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No.38235の一覧
[0] 【習作】恋姫・偽史~微妙な人の転生話~[羽市](2013/08/10 20:06)
[1] 1 洛陽の日々[羽市](2013/08/10 20:04)
[2] 2 友[羽市](2013/08/10 20:08)
[3] 3 袁家の人達[羽市](2013/08/11 12:17)
[4] 4 冀州に至る道[羽市](2013/08/10 20:47)
[5] 5 麒麟児[羽市](2013/08/10 20:22)
[6] 6 江東の虎[羽市](2013/08/10 20:30)
[7] 7 名将を得る[羽市](2013/08/10 20:34)
[8] 8 腹心二人[羽市](2013/08/10 20:36)
[9] 9 大将軍[羽市](2013/08/10 20:39)
[10] 10 華の西園八校尉[羽市](2013/08/10 20:41)
[11] 幕間ー彼女がドリルになった理由ー[羽市](2013/08/10 20:42)
[12] 登場人物紹介 その1[羽市](2013/08/10 20:45)
[13] 11 崩御と即位[羽市](2013/08/17 10:27)
[14] 12 去る者と残る者[羽市](2013/08/17 09:35)
[15] 13 前日[羽市](2013/08/17 09:41)
[16] 14 後漢のいちばん長い日[羽市](2013/08/17 09:45)
[17] 15 董卓[羽市](2013/08/17 09:49)
[18] 16 孫と曹[羽市](2013/08/17 09:57)
[19] 17 退席[羽市](2013/08/17 10:01)
[20] 18 都落ち[羽市](2013/08/17 10:06)
[21] 19 彼女達の憂鬱[羽市](2013/08/17 10:10)
[22] 20 七星宝刀[羽市](2013/08/17 10:15)
[23] 幕間―袁紹さんの人材活用法―[羽市](2013/08/17 10:20)
[24] 21 月[羽市](2013/08/31 20:43)
[25] 22 檻車[羽市](2013/08/31 20:43)
[26] 23 陳留[羽市](2013/08/31 20:56)
[27] 24 北と都と南と[羽市](2013/09/14 20:02)
[28] 25 僅か五人[羽市](2013/09/14 20:06)
[29] 26 逢紀という女[羽市](2013/09/14 20:09)
[30] 27 軍議は踊らない[羽市](2013/09/14 20:15)
[31] 28 天の遣いと地を這う人[羽市](2013/09/14 20:26)
[32] 幕間―書を捨てて、町へ出れど、出会いが無いのは何故なのか―[羽市](2013/09/14 20:31)
[33] 29 贈り物、送り人[羽市](2013/11/16 19:53)
[34] 30 酒[羽市](2013/11/16 19:56)
[35] 31 記載の少ない死[羽市](2013/11/16 19:57)
[36] 32 首の山[羽市](2013/11/16 19:57)
[37] 33 冷静と激情の間で[羽市](2013/11/16 19:58)
[38] 34 出陣[羽市](2013/11/16 19:58)
[39] 35 激突、そして……[羽市](2013/11/16 20:37)
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[38235] 24 北と都と南と
Name: 羽市◆b131e28e ID:9a9fd995 前を表示する / 次を表示する
Date: 2013/09/14 20:02
 董卓は都において皇帝の如く振舞っていたが、外界について無関心な訳ではなかった。
 王朝の混乱に乗じて国境を侵した異民族の黒山族を討ち、黄巾の残党である白波賊の反乱も鎮圧し、これを従わせた。
 武人である董卓は政より戦を好む。彼は内政を王允、周秘、伍瓊といった名士達に放り投げ、自らは戦いと欲望にだけ熱中していた。
 次に誰を叩きつぶしてくれよう?
