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No.40286の一覧
[0] 習作 civ的建国記 転生 チートあり  civilizationシリーズ [瞬間ダッシュ](2018/05/12 08:47)
[1] 古代編 チート開始[瞬間ダッシュ](2014/09/14 19:26)
[2] 古代編 発展する集落[瞬間ダッシュ](2014/09/14 19:26)
[3] 古代編 彼方から聞こえる、パパパパパウワードドン[瞬間ダッシュ](2014/09/14 19:26)
[4] 古代編 建国。そして伝説へ 古代編完[瞬間ダッシュ](2014/09/14 19:26)
[5] 中世編 プロローグ その偉大なる国の名は[瞬間ダッシュ](2014/09/09 17:59)
[7] 中世編 偉大(?)な科学者[瞬間ダッシュ](2014/09/14 19:26)
[8] 中世編 大学良い所一度はおいで[瞬間ダッシュ](2014/09/15 17:19)
[9] 中世編 ろくでもない三人[瞬間ダッシュ](2014/10/09 20:47)
[10] 中世編 不幸ペナルティ[瞬間ダッシュ](2014/09/26 23:47)
[12] 中世編 終結[瞬間ダッシュ](2014/10/09 20:55)
[13] 中世編 完  エピローグ 世界へ羽ばたけ!神聖オリーシュ帝国[瞬間ダッシュ](2014/10/19 21:30)
[14] 近代編 序章①[瞬間ダッシュ](2016/01/16 20:38)
[15] 近代編 序章②[瞬間ダッシュ](2016/01/16 20:53)
[16] 近代編 序章③[瞬間ダッシュ](2016/01/16 21:15)
[17] 近代編 序章④[瞬間ダッシュ](2016/01/16 21:42)
[18] 近代編  追放[瞬間ダッシュ](2016/01/16 21:57)
[19] 近代編 国境線、這い寄る。[瞬間ダッシュ](2015/10/27 20:31)
[20] 近代編  奇襲開戦はcivの華[瞬間ダッシュ](2016/01/16 22:26)
[21] 近代編 復活の朱雀[瞬間ダッシュ](2016/01/16 22:47)
[22] 近代編 復活の朱雀2[瞬間ダッシュ](2016/01/22 21:22)
[23] 近代編 復活の朱雀3[瞬間ダッシュ](2016/01/29 00:27)
[24] 近代編 復活の朱雀4[瞬間ダッシュ](2016/02/08 22:05)
[25] 近代編 復活の朱雀 5[瞬間ダッシュ](2016/02/29 23:24)
[26] 近代編 復活の朱雀6 そして伝説の始まり[瞬間ダッシュ](2018/04/16 01:33)
[27] 近代編 幕間 [瞬間ダッシュ](2017/02/07 22:51)
[28] 近代編 それぞれの野心[瞬間ダッシュ](2017/02/07 22:51)
[29] 近代編 パナマへ行こう![瞬間ダッシュ](2017/04/14 22:10)
[30] 近代編 パナマ戦線異状アリ[瞬間ダッシュ](2017/06/21 22:22)
[31] 近代編 パナマ戦線異状アリ2[瞬間ダッシュ](2017/09/01 23:14)
[32] 近代編 パナマ戦線異状アリ3[瞬間ダッシュ](2018/03/31 23:24)
[33] 近代編 パナマ戦線異状アリ4[瞬間ダッシュ](2018/04/16 01:31)
[34] 近代編 パナマ戦線異状アリ5[瞬間ダッシュ](2018/09/05 22:39)
[35] 近代編 パナマ戦線異状アリ6[瞬間ダッシュ](2019/01/27 21:22)
[36] 近代編 パナマ戦線異状アリ7[瞬間ダッシュ](2019/05/15 21:35)
