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No.40286の一覧
[0] 習作 civ的建国記 転生 チートあり  civilizationシリーズ [瞬間ダッシュ](2018/05/12 08:47)
[1] 古代編 チート開始[瞬間ダッシュ](2014/09/14 19:26)
[2] 古代編 発展する集落[瞬間ダッシュ](2014/09/14 19:26)
[3] 古代編 彼方から聞こえる、パパパパパウワードドン[瞬間ダッシュ](2014/09/14 19:26)
[4] 古代編 建国。そして伝説へ 古代編完[瞬間ダッシュ](2014/09/14 19:26)
[5] 中世編 プロローグ その偉大なる国の名は[瞬間ダッシュ](2014/09/09 17:59)
[7] 中世編 偉大(?)な科学者[瞬間ダッシュ](2014/09/14 19:26)
[8] 中世編 大学良い所一度はおいで[瞬間ダッシュ](2014/09/15 17:19)
[9] 中世編 ろくでもない三人[瞬間ダッシュ](2014/10/09 20:47)
[10] 中世編 不幸ペナルティ[瞬間ダッシュ](2014/09/26 23:47)
[12] 中世編 終結[瞬間ダッシュ](2014/10/09 20:55)
[13] 中世編 完  エピローグ 世界へ羽ばたけ!神聖オリーシュ帝国[瞬間ダッシュ](2014/10/19 21:30)
[14] 近代編 序章①[瞬間ダッシュ](2016/01/16 20:38)
[15] 近代編 序章②[瞬間ダッシュ](2016/01/16 20:53)
[16] 近代編 序章③[瞬間ダッシュ](2016/01/16 21:15)
[17] 近代編 序章④[瞬間ダッシュ](2016/01/16 21:42)
[18] 近代編  追放[瞬間ダッシュ](2016/01/16 21:57)
[19] 近代編 国境線、這い寄る。[瞬間ダッシュ](2015/10/27 20:31)
[20] 近代編  奇襲開戦はcivの華[瞬間ダッシュ](2016/01/16 22:26)
[21] 近代編 復活の朱雀[瞬間ダッシュ](2016/01/16 22:47)
[22] 近代編 復活の朱雀2[瞬間ダッシュ](2016/01/22 21:22)
[23] 近代編 復活の朱雀3[瞬間ダッシュ](2016/01/29 00:27)
[24] 近代編 復活の朱雀4[瞬間ダッシュ](2016/02/08 22:05)
[25] 近代編 復活の朱雀 5[瞬間ダッシュ](2016/02/29 23:24)
[26] 近代編 復活の朱雀6 そして伝説の始まり[瞬間ダッシュ](2018/04/16 01:33)
[27] 近代編 幕間 [瞬間ダッシュ](2017/02/07 22:51)
[28] 近代編 それぞれの野心[瞬間ダッシュ](2017/02/07 22:51)
[29] 近代編 パナマへ行こう![瞬間ダッシュ](2017/04/14 22:10)
[30] 近代編 パナマ戦線異状アリ[瞬間ダッシュ](2017/06/21 22:22)
[31] 近代編 パナマ戦線異状アリ2[瞬間ダッシュ](2017/09/01 23:14)
[32] 近代編 パナマ戦線異状アリ3[瞬間ダッシュ](2018/03/31 23:24)
[33] 近代編 パナマ戦線異状アリ4[瞬間ダッシュ](2018/04/16 01:31)
[34] 近代編 パナマ戦線異状アリ5[瞬間ダッシュ](2018/09/05 22:39)
[35] 近代編 パナマ戦線異状アリ6[瞬間ダッシュ](2019/01/27 21:22)
[36] 近代編 パナマ戦線異状アリ7[瞬間ダッシュ](2019/05/15 21:35)
[37] 近代編 パナマ戦線異状アリ8[瞬間ダッシュ](2019/12/31 23:58)
[38] 近代編 パナマ戦線異状アリ 終[瞬間ダッシュ](2020/04/05 18:16)
[39] 近代編 幕間2[瞬間ダッシュ](2020/04/12 19:49)
[40] 近代編 パリは英語読みでパリスってジョジョで学んだ[瞬間ダッシュ](2020/04/30 21:17)
[41] 近代編 パリ を目前にして。[瞬間ダッシュ](2020/05/31 23:56)
[42] 近代編 処刑人と医者~死と生が両方そなわり最強に見える~[瞬間ダッシュ](2020/09/12 09:37)
[44] 近代編 パリは燃えているか(確信) 1 【加筆修正版】[瞬間ダッシュ](2021/06/27 09:57)
[45] 近代編 パリは燃えているか(確信) 2[瞬間ダッシュ](2021/06/28 00:45)
[46] 近代編 パリは燃えているか(確信) 3[瞬間ダッシュ](2021/11/09 00:20)
[47] 近代編 パリは燃えているか(確信) 4[瞬間ダッシュ](2021/12/16 00:04)
[48] 近代編 パリは燃えているか(確信) 5[瞬間ダッシュ](2021/12/16 00:02)
[49] 近代編 パリは燃えているか(確信) 6[瞬間ダッシュ](2021/12/19 22:46)
[50] 近代編 トップ賞は地中海諸国をめぐる旅、ただし不思議は自分で発見しろ 1[瞬間ダッシュ](2021/12/31 23:58)
[51] 近代編 トップ賞は地中海諸国をめぐる旅、ただし不思議は自分で発見しろ 2[瞬間ダッシュ](2022/06/07 23:45)
[52] 近代編 トップ賞は地中海諸国をめぐる旅、ただし不思議は自分で発見しろ 3[瞬間ダッシュ](2022/12/13 23:53)
[53] 近代編 トップ賞は地中海諸国をめぐる旅、ただし不思議は自分で発見しろ 4[瞬間ダッシュ](2024/01/04 19:20)
[54] 近代編 トップ賞は地中海諸国をめぐる旅、ただし不思議は自分で発見しろ 5[瞬間ダッシュ](2025/01/03 20:43)
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[40286] 近代編 トップ賞は地中海諸国をめぐる旅、ただし不思議は自分で発見しろ 3
Name: 瞬間ダッシュ◆7c356c1e ID:6e339e4b 前を表示する / 次を表示する
Date: 2022/12/13 23:53


