絶・女神転生RAIDOU[EN](2015/01/16 00:02)
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[40796] 第三十四話 日々是好日
Name: EN◆3fdefd77 ID:46c7c60b 前を表示する / 次を表示する
Date: 2015/01/15 23:54
ガイア教団盟主の朝は早い。

「おはようございます、めーしゅさん」

盟主の自室、和式布団の中で一人の少年が目を覚ませば、傍らに正座してじっと彼の寝顔を見つめ続けていたらしいツクヨミに、起床直後の朝の挨拶をされて起き上がる。
目を開くと同時におはようございます、だ。ひょっとすると自分はコイツに監視されているのではないかと疑心暗鬼に陥ってしまう盟主たる少年だったが、勿論そんな事は無い。未だ幼い情動しか持ち合わせぬ造魔ツクヨミが懐いた相手に付いて回る、まるで獣の幼子が一列に並んで親の後を歩くようなその行為、特に理由あってのものではなかった。

布団から抜け出して部屋の壁際に置いてあるベビーベッドを覗き込めば、そこには盟主とツクヨミの間に生まれた可愛い我が子が――などという事は当然無く、いつも通りの外道スライムが高鼾を掻いていた。

なので放置。
後ろを振り向けば、布団を畳み終えたツクヨミが盟主の着替えを手に持って、己が手伝うその時を今か今かと待ち構えていた。
溜息を吐いた盟主が自室から一時 少女を追い出し、一人で服を着替えてから連れ立って食堂に向かう。

「朝の必須イベントよ。とヴィーヴルが言っていました」

虚心が埋まり切らぬ幼い造魔を相手に不必要 且つ意味不明な知識を与えた下手人の名を聞いて、盟主の顔が渋面を作る。
彼が『悪食』であった過去を知りつつも、それを主に話さず口を噤む性悪悪魔。未だ己の弱みを握ったままである龍王ヴィーヴルが、盟主は凄く苦手であった。
元を辿れば龍王と契約している熊女の暴虐が恐いからこその苦手意識だが、いい加減 この歪な上下関係を清算するべきかと頭を悩ませる。

しかしその方法が思い付かないまま食堂に到着。元芸能マネージャーの鏡が作った朝食を口にして、やはり朝はご飯であると したり顔で頷いた。盟主が御飯派であるため、当ガイア教団施設では基本的に朝は白米が並ぶが、ヴィーヴルはパン派なのだ。やはり自身と奴は相容れぬ、と緑茶で喉を潤しながら眉根を寄せる。

「緋熊さんは今朝も遅いのね……」

熊は基本的に昼まで寝ている。

生活リズムがバラバラな、ガイア教団首脳陣。彼等の崩れがちな生活習慣を気遣う鏡ではあるが、彼女の声が聞き届けられる事は滅多に無い。
ガイア教団ヒエラルキー最下位、鏡。立場が弱い事を当人が気にしていると知っていたので、鏡の言葉を一番良く聞いてあげるのも盟主である。部下のメンタルケアは上司の仕事、優しくしておけば何時か役に立つかもしれないという下心があった。

ちなみに鏡が料理当番である理由は、他の面々の家事能力が芳しくないから、という消去法だ。
盟主は元学生、年若いの男の適当な家事。
スライムは手が無いので不可。
パワーは天使であり、天使が不必要な家事などするわけも無い。
メガネは生きていければ何でも良い駄目人間。
ツクヨミは家事に縁が無かったので当然無理。
熊は熊、常識だろう。

実は緋熊の仲魔である幻魔ナタタイシが一番の家事上手である事実が発覚したのは、鏡が家事仕事を任されて一週間後、これこそが皆から託された自分自身の仕事なのだと奮起し始めてすぐの事だった。
マグネタイトが勿体無いから自分には無理だ、と辞退したナタタイシだが、首脳陣の居住区画である教団施設の最奥部は霊地を兼ねており、最低限度の実体化維持ならば問題無い。自身の存在価値を周囲に延々と問い掛けて回るほどに落ち込んでいた鏡を気遣っての言葉だった。

