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No.40286の一覧
[0] 習作 civ的建国記 転生 チートあり  civilizationシリーズ [瞬間ダッシュ](2018/05/12 08:47)
[1] 古代編 チート開始[瞬間ダッシュ](2014/09/14 19:26)
[2] 古代編 発展する集落[瞬間ダッシュ](2014/09/14 19:26)
[3] 古代編 彼方から聞こえる、パパパパパウワードドン[瞬間ダッシュ](2014/09/14 19:26)
[4] 古代編 建国。そして伝説へ 古代編完[瞬間ダッシュ](2014/09/14 19:26)
[5] 中世編 プロローグ その偉大なる国の名は[瞬間ダッシュ](2014/09/09 17:59)
[7] 中世編 偉大(?)な科学者[瞬間ダッシュ](2014/09/14 19:26)
[8] 中世編 大学良い所一度はおいで[瞬間ダッシュ](2014/09/15 17:19)
[9] 中世編 ろくでもない三人[瞬間ダッシュ](2014/10/09 20:47)
[10] 中世編 不幸ペナルティ[瞬間ダッシュ](2014/09/26 23:47)
[12] 中世編 終結[瞬間ダッシュ](2014/10/09 20:55)
[13] 中世編 完  エピローグ 世界へ羽ばたけ!神聖オリーシュ帝国[瞬間ダッシュ](2014/10/19 21:30)
[14] 近代編 序章①[瞬間ダッシュ](2016/01/16 20:38)
[15] 近代編 序章②[瞬間ダッシュ](2016/01/16 20:53)
[16] 近代編 序章③[瞬間ダッシュ](2016/01/16 21:15)
[17] 近代編 序章④[瞬間ダッシュ](2016/01/16 21:42)
[18] 近代編  追放[瞬間ダッシュ](2016/01/16 21:57)
[19] 近代編 国境線、這い寄る。[瞬間ダッシュ](2015/10/27 20:31)
[20] 近代編  奇襲開戦はcivの華[瞬間ダッシュ](2016/01/16 22:26)
[21] 近代編 復活の朱雀[瞬間ダッシュ](2016/01/16 22:47)
[22] 近代編 復活の朱雀2[瞬間ダッシュ](2016/01/22 21:22)
[23] 近代編 復活の朱雀3[瞬間ダッシュ](2016/01/29 00:27)
[24] 近代編 復活の朱雀4[瞬間ダッシュ](2016/02/08 22:05)
[25] 近代編 復活の朱雀 5[瞬間ダッシュ](2016/02/29 23:24)
[26] 近代編 復活の朱雀6 そして伝説の始まり[瞬間ダッシュ](2018/04/16 01:33)
[27] 近代編 幕間 [瞬間ダッシュ](2017/02/07 22:51)
[28] 近代編 それぞれの野心[瞬間ダッシュ](2017/02/07 22:51)
[29] 近代編 パナマへ行こう![瞬間ダッシュ](2017/04/14 22:10)
[30] 近代編 パナマ戦線異状アリ[瞬間ダッシュ](2017/06/21 22:22)
[31] 近代編 パナマ戦線異状アリ2[瞬間ダッシュ](2017/09/01 23:14)
[32] 近代編 パナマ戦線異状アリ3[瞬間ダッシュ](2018/03/31 23:24)
[33] 近代編 パナマ戦線異状アリ4[瞬間ダッシュ](2018/04/16 01:31)
[34] 近代編 パナマ戦線異状アリ5[瞬間ダッシュ](2018/09/05 22:39)
[35] 近代編 パナマ戦線異状アリ6[瞬間ダッシュ](2019/01/27 21:22)
[36] 近代編 パナマ戦線異状アリ7[瞬間ダッシュ](2019/05/15 21:35)
[37] 近代編 パナマ戦線異状アリ8[瞬間ダッシュ](2019/12/31 23:58)
[38] 近代編 パナマ戦線異状アリ 終[瞬間ダッシュ](2020/04/05 18:16)
[39] 近代編 幕間2[瞬間ダッシュ](2020/04/12 19:49)
[40] 近代編 パリは英語読みでパリスってジョジョで学んだ[瞬間ダッシュ](2020/04/30 21:17)
[41] 近代編 パリ を目前にして。[瞬間ダッシュ](2020/05/31 23:56)
[42] 近代編 処刑人と医者~死と生が両方そなわり最強に見える~[瞬間ダッシュ](2020/09/12 09:37)
[44] 近代編 パリは燃えているか(確信) 1 【加筆修正版】[瞬間ダッシュ](2021/06/27 09:57)
[45] 近代編 パリは燃えているか(確信) 2[瞬間ダッシュ](2021/06/28 00:45)
[46] 近代編 パリは燃えているか(確信) 3[瞬間ダッシュ](2021/11/09 00:20)
[47] 近代編 パリは燃えているか(確信) 4[瞬間ダッシュ](2021/12/16 00:04)
[48] 近代編 パリは燃えているか(確信) 5[瞬間ダッシュ](2021/12/16 00:02)
[49] 近代編 パリは燃えているか(確信) 6[瞬間ダッシュ](2021/12/19 22:46)
[50] 近代編 トップ賞は地中海諸国をめぐる旅、ただし不思議は自分で発見しろ 1[瞬間ダッシュ](2021/12/31 23:58)
[51] 近代編 トップ賞は地中海諸国をめぐる旅、ただし不思議は自分で発見しろ 2[瞬間ダッシュ](2022/06/07 23:45)
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[40286] 近代編 序章①
Name: 瞬間ダッシュ◆7c356c1e ID:95ce0ae2 前を表示する / 次を表示する
Date: 2016/01/16 20:38