地中海の出入り口であるジブラルタル海峡。その戦略的に重要な土地を現在領有しているのは、イスパニア王国であった。その国土はヨーロッパ大陸の西方にあり、かつては大航海時代における主要国家として新大陸へ乗り込んでいったこともある。だが、アステカ帝国をはじめとする新大陸国家によってはじき返されて以後、その国力は大きく落ちていた。ゆえに元大国。そんなありさまで、何の準備もなく神聖オリーシュ帝国と場当たり的に戦争状態へ突入してしまったイスパニア王国は、絶対的な兵力の少なさからいくばくかの時間の後にジブラルタル海峡を失った。海峡防衛のための戦いで戦力を払底したイスパニア王国はその後次々に領土を占領されてしまった。そしてついにはイスパニア王国の首都であるマドリードまでもが陥落した。ほぼ国土の中央に位置するマドリードの陥落をもって、イスパニア王国の半分がオリーシュ帝国の手中に収まったことになる。この大武勲を前に、戦いを指揮した近衛元帥はひどく上機嫌……とは残念ながらいかなかった。

「またか」

元帥はマドリードの王宮、その玉座に座り、うんざりするような顔で耳慣れた惨劇の報告を受けた。最初はなんという真似をしてくれたのかと憤慨していたものの、何度も繰り返されれば気が滅入るだけになる類の報告というものは確かに存在した。

「はい。巡回中の兵士が数名行方不明になり、その後焼死体で発見されました。ヒドイものになると、体の中から焼かれたような痕跡がある者もいました。犯人は元兵士の老人、およびそれに協力した住民です。すでに処刑しておりますが……その」
「なんだ」
「犯人集団には女性や子供まで含まれておりまして、それも特に強要されたわけでもなく金品を渡されたわけでもなく自発的に虐殺を行っていたことが取り調べで……」

元帥は手元のグラスをつかんで静かに握りつぶした。ガラスの破片が周囲に散らばるが、それには一切気にもかけなかった。これまでも自軍の兵士が無残な方法で私刑にされてきたが、その多くは成年男性によるものだった。それなのに、共犯とはいえ本来庇護されるべき非力なはずの者も積極的に参加するようになるなど、正気とは思えない。これでは、もはやこの国の人間すべてが信用できない。

