<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

チラシの裏SS投稿掲示板


[広告]


No.40286の一覧
[0] 習作 civ的建国記 転生 チートあり  civilizationシリーズ [瞬間ダッシュ](2018/05/12 08:47)
[1] 古代編 チート開始[瞬間ダッシュ](2014/09/14 19:26)
[2] 古代編 発展する集落[瞬間ダッシュ](2014/09/14 19:26)
[3] 古代編 彼方から聞こえる、パパパパパウワードドン[瞬間ダッシュ](2014/09/14 19:26)
[4] 古代編 建国。そして伝説へ 古代編完[瞬間ダッシュ](2014/09/14 19:26)
[5] 中世編 プロローグ その偉大なる国の名は[瞬間ダッシュ](2014/09/09 17:59)
[7] 中世編 偉大(?)な科学者[瞬間ダッシュ](2014/09/14 19:26)
[8] 中世編 大学良い所一度はおいで[瞬間ダッシュ](2014/09/15 17:19)
[9] 中世編 ろくでもない三人[瞬間ダッシュ](2014/10/09 20:47)
[10] 中世編 不幸ペナルティ[瞬間ダッシュ](2014/09/26 23:47)
[12] 中世編 終結[瞬間ダッシュ](2014/10/09 20:55)
[13] 中世編 完  エピローグ 世界へ羽ばたけ!神聖オリーシュ帝国[瞬間ダッシュ](2014/10/19 21:30)
[14] 近代編 序章①[瞬間ダッシュ](2016/01/16 20:38)
[15] 近代編 序章②[瞬間ダッシュ](2016/01/16 20:53)
[16] 近代編 序章③[瞬間ダッシュ](2016/01/16 21:15)
[17] 近代編 序章④[瞬間ダッシュ](2016/01/16 21:42)
[18] 近代編  追放[瞬間ダッシュ](2016/01/16 21:57)
[19] 近代編 国境線、這い寄る。[瞬間ダッシュ](2015/10/27 20:31)
[20] 近代編  奇襲開戦はcivの華[瞬間ダッシュ](2016/01/16 22:26)
[21] 近代編 復活の朱雀[瞬間ダッシュ](2016/01/16 22:47)
[22] 近代編 復活の朱雀2[瞬間ダッシュ](2016/01/22 21:22)
[23] 近代編 復活の朱雀3[瞬間ダッシュ](2016/01/29 00:27)
[24] 近代編 復活の朱雀4[瞬間ダッシュ](2016/02/08 22:05)
[25] 近代編 復活の朱雀 5[瞬間ダッシュ](2016/02/29 23:24)
[26] 近代編 復活の朱雀6 そして伝説の始まり[瞬間ダッシュ](2018/04/16 01:33)
[27] 近代編 幕間 [瞬間ダッシュ](2017/02/07 22:51)
[28] 近代編 それぞれの野心[瞬間ダッシュ](2017/02/07 22:51)
[29] 近代編 パナマへ行こう![瞬間ダッシュ](2017/04/14 22:10)
[30] 近代編 パナマ戦線異状アリ[瞬間ダッシュ](2017/06/21 22:22)
[31] 近代編 パナマ戦線異状アリ2[瞬間ダッシュ](2017/09/01 23:14)
[32] 近代編 パナマ戦線異状アリ3[瞬間ダッシュ](2018/03/31 23:24)
[33] 近代編 パナマ戦線異状アリ4[瞬間ダッシュ](2018/04/16 01:31)
[34] 近代編 パナマ戦線異状アリ5[瞬間ダッシュ](2018/09/05 22:39)
[35] 近代編 パナマ戦線異状アリ6[瞬間ダッシュ](2019/01/27 21:22)
[36] 近代編 パナマ戦線異状アリ7[瞬間ダッシュ](2019/05/15 21:35)
[37] 近代編 パナマ戦線異状アリ8[瞬間ダッシュ](2019/12/31 23:58)
[38] 近代編 パナマ戦線異状アリ 終[瞬間ダッシュ](2020/04/05 18:16)
[39] 近代編 幕間2[瞬間ダッシュ](2020/04/12 19:49)
[40] 近代編 パリは英語読みでパリスってジョジョで学んだ[瞬間ダッシュ](2020/04/30 21:17)
[41] 近代編 パリ を目前にして。[瞬間ダッシュ](2020/05/31 23:56)
[42] 近代編 処刑人と医者~死と生が両方そなわり最強に見える~[瞬間ダッシュ](2020/09/12 09:37)
[44] 近代編 パリは燃えているか(確信) 1 【加筆修正版】[瞬間ダッシュ](2021/06/27 09:57)
[45] 近代編 パリは燃えているか(確信) 2[瞬間ダッシュ](2021/06/28 00:45)
[46] 近代編 パリは燃えているか(確信) 3[瞬間ダッシュ](2021/11/09 00:20)
[47] 近代編 パリは燃えているか(確信) 4[瞬間ダッシュ](2021/12/16 00:04)
[48] 近代編 パリは燃えているか(確信) 5[瞬間ダッシュ](2021/12/16 00:02)
[49] 近代編 パリは燃えているか(確信) 6[瞬間ダッシュ](2021/12/19 22:46)
[50] 近代編 トップ賞は地中海諸国をめぐる旅、ただし不思議は自分で発見しろ 1[瞬間ダッシュ](2021/12/31 23:58)
[51] 近代編 トップ賞は地中海諸国をめぐる旅、ただし不思議は自分で発見しろ 2[瞬間ダッシュ](2022/06/07 23:45)
[52] 近代編 トップ賞は地中海諸国をめぐる旅、ただし不思議は自分で発見しろ 3[瞬間ダッシュ](2022/12/13 23:53)
[53] 近代編 トップ賞は地中海諸国をめぐる旅、ただし不思議は自分で発見しろ 4[瞬間ダッシュ](2024/01/04 19:20)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[40286] 近代編 復活の朱雀4
Name: 瞬間ダッシュ◆7c356c1e ID:95ce0ae2 前を表示する / 次を表示する
Date: 2016/02/08 22:05
「なんですとおおおおおお!?」
「ウワッ! 唾を飛ばすなよ何なんだいきなり?」