まず初めに宇宙があった。その広大な闇の中には幾つもの輝く星とガスが漂い、深淵の黒に彩りを添えている。そんな静寂なる世界の片隅に、輝く銀の河が横たわる。
それを構成するのは何千億個もの恒星で、その中の一構成要素である太陽、そのたった一つによって形作られた太陽系の第三惑星地球が、プッカリと蒼い宝石のように浮かんでいた。
気の遠くなるほど広大な宇宙の暗がりに存在する青き天体は、宇宙と比べれば塵芥に等しいちっぽけなその内に、しかし幾億年の歴史を紡ぎ、数え切れないほどの生命を生み、育み、そして滅ぼしてきた。
都合五回の大絶滅の末、今この地球上において覇者として君臨する種族の名前は、ヒトと呼ばれる二足歩行の生物だった。

もしも創造主なる存在がいたのならば、果たしてどんな意図で以ってその生命体を生みだしたのだろうか。
もっとも近しい猿という種が、比較的安寧な樹上をその生活の場として選んだその一方、いかなる理由であろうか地上の草原に降りたヒト。生存競争に敗れ、エデンの園とでもいうべき樹上を追放された敗者の群れだったのか、はたまた新天地を求め冒険の旅に挑んだ勇敢なる挑戦者達だったのかは、過去を見通す目を持たぬ卑小な存在には皆目見当はつかない。しかし、ヒトがその生命を保つことの過酷さは想像に難しくない。

ヒトには素早く動く足も、鋭い爪も牙も力もない。およそ動物としては底辺と言っても過言ではない脆弱な肉体しか与えられなかった生命体にとっては、平原は余りにも残酷で無慈悲な世界だった。
彼らを狙う肉食獣を筆頭に、病原菌、災害、その他諸々……ヒトが命を落とす原因はいくらでもあった。
地を這う獰猛な獣に追われて恐怖し、災害をじっと息を潜めてやり過ごすしかできない無力感に震えるだけの悲しい存在だった。だがしかし、黙って世界の贄となることを良しとするほど、彼らは善良でもなければか弱くもなかった。
この世で最も生きる事に貪欲で、執着する存在――それこそがヒトの本性だった。
飢えれば死んだ仲間を、親を、子の血肉を喰らい、年中発情しては見境なく繁殖を繰り返すことで、どうにかこうにか命をつないだ。その生き汚さこそが最大の武器であると言わんばかりに、彼らは容赦のない世界に挑み、生き続けた。