つまり鏡は特に仲が良いわけでもない悪魔にわざわざ気を遣われたのだ。色々と哀れな女である。

そういう事があったので、盟主は出来る限り鏡を気遣っている。地獄に仏、普段 恵まれないからこそ殊更に優しさを与えてくれる相手に対して気を許す。着々と部下の心を掌握しつつある盟主、しかしその二心あっての慈悲深さ故に、後々 鏡という女を発端とした新たな修羅場が展開されるのだが、そんな未来を此処に居る盟主はまだ知らない。今も二人のやり取りをじっと見つめているツクヨミが後々に何を仕出かすのか、今はまだ、不安に思う者など誰も居なかった。

ご馳走様、と声を掛ければ、鏡が笑顔で食器を回収する。

「ふふっ、盟主様はいつも綺麗に食べてくれますね!」

ああ、自分は今 人の役に立てている。居ても居なくても変わらない、不要な人間ではないのだ!
そう深く実感する鏡だが、その満足感すら盟主の掌の上、意図して与えられたものだった。
当人が満足していればそれで良いのかもしれないが、なんとも幸の薄い女である。

「お、おはよー、お宅もう食べちゃった、食べちゃったー?」

よたよたと曲がった姿勢で食堂に姿を現すメガネの中年男性。
日々を不健康に生きるガイア教団所属の悪魔技師は、今日も徹夜明けの顔で若干遅い朝食を口にする。

徹夜の原因、今現在メガネに作らせている物は教団施設内に設置する予定の巨大COMPだ。
進捗を聞きながら、食後の茶菓子に舌鼓を打つ。

世界が、そして人類が悪魔の存在を知って早数ヶ月。
混乱 冷めやらぬまま、しかし否応無しに新しい時代が築かれつつあった。

メシア教団はアデプト・ソーマの存在を欠いたために不安定な内情のまま、所属するメシアン達の善意によってどうにか組織として成り立っているような状態だ。
強烈なリーダーシップを発揮する上位者が居らず、皆を纏め上げられるほどの人徳を有する傑物も居ない。如何にアデプトの存在が大きかった事か、乱れた世情の最中にあるからこそ身に沁みる。
教団に居残ったソロネからは盟主に向けて一度だけ「教団に来てくれないか」と連絡が来たが、それに対する返答など決まっていた。
仮にガイア教の盟主が古巣であるメシア教団へと舞い戻るなら、それはメシア教団を私物化する外道に手を染める時だろう。

盟主は他者を意のままに翻弄する事に罪悪感を抱かぬ少年だが、あのアデプトが育てたメシア教団を使い潰そうなどと考える人間ではない。ソロネとて彼が己の求めに応じてくれるとは考えていなかった。それでも、もしも彼が教団に居れば、と苦悩した末の弱音に過ぎない。

高位天使ソロネが率い、人であるメシアン達が支える。

力無き一般人から多くの支持を受けながら、今日もメシア教団は人々の味方であり続けている。
例えそれがいつ崩れてもおかしくない砂上の楼閣であろうと、彼等は諦める事だけは出来ないのだ。

「や、やっぱり霊地から受け取るマグネタイトの循環機能が難しいんだよ、難しいんだよー」

メガネに作らせている巨大COMPは、メシア教団の霊地の物真似だ。
霊地を兼ねたガイア教団施設最奥部だけでも良い、仲魔達の召喚と維持に無駄なマグネタイトを使わずに済むようにしたい。今日明日に外部から攻め込まれる事は無いだろうし、場合によっては所詮 仮宿と開き直って当施設を捨てて逃げ出す事も視野に入れてはいるが、メシア教団霊地に引き篭もった大天使ウリエルの厄介さを思い返せば、そういった設備が心強いものであるのも確かだ。
用意が無駄に終わった場合は、適当に謝ればメガネも許すだろう。実はその程度の軽い考えで頼んでいた。