[37] 近代編 パナマ戦線異状アリ8[瞬間ダッシュ](2019/12/31 23:58)
[38] 近代編 パナマ戦線異状アリ 終[瞬間ダッシュ](2020/04/05 18:16)
[39] 近代編 幕間2[瞬間ダッシュ](2020/04/12 19:49)
[40] 近代編 パリは英語読みでパリスってジョジョで学んだ[瞬間ダッシュ](2020/04/30 21:17)
[41] 近代編 パリ を目前にして。[瞬間ダッシュ](2020/05/31 23:56)
[42] 近代編 処刑人と医者~死と生が両方そなわり最強に見える~[瞬間ダッシュ](2020/09/12 09:37)
[44] 近代編 パリは燃えているか(確信) 1 【加筆修正版】[瞬間ダッシュ](2021/06/27 09:57)
[45] 近代編 パリは燃えているか(確信) 2[瞬間ダッシュ](2021/06/28 00:45)
[46] 近代編 パリは燃えているか(確信) 3[瞬間ダッシュ](2021/11/09 00:20)
[47] 近代編 パリは燃えているか(確信) 4[瞬間ダッシュ](2021/12/16 00:04)
[48] 近代編 パリは燃えているか(確信) 5[瞬間ダッシュ](2021/12/16 00:02)
[49] 近代編 パリは燃えているか(確信) 6[瞬間ダッシュ](2021/12/19 22:46)
[50] 近代編 トップ賞は地中海諸国をめぐる旅、ただし不思議は自分で発見しろ 1[瞬間ダッシュ](2021/12/31 23:58)
[51] 近代編 トップ賞は地中海諸国をめぐる旅、ただし不思議は自分で発見しろ 2[瞬間ダッシュ](2022/06/07 23:45)
[52] 近代編 トップ賞は地中海諸国をめぐる旅、ただし不思議は自分で発見しろ 3[瞬間ダッシュ](2022/12/13 23:53)
[53] 近代編 トップ賞は地中海諸国をめぐる旅、ただし不思議は自分で発見しろ 4[瞬間ダッシュ](2024/01/04 19:20)
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[40286] 古代編 建国。そして伝説へ 古代編完
Name: 瞬間ダッシュ◆7c356c1e ID:95ce0ae2 前を表示する / 次を表示する
Date: 2014/09/14 19:26
海路を手に入れた俺たちは、瞬く間に行動範囲を広げた。いままで徒歩では困難だと思われていた北の山脈地帯を海から迂回する事によって突破し、山の向こう――すなわち北側へ探索の手は伸びていった。
海を船で冒険していた者たちを筆頭に、更に多くの集団と遭遇する事で俺たちの村には各地域からの交易品がもたらされた。そしてそんな俺たちの豊かさに魅かれたのか、村への移住を希望する者が多く出た。
当然、こうなっては何時までも洞穴に住んでいる訳にはいかない。
東西の森林地帯を鉄製の斧で切り開き、木材を組んでログハウスもどきの家を建て、増えた人口を賄うために開墾を奨励し、海辺に小さな灯台を作ることで、漁の安全性を上げつつ収穫量を引き上げる。
俺たちの村で入手不可能な品々は、塩や銅、場合によっては鉄製の道具を輸出する事で賄うなど、人が増える事による弊害を取り除き、右往左往しながらも急速に発展していく俺たちの村。そして俺が25歳になるころには、村の規模は俺が生まれる前の数倍にも膨れ上がっていた。
平和的に、共存的に、俺達とその周辺地域は繁栄を享受した。
……だが、そんな豊かさの光に誘われるが如く、招かれざる客までもが俺達の周辺に現れ始めた。
彼らは、ここよりはるか北に位置する平原地域を気ままに闊歩する部族だった。定住する事は無く、馬に乗って家畜を養いつつ各地を放浪する彼らを「北方騎馬蛮族」、後に俺達は彼らをそう呼んだ。