そのような長き苦渋の年月を耐えて耐えて耐えて……遂に人類は逆襲のきっかけをつかみ取る。人は、創造主が気まぐれで与えたかのような唯一の長所、即ち他を圧倒する程の思考能力を武器にすることを覚えた。
そこから先は、まさしく破竹の勢いだった。時に罠を張り、石や木を武器にして、集団の利を生かした戦いを始める。それは復讐のような、今まで捕食者側だった他の肉食獣達に対しての反撃だった。
長い研鑽の果て。安全に狩猟する事を見に付けた人類はついに、地上の覇権を握った。

今まで自分達を狩っていた獣を駆逐しながら、東へ西へ南へ北へと人類という新たな地上の王者は、我がもの顔で版図を広げて行った。
その活動領域の広がる様は、さながら病原菌が地上を覆い尽くすように見えたことだろう。
きっと、人類はその支配領域を地球全土にまで広げ、その知性で地上に楽園を築きあげるのだろうと――あるいは何者かは期待したのかもしれない。
が、それは全くの的外れであったと言わざるを得ない。あさましき人間の性は、そのような理想郷を築くには邪悪すぎた。
人類は野生動物の脅威を克服すると、今度は同じ人類同士で争いを始めた。

より実り豊かな土地を巡って、武器を作り振るう。異なる菌が生存圏を広げるために喰らい合うように、人間は同じ種族を相手に、かつて動物達を狩ったときのような残酷さでもって戦う。己が欲望に従って、奪っては殺し始める。
部族が集落を作り、村が町になり、都市が国へとヒトの集団が大きくなればなるほど、その争いの規模は青天井で大きくなっていった。
地上の生存権を獲得した思考能力を利用して、如何に相手を効率よく殺すかを考えだした人間の争いは、歯止めが効かない。
戦が起こるごと、おびただしい量の血が流れ、流れた血液を吸った大地は真っ赤に染まり、また新しい戦いを生みだしていく。地球上のおよそ三割しかない陸地の上で、幾つもの国が興り、犯し犯され滅亡していく。周囲を圧倒して支配する大国が、四方から侵食されて滅びる様は、人類の業をありのまま映し出していた。
人間は変わらない。変わる事が出来ない。それは例え、時空と宇宙を超越した別世界で在っても。
そんな世界の片隅。ありえたかもしれないもう一つの地球、その太平洋に浮かぶ南方の小大陸に、小さな種がまかれた。未来において世界のヘソと呼ばれる巨大岩が鎮座する大地に、本来あるべきでない異端の種が、どのような花を咲かせるかは分からない。だがそれを良しとし、美しくも醜い世界を祝福するかのように笑う何者かの声が、確かに響いた。




Civ的建国記 近代編 プロローグ①



強烈な光にたまらず目覚めると、そこには荒れ果てた大地が茫漠と広がっていた。この世の果てか、はたまた終末の日を迎えた地球の如き光景には茶褐色の砂と岩が、それ以外にはまばらに生えた雑草が乾燥した風に吹かれているのみだった。そのような世界が全方位水平線の見える範疇の全てに横たわっている。
上空には突き抜けるような青空と、細かく浮かんだ小さな雲がいくつか。そしてギラギラと輝く太陽が容赦なく辺りをあぶっていた。
そんな荒れ地に、場違いな格好をした少年がごろんと寝転がっていた。

「……カーっ! まいったね、どうも」

全然そうは見えない口調で一言。
少年はこの場には不似合いな服装で、上体だけ起こすとそのままの態勢で辺りを見回してからニタニタとほくそ笑む。まるでこれから学校に行くかのように、真っ黒い学ランと黒い黒靴を身に付けた少年は、これっぽっちも困った風には見えない。というかむしろ嬉しげな表情をしながら立ち上ると、衣服に付着した砂埃をパンパンと手で払った。
その後、タバコをふかす仕草をしてニヒルに笑いつつ、「ふっー」と煙を出すように息を吐き出した。
当然、タバコをふかす仕草だけなので、白い煙は全く出る事はない。完全に格好だけである。だが、それを指摘する者は一人もいないので、少年はその後もハードボイルドな気分に思う存分浸りながら、想像の中の自分に酔いしれる。遠い瞳で地平線のあたりを眺める事も忘れない。
ちなみに、吸っているタバコの銘柄は未設定である。タバコはタバコであるという認識しかないうっすい知識だが、それでもカッコつけたいお年頃なのだ。