お茶で茶菓子の甘味を口中から追い出しながら、盟主は懐から小型COMPを取り出した。

流石に常日頃からアームターミナルを装着しているわけにもいかない。携帯用に小型のものをメガネに用意してもらったのだ。COMPを操作して着信済みのメールに目を通す。
目に付いたのはメシア教団に所属する、とある少女からのものだ。
異変の際に僅かながらの情報を得るために預けた簡易COMPを、彼女は今でも持っている。

別にアドレスを変更しても良いし、着信を拒否しても良い。下っ端メシアンとの伝手を保持した所で大した利益は見込めない。こうして連絡を取り合うのは盟主の気紛れだ。
教団内での日常、そこで起こったちょっとした事件。他愛の無い話であり、所々に差し挟まれる盟主の近況を窺う言葉は意図的に無視して、当たり障りの無い返信をしたためて送信する。こちらへの好意を含んだ文面は、一応は目を通すが見なかった事にした。

好意を示してくる相手を邪険に扱うつもりは無い。しかし気持ちに応えるか否かは自分で決めたい。これを盟主の我が儘と取るか、優柔不断と取るかは人それぞれだろう。
世の中 何が役に立つかなどその時にならねば分からないのだ。釣った魚は出来るだけ放さず骨まで食べる。盟主の地位を得てもダークサマナーとしての在りかたの変わらない少年であった。

しかし盟主のこの価値観が後のメシア教団との抗争に発展する遠因となるのは、未だ年若い彼には見通せぬ未来の話である。そう、彼は彼女の想いの深さを見誤っていたのだ。

要するに、只の修羅場である。

「おおっ、サマナー、おはようございます!」

快活な声で朝の挨拶をする天使パワー。朝の訓練を終えた彼は今日も無駄に爽やかだった。

あの日、夜逃げを敢行したサマナー御一行はガイア教団の乗っ取りを画策した。
大天使ウリエルとアデプト・ソーマの訃報など、ゴウトやバットマンに情報を提供した見返り。魔王ヘカーテの企みとその過去の所業に関する大まかな情報を得ていたサマナーは、潜伏先の候補にファントム・ソサエティとガイア教団の二つを挙げた。

ミシャグジ神の信仰を確保して国を作るにしても、他の何かを行うにしても、組織力というものは非常に有用である。
組織を一から興すより、既に在るものを奪う方が早いし楽だ。丁度ヘカーテも死んでしまった事だから、頭の無くなった組織のどちらかを手に入れよう。

その結果として、ガイア教団盟主の座に納まったサマナー。

ファントムは異変を起こすに当たって日本政府、引いては護国組織ヤタガラスの動きを抑えるために有るだけ全ての資金を吐き出した。残金が全くのゼロでは無いだろうが、もしかすると不要な借金まで作っているかも知れない不良債権の恐れがある。
組織の有する表裏問わない多数企業との伝手は欲しくて堪らないが、真っ当な組織体制が整っているのならば乗っ取りも容易くは無い。潜伏先の確保に時間を掛けたくないサマナーは、ファントムを従える案を却下した。

それにツクヨミの件もある。
ファントムとその関連企業の出資によって売り出した一人のアイドルが、かつて在った世界を一変させたのだ。下手にツクヨミの古巣であるファントムに属した事でどのようなトラブルが寄って来るか、予測するまでも無い厄介事が透けて見えた。だからファントムは不可。サマナーには彼女を放り出す気など欠片も無いのだ。

翻ってガイア教団は古参と見なされている緋熊の存在ゆえに相応の伝手があり、邪魔を嫌ったヘカーテによって強者が軒並み排除されており与し易い。
緋熊の名を使って組織に入り込み、後は力を示せば一定の地位は得られるだろう。

そう考えた結果、割と簡単に盟主という組織の頂点に君臨してしまった。サマナー自身もびっくりの成果である。

勿論、元々は『秩序』に拠らぬ多数の宗派が寄り集まって形成された有象無象の集まりであり、誰であろうとガイアーズを名乗ればそれだけでガイア教団所属と見なされるのが正しき『混沌』の在り様。盟主を名乗っていても、所属する人員全ての忠誠心を得ているわけではない。ガイア教団は一つの施設に納め切れるような形ある集団ではなく、世界中にそれらしき者達が溢れている。
今はまだ名目だけの盟主。事実として教団の頂点に君臨してはいても、現実に従えている人数はまだようやく三桁に届く程度だ。