 思案している董卓に対し、周秘と伍瓊がそろって献策した。
「ここは相国の恩を忘れた不届き者の袁遺を討つべきです。今すぐ山陽に兵を進めましょう」
 間諜からの報告によると、あの生意気な小僧は、のうのうと山陽に居座っているらしい。
 小僧の首を刎ね、袁紹に送りつけるのも一興か。
 二人の献策に董卓は頷きかけたが、李儒が反対した。
「袁遺など所詮は小物です。相国が軍を動かすまでもありません。兌州の劉岱、徐州の陶謙(とうけん)に討伐の勅命を与えればよろしいでしょう」
 結果として、董卓は李儒の策を入れ、出兵を見合わせた。
 董卓の権勢は圧倒的な軍事力によって支えられている。その軍事力が都を留守にしては不測の事態が起きるとも限らない。李儒はそう考えていた。
 事実、周秘と伍瓊はただ恭介を犠牲にし、董卓の歓心を買おうとしていた訳ではなかった。董卓が軍を山陽に向けた後、南陽の袁術を都に招き入れようと画策していたのである。
 二人の背後には袁術の腹心である張勲の影が見える。
 同じ袁姉妹の腹心であるが、恭介と張勲の資質にはかなりの違いがある。
 それは今後の歴史が示すだろう。
 ともあれ、袁術による洛陽占拠は幻と消えた。

 さて、長沙の孫堅の下には、山陽から法正が使者として訪れていた。
 自身は出兵準備で多忙の為に動かなかったが、右腕とも言える法正を使者に立てる程に、恭介は孫堅を重視していた。
 法正の口から、反董卓連合の参加を要請された孫堅は即答した。
「分かった。もとより私は一人でも立つつもりだったのだ。袁遺殿が立つというのなら、喜んで協力しよう」
 孫堅は愚直な人物である。
 董卓という人民の癌を無視できる筈もなかった。
 法正も多忙である。孫堅の饗宴を受けると、翌日には山陽へと駆けていった。
 城門からその後ろ姿を見送った孫堅は、小さく呟く。
「……この戦い、難しいだろうな」
「あら? どういうこと、母様?」 
 孫堅の独り言に孫策が反応した。
「大事を成すには、天の時、地の利、人の和が必要だ。果たして連合軍がその全てを揃えられるか、それが問題だ」
 孫堅は叩き上げの武人である。故に、大儀に酔うことなく、純粋な目で連合軍を軍事的に判断することが出来た。
 天の時は得ていると判断して良いだろう。既に人民の怨嗟の声はここ長沙にまで届いているのだから。だが、董卓が皇帝を擁している現状では、連合軍は賊軍ということになる。賊軍という呼称に躊躇う諸侯も出てくるだろう。
 次に地の利だ。確かに四方から董卓を包囲する策は有効だろう。だが、諸侯の足並みが揃わず、各個撃破される可能性もある。大陸は広い。諸侯が連携を密に取れるとは思えない。法正も言っていたが、四方から包囲し、兵糧を断つのが上策だろう。董卓は大軍を擁しているが、都では大軍を養えない。彼等が餓え、大地に溶けるまで包囲するのが上策だ。
 そこで人の和が重要となる。反董卓の旗の下に諸侯を糾合すると言えば聞こえはいいが、要は単独では戦えないので諸侯を寄せ集めたに過ぎない。これをまとめ上げるには、余程の器量が求められるだろう。
「少なくとも、私には無理だな」
 孫堅は自身を優れた武人であると自負していたが、自分が官職や門地が上の諸侯をまとめ上げ、指揮を執れるとは思っていなかった。
「じゃあ、盟主は誰になるの?」
「袁紹殿か、袁術殿だろうな」
「えー!? 袁紹は兎も角、袁術なんて子供じゃない」
「場合によっては皇帝の権威に対抗する必要があるのだ。袁氏以外に、それだけの名声を持つ者はおるまい」
「……何だが、どっちが盟主になっても、『人の和』とは縁遠そうね」
 正直な娘の感想に、孫堅は苦笑しつつ頷いた。
「じゃあ、母様は、連合軍が負けるというの?」
「さあな。だが、例え連合軍が負けようとも、孫家は負けん。さあ、出陣の準備だ! 相手にとって不足はないぞ!」

 孫堅の下へ法正が訪ねたのと前後して、幽州は北平の太守、公孫賛の下にも使者が訪れていた。使者は袁紹と恭介から送られていたが、史書にその名は伝わってはいない。
 決して公孫賛を軽んじたのでないだろうが、少なくも法正や田豊といった重臣が使者を務めた訳ではなく、それが孫堅との温度差を感じさせる。