「愚かすぎて何も言えんな、これは……」

ジブラルタル海峡を占領した際、イスパニア軍のほとんどを消滅させた。これでもう大丈夫だろうとほっとしていると、住民が武装して襲い掛かってくるようになった。ジブラルタルに近い都市を攻め落とし、慰撫に努めてこれでこちらに対する敵意がマシになるだろうと再びほっとした。住民の襲撃は止まらなかった。首都を占領し、これまで以上に住民への慰撫に努めた。それでも襲撃は終わらない。それどころか、とうとう女性や子供まで武器を手に襲い掛かってくる始末だ。安定化などほど遠い。だが、まさか今更占領を解いて撤退することなどできやしない。

「物資を相場以上の値段で買い、兵士にも乱暴を厳禁にしておりますが、効果があったとは……土地の宗教組織が徹底抵抗を煽っておりまして、もはや我々が撤退する以外に収める手はないといった状況です。子供にオリーシュ兵を殺せば殺した分だけ家族が天国にいけるなどと説く僧侶もいると聞きます」
「……」

元帥は怒りすら通り越したといった表情で、手の傷への手当てを行い始めた。誤解から戦い、撃退し、ついには首都さえ奪って見せた。本来ならば謝罪するべきは相手であるのにも関わらず、やさしくしてやった。それでもなおつけあがってくるイスパニア王国の民衆に、うんざりした気分以上の感情を抱けなくなっていた。もはや理不尽への怒り炎さえ燃えすぎて鎮火しかかっている。最も、イスパニアの住民にとっては国土を侵略されているから抵抗しているだけで、うんざりされるいわれはサラサラないと言うだろうが。
だがそもそもの話として、彼ら神聖オリーシュ帝国の人間は自分たちが戦っている国の歴史というものに無頓着過ぎた。イスパニア王国はかつてアフリカからジブラルタル海峡を経由して渡ってきた異教徒によって征服されるという憂き目にあっている。それを700年近い時間をかけて国土を奪還し今に至っているのだ。ジブラルタルから上陸して国土を北へ北へと奪っていくオリーシュ軍の姿は、まさにかつての異教徒による征服そのものであった。つまり、イスパニア王国にとっての最大級のトラウマを全力で刺激していることに他ならない。イスパニア人の老若男女がオリーシュ軍への苛烈な抵抗を行っているのは、そういった事情があったからであった。存在意義とまで化した国土の保全意識は強烈で、もはや慰撫だのなんだので止まる領域になかった。
だがそんな事情に考えを巡らせることができなかったオリーシュ軍人二人は、それはそれとして話を変える

「あ、あと元帥閣下。先に地中海に侵入し、そのあと我々と遮断されていた友軍部隊の動向が、ガリア共和国政府からもたらされました」
「……なに?」

その時、元帥の顔色が変わった。目に剣呑とした雰囲気が宿っている。先ほどまでの手を焼かされてうんざりだという、気だるげ様子が一瞬で消し飛んだ。

「あ、その。情報が錯綜していてはっきりしていないのですが、オストマルク政府と戦い停戦に持ち込み、現在は南ロマーニャに滞在して、ある程度安全を確保していると。……我々も住民の暴動に手を焼いていてすっかり失認していましたが、どうでしょう、合流命令は出しましたのでそのまま治安維持に投入して----っひゃあ!!」
「ふざけるな! あいつにこの無様な有様を見せろというのか……恥をさらせと、そう言いたいのか貴様ぁ!!」

進言した兵士の胸倉をつかみ、唾を吐きながら近衛元帥は叫んだ。顔を真っ赤にさせ、先ほどまでと様子を一変させた上司のその有様に、兵士は目を泳がせる以上の行動ができなかった。

「勝手に出された合流命令など知らんぞ、とにかくユウにイスパニアの地を踏ませるな! 来ようとしても追い払え!!」
「し、しかしそれではどこへ……?」
「そんなものはお前が自分で考えろ!」

突き飛ばすように兵士を玉座の間から追い出した元帥はそのまま扉にカギをかける。兵士はこの後のことを考えようとするも、混乱し呆然としたまま立ち尽くすしかなかった。残ったのは、玉座の間に一人残された近衛元帥のみだった。






神聖オリーシュ帝国に、新たな領土として南ロマーニャが加わった。加わったのだが、完全に飛び地であり、かつ本国との海路がいつ遮断されてもおかしくはないという立地であることからその維持は不可能であると考えられた。そのため、そのような土地に投資したり防衛したりすることは採算が合わないためパージするのがベターであるのだが、しかし、さすがにそう簡単に手放すには価値が高すぎた。
加えて、検討するための時間も不足していた。というのも……

