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No.40575の一覧
[0] 【一発ネタ】TS憑依モノ[お](2014/10/09 22:44)
[1] [お](2014/10/11 14:35)
[2] 神様転生系[お](2014/10/11 20:57)
[3] 東方系[お](2014/10/24 17:01)
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[40575] 【一発ネタ】TS憑依モノ
Name: お◆ed120dc7 ID:1bff69ad 次を表示する
Date: 2014/10/09 22:44
 しんと静まり返る線路脇の路を歩いてゆく。同じ電車で降りたサラリーマンや高校生はとっくに僕を抜き去り、取り残された身体がとぼとぼと歩く。
 ごうっと電車が走り抜けた。車内の灯りに照らされて、僕の路が昼間にかわる。ほんの一瞬の明るさは、幻のように消えていった。暗闇とともに静けさが戻り、なぜかとても安心する。なにも見えず、なにからも見られない。この暗さが、僕には好ましい。

 思えば、これはよい機会なのかもしれない。毫もおもしろみの感じられない生活に精神は枯れ、ただ身内への絆しによってのみ生きながらえてきたこの身体は、そろそろ休んでもよいのではないか。
 人生に特別の感慨をもてない僕は、いままでも幾度となくその終わりを想ってきた。しかし、自分の生に執着のない僕が、その死になんらのこだわりがある訳もなく、残される家族への迷惑が思い出されるたびに簡単に死をあきらめてきた。その点で、僕の家族は正しく生への執着の象徴であったのだろう。
 ただ、その絆しも今日で消え去った。父も母も姉も、あんなに楽しそうに生きていながら、最後の最後には至極くだらない理由で死んでいったのだ。対向車との正面衝突。居眠り運転だったという。なんと、居眠りに殺されたのだ。こんなに愉快なことが他にあるだろうか。あれほど僕を生かしてきた存在は、結局はその程度のものだったのだ。
 先ほど病院で遺体を確認し、警察で事情を聞かされた。終始ぼうっとしていた僕は、家族の死を悲しむ人間に見えただろうか。しかし、僕にあるのは奇妙な安心感であった。僕にとっての絆しが、枷がなくなったという事実は、いままで感じたどんなものよりも幸福であった。まして、僕は家族の死を悼む真人間なのだ。きっと、今の僕が死を選んでも誰も責めまい。それは、とてもとてもよいことのように思えた。

 踏切がみえてきた。かんかんと音をたてるそれは、僕を祝福しているようでうれしくなる。こんな僕にさえ世界はやさしいのだ。あと少ししたら、このあたりに僕の臓物が、肉が飛び散る。最後の最後に、僕の生きた証を刻むのだ。どれほどつまらない存在でも、世界に跡を残せる。ほんの少しだけ生きる希望が湧いた。

 ぐっと脚に力をこめる。最後ぐらいがんばらないといけない。僕を照らすライトと鳴り響く警笛は、やはり祝福のファンファーレ。こんな終わりになって、はじめて生きることに真面目になれる。強い衝撃に痛みすら感じない。これが僕のさいご。  






 



 強い嘔吐感とともに目蓋をもちあげる。喉が痛い。すっぱい痛みを咳で追い出す。
 いったい自分はどうしたのだろう。視界に映る細い手に違和感を感じた。自分を自分として認識できないほどに、僕は僕を捨てていたのだろうか。呆然と床をみつめれば、これまた自分のものとは思えないほどの華奢な脚。そしてなによりも、なんのでっぱりもない性器。どうやら僕は、もう僕ではないようだ。
 しばらくぼうっとしていると、こつりと音がした。ゆるゆると顔を上げると、気味が悪いほどに美しい女性が僕を見下ろしている。
 「また失敗」
 その容貌に似つかわしい声で女性がつぶやく。
 僕は何を失敗してしまったのだろうか。いや、僕自身が失敗なのだろう。こんなにつまらない生き物が、成功であるはずもない。そう考えると、わざわざ僕なんかの為に眉を寄せる女性がとてもやさしい人に思えてくる。なんだか、とてもうれしい気持ちになって小さく笑う。
 「くっ」
 女性の眉間に皺が寄る。どうやら僕の笑顔がお気に召さなかったようだ。やはりとてもやさしい人なのだ。
 女性は僕に近づくと、腕をつかんで力任せに引き起こす。そのまま薄暗い廊下を引きずられ、なんだかひどく臭う穴の前につれていかれた。そして、僕は突き落とされる。

 ぐちょりと、なにかやわらかいものの上に落ちた。ひどく臭う。すこしの光もないものだから、なにがなんだかわからない。ああ。僕はここで死ぬんだろう。とても安心した。
 
 どれくらいの時間がたったのだろう。どうでもいい。なにも反射しない真っ暗闇で、ひどい臭いのするやわらかなものたちと死んでゆくのだ。なにも見えず、なにからも見られない。この暗さが、僕には好ましい。





 はい。アリシアクローンへの憑依モノでしたとさ。


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