「何故か学ラン姿か。この導入は――恋姫だな。僕はSSには詳しいんだ」

掻き上げる程の髪の毛もない短髪を掻き上げて、もう一度ニヤリとスマイル。ありもしないカメラを意識して、斜め45度の笑顔。少々贔屓目見に見れば、それは遠足前日の小学生にそっくりであると言えなくもないワクワク的な無邪気さだ。
恐怖や不安は全くない。あるのは自らが放り出されたであろう世界に対する、及び、これから自分の身に降りかかるであろう大活躍とラブロマンスに溢れた激動の運命を前にした期待感のみだった。
ドヤ顔でほくそ笑むこの少年の名前は山本八千彦。当年とって16歳の高校生、少し遅めの病を患っている事と、少々自意識過剰で思い込みが激しい以外にはどこにでもいるような少年だった。








「山本くん? ああ、彼はとてもおとなしい生徒です。一度も校則違反をした事はありませんし、生徒の見本のような少年です」

こう評される山本少年のこれまでの人生は、客観的に見れば可もなく不可もなく、大きな谷がない代わりに大きな山もない平坦な道のりだった。賞罰といえば小学生のころに書道で一度賞を貰っただけで、それ以外には特にぱっとしない平凡な月日を重ね、ごくごく普通の少年時代を過ごし、地方都市の特に荒れている訳でもない中学校を普通に卒業し、高校に進学した。
では家庭環境はどうか? これも問題ない。専業主婦の母と、サラリーマンの父。そして寮に入った大学生の兄が1人で、非常にありふれた一家である。
平凡、普通、ありふれた――そんなアベレージでノープロブレムな毎日が、山本八千彦――――八千彦で「やちひこ」と読む――――という少年を取り巻く世界の全てであった。

あるいはその反動であるのか。冒険とは対極にある日常を送る彼は、進学した先の高校で、たまたま席が隣に成ったクラスメイトから、とあるインターネットサイトを教えられる。このサイトに出会うことで、山本少年はかつてない衝撃を受けた。
そこはいわゆる二次創作と呼ばれるものと、個人が執筆したオリジナル小説が投稿されるサイトで、ここに投稿された数々の素人小説――プロの視点で見れば荒削りも甚だしい稚拙な作品――はしかし、その内に秘められた強大な熱量でもって少年の心を鷲掴みにした。

物語の主人公たちは、みな一様に平凡で普通でありふれた者たちだ。それが突然非日常に叩きこまれ、大活躍する。そしてその対価とでも言うべき美少女が、主人公の傍らに侍る――――そんな王道な物語たちを少年は読み漁った。
読めば読むほど、その世界に引き込まれる、魅了される。冷静に考えれば中にはひどい作品もあるのだが、どんなジャンルにも必ず良作と呼ばれる作品は存在する。今まで避けていたジャンルでも、そういった良作のおかげで楽しめるようになれば、そこには無限の鉱脈が広がっている。
SS世界への入門――それが山本少年の日々に、ささやかな彩りを与えることとなる。
そしていつしか、もしも自分がそんな主人公になったなら……という妄想にふける様になった。神様に出会ったらどんな特典を貰おうか、容姿はやはり銀髪オッドアイかあえての地味系か。転生する世界はFateのような1人のヒロインととことんラブるか、ネギまで中学生相手にハーレムを目指すか……こんなことばかり考えるようになった。
「やっぱ基本は600年前エヴァ√でアンチマギステルマギでしょ」という結論に至るのがいつものことなのだが、それでもそう言う風に「非凡な自分」を想像する事が、楽しかったのだ。