彼らの出現と共に、事は起こった。
俺達の村と交易で結ばれていた集落の一つが、突如として現れた集団に襲われたのだ。その集落は村から北西方向の海岸付近、即ち綿を栽培し、俺達が最初に交易を結んだ相手だった。
馬という未知の動物に乗り、高速で疾駆する蛮族。精々獣相手にしか戦闘経験がなかった彼らに抵抗する術は無く、集落は一日で焼け落ちた。
そして運が悪い事に、俺と俺の嫁がその集落に滞在していた時にその襲撃は起こったのだ。
村以外の場所を見てみたいと言う嫁の希望をかなえようと、遅い新婚旅行をして、例の集落に就いた時に妊娠が分かって、そのまま出産を終えて体力が回復するまで滞在することになり…………

俺は逃げ惑う人々を叱咤して、押し寄せる騎馬を食い止めようと奮闘している内に回り込まれ、嫁は切り殺された。
生まれたばかりの赤ん坊を守るために、自ら盾となって死んでいったのだ。
俺が駆けつけた頃には、既に嫁の息は無かった。運よく生き残った、俺の初めての赤ん坊泣いているばかりで、彼女はもう俺に語りかける事も、気づいたら傍にいてくれる事もできなくなっていた。
俺がアイツと始めた在った日から今日までの記憶が脳内でフラッシュバックして、眩暈がした。
アイツいつだって俺の周りをちょろちょろしていた……
気がつけば一緒に暮らすようになり、結婚し、子供まで生まれた。
そんな日々が唐突に終わり、そしてそれが紛れもない現実であるという事が、津波のように押し寄せて来た。
何と人間は弱いのか。何と簡単に人は死ぬのか。
俺はそんな当たり前のことを、理解したつもりになっていただけで、ちっとも理解していなかった。


それは完全なる敗走だった。
後ろから襲い掛かってくる騎馬に多くの者が捕捉されて蹂躙される中、俺は生まれたばかりの息子を抱え、集落の生き残りとともに船に飛び乗り、海に逃れた。
そして、海路で俺の村に生きてたどり着いた頃には、すでに片手で数えるほどしか生き残りはいなかった。
なれぬ航海と準備不足が、海の上での転覆を助長したのだ。

その後も凶報は続く。
北の山脈の向こう側にあった集落のほとんどが、やつらによって蹂躙された。日を追うごとに増えていく、集落を焼かれて村に逃げ込んでくる者達。
そんな中、今後のことを話し合う集会が開かれた。
俺はやつらと戦い、生き残った唯一の村出身者であると同時に、村一番の勇士であるということで呼ばれたが…………俺は話を聞いているうちにここに要る全員を張った押したくなってきた。

やつらは馬という大型の動物に乗り、こちらよりもさらに強力な武器(おそらくは動物の骨を組み合わせた複合弓)を使いこなす。
騎馬による機動力もさることながら、こちらの士気を砕く圧倒的な突撃力は確かに脅威だろう。
だが……降伏論などもっての外だ!!
何が貢物で許してもらおうだ! 何が恭順しようだ!
やつらは宣戦布告もなしに攻め込み、奪うだけ奪っていった蛮族だぞ!? 
そして、俺の妻を殺した連中だ!! 絶対に許すことなどできない!

俺は立ち上がり、そう怒鳴った。
この時代では大男である俺の大きさと怒声に恐れおののいたのか、場は一気に静かになった。
だが、これがさらに俺の神経を逆撫でる。つまりだ、ここにいる連中は全員、覚悟もなく服従しようとしているんだ。
ただ目先の恐怖から逃げたい一身で、自分たちが築いてきたものを……

てめえらは恥ずかしくないのか!?

俺は、なぜか流れてくる涙をこらえながら、鼻水を流しながらに叫んだ。
理不尽に屈したくなかった。こんな時代に流されて、いままで頑張ってきたものを台無しにされたくなかった。
俺と共に今までいっしょに頑張ってきた皆が、そんな情けない奴らと思いたくなかった。
そしてなにより、アイツとの思い出が詰まったこの村を、やつらに渡してやるなど虫唾が走るのだ!

すると誰かが言う。女房を殺された恨みで巻き込むな、と。

私怨上等だ、俺はアイツのために戦うんだよ!!

啖呵きって押し切る。そんな拙過ぎる演説だったが、一人二人と俺に同調するものたちが出てきた。やろう、と。ヤツラから俺たちの居場所を守り抜こう、と。
最初は小さかった声が、次第に束となって大きくなり、ついに皆の心に戦うための覚悟が芽生えたとき、村の総意が決した。
そして、今度は村に逃げ込んできた他集落の連中の番だ。お前らはどうするのか。
すでに帰る集落を失った連中に問う。
それは言ってみれば、コチラとヤツラのどちらにつくのか、という暗黙の問いだった。

わが身可愛さに己が家族を殺した連中に媚を売るなら売るがいいさ。ただし、その時は俺たちの敵だ。俺たちにつくなら共に戦え。傍観など許さない。という意味をふんだんにこめて、彼らに視線で問いかけた。

