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No.39311の一覧
[0] 【ネタ】僕は修羅場が少ない[コモド](2014/01/23 22:21)
[1] 僕はぬくもりが少ない[コモド](2014/01/23 22:24)
[2] 僕は何かが少ない[コモド](2014/01/23 22:24)
[3] 僕はタイトルとかどうでもいいや[コモド](2014/01/23 22:25)
[4] 僕は自業自得で友達がいない[コモド](2014/01/23 22:26)
[5] 僕は点数が少ない[コモド](2014/01/23 22:27)
[6] 僕は具材が少ない[コモド](2014/01/23 23:46)
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[39311] 僕は自業自得で友達がいない
Name: コモド◆82fdf01d ID:e59c9e81 前を表示する / 次を表示する
Date: 2014/01/23 22:26

「最近、部内の風紀が乱れているな……」

 カーテンを閉め切り、灯りを消した部室で僕と星奈、理科ちゃんは正座させられていた。
 ひとつだけ開いた窓から差し込む光と風を受け、窓の外を見つめた三日月さんが、遠い声で呟く。
 語る背中には哀愁が漂っていたが、非常に演技臭い。
 膝や踝と言った骨の出っ張りが硬い床に当たって痛い。星奈なんかは歯軋りしながら半泣きだった。
 どうしてこんなことになったんだろう。僕は性別がバレてからの日々を振り返った。





「……」
「……なに?」

 男であることが発覚してから始めての登校日のことだった。部室に向かって並んで歩く僕と星奈の間には、物理的な距離感があった。
 朝から値踏みするように目を凝らす星奈に我慢できず、質問すると、ひとりでウンウンと何度も頷いた。

「やっぱり女の子にしか見えないわね。うん、これなら学校でも男って意識しなくて済みそう」
「それは助かるけど、前みたいにベタベタしないでね? 一応、男と女なんだから」
「わかってるわよ」

 敬語も取れて、心的な距離感は近くなった。クラスでの関係も継続中。
 孤立しているふたりで壁を作って周囲を隔てている。すっかり中学の時と同じ嫌われ者ポジションに落ち着き、女子がますます嫌いになった。
 女子は女子でも、隣人部の三日月さんと星奈は面と向かって言うだけ、僕には気が楽だ。
 理科ちゃんは悪口も言わないが、言動が変態のそれなので女の子にカテゴライズしていいのか……僕の知る女の子とは違う生き物みたいだ。
 いや、二次元に傾倒する星奈も似たようなものなのだが……生産的ではない妄想で鼻血を吹くのはもう、女性としてどうなの?



「幸村くん。メイド服なんてやめて執事服とか着てみない? きっと似合うと思うんだ」

 今日もメイド服を纏い、女装して小鷹に尽くす美少女にしか見えない幸村くんに僕は言った。
 女装する辛さは僕が一番よくわかる。幸村くんが常識に疎いからと騙し続けているのは気が引けた。
 男らしくなりたい幸村くんには、もっと格好良い服装をして欲しい。メイド服も似合うけれど、執事服だって似合うはずなのだ。

「しつじふく……とは、なんでしょうか?」
「人に仕える職種の男バージョンの服装だよ。雇い主に尽くす姿勢や洗練された所作が凛としていて格好良いんだ。顔立ちが綺麗な幸村くんなら似合うと思うの」

 しかし直後、僕は襟首を掴まれて星奈に引っ張られた。耳元で叱るように強く、だが幸村くんには聞こえない小声で囁かれる。

「アンタね、なに考えてんのよ。そういうことばっかりしてるからクソ夜空にビッチって言われるんでしょうが!」
「貴様は空気が読めないのかビッチ。隣人部は貴様が理想の男を求める出会いの場ではない。友達作りに励む部活だ。
 ボーカルだけが女性のバンドと一緒だ。ひとりグループ内で男漁りするビッチがいると、男同士で敵対し空中分解してしまう。
 そんなに男と盛りたければ出会い系に『処女です! やっぱり処女ってめんどくさいですか……?』とか、『寂しくて仕方ないんです。即アポ希望です』書き込んでこい。馬鹿な男が入れ食いで釣れるぞ」

 顔をしかめた三日月さんも憎々しげに囁いてきた。何でそんなこと知ってるの?