だが、現実はそんな大冒険な脳内自分とは裏腹に、いたって普通な毎日だった。毎朝起きて、学校に行って、帰って宿題して寝る。この繰り返し。たまの休日も、パソコンの前にかじりついていればすぐに日暮れを迎える。変わり映えのない日々――退屈な日常がメトロノームの振り子のように朝と夕方の間を行ったり来たりするだけの生活が流れて行った。
――――だがしかし、それも夏休みに入ることで、大きく転機を迎えることとなった。

その転機とは、母親が商店街の福引で当てた、オーストラリア一週間の旅だった。
夕方の買い物に連れだされた山本少年は、その日の事はよく覚えている。
昼間の熱がまだ残っている、蒸し暑い時間帯だった。日曜日だというのに無理矢理外に引っ張り出され、荷物持ち要員として夕方の商店街を歩いていた時のことだった。肉屋で立ち話を始めた母親にうんざりした目を向けながら、近くのベンチに座って缶ジュースを飲もうと腰かけると、そこには自分以外の人間が既に座っていた。

老人と言うには若く、中年と言うには老いたその男は、正面を向いている筈なのに正面を見ていなかった。ここではないどこか、それこそ目には見えない存在をとらえているかのような、あやふやな焦点を空中に結んでいた。
漠然と、通行人の何かを品定めしているのかと思われた。理由は分からないが、ただそう感じた事だけは不思議と強く印象に残っている。
だが、そんな思いも水泡のように儚く消え去り、常識的な思考がすぐに取って代わる。「ああちょっとボケちゃったのか」と、かなり失礼なことを考えた山本少年だった。
それでどうこうという訳でもない。特に害があるでなし、そのままボケっと座って、水滴がついた冷たいアルミ缶のプルタブを開けた。
街路樹にひっついてやかましく鳴いていたセミが、突然鳴きやんだと思った次の瞬間、ふと空気が動いた気配がした。妙に気になってちらりと再び横を見て見ると、忽然とその男性は姿を消していた。
真夏の黄昏時に見る一種の白昼夢のように、全く気配もなく、男は立ち去っていたのだ。
その去り様にしばし唖然となるも、今まで男がいたベンチの空間に、一枚の福引券が取り残されるように落ちていた。
商店街が発行するには少々立派な気がするそれを、山本少年は一応落し物だということで本来の持ち主であろう男を探した。不思議と印象に残りやすい姿だったため、すぐに見つかると思われた。第一、ここはさびれ始めた地方都市の商店街だ。
だが、いくら夕方といえどそれほど人通りが多くないハズだと言うのに、後ろ姿すら見つからなかった。流石に落し物で福引するのは気が引けるなとは思ったが、帰って来た母親にひったくられてしまう。そして、そのまま福引会場へ向かう事となった。

拾得物横領という単語が浮かんだが、特に抗議はしなかった。そこには、どうせポケットテッシュだろうという思いと、持ち主が見つからないならばという思いが絡まった結果だったが、これが見事に一等を引き当ててしまう。年齢に似合わず手を叩いてはしゃぐ母親を見ながら、良心の呵責を少々感じ、しかしだからと言って辞退するまでもなく、少年とその家族はオーストラリア旅行へと旅立った。これが八月の頭のことだった。そして、機上の人となった山本少年がオーストラリアの荒野を写したパンフレットを見ながら眠りについて目覚めると、そこから先は冒頭の場面へと続くこととなる。







「しかし恋姫だとすると所属はどうなるんだろう?」

山本少年は、とりあえず近くの岩場で丁度良く日陰になる所を見つけるとそこに入り、腰をおろして思考にふけった。夏だと言うのに冬用の学ラン何かを着こんでいるから、暑くてたまらなかったのだ。出来れば冷たいジュースを飲みたいが、絶対に自販機が置いてないであろう荒野なので、ここはぐっと我慢せざるを得ない。そして我慢している事を忘れるために、頭を働かせて考える。議題はズバリ「今後の身の振り方」である。