シド大陸北のツンドラ地帯を、アステカ軍が通過したと思われる経路に沿ってひたすら南下していく山本率いる義勇軍。山本が不慣れな乗馬で何とか都市セッキョーを目指して歩き始めてから、数日が経過していた。何度目かの野営の際、食事中に「そういえば」と言う風に切り出した北是少尉が、今回の山本達義勇軍の与えられた作戦は何なのかと尋ねて来た。それに対して(あ、まだちゃんと見てなかったわ)と間抜けな事を考えながら山本はポケットに無造作に入れていた命令書を差し出した。山本本人はパッとしか見ていないそれを北是少尉が丹念に読み込んだ瞬間、絶叫が響く。

「こ、こんなことがあってたまるものか……!」
「何が?」
「この命令の事だ!『敵後方にてかく乱、および背後からの奇襲を敢行せよ。なお、降伏は認めない』だと!? 孤立無援の状況でこれでは死ぬといっているようなものではないか!!」
「……?」

いぶかしみながら改めて命令書を手に取り、山本はこの段階に至ってようやく命令書の全文をキチンと読み込む。上から下までじっくり読んだ上で、そこに書かれていた内容を吟味して――――


「――――――――あらら」


財布を家に忘れて来たくらいの困り顔をしつつ肩をすくめた。そこには確かに、敵の後方を攪乱しつつ、奇襲を行なうようにという旨と、降伏は許さないと言う一文がしっかりと書かれていた。


「あららじゃない!!」

バンッ! と、少尉が手に持っていた食器類を地面にたたきつける。皿に盛りつけられていた焼きたての肉が地面にバウンドするのすら忌々しそうに、北是はその場で頭を抱えて蹲ってしまった。そして、唸るような大声で泣きつつ地面を何度も拳で殴りつける。