答えは、俺が期待していた通りのものであったことは言うまでもない。
その返答に納得した俺は、ヤツラをこの大地から抹殺するための作戦を伝え始めた。











交易と探検から判明したが、俺の村は大陸の南端に位置している。南側には海が広がり、北側を山脈が壁のように東西に連なっていることで、南と北を分断している。
各集落はおおよそ南側の海岸沿いか、大陸側の陸地に位置し、海路で繋がっている。
しかし騎馬民族の連中は、山をはさんではるか北側が本拠地になる以上、俺達の村を襲うとするならば、考えられるのは三つの経路だ。
一つは山道を使う事。源義経のように山の上から坂落としを狙うならば、奇襲としては効果大だろう。
二つ目は海路を使う方法。連中は海岸沿いの村を襲っているのだから、船に馬ごと乗りこんで、直接乗りつけて来るならば、かなり迅速な行動が出来る。
そして三つめ。これがもっとも可能性が高いが、大きく山脈を迂回し、限定的に船を使って、東西の森林地帯を強引に突破する方法だ。俺が敵なら、この案を取る。

海路も山道も、騎馬で行くなら森の中を行く方がなれない事をするよりは楽だからだ。だから俺達は西か東、どちらかから来る敵を警戒し、迎撃しなくてはいけない。
綿の集落から直接やって来るならば西、山側の全ての集落を平らげてから来るならば、東も在りうる。いや、両方だって考えられるな。
つまり俺達は、二正面作戦を強いられるということだ。
だが……俺は絶対に引き下がるつもりはない。戦闘経験の不足は知恵を捻り、戦術で補えばいい。



10日。それが俺達に与えられた時間だった。
この間、武器を作り、戦いに駆り出された男たちに作戦を伝え、訓練を施した。
非戦闘員は海岸付近に避難させ、いざという時の為に船を用意しておいた。馬の扱いが美味くても、海上ではこちらの方が上手なので、海にさえ逃げられれば安全だからだ。このなかにはもちろん、俺の息子もいる。
こうして俺達は心おきなく戦えるように準備し、東西の森に待機しつつ、斥候をこまめに送って情報収集を密にしながら待った。
もしかしたらこのまま敵がやってこないかもしれない。略奪で十分な獲物を得たことで満足し、引き上げて行ったのではないかという空気が出始めたか、俺は決してそうは思えなかった。
戦いに連戦連勝中している時というのは、歴史をひも解いてみても調子に乗るのが古今東西の軍の常識だ。襲えば襲った分だけ得られる戦いは、それだけ連中にとっては美味い事だろう。だから、奴らは絶対にここに来ると、俺は確信し、村の集会場でじっと時を待っていた。
そして10日目の朝、大急ぎで掛け込んで来た斥候の報告を聞いて、それは現実のものになったのだ。

敵、東西方向から進撃中。

斥候は、簡潔に俺に話した。
やってやる。俺はやってやるぞ。俺が受けた苦しみを、そっくりそのまま奴らに叩き返してやる。
てめえらの首は、柱に吊るされているのがお似合いだ!!





森の木々は、奴らの主な武器である強力な弓矢の威力を半減させる。後は如何に馬の速度を殺すかが問題となる。だが、障害物の多い森の中ではそれも容易い。その上、騎馬の力を盲信し、随伴歩兵を付けていない騎兵など恐れる必要はない。騎馬が持つ宿命的な欠陥を、この戦いで奴らの骨身に叩きこんでやるのだ。足を止められた騎兵など、唯の的である事を、な。
敵の出現を待ちかまえていた俺達の前に、ついに10から20の騎兵が姿を現した。それぞれが弓で武装し、威嚇の為かさっそく矢を放ってくる。
樹木に突き刺さる音で士気を挫き、突進力で一気にこちらの隊列を突き崩すつもりだろうが、そうはいかなかった。
突如として馬が転倒し、先頭を走る騎兵が地面に放り出されたからだ。
調子よく走る馬の脚を止めたのは、森の木々に張り巡らされた革ひもだった。これを土でコーティングし、葉をつけてカモフラージュした上で、丁度馬が足を引っ掛ける高さに設置しておいたのだ。
落馬した敵に、俺達は鬨の声を上げながら突っ込み、その身体に槍を突き立てて行った。
鉄製の槍は敵の皮膚を容易に突き破り、肉に深々と突き刺さる。
そういった敵の断末魔の叫びが森に響くたびに、俺達は血に狂い、一人また一人と敵を仕留めて行った。
味方の不利を悟った騎馬が後退し、逃げて行く様を見た仲間達は勝利の雄叫びをあげた。
この時、俺は西側の森で戦ったが、同様のトラップを仕込んでおいた東側の森でも、同様の戦果があったようだ。しかし、数は5騎と少なかった。
戦術的な面から考えると、恐らく最初の一撃は威力偵察だと思われた。東西のどちらが手薄か、罠の類は無いか、敵の戦力はどの程度か等など、計るつもりだったのだろう。
再攻撃は明日か、明後日か……少なくとも今回は罠を警戒して進軍速度は遅い筈。
俺は第二戦に備えて、全ての戦力を村に呼び戻してその為の準備を進めた。
次に敵が来たときは、それは全力かそれに近い数を以て挑んで来る筈だ。逆にそれさえ凌いでしまえば、俺達の勝ち。
絶対に負けられない。そして、一騎も残らずせん滅する。絶対に生きて返さない。


