約8ヶ月に及ぶ内乱が終結した。
経緯としては反乱勢がモルガル公国とワラトリア公国の協力を取り付け、バルデン王国に独立を認めるよう迫ったそうだ。
バルデン王国は反乱勢の要求を幾つかの条件付きで認め、ランデル地方の独立を承認したのである。
……反乱勢の資金が不自然に潤沢だったのは十中八九、モルガルとワラトリアが資金援助してたからだろう。
いや、ランデル独立直後に友好的な態度をとったチューダーもバルデンの弱体化を目論んで反乱勢に資金援助していたのかもしれない。
モルガルとワラトリアは法王庁教圏で最東部に位置する小国だ。
小国と言ってもクシャーン帝国と国境を接している為、宗教的対立から戦争が絶えず、軍事力が小国としてはかなりある。
だが、彼らとしてはクシャーンとの国境に軍を配置しておきたいので背後を疎かにしたくないのだろう。
モルガルとワラトリアはバルデンとの仲が悪く、数年前には武力衝突もしたらしい。
だから2つの公国は自国と国境を接している地であるランデル地方を独立させ、バルデン王国との緩衝国にしたかったのだろう。
とにかくこれでランデル地方はランデル共和国として独立し、バルデン王国はモルガル・ワラトリア両公国との国境を失った。
……原作だとミッドランドとチューダーとクシャーン以外の国は殆ど描写がなかったけど中々腹黒いことを他の諸国もしてるじゃないか。
それはそうとして……
「ルークをc3へ。チェック」
「キングをg3へ」
「ナイトをe5へ。チェックメイト」
「あ、また私の負けか」
「シドルファス様も強いと思いますよ?」
「もうこれで俺が8連敗ってことに気づいて言ってるのか」
俺たちが今しているのはチェスという盤上遊戯だ。
前世でもよくチェスで遊んでいたのでこれを父上の執務室で見つけたときには驚いた。
思わず、執事に許可を得てイスタークとチェスで遊ぶことにしたのだ。
イスタークはチェスのやり方を知らなかった。
なんでもチェスはとても高貴な者がするお遊びらしいので下級貴族風情ではできないらしい。
そこでイスタークにルールとか駒の動かし方を教えてチェスで戦ってみたんだ。
まぁ、結果としては……途中からまったくイスタークに勝てなくなって……20戦中6勝14敗。
本当にイスタークはチェス初心者なの?
俺、前世だとチェスはかなり強い方だったんだけど……
そういえばイスタークは百人長だったな。
兵の動かし方とか熟知してるからチェスを理解するのも早かったのかもしれない。
それでも前世のネットとかでチェスの戦略を学びまくってチェスゲームのネット対戦で常にベスト5に入ってた俺に8連勝するってかなりの才能だよな。
因みにそのゲームのプレイヤーは2千万人位いた。
……イスタークは絶対百人長より参謀長とかの方が向いてると思った。