「クソ!クソ!……なんで僕がこんな目に――――大尉めこれが分かってて僕を送り込んだなあ!! 絶対に許さないぞチクショウ!!」
「うるせえぞクソ坊主! ギャーギャー騒ぎやがってメシが不味くならあ!」
「何だと!?」
「文句があるなら食うんじゃねえ!」
「~~~ギ、ギ、ギッ――――!」

モヒカン達が北是の大音量での恨み節に食ってかかる。食事中にうるさくするなというもっともな文句に、さすがの北是も普段通りに応戦できない。そもそもいま北是達が食べている食事は、モヒカン達が狩ってきた動物の肉を料理したものである。軍隊用の保存食ばかりに飽きた山本が、モヒカン達に命令して持って来させたものだったのだ。
思わぬ方向から注意された北是は、大声は止んだものの今度は歯ぎしり。そしてその次はブツブツと小声で文句を漏らし始める。内容は上司にたいするモノで、ひたすら上官に対する不平不満と呪詛の言葉を吐きだしていた。どうやら北是少尉は上司と折り合いが悪く、今回の任務も悪意あっての任命だったようだ。

「…………」

だが、そんな一連の事情を詳しく知らない山本は、とにかく目の前の陰気な状態になった北是をどうにか普段通りの状態に戻したかった。というか、こうもメソメソとやられては鬱陶しくってたまらない。こんな状態であと何日になるか分からない道程を同行することになってしまうのはマジ勘弁という思いだった。

(さて、どうするか……)

と思案する山本。ぶん殴って再起動という手は、散々モヒカン達との乱闘をくぐり抜けて来た少尉には使いたくなかった。逆襲が怖かったからなのだが、それならば口でやるしかないと思い立つ。

「――――聞けい!!」

そうと決まれば話は早いとばかりに、山本は唐突に立ち上がった。周囲の視線を一斉に浴びる山本。そして同時に気分が高揚し始めた山本の頭には、この場で最適と思われる台詞が若干カッコイイ感じに加工されて浮かんできた。それを、声の抑揚を聞かせながら全体に聞こえるように叫んだ。




「いいか。我々はこれから死地に向かう訳だが……それがどうした!」

堂々とした発音。自信たっぷりの言葉。
煉獄院と化した山本の弁舌は、なんだかよく分からない説得力を付与するようになっていた。ビリビリとシビれる感覚に山本の脳は甘い快感に酔いしれる。脳内麻薬物質的なものが大量に溢れだしているのだろう。
そんな良い感じのまま、山本はポカンと口を開けてこちらを見上げる北是少尉を、やや見下すような視線で、かつ冷淡な声色で語りかける。

「そもそもだ。国家国民の為に存在する軍人が、ちょっと危ないからといって死ぬだの何だのと泣きごとを言うなんて、情けないとは思わないのか?」
「クッ!だが――――」
「やっかましい!!」

ピシャリと遮って叫ぶ。静から動への変動を意識しつつ、先ほどまでの語りかけるような口調が嘘だったかのように、山本は声を荒げ、攻め立てるような怒涛の言葉の連打を浴びせ始めた。

「さっきから泣きごとばっかりこぼしやがって! お前も軍人なら文句を言う前に勝つ方法を考えろ! 世間はお前のお母さんじゃあないんだ。困ったら助けてくれるなんて都合のいい考えで生きてんじゃねえ!それが出来ないって言うなら――――」

山本は仕上げとばかりに北是の胸倉をつかみあげ、ねっとりと人の神経を逆なでするような小馬鹿にした態度で続きを言う。

「――――今からお家に帰ってママに泣きついてくるんだな。『ママー、みんなが僕をイジメるよぉ』ってな」
「ギ、ギ、ギ、ギッ――――!!!」
「お前らはどうだ? 死ぬかもしれない狩りの前に、メソメソする男はどうだ?」
「ヒャッハー! もちろん、そんな根性無しはキンタマ握りつぶして荒野にほうりだしまさあ!」