本格攻勢は、翌日の日暮れだった。日暮れ、つまりもうじき太陽が沈むころに挑んできたという事は、短期決戦を挑むつもりか。だが、これは完全に俺達に味方した。
俺達の村は、森を切り開いたことで森と村との境界があいまいだ。要するに、遮蔽物が多くあるのだ。その木の間にあらかじめ大量に用意していた逆茂木をカモフラージュ付きで隠しておいて、敵の進行方向を塞いだ。鉄によって加工効率が上がったからこその芸当だった。
このバリケードによって、敵の馬は無効化。そうなれば、今度は歩兵同士の戦いになる。
騎兵も馬から降りて歩いて近づいてくる。
弓矢や略奪したと思われる鉄製の農具を持った歩兵部隊に対して、俺達は木の板に鉄板を張り付けて加工した、人が1人すっぽり隠れる大きな盾と、その後ろに槍を持たせた2人一組を横並びに並ばせて、後方からの矢を降り注がせた。
家屋と樹木によって必然的に狭い道は、たちまち俺達の密集隊形によって塞がれ、敵はその圧力によって森へと押し出された。
家々に火をつけられず、日も暮れ、土地勘もない場所で立ち往生してしまった敵の運命は、既に決していた。
朝日が昇る頃には、攻め寄せて来た敵は全て駆逐され、俺達の完全勝利となった。
当然、こちらも少なくない怪我人と死者も出した。これが戦争であると言えばそれまでだし、俺がきっかけで始めた戦いだ。だから俺は彼らの死を決して忘れない。そして、命を賭して戦って、一足先にあの世へ旅立った彼らを、けっして後悔させない。
敵の死体を山積みにして、衛生の為に燃やす。その焔と臭いを真正面から見詰めながら、俺はそう誓った。



戦いはなおも続く。
多くの若い男と戦力を数日間で失った敵の力は、かなり目減りしている事だろう。ならば、未来の禍根を断つためにも、ここで奴らを徹底的に叩き、再起不能か脅威を取り除いておく必要がある。
情けは将来の為にならず。俺と奴らは既に矛を交えている以上、恨みは残る。そしてその恨みは、どちらかが倒れるまで残る事だろう。
だから、俺は奴らを倒す。

村での防衛戦に勝利した俺達は、次に大量のイカダを作って海を渡り、山脈側の東と西の海岸に乗り付けた。そしてそのイカダに使用されていた材木を使って、即席の陣地を構築し、敵の侵略を食い止めるための、初めての拠点を作ったのだ。
定住しない奴らには、拠点だとか陣地だとかそういう概念は無いらしく、戦略的な要衝が放置されていたのが幸いした。
陣地は極めて順調に、拠点の防御能力を上げる追加工事が行われていった。
大量の逆茂木に、鉄で作ったマキビシ、落とし穴に物見台。
最終的には、難攻不落の要塞と化していた。