「理科は賛成です! 執事ッ! いいですね! 泣く子も黙るヤンキーな見た目から想像もつかない程にヘタレな小鷹先輩には言葉攻めが得意な鬼畜執事が合うと一目見た瞬間から思ってました!」
「誰がヤンキーだ誰が!」

 ビシっと挙手して声高に叫ぶ理科ちゃんに小鷹が怒鳴り返した。ツッコむべきはそこじゃないと思う。

「陽香先輩、なかなか良い着眼点をしていますねっ! もしやそっちの素質があるではないですか!?」
「そ、素質って?」

 息を荒げた理科ちゃんに迫られた。少し身を引いて尋ねると、理科ちゃんは大きく両手を広げて叫んだ。

「何ってもちろん、ボーイズラブですよッ!」
「ないよ」

 間断なく否定するが、理科ちゃんはなおも力説する。

「それは嘘です! 女の子はみんなホモが好きですし、男の子だってみんな潜在的にはホモなんです!
 つまり人類、皆ホモ! これは真理なんです!」
「お前と一緒にするな変態が!」
「何であたしがホモなんて好きにならなくちゃいけないのよ!」

 ホモ扱いされた三日月さんと星奈も怒った。小鷹と幸村くんは「昼下がりのブレイクタイムって良い物だな」、「そうですね、あにき」とか呟いて他人の振りをしていた。
 僕もそっちに行きたい。

「星奈先輩、レズビアンだって同性愛者ですから広義的にはホモですよ。まぁ、こっちは蔑称で男限定の言葉として浸透していますが。
 だいだい、ホモはホモ・サピエンスのことでもありますから、人類=ホモは間違ってません。
 男だろうが女だろうが、人間はホモ! あなたも私もホモ!
 それに理科は、夜空先輩の方が陽香先輩よりも腐る余地があると見てますよォォォッ!」
「――ッ! 黙れ!」
「ぷぎゃっ! ま、まだ布教が……はァん!?」

 顔を真っ赤に染めた三日月さんがハエたたきで理科ちゃんの顔を叩き、事態は収拾した。
 思えば、これが始まりだったのかもしれない。



 翌日。僕が部室のソファで本を読んでいると、星奈が僕の肩に頭を乗せるように本を覗きこんだ。
 彼女は僕が男だと発覚してからも以前と同じように接してくる。どうも、僕が男だと言うことを忘れてると思われる節がある。
 もう一度、はっきりと言った方が良いのだろうか。彼女には感謝しているけれど、距離を保つことは大事だ。
 女装していても異性だってことを明確にしておかなくてはいけない。

「なに読んでるの?」
「ナボコフの『ロリータ』だよ」

 星奈の問いに、手首を返して表紙を見せた。世界的な名著なのだが、タイトルから誤解したのか、星奈は美貌をげんなりさせた。

「陽香、もしかしてロリコンなの?」
「違うよ! アメリカの古典文学作品の傑作! 確かにテーマは幼い少女との性愛だけど、卑猥なシーンは殆どないし、冒頭なんて誰でも聞いたことがあるくらい有名だよ! 星奈には薦めないけれど!」
「薦めないんだ」

 僕らのやり取りを眺めていた小鷹が、目をぱちくりさせた。鳩が豆鉄砲食らったみたいな顔をしている。

「どうしたの、小鷹?」
「あ、いや……陽香が星奈を呼び捨てにしてたから驚いただけだ。敬語も……」
「もう小鷹だけじゃないわよ」

 星奈は豊かな胸をさらに張って、得意げに鼻を鳴らした。言及するなら、僕は三日月さん以外には敬語は使ってない。
 年下には普通に接している。さらに言うなら同年代、年上の女性以外には普通に接しているし。
 小鷹は僕の読んでいる本に目を遣ると、天井を見上げて呟いた。

「『ロリータ』か……俺の妹も、歳相応に大きくなってくれたらいいんだがな」
「あ、小鷹ってやっぱり妹いたんだ」

 予想が当たっていたことが嬉しくなって、思わず顔が綻ぶ。小鷹はまた僕と目を合わせた。

「やっぱりって、俺って妹がいるように見えるのか?」
「うん。女の子に慣れてるよね」

 こんな美少女しかいない空間でも平然としていられるんだもん。
 小鷹は釈然としないのか、満更でもないのか判然としない面持ちで頬を掻く。
 僕らのやり取りを見ていた星奈が、堪え切れないとばかりに吹き出した。

