マジかよ『ベルセルク』の世界なんか死亡フラグしか存在しねぇじゃないか。
この世界だとシド並みの才能でさえも死亡フラグにしかならない。
だってねぇ、歩く死亡フラグとでもいうかねぇ。
バトルジャンキーな使徒がいるんだよ。
ゾッドっていう三百年に渡って強敵を求めて彷徨っている戦闘狂が。
そんな奴がシド並みの力を持っている事を知ったらどうするか?
考えるまでもない。
まず間違いなく俺に挑みかかってくるだろう。
三百年も戦闘経験があってチートな力を持ってるゾッドに俺が勝てるわけねぇだろッ!!
幾ら俺がシド並みの力を持っていると言ってもなぁ!!
……今後は力を見せびらかすのは避けた方がいいな。
これからは誰かと模擬戦する時は手加減していこう。
ゾッド対策は今のところはこれが限界だな。
後は原作が今どの辺りかについてだ。
俺の原作知識は新生鷹の団が末神と化したガニシュカ大帝を打ち倒し、幻造世界が始まった所で終わってる。
……そういや髑髏の騎士の黄泉の剣はフェムトにダメージ与えられてなかったな。
加えてそれが幻造世界になる原因のひとつになったんだから報われないな。
それはさておいてだ。
とりあえず誰かに当たり所のない質問をして今がどの辺りか知る必要があるな。
さて、何から、というよりそもそも誰に質問したものか……
「どうかなさいましたか?」
うお、ビックリした。
「あ、すいません。中庭の真ん中で何分も立ったままでいらっしゃったのでどうしたのだろうと思いまして……」
話しかけてきたメイドが青い顔をして何度も謝ってくる。
そうだ。こいつに質問してみよう。
「別にいいよ。ちょっと考え事をしていてね。そういえば少し聞きたいことがあるんだけどいいかな?」
「は、はい。私に分かることならば」
「あのさ、鷹の団って知ってる?」
「鷹の団ですか? 申し訳ありませんが私は知りません」
少なくともまだ鷹の団は有名じゃないみたいだな。
ひょっとしたらまだ百年戦争中期で原作は始まってすらいないのかもしれない。
淡い期待を込めてもうひとつの質問をした。
「そうなのか、じゃあミッドランドの第一王女って誰か知っているか?」
「ミッドランドの王女でございますか? 確かシャルロット様であられたかと……」
ウボァー。
うん、これ絶対に俺が生きている間に世界が変貌しちゃうね。
……こっそり剣技の練習した方がいいかもしれん。
今まで化物扱いされるの嫌だったからしてこなかったがトロールとかが跋扈する世界になったら死ねる。
特に【闇の剣】は絶対習得しておかないと……
いや、今はそれより世界が変貌するまでにどれ程の猶予があるのか調べる方が先決だ。
「そ、そうか。それでシャルロット様が今おいくつか知っているか?」
「えっと……確か……11歳だったと記憶しておりますが……」
今、シャルロットは11歳。
確かグリフィスがシャルロットに手を出して国王の逆鱗に触れて幽閉された時が確か17歳だった。
世界が変貌するのはその2年後だから……
実に8年の猶予があるわけか。
……前世に不治の病にかかって病院生活を強いられた時、俺は18歳だったな。
そして今世だと世界が変貌する時、俺は18歳。
なんか俺の18歳って何かに呪われてるのか?
とにかく俺が今できることは自分を鍛えることだけだ。
原作知識を使いたくともバルデン王国なんて国は原作に出てこない。
いや、ヴリタニスの法王庁連合軍に参加してたような記憶があるにはあるが描写がねぇ。
まあ、しばらくは訓練に勤しむしかないのか……
「ああ、考えが纏まったよ。ありがとう」
「大丈夫なのですか?なにやら顔色が真っ青ですが……」
「大丈夫だよ」(抜刀)
「わ、わかりました。失礼致します!」
メイドが逃げるように俺の傍から離れた。
こういう時に貴族の地位は便利だよね。
さて、今日は俺の部屋に戻ってゆっくりするか。
……因みに俺が自分の身の上を嘆いて泣いていたのは内緒の方向で。