敵が騎兵中心である事を考慮して俺が立てた作戦は、平野での戦いを避ける事だった。平野での殴り合いならば、騎兵に軍配が上がる以上、必要な事であると自分でも思う。だが、それでは平野部が主な山脈側を進撃する事は実質不可能と思われるかもしれない。
だから俺はこの陣地を作った。
本拠地の村とこの陣地は海路で繋がっていて、海の上では騎馬は無力である以上、実質このラインは安泰といえる。そして船で運びこまれた大量の材木は、俺が新たに用意した車輪と、敵が村に置いていった馬を使った馬車で更に北側へと運びこみ、その地にまた新たな陣地を増やす。これらはすべて夕方から夜の間に行い、材木はあらかじめ加工しておくことで、高速建築を実現。
これで俺達は邪魔されることなく、一夜にして籠る事が出来る陣地を得る事が出来るのだ。
まあ要するに、墨俣一夜城を繰り返すことで、徐々に支配領域を拡大していくという作戦だ。
度々予想外の事で、突発的な野戦が起こってしまったが、それでもこの作戦は順調に推移していった。途中、まだ見ぬ集落を発見し、同じく蛮族に脅かされていた彼らを吸収していくことで更に戦力と人手が充実していく。
俺達の支配領域はどんどん北上していった。そして、ついに奴らの本拠地である大牧草地へと、手を付ける事になった。
初めての戦いからこの時、既に20年の歳月が経っていた。
この戦いを指揮する俺はいつの間にか村の指導者となっており、そのガタイと戦いっぷり、そして数々の発明によって得た信頼をフルに活用して、この大規模遠征をここまで維持することが出来た。
多くの屍と血の上に訪れる平和に何の価値があるのかと言う者もいるだろう。だが、多くの対価を支払って手に入れた物が尊いものでなくてなんなのか。
だが、この長すぎる戦いも終わる。未だ衰えは見えぬものの、既に俺は40歳を超えている。再びあの平穏な日々をこの手に取り戻す事が、あと一歩のところに来ているのだ。

季節は初秋。
開かれる戦端。
ここまで攻め込まれた奴らも必死で、俺達が籠る砦に攻め寄せるが、それを悉く跳ね返す。奴らから奪い取った複合弓に鉄の矢じりを取り付けた俺達の新たな武器を奴らの頭上から降らせる。
押し返しては攻め寄せられる、押し返しては攻め寄せられるを、夜を通して行われた。
兵糧は十分、矢も十分、兵力も十分。だが、この波状攻撃に砦の中の疲労度は溜まる一方だ。
その上、季節外れの長雨によって衛生状態も悪化し、病人も出始めていし、けが人が衰弱したまま死亡するケースが右肩上がりで増えて行った。
遠征軍である俺達は、敵地で精神的にも肉体的にも衰弱していった。
このままでは不味い。
ここで負けて奴らに回復の時間を与えれば、さらに戦いは長引く。

俺は雨が降りしきる中、1人天を見上げ、何かに祈った。
それは所謂「神」と呼ばれる存在だったのか、それとも別の――天に旅立ったアイツへだったのかは分からないが、俺は一心に祈った。
勝利をこの手に。平穏をこの手に、と。
そして――――そんな俺に一筋の光が当たった。
分厚い雨雲の切れ目から降り注ぐ日光が、砦を照らし出したのだ。
天使の梯子……俗にそう呼ばれる現象だったが、俺にはそれが天の助けであるようにしか思えなかった。
それまでの長雨が嘘で在ったかのように、翌日からは快晴が続いた。
どこまでも続く青い空は湿気を吹き飛ばし、大地を適度に乾かす。
砦の士気も回復し、俺はこの天祐を生かす策を思いつき、実行した。


かわいた牧草地に、俺達が点火した火は瞬く間に燃え広がった。その豪火は遊牧民たちの命と言える家畜の餌を瞬く間に奪っていった。
火は三日三晩燃え盛り、それが自然鎮火した頃には、辺り一面灰だらけだった。
そして……そして、そんな光景に冬を越して抵抗することが不可能で在る事を悟ったのか、降伏の使者が送られてきた。
その手には、奴らの頭目の首がつるされていた。
――――自らの命と引き換えに、民の助命を頼め、そう言われたのだと言う。
当初の俺は、こいつとその一族郎党のことごとくを捕まえ、生まれて来た事を後悔させるつもりでいっぱいだった。その首を柱に吊るし、死後に渡って屈辱を与えてやるつもりだった。
だが、いざそれをやろうとすると、何故か躊躇われた。
多くの兵の命を費やしてきた以上、償いはしてもらう。だが、あの時の日の光が、俺の心にまで影響を与えたのかもしれない。
そんなこと知った事かと、最後の1人まで虐殺するのが、正しいのか?