ここで山本は北是を突き飛ばすように解放する。そして、口角を僅かに上げて嘲笑するよう笑い、最後の一押しを行なう。まるで鬼軍曹が新兵をイジメぬくが如く、敵愾心を煽りまくった。
果たしてその効果は絶大で、北是少尉は顔を真っ赤にして歯ぎしりをしながら山本を睨みあげる。だが、反論の言葉は無かった。北是少尉自信が、山本の実は中身が大してない言葉に感じ入る所があったようだった。

「――――と言う訳だ。これからどうするかはお前に任せる。逃げたければさっさと逃げ帰るんだな」

そして山本は一人、あらかじめ張られた野営テントの中に引っ込んでいった。後に残ったのは尻もちをついて歯ぎしりをする北是少尉と、それをはやし立てるモヒカン達だけだった。







(やっべええええええどうしようマジで!)

テントに戻って周りに人がいないのを確認すると、山本はすぐさま素にもどった。そして素に戻ってしまえば、現状に対して真正面から向き合い、結果どうしようどうしようとうろたえる小市民の姿がそこにはあった。基本、脳内麻薬物質が出ていない状態ではこんな感じである山本だった。


(ウッソマジでこんなん聞いてないんですけど! ハッ? 馬鹿なの死ぬの?俺達が!!)

聞いてないのはお前のせいだとか、書類は確認するものだとかそういう事は全て棚上げして、不平不満をぶつくさ言いまくる山本。その姿は、先ほど締め上げた北是少尉と全く同じだった。先ほどのセッキョーは、全部自分に帰って来ることとなるのだが、そんなことは全くお構いなしに山本は自分の世界に籠ってグチグチ言いまくる。

「クソッタレ……通りであっさり許可する訳だ。そりゃあ最初っから使いつぶすつもりだったんならほいほいサインだって書くだろうさ!」

そして一通り文句を垂れると、ようやく今後の事に頭を働かせ始めた。現状、命令されている以上かく乱と奇襲はやらなくてはならない。そうでないと、敵前逃亡等の名分で、今度こそ処刑されてしまう。そもそも、自分は自分を助けてくれた恩人を救出する為にここにいるのだから、逃げるなんて選択肢は最初から存在しない。だが、死にたくもない。
一瞬、なら一撃離脱に徹すればとも思うも、連携できる味方もいない、寡兵という状況で大群に襲いかかった場合どうなるか。十中八九、がっつり消耗するはめになる。その状態でかく乱なんてやろうものなら、早晩すり潰されるのは明らかだった。


「勝つしかねえ……!」


命令を守る。恩人を救出する。この二つを両立するには、戦って勝利する以外に道はない。命令書を書いた元帥的には、山本達が玉砕することが前提なのだろうが、大体軍事関係の専門知識がない山本はそれがどんな無謀な作戦であろうが何だろうが、運とタイミング次第で逆転勝利の目があるのではないかと希望的な事を考えていた。

「やってやるぜ、俺の桶狭間を……!」

そんな山本の脳裏に浮かんでいるのは、日本史上もっとも華麗で電撃的な奇襲作戦を成功させて敵総大将の首を取った戦いだった。歴史ドラマでも何度も取り上げられるほど有名で、圧倒的不利な状況下からの逆転満塁サヨナラホームラン的な勝利を収めたあの戦いを再現するしか山本には道がなかった。
ゆえに、それを再現する事で何とか目的を達成しつつ生命を全うしようとしていたのだが…………この時の山本はまだ、桶狭間の戦いを演じた織田信長と自分を重ねようとしている事に気が付いていなかった。そして桶狭間を行なうと言う事が、英雄の第一歩を踏み出そうとしていることと同義であるということにも、当然思いもよらなかったのだった。












「敵は既に城壁に籠る以外に手はない! このまま一気呵成に攻めよ」

山本がギラギラと危険なギャンブルを決意した一方、都市セッキョーを巡る攻防がいよいよ幕を上げようとしていた。都市セッキョーの北側を半円状に包囲したアステカ軍銃兵部隊と、その後方に築かれた砲台からは、黒光りするカノン砲がずらりと並べられている。対するオリーシュ軍は部隊を一つ都市に入れると、その他の部隊を都市の東西に展開し、都市を半ば盾にするような形で待ち受けていた。
金と労力を一気に詰め込んで、突貫工事で作られたものの重厚な城壁があるからこそ出来た戦法だった。
そしてそこへ、カノン砲の支援下でアステカ軍のマスケット銃兵が隊列も作ることなく殺到していった。