今の世界、悪魔の存在を知り、その超常性に憧れる者とて当然居る。
かつて在った社会の枠から はみ出した落伍者も大勢居る。
悪魔溢れる世界、偶然 闇の中に足を踏み入れてしまう者もまた。

ガイア教団はその受け皿。底の浅い憧憬から踏み出す者も、堕ちずには居られなかった者も、等しく受け入れる。
受け入れて、その教育はパワーにやらせていた。

何故『混沌』の巣窟で『秩序』の天使が清く正しく頑張っているのか。何故ガイアーズである自分達が天使様を相手に御行儀の良い訓練生生活を送らねばならないのか。
そこに疑問を抱く者も居たのだが、力尽くで黙らせた。
ガイア教団では力が全て。組織においては盟主がルール。――そして『秩序』に属する天使さえ従える際限無き自由は、正に『混沌』の在るべき姿そのものだ。

居残った者も、新たに加入する者達も、ガイアーズ全てを己が優秀な私兵としなければ、この先の時代で覇権を握る事は不可能だ。盟主は一切の手心を加えなかった。
世間一般では世界を滅ぼした大罪人扱いであるツクヨミの名声さえ利用して、着々とガイア教団の勢力拡大とガイアーズ教育が行われている。

世間一般では大罪人。しかし元々は世界中にその名を知られた可憐なる美少女アイドル。
会場に訪れた観客全てを殺し尽くし、画面越しに目にしただけの人間達から強制的にマグネタイトを吸い上げた彼女は、世界の極一部ではカルト染みた根強い人気を獲得していた。

ただの見目麗しい偶像ではない。美しい歌と踊りをもって魅せるだけのアイドルではない。遠く距離を隔ててさえ多くの人々から命を吸い上げ、旧き世界を終わらせて、今もまた世界の裏側で薄笑う美しく幼い一柱の女神。その妖しさと恐ろしさに惹かれない者も居るだろう、しかし惹かれぬ者ばかりでもない。
かつてとは違った形で世界中から信仰を集めつつあるツクヨミもまた、真実 神の一員なのだ。

ちなみにライドウも似たような事になっていた。

魔王と元大天使と邪神、そのことごとくを力でもって捻じ伏せた化け物。日ノ本の国の帝都守護役。謎の実況役『虚心』のお墨付きによって無理矢理 世界的に認められてしまった謎の美少女。
世界各国では魔王や神を殺せる存在として『葛葉ライドウ脅威論』や『日ノ本の最終国防兵器』だなどと言われているが、裏ではこっそりと『雷堂ファンクラブ』や『葛葉ライドウを崇める会』などの各種団体が生まれ落ち、当代ライドウを象徴とした鉄の結束を広げつつある。

ちなみに両方とも盟主が発足させた。

ヤタガラスは名が売れ過ぎたライドウの存在感を利用して組織としての建て直しを図っているらしいが、つい最近ファントム・ソサエティがその中に組み込まれたらしい。
盟主達は知らないが、ライドウに捕らわれたジョージ・バットマンが原因である。
ライドウの下で馬車馬のように働かせられているバットマンを用いてファントムとの繋がりを設け、資金難に陥った組織に対して国の後ろ盾があるヤタガラスが金銭の補填を行い、多企業との伝手を護国組織が取り込む。現政府は急速に勢いを増していくヤタガラスに押され気味であり、このままでは主従が逆転するかもしれない、と懸念されてはいたが、それはまた別の話だ。
発足させたファンクラブもライドウ宗教も、数年後には相応の規模に膨れ上がる。