「どうしたの?」
「くふっ……いえ、小鷹の妹を想像したら笑えてきて」

 失礼にも程があった。口元を両手で抑えて、顔を真っ赤にして笑いを堪えている。
 小鷹も憮然として言い返した。

「俺が言うのもなんだが、かなり可愛いと思うぞ」
「ぎゃはははははは! 真顔で冗談言わないでよ! アンタの妹なんてどうせプリン頭で時代遅れのスケバンみたいな外見したヤンキー女でしょ! 兄の欲目って怖いわねえ~」
「小鷹先輩、遺伝って言葉知ってますか?」
「あにきの妹なら、きっと、せいきまつでも覇者になれるいつざいでしょう」
「小鷹、夢と言うのはいいものだな。その中では、誰もが理想を思い描くことができる。実現できないそれを、人は妄想と言うがな」
「お前らな……」

 誰も信じていなかった。小鷹はこめかみを引き攣らせ、縋るように僕を見た。

「ぼ、僕は、可愛いと思うよ」

 チッ、と三日月さんが舌打ちした。星奈が長い溜息を吐いた。小鷹がウンウンとしきりに頷いた。
 ここは、実際は男子三人、女子三人でバランスが取れているけれど、実質的には小鷹ひとりしか男子がいないから、上手くカバーしてあげないと。
 僕が肩を落とすと、僕の髪がふわりと浮いた。その髪が風もないのに後ろに靡く。
 振り返ると――星奈の鼻の穴に髪が吸い込まれてゆく、にわかには信じ難い光景が広がっていた。

「なにしてるの!?」
「あ、つい」
「だから、つい、じゃないよ!」

 これで何回目になるのか。何かにつけて星奈は僕の体臭を嗅ぐ。女の子の匂いを嗅ぐ。
 この間はこっそり三日月さんの匂いも、バレないように嗅いでいた。すれ違いざまに鼻をぐずらせて。
 三日月さんは苛立ちを紛らわすように足を鳴らした。

「陽香先輩! 理科が布教用の同人誌もってきたんで読んでくれませんか!?」
「同人誌?」

 はい、と快活に頷いて、僕に薄い雑誌を手渡した。どうやら漫画みたいだ。

「同人誌ってアレよね。有志が趣味で書いてる二次創作の」
「はい、そうです。質はピンキリですが、中にはプロも混じってたりして、これが侮れないんですよ」

 へえ、と感心して一冊を手にとった。表紙には、美少年と美少年が睨み合う構図の絵が描かれている。

「理科はオヴァとガムダンがイチオシなんですけど、それは流石についていけないと思うので、割りとソフトなのをチョイスしてみました」
「ふーん」

 同性愛と聞いて忌諱していたけど、ソフトなら友情ぐらいしか描写してないんじゃないかな。
 そう思ってページをめくった。

『お前のここもスケスケだぜ』
『これが俺のハーレム、後部王国だ』

「ブフォッ!?」

 いきなり全裸の美少年の扉絵、次ページで全裸の美少年たちが組んず解れつな絵が飛び込んできて、僕は吹き出した。

「どうですか!? 後部様が俺様を発揮して毎日をSundayにして美少年と怠惰な日々を送る同人誌は!?
 理科的にはネタに走りすぎていてイマイチなんですけど、絵が綺麗でプレイも見応えが――」
「こんなものッ! あっちゃいけないんだッ!」
「ああああああーーーーーッ! 大王子様の休日が! 陽香先輩、やめてください! テーブルに叩きつけないで!」