「モノは言い様ですね。『籠る以外に手はない』とは」
「……それで、どう?」
「先日略奪をして攻撃の手を緩めた結果、敵はゆうゆうと撤退するだけの余力と時間を得ました。その責任と命令違反の罰として、件の部隊を先鋒として放り込みました」
「まあ、どれだけもつかといったところでしょうか」
「それよりも問題なのは――――」
「カッカッカ! いかなる戦も最後にモノを言うのは兵の気合いである! コルテス将軍よ、そのまま一気呵成に攻めたてさせよ!!」

コルテス将軍とその副官が戦いの推移を見つめていると、呵々大笑しながら彼らに話しかけて来た人物がいた。コルテスやその副官と違う人種であるらしく、大柄で肌の色は褐色、頭には羽飾りに素肌にはボディーペイントが施されている。そして顔には生々しい傷が大量に走っていた。

「これはこれは大使殿。このような所へ……如何いたしましたか?」

その、どこぞの自称オリヌシが率いている蛮族達に優るとも劣らない蛮族スタイルな大男の登場を、コルテスは平身低頭で迎え入れた。

「ウム! 膝に矢を受けて以来戦場に出る事が無くなってしまったが、兵としては働けなくとも将としてならばまだまだ現役! そこでオヌシの遠征の手助けをしようと思い立った次第である!!」
「あの……それは参謀として助力していただけるということで……?」
「然り!!」

再び雄な笑い声を上げる大使殿と呼ばれた男に、コルテス将軍と副官は表面上では笑顔でありながら腹の中では絶望的な想いを抱いていた。
彼こそがオリーシュ皇帝に面と向かって宣戦布告をかました元在オリーシュ大使であった。

ここで人物の上下関係を示すと、コルテス将軍は遠征軍の総大将なのだが、国の身分的にはなんと目の前の蛮族大使の方が偉いのである。これは元々敗戦で服従するはめになった敗者の末裔であるコルテス含む白人系パナマ市民と、勝者側であるアステカ人との間に広がる致命的なまでの格差だった。将軍だの公王だのという肩書はあるものの、コルテスはしょせんお情けで生かしてもらっているだけの体のいいパシリなのだった。
さて、そんなパシリのコルテス将軍がにがい顔をした理由は、アステカ人は優秀な戦士ではあるものの、基本彼らの戦争は物量での力押し一辺倒。そんな戦いしかしてこなかったような者に、あれこれと口を出してもらうのはやっかい極まりない話だった。しかも自分よりも身分が高いので無下にも出来ない……そう言う訳で大使にはそれとなく作戦には関わらないように、遠ざけていたと言うのに、せまる決戦を前にしてとうとう呼んでもないのに来てしまったという次第だった。

「やはり来ましたか……」

この事態に副官は、蚊の泣く様な声で愚痴をこぼす。当然、そんな小さな声では迫る戦いの気配に興奮している大使殿には聞こえない。
コルテス将軍は、ここにきて爆発しようとしている問題を追加で抱えることとなる。
戦場は、前線も後方も等しくクライマックスへ向けて突っ走ろうとしていた。







モウモウと上がる爆煙と、砕けたガレキの土埃が舞う最前線。城壁に何とか辿りつこうと銃を抱えて走るアステカ軍と、それを撃退しようと左右から射撃をしかけて来るオリーシュ軍がぶつかるホットスポットに、彼らはいた。
仲間の死体を乗り越えて、なんとか城壁に梯子をかけようとしている彼らは、先の戦いにおいて真っ先に略奪に走って最激戦地に投入された部隊だった。


「ファック! チクショウが――――!」

先に戦死した同僚が何とか作ったバリケードの中に籠り、手元の銃に銃弾を詰め込んでいた小隊長が口汚く罵る。
ガシガシと荒っぽい手つきで火薬を突き固め、身を乗り出して撃っては再び身を隠すと言う作業を淡々とこなく様は、熟練した兵士のそれであった。