ここで現状の整理をする。
SS業界のテンプレ的なストーリーでは、恐らくこれはトリップと言われる現象と推察されるだろう。乗っていた飛行機が事故かテロに巻き込まれ、寝ている内に絶命。そして何かの拍子に異世界へというのが大筋の流れと考える事が出来る。
二次創作界隈ではトラックに轢かれそうになった女の子を助けて、それを見ていた神様が「おおなんと素晴らしい人間なのだろう」とか「本当は死ぬ運命でなかった」とうの理由で、漫画やアニメの世界にチートな特典付きで転生させてくれるのが超王道だ。
むしろやり過ぎて「食パン食べながら走っていたら曲がり角で転校生に激突して~」と同等の、それ自体がネタとして扱われるくらい手垢が付き過ぎてテカッている設定だが、逆に分かりやすいということで多用されまくる万能設定だ。これを最初に考えた人は誇って良い。ただし、人に堂々と言えればだが。

しかし、今山本に降りかかっている現象はそうではない。女の子を助けた訳でも神様に出会った訳でもない。この時点で王道からは外れる。だが、幾つもの夜をSSと共に明かした山本少年の脳内では、今必死にいままで読んできたSSの中から最も現状に適している作品を検索し、はじき出す。その結果は――――


「覚醒系……か。チッ!」


トリップと言えばチート特典、すなわちトリップした以上チート特典は必ず付与されている。しからば、それが分からないのは隠されているからであるという、非常に論理的な思考の果てに得られた結論が、覚醒系だった。商業誌でも見られる、血統に隠された秘密の力的なアレである。

時たま、自分自身が貰ったチート特典をあえて忘れさせる展開というものがある。大体ピンチになると都合よくその場を切り抜けられる超絶パワーに目覚める、というパターンがこれまた定石となっている。今回はそれであるというのが、山本の結論だった。

だが、この結果に山本少年は少々不満気だ。
というのも、せっかくチート特典が貰えたのだから、やたらめったら使いたくなるというのが人情である。不必要な場面でも周囲の迷惑顧みず最大火力でぶっ放したいというのは、多くの転生者達が通った道であると言えよう。その例にもれず、山本も早々にチートしたかった。そして尊敬の目で見られたかった。自分に眠っている力が分からず、その発動条件もピンチにならないと使えないと分かると、ちょうどおあつらえ向けの無人の荒野を前にしているということもあって、ド派手に一発試してみたいという欲求がムクムクと湧き上がってくる。端的に言えばばTUEEEをしたくてしたくてたまらないのだ。


「つか、誰でもいいから人来いよー。暇なんだよなぁ」


そして、いい加減1人でいる事に飽きて、すね始めた。恋姫世界(?)なら、早々に誰かしらオリ主たる自分に接触があってしかるべきであるという思いだった。この際、黄布賊の三人組みでも良かった。あれならまあ、適度にピンチで能力の覚醒には好都合だろうし、実験台としても申し分ないと割かし危険な考えを山本が抱き始めた丁度その時。

「ん??」

ドドドドドっという地響きを感じ取った。

「――まったく。天の御使いを放っておくとは何たる不敬、何たる無礼か。だが、寛大なる吾輩はその罪を赦そう」

一人称が吾輩とか、なんだか偉そうなことを言ってはいるが、その顔はニヤついている。既に役柄に入り始めた山本少年だった。ちなみに設定は、ちょっと悩んだ結果、SS用ネタノートに書きためていたオリキャラを意識している。
余談ではあるが、許すではなく赦すのがポイントである。本人以外にはどうでもいい上に、発音上は同じなので気にしなくても構わないが一応触れて置くことする。

全く、けしから、けしからんなあと、ブツブツ緩んだ顔で呟きながら、手早く熱さで堪らず脱ぎ散らしていた学ランを着こんでいく。ついでに、軽く身支度を整える。なんせ歴史に残るであろう偉大なる天の御使いの初登場シ―ンである。出来るだけ偉そうに、しかしただ偉ぶっているだけはいけない。そこにはそれ以上に威厳を含んでいなくてはいけないのだ。その為には、ここで着衣の乱れがあるのはいただけない。例えば、神様が後光と共に現れても、服にラーメンの汁がついていたら色々台なしになるだろう。それと同じ話しだ。
――――もっとも、本人にその素養があるかないかというのが最大の問題だが。