 我を忘れてテーブルにバンバンしていたのを、理科ちゃんに羽交い絞めにされて止められた。
 そうか、これ理科ちゃんの私物だった……

「ご、ごめん」
「まあ、他に保存用と布教用と観賞用があるので良いですが」

 そんなにあるんだ……

「と、とにかく、僕はこういうの興味ないから!」
「残念です。星奈先輩はどうですか? 興味湧きません?」
「湧くわけないでしょ!」
「ですよね~」

 理科ちゃんが半笑いで生暖かい目を向けてきた。何でそんな目で見るの?
 僕らのやり取りを黙って聞いていた三日月さんは、ぷるぷると怒りを堪えるように震えている。

「貴様らは……隣人部の活動を何だと思っているのだ!?」

 怒鳴られた僕と星奈、理科ちゃんはきょとんと目を合わせた。理科ちゃんが言う。

「なにって、友達作りするために適当に駄弁る場所じゃないんですか?」
「違う! リア充を目指し、日向を歩けるようになるべく日々精進する場だ! それなのにお前たちと来たら……
 クソビッチ、淫乱レズビアン、変態宣教師と、毎日毎日淫猥な物事を垂れ流すだけ……これはどういう了見だ!? お前たちはここを変態たちの社交場にしたいのか、ええ!?」
「ハア!? だーれが淫乱よ。つーかアンタだってエッチな内容が書かれた小説読んでるじゃない!」
「理科は同志を求めているだけです! 友達とは趣味や意気の合うもの! だから理科が自らの趣味をあからさまにすることに違法性はありません!」
「僕もビッチじゃないです」
「ぐっ……」

 三人に同時に反論されて、流石の三日月さんもたじろいだ。いつもは強気な三日月さんも、三人を相手に口では勝てないらしい。
 敗北を悟った三日月さんは、ジリジリと後ずさった。

「おのれ……覚えていろよ貴様ら……!」

 そのまま部屋を飛び出してゆく。捨て台詞が恐ろしかった。

「フフーン、気分がいいわ。あの夜空が涙目敗走よ? あたしの時代が来たわね」

 星奈は勝ち誇り、髪を掻きあげた。金色の流麗な髪が踊る。何だか嫌な予感がするな。

「んん……理科、罵られたら我慢できなくなってきたんで、部屋でオナニーしてきますね」

 内股気味の理科ちゃんも退室する。もうやだ、どうなってるのこの部活。





 そして、冒頭に戻る。翌日、隣人部に顔を出した僕ら三人は、三日月さんのハエたたきで出鼻を挫かれ、為す術もなく正座させられた。
 真っ暗な部屋の中で、硬い床の上。足が痛かった。でも動くとハエたたきが飛んでくる。
 既に三回叩かれている星奈は涙目だった。

「ここ、談話室4は聖堂内にある。マリア様のお膝元だ。そのような神聖な場所でエロゲをしたり、男に色目を使ったり、男の同性愛を薦めるなど許されたことではない。
 そうですね、マリア先生」

 マリア? 僕らが小首を傾げると、灯りがつき、部屋の全容があらわになった。
 僕らの前に、椅子に座ってふんぞり返る銀髪の幼女シスターがいた。

「うむ。コイツラ全員うんこだな。うんこ! 魔女裁判にかけて火あぶりだ!」
「はい、その通りです」

 恭しく礼をする三日月さんに当惑する。どういうこと?

「ちょっとクソ夜空! なによこの茶番は!」
「気安く卑しい口を開くな雌豚が!」
「イタッ!」

 ペシンと鼻面を叩かれ、うー、と星奈が唸る。不遜に胸を張り、教師にみたいにハエたたきをポンポンと手のひらで叩きながら三日月さんが言った。

「まぁ、仕方ないから答えてやろう。この御方は、我々隣人部の顧問であらせられるマリア先生だ。頭が高いんじゃないか、お前たち。ん?」
「控えおろー!」

 嬉々としてはしゃぐマリア先生(10)。いいんだ、雇うんだ。

「キッタナイわね……人数で勝てないからって自分は先生連れてくるなんて」
「なんか言ったか、駄肉。えー、先生。キリスト教では同性愛は禁止されてましたよね?」
「うむ! キリスト教では生殖に結びつかない性行為は全て悪徳だ!」
「よって、肉。お前は処刑」
「なんでよ!」

 理不尽すぎる……三日月さんは、次に理科ちゃんを標的に定めた。

「次、志熊理科」
「理科は同性愛者ではありません! 異性や機械の同性愛を愛しているだけです!」
「黙れ! ……貴様は腐女子、だったか。その布教を隣人部内で行なっていたな」
「はあ……それがなにか」

 胡乱げに言う理科ちゃん。三日月さんは、カッと目を見開き、

「聖クロニカ学園はキリスト教を学教と定めている。他宗教のプロパガンダは禁止だッ!」
「ええっ?」
「そうですね、マリア先生」
「そうだ! 異教徒のうんこは死ね! 弾圧しろ!」
「よって変態。お前も処刑」