「ハアハア……!」
「おうカルカーノ! なんだまだ戦う前だって―のにもうヘバッてんのか?」

そんな小隊長の傍らには、白い肌に汗を浮き出させ、青い顔をしているカルカーノと呼ばれた少年が不慣れな手つきで薬包の紙を歯で破り、中に入っていた火薬を銃口から入れていた。


「オウ……パスタが食べられないと力が出ないデース」
「ああ? この間襲った村にはそんなん無かったからなあ――だがよぉ、ここにはあるんじゃねえか?」
「でも、無理矢理奪って食べるのは良くない事デス」
「へっ! なに白けたこと言ってんだよヤサ男! てめえもこういう役得があるからこそ兵隊なんぞに志願したんだろうが」
「違いマスよ……」
「あ? まあ別に取り分が減らねえ分、文句はねえよっと!」

小隊長は再び装填を終えた銃を構えて、守備側のオリーシュ兵に向けて撃つ。撃った弾は真っ直ぐに突き進み、見事都市の左右に展開している部隊の一兵士の脳天に命中した。

「す、すごいデース……!」
「へへ、最新式のライフル銃だ。マスケットとは一味違うぜ」

小隊長は、自慢げに手に持っている銃を少年に見せびらかせる。その銃口から除く銃身には、確かにらせん状の溝が掘ってあった。これは命中精度を改良した銃で、マスケット銃のように撃った弾丸が何処に行くか分からない代物とは違い、狙撃もできる最新式の銃だった。略奪行為の際、猟師が個人的に所有していたものをかっぱらった物だった。



「ま、だが流石にこれ一丁で城が落せるようなモノじゃねえ。まともにやったんじゃ俺達は一瞬で返り討ちだ――――ってな訳で……」
「隊長!」

そこに、アステカ軍の兵士が滑り込むように飛び込んで来る。そして小隊長に向かって何事かを耳打ちした。その兵士は、なぜか異様に土まみれ泥まみれであった。
それを不思議に思う少年だったが、小隊長と土まみれの兵隊は短い単語でニョゴニョと密談を続ける。

「よし――――いますぐ行くから用意して待ってる様に伝えろ。―――――へへ、ちょいと頭を使えば、こんな状況だってどうにかできるってなもんだ」
「オオウ……隊長サン、悪い顔してマース」

話しがついたのか、小隊長は悪人づらで少年に向けてサムズアップ。そして再び自慢のライフル銃を発砲すると、少年と自分の部下を引き連れて隣のバリケード、そして再びその隣のバリケードという具合に移動していった。
そして辿りついたのは、一際城壁が高く、用意した梯子ではとどかないと踏んで最初から攻撃地点からはハズされてしまったポイント―――――からもやや離れた野っぱらだった。

「あの~」
「まあ見て見ろって」

疑問顔の少年に小隊長が指示したのは、地面のある一点。そこには巧みな偽装が施されたものの、扉の様なものがポツンと存在していた。
小隊長はおもむろに地面を撫でさすると、その扉を開けて、その向こうに広がるトンネルに少年と数人の男達を伴って入って行った。

「暗いデース、せまいデース……」
「うるせえぞ」

トンネルは、人一人が這いつくばることでようやく進めるような代物だったが、しっかりと補強がなされており、崩落の心配はないような立派な代物だった。しかし、とにかく暗かった。
二人はしばし匍匐前進で先へ先へと進んでいく。方角的に、都市セッキョーに向かっていた。

「おおい、どんなもんだよ!」
「ヘヘッこんなんインカの山脈に比べれば砂山みたいなもんさ」
そしてその先には、さらに数人の男達が待ち構えていた。小隊長はその男達と軽く挨拶をすると、しばし雑談。それもひと段落すると、少年の疑問に答えるように種明かしを始めた。

「アノ、このトンネルはモシカシテ……」
「おうよ。なんせ俺達は勝手に命令を無視して略奪に行ったバカヤロウだからな。どうせ城攻めの最前線に放り出されるのは目に見えていた。そこで……」
「あらかじめこうして攻めやすいように準備してたってわけだ」