「元帥閣下がジブラルタル海峡を占領することに成功し、早急にジブラルタルにて合流すべしとの命令が届いた。……というわけで、予期せず手に入れてしまった南ロマーニャの処遇について皆で話し合いたい」

瓢箪から駒的に自分たちのものになってしまった土地をめぐり、ユウの音頭で会議が開かれることになったのだった。

「元帥閣下がジブラルタル海峡を安定化させればこの南ロマーニャの価値は一気に高まります。ここを拠点に地中海への影響力を持てますから。しかし、もしもジブラルタル海峡が寸断されれば袋のネズミ。ちょうどほんの少し前までの我々の立場に瞬時に落ちます。ならば最初から高望みせず、最高でもジブラルタル海峡の保持だけに専念すべきです。仮に失敗してもパナマへ退却できますから」

北是は南ロマーニャの維持は行わず、余計な手間をかけずに切り捨てて即時退却するのがよいと考えた。なんならその際、返還の対価として安全に地中海を通行できるような何かを要求して。

「でもよ、もしも維持出来たら凄くね?」

オリ主がそれに反対意見を出した。反対意見と呼べるほど大層な中身ではないが、それでもその理由を述べていく。

「というかさ、一応保持したままにして、あとのことは全部向こうに丸投げしようぜ。売るなりなんなりは本国の偉い人が決めてくれる。だろ?」
「いや、まあ確かにそうなんだが……」

これには北是がうなる。確かにそれが本来のスジだろう。むしろ、現場レベルでせっかく得られた大きな占領地を勝手に返還してしまえば、あとから何か処罰を受けるかもしれない。元々は具体的な命令に依らず自分たちの力のみで得たものだが、それでも南ロマーニャという土地の大きさはそういった道理を蹴とばすだけの力がある。本当に始末が悪い。これが島規模ならよかったのだが。

「撤退した後にもこの土地の領有を主張し続けるなら、いくらかでも兵とそれを統率する指揮官が必要だ。その点はどうするつもりだ?」

ユウが維持する場合に必要な点を挙げる。現状の戦力不足状態で貴重な兵と指揮官を南ロマーニャに残していくなどキツい。道中なにがあるのかわからないのだから、できるだけ兵力は確保しておきたのだ。さらに、ここに残していった人員はほぼ孤立するため危険度も高い。「土地を全部返して戦力を維持して退却か、維持のために戦力を目減りさせて退却かの二択ってか……」とオリ主がぼやく。

「兵はまだしも、指揮官を失うのが痛すぎるな。能力や格からいって、最低でも我々三人のうちの誰かが残る必要がある。」
「……んん?」

さらに北是が追加で言うが、オリ主が怪訝な顔をした。

「兵は別にいいのか?」
「あくまで比較的にだ。例えば海軍のみならいざというとき素早く脱出できる。問題は代表となる人間のほうだ。武功でも実績でも、とにかく一目置かれるような人間でないと統率できないだろう。住民にも舐められ、反乱が発生する可能性が高くなる」
「……前のカスティリオーネ? とかいうところで戦った時、敵の大将を狙撃したやつがいるんだが、そいつじゃダメ?」
「むむ」
「実際あれはすごかったぜ、その場で見ていた俺が言うんだから間違いない。そうだ、ならいっそのこと今から宣伝しようぜ! 百発百中の超絶スナイパー的な感じでさ!」
「むむむ……戦場で武勲を挙げて、その報酬としてという筋書きはわかりやすくはあるが……」
「もともとは先祖がヨーロッパの出なんだろ、パナマ出身のあいつら。もしかしたらこの国出身かもしれんし。もしそうだったら、短期間程度ならうまい事いけるんじゃね?」
「……ユウ様、その、いかがいたしますか?」
「……本人に確認しよう、話はそれからだ」

こうして、カスティリオーネの戦いで大きな功績をあげた青年、カルカーノが呼び出され、先祖の出身について聞くと……

「あ、ハイ。ロマーニャだそうデス」
「はい決まり! よかったなお前大出世!」
「エ?」
「俺たちすぐにジブラルタルに戻んなきゃいけないのよ、味方と合流するために。でもそうするとここが空になるじゃん? 分捕った土地をどうするのか問い合わせようにも時間がないし。で、海軍と代表になる人間を残して本国の偉い人が判断するまでとりあえず南ロマーニャを確保しておこうって話になったの、で、つまりはその代表を君にやってもらおうかなって」