「あー……あー……喉のチェックよーし」

喉の調子を確認し、さっと岩場から躍り出す。前方数百メートル先から、土煙りを上げながらこちらに向かって前進してくる集団が見えた。
100や200どころの数ではない。灼熱の大地に立ちあがった揺らめく陽炎を突き破り、それは真っ直ぐと突き進んで来る。
よくよく目を凝らして見る。馬だ。そしてその馬の上には人影があった。すなわち騎兵である。
胸に広がる期待感は、加速度的に増大していった。いよいよ最高にカッコイイ自分の晴れ舞台が近づいてきていると思う。すると気分がうなぎ上りに高揚しているのをハッキリと感じとれた。

(騎兵といえば……公孫賛――最初は真名すら設定されてなかった公孫サンかー。まあいいや、魏だとイージー過ぎるし、蜀だと劉備がウザいし、呉だと公然と種馬あつかいだからなー。いいんじゃない? 地味だけどやりがいあるし?)

などと、三国志ファンに公然と喧嘩を売るような考えを浮かべる山本少年。三国志知識は恋姫無双、それもその二次創作オンリーで原作はプレイしたこともないクセに随分な物言いである。こういう風に世の中を舐めている少年には、古来よりバチが当たると相場が決まっているものだ。
そしてそのバチというものは、案外早く降りかかってくるものだ。



「……あれ? 何であの人たち半裸なの?」

「―――――――――――――」

遠く、叫び声が聞こえる。馬蹄の音でかき消されては居るが、確かに彼ら騎兵の集団は何ごとかを叫んでいた。聞き取れないが、何か雄叫びの様な風情がある。


――何でモヒカンヘアーなの?

その間にも、距離はグングン近くなる。遂には、彼らの特徴的な髪形すらも認識できるほどに。

――何で肩があんなにガッチリしているの?

彼らは皆一様に、肩に板の様な物を装備している。俗に言う肩パットだ。
ダラダラと、熱さが原因ではない汗が背中に流れ落ちる。あれは、あの姿は――――


「ヒャッ――ハアアアアアアアア!!!! 」

後塵を引き連れて爆走するそれは、you are shock!なあらくれ集団。唯一違うとしたら、バギーバイクが馬である点だけだったが、それは確かに、199X年の核の炎に包まれた後の世界で名を馳せる未来の蛮族達だった。狂気と凶器を振りまいて、馬をバイクの代わりに疾走する彼らは、絶対にカタギではない。少なくとも、公孫賛(真名・白蓮)のような治安を維持する側の人間ではない事だけは確定的に明らかだった。それどころか、一応は美少女に属する白蓮と同じ種族とは思えない。

「……ま、間違えたかな?」

堪らず吐いた呟きは、力無くモヒカン達の喧騒によって掻き消えて行った。
山本少年の無双な転生生活に、さっそく暗雲が立ち込めるのだった。







あとがきとあいさつ

みなさんお久ぶりです。自分のスタイルが未だに確立できない瞬間ダッシュです。
前回の投稿から約一年も経過してしまいましたが、なんとか新作を投稿することができました。
というのも、この近代編を書くにあたってかなりの数のプロットを作っては没にしていた結果、当初の予定以上の時間がかかってしまった次第であります。
主にストーリと、主人公の設定で、めちゃくちゃ悩みまくりました。それで、これ以上悩んでたら一生続きなんて投稿できないだろうという危機感の元、もうこれでやってやる! という半ば自分を追い込む形で今回の投稿となりました。いかがだったでしょう? つまらなかった、糞つまらなかった、書き直せカスなどなどの感想でも良いので、ぜひよろしければ一言よろしくお願いします。

追伸
さて、今作から三人称視点を使うこととしましたが、どんな感じでしょうか? 投稿に先だって、一応練習として何作か投稿してみた結果、個人的にはなんとか形にできたかな? というような感じです。


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