それほどまでにあの戦場におけるライドウの存在感は圧倒的で、何よりも強過ぎた。

当のライドウが今どのような状況に陥っているのか、盟主としては少々 気になるところではあったが考えても仕方が無い。今は日々増え続けるライドウ関連グッズの収集だけで満足し、いつか役に立つだろうガイア教団外部の手足を育てていこうと考えている。

食堂を出て廊下を歩いていると、神獣マカミがふよふよと浮いていた。
主である緋熊が寝ているので、暇を持て余して霊地内を徘徊しているらしい。宙に浮かぶマカミを指先でつついて遊ぶツクヨミを眺めながら、あの熊は相変わらずだな、と肩を竦める。

当初の緋熊が抱いていた望み通りに、かつて『悪食』であった少年が、今は盟主としてガイア教団に所属している。

ガイア教団という組織は変わっていくだろう。それに反発する者も居るだろうが、そういった輩は緋熊一行やパワーの働きによって排除、或いは再教育している。ツクヨミのアイドル性を利用しての取り込みも重ねていけば、遠からず今現在 教団に所属している人員は掌握出来る。
問題は、そこから更に規模を拡大する際の事だ。

日本全国を越えて世界中に広く散らばっているガイアーズ全てを纏め上げようなどと、そこまで極端な事を考えてはいない。むしろ下手に一極化すればそれ相応の問題が出てくるものだ。かといって、たかだか百人単位の組織では小規模にも程がある。

目的はスライムを中心とした宗教組織の構築なのだが、実は盟主とてあのドロドロが実際に何を考えているかくらいは既に知っていた。
以前は「国を獲る」などと考えてはいたのだが。まさかスライムがあそこまで現状に満足していたとは知らなかったのだ。
自分が無理強いをしたなどと考えたりはしない。結果的に当人が選んだのだ、そこまで自分本位な判断はしない。
ならば今は何を目的としているのか。

――スライムのままで象徴化するとか、無理かなあ……。

ずばり、スライム教である。
外道族を崇める人間の大集団。想像するだけで冷や汗が流れる。しかしこの常識的には有り得ないだろう突飛な構想は、ちょっとだけ面白そうに思えた。

マカミと遊びながら盟主の顔を眺めるツクヨミに笑い掛けて、自室へと足を向ける。

あの日、スライムには「一緒に頑張って行けば良い」とそう言ったが。
頑張る、とは何と曖昧な言葉だろう。
目指すものさえ不明瞭だというのに、それでも皆と一緒に前へ進んでいこうと考えられる。少年は楽観的な自分が余り好きでは無いのだが、不安感も湧いてこない。良くない傾向なのだろうが、仕方が無いと笑ってしまう。

「オスザル貴様ー! 貴様っ、もう朝餉の時間が終わっとるでないかー!? 我の朝餉はどうしたのだ貴様ー!?」

自室の襖を開ける前から、ようやく目を覚ましたらしいスライムの怒声が聞こえてくる。
四方に仕切りを設けたベビーベッドに寝かされたスライムは、実は自分一匹では床に下りる事が出来ない。以前 試みた際にはベッドの柵に引っ掛かって泣いていた事があった。柵を越えても畳の上に落下するので、以降は盟主が抱え上げて運ぶ事が暗黙の了解だった。

外道の怒声で目を覚まし、のっそりと起き出してきた緋熊に朝の挨拶をして、寝起き姿を見られた事実に顔を赤らめ走り出す猛獣を見送って。
今日もスライムや熊を宥めて、いつも通りの一日を始めよう。

まったくもって騒がしいが、これが現ガイア教団盟主の日常。
後に世界中で修羅場と騒乱と宗教戦争を盛大に巻き起こす少年の、最も大人しかった時代の御話である。





くぅ疲!(挨拶)
長くなり過ぎましたがこれでエピローグです。
今話を第一部完としてそのまま第二部に繋げられますが、これ以上書き続けるのは流石に大変なのでここで終わります。
多分続いた場合のラスボスはライドウなんじゃないですかね(白目)。

ここまでお読みくださった方、感想を下さった方々、本当にありがとうございました。
読む方の脳内補正を必要としない文章を意識していたら、描写がくどくなった気もしますが、お陰で矛盾などは無いはずです。恐らく。