困惑するカルカーノに、オリ主がざっと事情を説明し、ユウが結論を端的に述べた。

「つまり君は、オリーシュ本国が南ロマーニャの権利を放棄するなり代わりの人間を送るまでの間の代表、いや土地の大きさから言って王がふさわしいかもしれないな。つまりなんだ、王様をやってほしい」
「え、ソンナむりデス! あぶないし――――」
「なあに、いざとなれば船に飛び乗って逃げればいい。別に死守命令とか出さないからさ、それに多分本国も放棄するだろうし、失敗しても怒られないって。しかも――――ワンチャンそのまま王様になれるかもしれない」

オリ主は、事のヤバさにしり込みするカルカーノに甘い言葉をちらつかせながら説得する。なんだかんだ言ってロマーニャ半島は地中海の奥にありすぎて、維持は艱難であるから領有権の放棄が行われる公算が高かった。しかしそれでも、もしもを考えてしまうのが人間だ。そしてその時、現地にすでにいてかつその国の人間の末裔が玉座にいたら――そのまま任せてしまえとなる可能性がある。そういったことを懇切丁寧に言った結果----

「じゃあ、あの、やりマス……」

堕ちたな……!

欲望にツケむことがすっかり得意になったオリ主が、そう内心でつぶやくのだった。ちなみにその時、北是とユウは詐欺の片棒を担がされたかのようないたたまれない顔をしていたのだった。

あれ、でも俺、どうして立候補しなかったんだろう……? 俺ならこういう時真っ先に王様やろうとするはずなのに……

そんな時、オリ主の胸にふとそんな思いがよぎったが、疑問に思ったところで答えが見つからないためすぐに霧散してしまう。答えを見つけるには、もう少し時間が必要になるのだった。




「バカなバカなバカな! なぜだあり得ないそんな何かの間違い……!」
「「……」」

ルドルフは憤怒に顔を真っ赤にさせながら自分あての手紙を握りつぶす。ぶつぶつと呪いの言葉でも言っているかのような様に、彼の周りの部下たちは恐れおののいていた。昼間からやっている酒場にて、周りで兵たちが多く楽しんでいる中その手紙を見たものだから被害者は多く出てしまった。現在の南ロマーニャではこのような占領軍向けに臨時営業をしている店が多くあったのだ。
さて、みなルドルフの性格を理解しているがゆえに何も言わず、固唾をのんで祈りながら彼を見る。それは嵐が過ぎ去ることを神に祈る船乗りのような真剣さだった。

「不合格……この未来の天才音楽家が……? あり得ない……あり得ない……」

どうやら手紙は不合格通知であったらしいと、周りの人間は漏れ聞こえてくるうめき声ともいえる発言から察した。ルドルフーー彼こそはカリブ海でのガリア軍との戦いで功績をあげ、中隊長に抜擢された優秀な兵士である。だが、ルドルフ本人はその評価に不満であった。彼は、信仰ともいえるレベルで音楽に対して敬意を持っており、その音楽の道で身を立てることを切に願っていた。だが悲しいことに、彼に音楽の才能は欠片もなかった。

「あの……俺たちは中隊長がその――っ!?」

その時、勇気ある部下がルドルフに慰めの言葉を何とかかけようとして音にならない悲鳴がもれた。急にルドルフが振り向き、かっぴらいた瞳孔でその部下をまっすぐに射抜いたからである。その眼は濁った水底のように暗くよどんでいた。

「ヨーロッパに来れたとき、主が与えた好機だと考えた。パナマなどという田舎では好この身に宿った音楽の才を正しく理解できるものなどいなかったから……芸術がわかるものはヨーロッパにこそいる、と思ったから……」
「は、はい……」

ルドルフは唐突に語りだした。部下は正直にいえば「いやそんなの知らないし」と思ったが、黙っているだけの分別はあったので黙って聞くことにした。言って癇癪を起されるのが嫌だったから。

「それもここ南ロマーニャに国有数の楽団が来ていると来た時、いよいよ主が音楽で生きる道を示したと思った……この楽団に入れという神託だと」
「あ、その手紙はそういう」