一晩中悩んで悩んで……結局俺は、残された民に恭順を誓わせ、馬を扱う技術と家畜の全てを譲渡させることで許す事にした。
食事も与えるが、向こう数十年は奴隷となってもらおう。彼ら一族をいきなり俺達の村に受け入れる訳にもいかないのだ。だが、10年後か、50年後かには受け入れて行けるようになったら良いと思うようにまでなっていた。
こうして、長い長い戦いは終わりを迎え、この大地を埋めた戦乱は収束した。



……なあ、これでよかったんだよな。


北方から凱旋してきた俺たちは、英雄として迎えられ、将軍として戦っていた俺は、まるで軍神のように扱われた。
宴は一週間続き、歌声が夜中にまで響いていた。そんな中真っ先に俺が確認したのは、俺の息子のことだった。基本的に今までの風習上、世話は手の空いた女性や老人たちが見ることになっていて、父と子の間柄というのは未来に比べてあいまいだ。子供は村全体の子供という、日本のかつての農村みたいな考えが基本なのだ。
そんな俺の息子は、すぐに見つかった。というより、なんというか、うん、今まで俺が指揮を執っていた部隊の中に紛れ込んでいたのだ。
母の聡明な頭脳と、俺のアホみたいに頑強な肉体を受け継いだ俺の倅は、ちゃっかり遠征軍に紛れ込んでいて、知らず知らずのうちに俺と共に戦って個人的武勇伝を築いていた。
てっきり村で暮らしていると思い込んでいた俺は、まさか息子とは思わず、戦場でその活躍っぷりを見聞きするたびに「俺と同程度の強さか?」とか思っていたのだ。馬鹿を見る結果となったが、まあ無事で何よりである。

その日俺は、初めて自分の息子と、親子として語り合った。母のこと、父のこと、お前が生まれた時のことを、色々話して聞かせた。
そしてその過程で、俺はかつてアイツに語った言葉を思い出した。
「国を作るんだ」という、俺が10歳にもならなかった子供の頃、畑を耕しながら語ったあの言葉を。
ここから俺と息子との、新たな試みが始まった。


全てが終わる頃には、あの戦いから50年が経過し、すっかりジジイになっていた。
今振り返れば、終戦からここまで、両親が死んだり、かつての一緒に木の実を拾った連中が先立ったりと、悲しい出来事もあったが、実りある日々だったと思う。



俺と息子が建国に向けてまず始めたのは、文字を作ることと、普及させることだった。ベースはカタカナにし、最初は銅を「ドウ」や塩を「シオ」、鉄を「テツ」といった風に、漢字を考えずに村の人々に教え込ませた。
もちろん、新たに村の住人となった他集落出身のものにも、もちろん、元蛮族にもこの文字を普及させる。
みな、初めて触れる文字という概念に戸惑っていたが、俺と飲み込みが速かった息子が根気よく、何年も何年もかけてようやく根付かせることに成功した。特に寺子屋のようなものを作って、小さな子供に俺自身の手で教えたのが幸いしたのか、識字率は50%を超えた。
今後も増えることを予想するに、上々であろう。
次に着手したのは、宗教の創設だ。
現代日本では宗教というと胡散臭いイメージが強いが、このような太古の世界では、宗教こそが人々をまとめる重要な機能を果たす。
同じ神を信じ、同じ文字を使うものたちは同じ文化を共有することになり、それが同朋意識と団結力を生む。
それは、経済による結びつきよりも固い結束なのだ。
だが同時に、宗教は劇物にもなりうる。
略奪戦争の口実にして大規模な戦争を仕掛けたり、地動説のような科学技術の発展をその権威でもって潰してきた歴史は、誰もが知っているだろう。

戦争のほうは、もうこれは政治と密接につながるので例え非戦を教えてもなんだかんだと理屈をつけて有名無実化してしまうだろうが、後半の科学技術の阻害に関しては何とかなる。
こうして俺は、息子と協力して神話をでっち上げることにした。