以下、キャラ紹介。

 主人公
元々の設定は巻き込まれ系主人公で、スライムに振り回される役どころだったのが「国を獲るのも悪くない(ニヤリ」とか言ったり、緋熊戦で覚醒してこうなりました。
他者に配慮せず好き放題の知略系。実は今までで一番書いてて楽しかった主人公。ウリエル相手の寸劇とか特に。
好みのタイプは「世界を揺るがす女性」。
ツクヨミは月を作って世界を滅ぼし、ライドウは初対面で神殺し。
第一話の記憶は処置を受けて忘れたまま、レベルが低いので思い出せません。
名前は考えていません。

 スライム
元の構想では魔王マーラか魔王ヘカーテの筈が、第一話を書く際にミシャグジ様に。理由は憶えていません。
具象化失敗した結果のスライムではなく、邪神のMPが具象化成功してスライムになった悪魔。
男女問わず発情させる魅了の魔力が前身なので、女性化も可能。――という逃げ道を用意していたのですが結局スライム。
偉そうな口調は作ったもので、慌てたり追い詰められた時の崩れた口調が素。という設定があった。

 ライドウ
主人公とは逆方向に極まった最強系チート悪魔召喚師。熊の完全上位互換。
キャラ紹介にヒロインと書いたがために、盛大な墓穴を掘った気がするキャラ。
封魔管には『ルシファフロスト』が入っている予定だったのですが、CHAOSであるヘカーテとの話がこじれそうなので没に。
ライドウという名前ならどんなにチートでも許される気がしたために強くなり過ぎましたが、後悔はありません。
専用ルートはきっとダウンロード・コンテンツ扱いなのでしょう(白目)。

 ツクヨミ
完全造魔。ノリと勢いでキャラ設定を組み上げ、初登場時からずっと世界崩壊の下手人として書いていました。
主人公に対する恋慕は、まだ感情が育っていないので無い。
しかし主人公が女性と関わる度にじっと顔を見つめる癖がある。
スライムと悪魔合体する予定もあったけれど没に。

 緋熊
典型的なガイアーズ。悪食編のストーリーを進めるためのキャラであり、敗北後はそのまま消える予定だった。
右腕をメガネが改造したりの話もあったけれど没に。
熊。

 メシアンの少女
訓練施設で主人公が他者からどのように見えるかという、青年と同じような立場のキャラ。
再登場の予定は無かったので不遇でも仕方が無い。
きっと後々メシア教団のお偉いさんになってほのぼのとした戦争を起こすのではないでしょうか。原因は修羅場で。
LAWルートなら多分メインヒロイン。そして主人公を庇って死ぬ。

 メガネ
便利要員。
出会いのシーンを書く暇が無かったのですが、どうせ大した事無いのでいいかな、と諦められる類のキャラ。
実は結構強い。

 鏡
主人公とツクヨミの出会いを演出するキャラ。
主人公以下のレベルで、多分ピクシーくらいしか仲魔が居ない人。
不遇。

 青年
今気が付いたけれどエピローグに書いてないかもしれません。
他者から見た主人公の描写をするためのキャラ。何故悪堕ちしたかといえばその場のノリです。
きっと異変後に100キロババアと契約してる。

 アデプト
有能、且つ人格者。しかしそのせいでウリエルに殺されたキャラ。
人間第一の正義の味方的サムシング。
徹頭徹尾、本当に善人。このキャラが居たせいで綺麗なメシア教団が生まれました。
ウリエルに殺害される事だけは割と早い内から決まってました。
LAWルートでも死ぬ。そして主人公が生粋のメシアンに。


ここまで書いて気が付きましたが、キャラ紹介って呼んで面白いのでしょうか。
とりあえず、もう日付が変わっているのでここまで。紹介文書いてないキャラも居る気がしますが、時間があれば追加します。多分。

続かない詐欺もここで終わりです。


※2015/01/15投稿
※2015/01/15誤字修正


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