 公孫賛は北方を守ること数年、主に異民族相手に国境を守り、勇名を轟かせていた。彼女は有能な指揮であり、その下には白馬を操る優れ騎兵隊が従っていた。その為、異民族は公孫賛を『白馬長史』と、そして彼女が率いる騎兵隊を『白馬義従』と呼び、恐れていた。
 公孫賛が挙げた武勲は董卓や孫堅に劣らないが、世間では二人ほどに評価されてはいなかった。
 それには理由がある。
 一つには、公孫賛に武勲を政治的地位に変える能力が欠けていたこと。そして、それを補う家臣も持っていなかった。
 もう一つは、中央に人脈がないこと。董卓は袁隗に、孫堅は袁紹や袁遺によって、その武勲が評価されたが、公孫賛はそうした人に恵まれていなかった。
 それが世間の評価に繋がり、更には使者の格に現れたといえる。
 もっとも、恭介や法正が描いている作戦において、公孫賛の役割は大きくはない。第一、彼女には異民族から国境を守るという役目があるのだ。それを放棄させる訳にはいかなかった
 よって書状にも、「共に挙兵し、董賊を討とう!」という勇ましい内容ではなく、「袁紹が挙兵する際は、これを援護し、国境を守護して欲しい」という要望しか書かれていなかった。
 公孫賛にはそれが不快であった。勿論彼女も異民族から国境を守る任務の重要性は理解している。だが、ここは世辞でも自分の力を借りたいと書くべきではないか? 
 それに国境を守り、袁紹の挙兵を援護したとして、そのような地味な功績を評価してくれるだろうか?
 公孫賛は使者を下がらせると、人を遣り、三人の人物を呼び出して、反董卓連合について意見を求めた。
「確かに董卓の専横は誰かが正さなければなりません。ですが、袁氏は勅命を受けた訳ではありません。これは私闘ではありませんか? であるならば、我々はどちらにも与せず、国境を守ることに徹するべきかと考えます」
 そう述べたのは左端に立つ男、弟の公孫越である。公孫越は目立つような才覚はないが、その実直さを姉から評価されていた。
「だが、お前の言う通り、誰かが董卓の行いを正さなければならんのだぞ。桃香はどう思う?」
「袁紹さんに賛成だよ。董卓って人のせいで、皆が苦しんでいるんでしょ。だったら、袁紹さんに協力するべきだよ。ううん、支援なんて言わず、寧ろ援軍を出すべきじゃないかな」
 中央の、桃香と呼ばれた公孫賛と同じ桃色の髪をした温和そうな女性が意見を述べる。
 彼女の名を劉備という。
 黄巾の乱の際に義勇兵を募り各地で賊を鎮圧したが、無名の士に朝廷の恩賞は薄く、兵を維持するのが難しく、旧友の公孫賛の下に身を寄せていた。
「兵を出そうにも都は遠い。とてもじゃないが、兵糧が足りない」
「……いや、兵糧は何とかなるんじゃないか?」
 公孫賛の言葉に、右端の男が口を開いた。
 彼は他の者とは明らかに違う出で立ちをしていた。何と表現するべきか、まるで「違う国、違う世界の装い」をしていた。年は十代から二十代の間といったところだろうか。
「国境の守りも大事だけど、このままここに篭っていたら、中央の連中は白蓮のことを評価しないかもしれない。少数でもいいから、連合に援軍を出すべきだと思う」
「だが、姉上が言うように兵糧の問題がある」
 公孫越が顔をしかめた。 
 幽州は土地が貧しい上、黄巾の乱の爪痕が残り、財政は決して豊かではなかった。
「桃香の軍を中心に少数精鋭で援軍を組めば、兌州までは兵糧も用意できるんじゃないかな。後は、連合を呼びかけている袁紹と袁遺に兵糧を提供してもらえばいい。袁氏は名門なんだろう? それ位の力はあるんじゃないのか?」
「……確かに、我々よりは豊かだろうが」
  公孫賛は腕を組んで考え込んだが、それも僅かな時間だった。
 このまま国境を警備しても、自分が評価されることはないだろう。彼女は過大な地位や名声を求めてはいないが、かといって働きが評価されないのも不満である。
「では、我々も連合に参加する。それも積極的にだ。本隊は動かせないが、桃香の軍を中心に軍を派遣したい。頼めるだろうか?」
「まかせといて。ね、ご主人様」
「ああ」
 ご主人様と呼ばれた男、北郷一刀は頷いた。 


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