まず信じる神を作る。村の人間は銅と温泉を持ち上げ、最近では公益で大きな利益をもたらした塩と鉄にまで、信仰心のようなものを持ち始めているのでこれを利用する。
宇宙に住まう神々が大地の地母神をつくり、その次に太陽をつかさどる天空神、そして魚たちの王である海神を生み出したとする。
その後、地母神と天空神、そして海神が盛んに新たな神を生んでこの世界を満たしたという、どこかで聞いたような設定にした。
次に、彼らは自分たちに模した人間を作り、大地に住まわせた。そして人間に対して盛んに質問をするのだ。なぜ岩は硬いのか、なぜ空は青いのか、なぜ海は荒れるのか。
それらを問われた人間は、神の力であるからと答えるが、それに神は満足せず、新たな問いを投げかけ続け、生涯考え続けるようにと人間に命令した。
そして人間は、その問いに対する答えを一生を通して考え、自分なりの答えを見つけ出すのだ。
これは宗教が科学の発展を阻害する事に対する対策として、逆に科学技術の振興を宗教が推奨する、「神権科学主義」とでも言うべき思想を神話の中に盛り込んだのだ。
これと同時に自然崇拝の教えを随所に入れることで、環境破壊を防ぐ。
こうして新宗教の雛形を完成させた俺は、この教えを山の上で神から教えられたという触れ込みで布教する。

特に子供には重点的に教え込んだ。洗脳といえばそれまでだが、このくらいの年頃はほんとに砂が水を吸い込むようにどんどん知識を吸収するので、まあ都合がいいのだ。別に害になるようなことではないし、まあ、大目に見てもらおう。
先に普及させた文字のおかげで、普及は文字という形でも広まっていった。
そして、俺がこの時代においてはおよそありえないくらいの長寿であるので、厳密に最初の頃を知らないものたちは、俺が作り上げた神話が正しいことだと信じ始めた。

そんななか、俺に初孫が生まれた。
真っ白な肌と金色の髪、そして赤い瞳を持った子供――――いわゆるアルビノといわれる、色素異常の子であった。
黒い髪と瞳が基本の中で、それは異常とみなされかねない。
村中が騒然とする中、俺はこの子が迫害されないようにとっさに、ある設定をつくって人々に聞かせた。
曰く、「この子は天空神がもたらした子供である。みよ、その証拠に太陽のような赤き瞳と輝く髪を持っているだろう」と。
この言葉が思いのほかうまくいったようで、俺はほっと胸を撫で下ろしたが、同時にこれが天の意思にも感じられた。
なぜならこの孫の出現によって、全ての要素が整ったからだ。



それからしばらくの月日が流れ、俺が90歳になった頃のこと、ついにわが村は国家となった。
みなを導く指導者のことは皇帝と呼ぶようにと決められた。皇帝はこの大地の南端から北端にいたるまでの大地を治める存在として、人々に上に君臨するのだ。
この初代皇帝に、俺の孫息子が即位した。
彼は聡明な頭脳と頑強な肉体、そしてその神秘的な容姿を武器にして、俺が行い、息子が補佐していた建国のための事業をついに完璧な形で完成させたのだ。
そして自らを天空神の孫で、王の子とし、その権威を確立した。それってどこのアレキサンダー大王? と思ったが、まあこっちが多分最初になるだろうからいいだろう。

…………数十年前、大地を無力に放浪していた20数名の原始人が、ついに建国を成し遂げた。
あれほど壮健であった俺の肉体も年には勝てず、ついに寝込むことが多くなっていった。多くのものが俺を見舞う中、俺は皇帝となった孫と、その補佐をすることを誓った息子(俺に劣らずすっかりジジイだ)を前に、俺は語る。

――――昨晩、夢を見たのだ。それは、我が民と国が大きく広がり、大地に満ちる輝かしい夢だった。周囲には木でできた巨大な建物が、競うように天へと伸びている。
だが、幸福な事ばかりではない。そこには、苦しみもある。戦争による苦しみだ。
だが、我が国は生き抜き、更なる繁栄へと歩む……そこで、夢は終わった。
息子よ、そして孫よ。俺は羨ましい。お前たちの決断が、行動が、歴史を作って行くのだ。

ここまで喋り、俺は彼らの手を握りながら、満足気味にほほ笑んだ。
そして、緩やかな睡魔に襲われ、目を閉じる。
何か叫んでいるようだが、耳が遠く、ハッキリとしたことは聞き取れなかった。
それは、俺の死後、この国の未来と同じようで曖昧なものだった。
だが、今日、今から見る夢は随分とハッキリしている。
それは、少年と少女が、互いに成長し、子をなし、幸せな生涯を送るという、涙が出そうなほど幸福な夢だったからだ。
――――――――俺は、約束を守ったぞ…………

薄れ行く意識の中最後に、アイツの笑顔を見た気がした。


~古代編完~



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