続きを引き継いだのは、手にスコップと怪しげな縄を持っている小男だった。
小隊長は怪しく笑いながら頭を指で突きながら言う。

「ここを使って要領よく生きたヤツが、結局は勝つんだよ――――よし、かかれ!」

小隊長の号令の元、小男は何処からか取り出した火種をそっと縄に近づける。

「よし、ちょっ――と待ってろよ…………ヘヘッよーし良い子だ」

いとおしげに語りかけながら、遂に縄に火が灯る。縄は導火線だったらしく、見る見る縄は短くなっていった。
その先は、暗いトンネルの更にその奥へと進んでいる。
「よーし、伏せろ。俺のいとしい火薬ちゃん、哀れな子羊達に道を示したまえ。アーメン――なんつって」

瞬間、現時点からさほど遠くない所で大きな爆発音が轟く。衝撃は土中を伝い、容赦なく少年を含むアステカ兵を襲ったが、遂に崩落する事は無かった。

「GO!GO!GO! 行けお前ら!」

小隊長がはやし立て、皆が芋虫の行列のようにせまいトンネルを匍匐前進で突き進む。すると直ぐに、明るく開けた場所に辿りついた。即ち、爆発点にして出口、そしてそこは都市オリーシュの内部。トンネルは城壁の下まで続いており、その下で爆薬を爆発。結果、城壁の一部が大きく損壊していたのだ。


「よし! 一番乗り!!」

こうして、僅か一個小隊とはいえ、アステカ軍の侵入を許してしまった都市セッキョー。

「行け行け行け!!」

彼らは走る。その後ろには、城壁が崩れた事に気がついた他の兵士も続々と集まろうとしていた。数千人の兵士の先頭に立つことになった小隊長は、その事に気分を高揚させた。いつの世も、一番槍は戦場の誉れである。
目の前には、整然と立ち並ぶ家屋。綺麗に整備された道。東洋と西洋が入り混じったような独特な様式の街並みが広がっていた。そしてそのどれもが未開封の宝箱に見える。加えて、真っ直ぐ舗装された道は、栄光に続いているかのよう。
今自分が、間違いなく戦場の中で一番光り輝いていると感じた小隊長は、まさにこの世の春が来たかのような興奮で、傍らを並走する少年に語りかける。

「ハハッどうだよヤサ男! 俺様の作戦は――――っ?!」
「た、隊長サン……」

――――だが、春に咲いた満開の桜は、早々に散り去った。


「市民諸君! 君たちの手で諸君らの街を守るんだ!」

栄光の道と思われた道路のその先に待ち受けていたのは、無数の銃口が覗くバリケードだった。バリケードは道を完全に塞ぐように設置され、さしずめ栓のようだった。
その栓の上で、まだまだ年若く中性的な若者が、市民を励ますように声を出し、そして号令を下す。

「撃てえ!!」

我先にと続いていたアステカ軍兵士は、その一斉射撃をもろに受けてしまう。しかしそれでもなんとか被弾を免れた兵士は、脇に在る民家に逃げ込もうとドアに手をかけて、そこで固まった。

「チクショウ! あいつら民家の入り口を板で塞いでやがる!!」

都市セッキョーは平野に築かれた都市であり、古くから栄えていた事もあって中心から離れるほど雑然となっていく。その未整理の区画がぐるりと都市の外縁を囲んでいるのだが、そこが罠として機能する事になる。
家と家の間を雑多な物で塞いでそれとなく一本の道に収束するように誘導路を作る。そしてその先に銃で武装させた市民の義勇兵を配置し、走り込んで来る敵兵の出鼻をカウンターパンチの要領で一撃したのだった。
この時、義勇兵が陣取った場所につながる道の両脇にある民家はしっかりと塞がれていることから、攻め込んだ側は逃げ場のない一本道の途中で一方的に射撃の的になる結果となった。