つまりは軍隊をやめてその劇団に入ろうとして不採用になって落ち込んでいるんだと部下は推測した。だが、ルドルフの続く発言でそうでないことに気づく。

「ただ楽団に演奏者として入れば、それはその場にいる限られた人間のみにしか音楽の神髄を伝えることができない。そこでこれが必要だった」
「あ、楽譜ですか」

ルドルフは手紙が入っていた封筒に同封されていた紙の束をそっとテーブルの上におく。音楽の知識がない部下は、とりあえず記号がいっぱいあるなくらいにしかわからなかったが。

「ゆえに作曲家になることを考えた。これでより広く多くの人々に音楽の何たるかを教えることができるから。思い立ったその日に専属作曲家として参加したいと連絡をとると実力が見たいというから何曲か作って送った。結婚式のための曲と指定されていたので、それ用のものを。そ……そしたら……そしたら……!!」

ルドルフは真冬に全裸で放り出されたかのように全身を震わせ出した。声もかろうじて聴きとれる程度に乱れている。やばいと部下は思ったが、もはや逃げられない。

「け、結婚式に葬送曲を、つ、作る馬鹿がいるかと……侮辱されたうえで突き返された! 何もわかっていない! 何も! 結婚式とは新郎新婦が死が二人を分かつまでの旅路の第一歩であるというならば! 葬送曲こそが相応しいと!! 祝いの席だから明るい曲を用意するなど馬鹿にもできる!!」

どうやらそういうことらしい。試験官が意図したものとは違う回答を自信満々に答え、結果不合格になった――つまりはそういうことだった。理屈はまあ、一応、ひねりがきいているといえば面白いかもしれないが……さすがに試験でやるのは勇気というより蛮勇であろう。それでも、いつまでも怒りに震えられても面倒なので、部下は言った。「きっと文化が違ったのだ」と。あなたは悪くない、ただ文化的な違いでしかたがなかった、と、もうそういうことで話を締めたい思ったのだ。


「……文化? あ、そうかなるほど!!」

ただ、ルドルフはこの文化の違いという指摘に偉く感銘を受けたようだ。何ども文化、文化といって自分の中で思考をまとめるようにつぶやく。

「つまり、結婚式に葬送曲を流すような文化を自分で作り愚かな者どもに真なる音楽とは何かを啓蒙すれば……いやいっそ自分の国を持ちそこでそういう布告を出して……ふっ! どうやら主のお導きを勘違いしていたようだ。これこそが主の御心……!」

いやそれは違うだろうと言いたくなるような願望に、酒場にいたものは全員がもう嫌だと思った。酒はすっかり抜けていた。そしてタイミングが悪いことにその翌日。功績目覚ましいカルカーノという兵士が代理であるが王として南ロマーニャを預かり、他の兵士たちはジブラルタルまで撤退するという命令が通達された。大きな手柄があれば国を持てるという実例に、ルドルフは本格的におのれの野心を燃え上がらせるのだった。




「うむ……ようやく国内品の経済は安定に向かい始めたようだ」
『オストマルクからの賠償金が国庫を潤したおかげでしょう。あとは国防体制を強化しなければ』
「ああ、ヴァンデか」


ランプが一つだけ灯っている窓のない執務室で、ロベスピエールは一人言葉を発していた。まるで、誰かの声を自分で発して会話をしているかのようであったが、当然ここには他者はいない。


『考えを改めるよう促し、猶予も与えました。それでも態度を変えないならば、軍によって対処しなければならないでしょう』

ロベスピエールの1人会話の中で出てきた「ヴァンデ」。それは現在、口に出すことがタブーとされている土地の名だった。
ヴァンデ地方は現在進行形で、共和国政府に対する頑強な抵抗運動が発生している。より率直に言えば暴動、内乱である。田舎ゆえか保守的で王と神を敬愛しているというのがヴァンデの特徴であり、そのためそれらを完全否定する共和国政府を目の敵にしていた。そしてついにヴァンデ地方の農民たちは一斉蜂起で以て共和国政府に答え、今に至る。ロベスピエールたちの存在意義を根底から揺るがしかねないこの反乱は、『ヴァンデの反乱』と呼ばれた。