 酷すぎる……魔女裁判並の問答無用振りだ。
 最後に僕に目が向く。

「ビッチ。お前は言わなくてもわかるな?」
「僕、ビッチじゃないんですけど」
「発言は許可していない! 貴様は清廉潔白で貞淑であることが尊ばれるキリスト教観念に反する行為を隣人部内で繰り返した。
 一夫一妻を推奨するキリスト教の学園で二人の男子生徒に日常的に色目を使ったな。よって処刑だ」

 処刑の内容はわからないが、良くない罰が課されそうなので反逆することにした。

「あのー、僕はキリスト教徒ではないのですが」
「あたしもよ」
「というか、夜空先輩だって無宗教じゃ」
「誰が口を開いていいと言った魔女共がッ!」

 また星奈が叩かれた。今度はあまり痛くなさそうだった。「ん……」と声を出しただけだ。

「理科、私も昨日、例の腐女子とやらについて調べた。そしたら、カップリングや受け攻めで同志の中でも争い合っていたぞ。
 そんな危険な火種を隣人部内に持ち込むなど、部長として許可できん。お前は火炙りだ」
「内輪揉めはキリスト教の十八番じゃないですか」
「いったいいくつの教派に分かれてんのよ。魔女狩りだって大半は無実で、キリスト教に恭順しない連中を弾圧してただけでしょ!」
「隣人部なのに博愛の精神を尊重しないのはおかしいです。部長の三日月さんからは、隣人愛の精神が欠如しているように感じます」
「む……」

 怒涛の反逆に三日月さんも気圧された。冷静に考えれば、星奈と僕は学年の主席、次席だし、理科ちゃんも天才少女だ。
 このまま押しきれるかと思ったが、今度は三日月さんも踏み止まった。

「黙れ下僕ども! 私が教典だ! 神は信じる者しか救わないし、異教徒など十字軍遠征で血の海に沈めてやる!」
「だからアンタ無宗教でしょうが」

 僕らが信じているのは八百万の神様だけで、信じるのは授業中にお腹が痛くなったときくらいしかないよね。

「ああ言えばこう言う現代っ子共め……!」
「なあなあ夜空。お腹空いたぞ。ポテチくれ。こうしてるだけで良いって言ったじゃないか」

 歯噛みする三日月さんの袖を引き、ポテチをねだるマリア先生に僕たち三人はげんなりとした。
 三日月さんも、証拠を掴まされた犯人みたいに顔に後悔が帯びた。

「三日月さん、まさか……」
「アンタ、お菓子で子どもを釣ったの?」
「それはさすがの理科もドン引きです」
「ええい! なぜ今、このタイミングで言い出すのだ、この馬鹿餓鬼はッ!」
「ば、馬鹿って言ったな! お前らなんかIQがワタシの半分にも及ばないカス共のくせに!」

 そして始まる仲間割れ。出るわ出るわ、三日月さんが部を立ち上げるために幼女を脅迫して恭順させた酷い話。
 物をあげる素振りを見せ油断して近づいたところに裏拳食らわしたとか、キリスト教の外典を捏造して騙したとか、これ以上殴られたくなければ顧問になれと脅したとか……
 ちょっと外道にも程があるのではないだろうか。

「なんてひどいことを……」
「ち、違う! あれは悪気があったわけじゃ……!」
「ウソだ! コイツはワタシを何度もぶった! 泣いても言うこと聞くまでぶったのだ!うんこ夜空! うんこうんこうんこ! くたばれバーカ!」
「あァ!?」
「ヒイッ!」

 本気で怯えて僕らの影に隠れるマリア先生。見かねた小鷹も口を挟んできた。

「まあ、お前らもそこまでにしとけ。同じ部活のメンバーで啀み合う必要もないだろ」
「理科は喧嘩も青春って感じがして楽しいですけどね」
「ヤンキーが良い事言っとるげ! キャハハハハハハ、似合わないぞ! うんこのくせに発言だけは一丁前だー」
「あにき、この幼女のしまつはいかがしますか?」
「ヒイッ!?」

 ……始めは可哀想だと思ったけれど、マリア先生の自業自得な気もしてきた。
 気づいたのだけれど、やっぱり僕らが友達いないのって、結局は自業自得なんだよね。

「小鷹」
「ん?」
「ズボンの裾、直さない?」
「……え? これ、格好良くないか?」

 うん、自業自得だ。




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