「た、隊長サーン!! ダメ、血が止まらないデス!!」
「クソッタレが……おら、テメエらさっさと撤退だクソ!!」

小隊長は被弾した脇腹を手で押さえながら、生き残った自分の指揮下の兵士達に声をかけ、すぐさま撤退命令を下す。しかし真っ先にオリーシュ側の射撃を受けたため、小隊長の部隊はほぼ壊滅。少年の手を借りて背を向けて逃げる間も、背後からは銃弾が飛んでくる。絶叫と、弾がはじける音に肝を冷やしながら必死の思いで撤退するときには、生き残りは負傷した小隊長自身と無傷な少年のみだった。
そして再び、周囲には射撃音の余韻が残る静寂に包まれた。







「早速、抜けて来たか」
「ですが、市民達の活躍で防ぐことができました」
「――確実にダメージは負っている。修復を急がせろ」
「ハッ!」

内心の焦りを表に出さないように気をつけながら、バリケードの上で号令を下した近衛ユウは握りこぶしを固めた。周囲に控えている参謀達に、不安を見せないようにした配慮だった。

(まさかこうも早く城壁が破壊されるとは……)

破壊されたと言っても、僅かに一か所だけである。それもそこから踏み込んで来た敵部隊は、僅かな生き残り以外は全員排除した。だが、籠城の初日からこうもしてやられては、先が思いやられて仕方がなかった。

(民家を買い上げて防壁にし、誘導路を作って待ち構えるという戦法もそうそう長くは持たないだろう)

と、ユウは自身が発案した戦法が早い段階で敵に攻略されるという悲観的ともいえる予想を立てる。しかし、侵入してきた敵が僅かとはいえ逃走に成功してしまった以上、じきに対策を取られてしまうのははやり自明のことだった。




「セッキョーは何回、耐えられる?」
「砲の支援を考えて……5回程度でしょう」

参謀の一人がそう試算した。敵がここぞとばかりにカノン砲を撃ちこみながら歩兵による本格的な攻勢を仕掛けて来た時、その歩兵部隊を追い返せるのが5回。だが、この調子で思わぬ方法で攻撃を仕掛けられたなら、それも当てには出来ない。

「では、部隊の再編の進捗状況は?」
「怪我からの復帰や、市民からの志願兵などで順調に進んでいます。ですが……」
「ある程度でいい。戦えるだけ戦力が回復したらもう一度前線に出てもらう」
「――――ハッ」

当然ではあるが、オリーシュ軍側の被害も危険領域に突入しつつあった。多勢に無勢でここまで戦ってきたのだから当然であるが、下手をすると聯隊規模で消滅してしまう可能性もあった。そうなるとまずい。なぜならここまでくると、兵士の補充ではすまなくなるからだ。
軍隊と言うのは、ある種のノウハウの固まりである。そしてこのノウハウというのは、一朝一夕ではたまらない。例えば一回戦闘をするごとに経験を積んだとしても、それはあくまで部隊へのものであり、士官や下士官、そして末端の兵士のそれぞれがそれぞれで蓄積するものである。この部隊が壊滅してしまうと、それまでのノウハウも消滅してしまう。こうなってしまえば、また一から練度を上げて行くしかなくなる。

「アステカ軍の第二陣、来ます!」
「っ!! 来たか!!」

そうして試行する間に、ユウは作戦本部とでも言うべき大学屋上に設置された指揮所に向かって駆ける。この都市全体を見通せる場所にいたからこそ、いち早くアステカ軍の侵入を察知する事が出来た。本来ならば総大将が出るのは問題だが、最初の一回は市民達に積極的な姿を見せなければ申し訳がないと思ったユウの判断だった。

「ユウ様! 御武運を!!」
「一歩も先には行かせません!!」

駆けるユウに、ところどころでバリケードを作って待機している市民達が声をかけて来る。みな、逞しい笑顔を向けて来る。
その声を聞くたびに、ユウは強く励まされるのを感じた。

「市民達の士気も高い! この戦い、勝つぞ!!」
「「「おうっ!!」」」


気合いの声が曇り空に響く。天候は、回復せず。じきに雨が降るだろうと思われた。


前を表示する / 次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.026548862457275