「ふむ……」


少しの間頭をひねり、何事かを思考したロベスピエールは、ゆっくりと席を立つと人を呼びつけた。

「おおロベスピエール議長。ワイは何をすればよろしいので?」

現れたのは、先の戦いでオストマルクを屈服させるという戦功をあげ、天才とパリ市民に持ち上げられているナポレオン・ボナパルテだった。そんなナポレオンに相対したロベスピエールは、冷めた目であっさりとその命令を口にした。

「ヴァンデ地方を地図の上から抹消しろ。全て破壊だ。動くものは全部。石器時代に返してやれ。同志ボナパルテ」

ロベスピエールは執務室を訪れた若き天才将軍に一息に言った。
ヴァンデ地方の完全なる破壊。それを、対オストマルク戦争の英雄たるナポレオンにやらせようというのだった。

「了解しました、すぐにでも取り掛かります。しかし、その、ロベスピエール議長。先ほどの『同志』というのは何でっしゃろか?」
『そうか君は外国から帰ってきたばかりでしたね』
「おお、そうだったのかサン=ジェスト。教えてくれてありがとう。少し前に議会で決まったことだが、これからはすべてが平等。敬称はすべてこの同志という言葉だけにということになった。」
「なるほど同志ロベスピエール……こんな感じでっか?」
『素晴らしい!』
「ああ、いつ聞いてもいい言葉だ。なあサン=ジェスト」

ナポレオンは、努めて笑顔を維持した状態で内心で唾を吐いた。

(アホくさ! ワイは普通に将軍って言われたいわ! それになんやこの一人芝居みたいなんは!あのバラスとかいう議員がクーデター未遂を起こして相方のサン=ジェストが死んでからああなったとか言うが……ホンマ、哀れやな)

ナポレオンは顔の筋肉が不格好に歪みそうになるのを悟られないようにした。軍人であるナポレオンは、やれと言われればやるだけだった。信仰も王室への敬愛も持たないナポレオンは、ヴァンデに対する同情心を抱かなかった。ただ一方で、懸念はあった。

「しかし、対岸のブリタニアに関してはよいので? ヴァンデよりもそちらのほうが脅威度は上かと思いますが」
「ああそれか、なに心配はいらない。王政時代の遺物にちょうど使えるものがある」
『ブリタニアは自らの罪によって裁かれるのです。殺人教唆ならぬ侵略教唆の罪で』
「?」

ナポレオンは疑問を抱いたが、深くは考えなかった。だがその答えは翌日の新聞で明らかになる。アステカ帝国が行った神聖オリーシュ帝国への侵攻は、ブリタニアによる指示によるものであったことが暴露されたのだ。そうすることで空き巣のように新大陸に攻め込んでいったのだと。こうなると、ハメられた側も黙っているわけにはいかない。心情的にも面子的にも。

「ブリタニア王国は信頼するに値しない海賊の国に等しい! 今までどのような顔で私と会ってきたのか、ぜひ聞かせてもらいたいほどだ!!」
「そのようなことを面と向かって言うなど……後悔するぞ大使殿」

ブリタニア王国に駐在していたオリーシュの大使は公然と国王に対して非難をぶつけた。さらにそのことを新聞にして各国に事の詳細を流す。これにより両国の関係は一気に悪化した。こうして、ブリタニアはガリアのみに注力することができなくなったのだった。
これだけでもブリタニア王国は頭が痛い事だろうが、さらに事態は急展開を迎える。アステカ帝国の国土の多くを占領していた新大陸のワシントン将軍がブリタニア王国本国に対して独立を宣言したのだ。まさに格好のタイミングでの宣言に、ブリタニア王国は苦しい局面を強いられることとなった。

だが、頭が痛いのは何もブリタニア側だけではなかった。それは現在もっともブリタニアに近い距離に展開しているオリーシュ軍、すなわちイスパニア王国(の住民)との終わりが見えない戦いを抱えている近衛元帥もであった。今までは占領した土地と未占領の北部に意識の大部分を向けておけばよかったのが、急にブリタニア軍への動向も注意しなければならなくなったからだ。特に、精強でしられるブリタニア海軍に。このままブリタニアとの関係が悪化すれば、海峡が奪われ海路を遮断されてイスパニアに閉じ込められるという最悪のリスクを想定しなければならなくなった。

「在ブリタニア大使め、やってくれたな……!」

思わぬ味方からの仕打ちに、近衛元帥のいらだちはとどまるところを知らなかった。











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