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No.38166の一覧
[0] メガテン系オリジナル世界観風?(ネタ・習作・リハビリ)[navi](2013/07/31 19:08)
[1] 題名未定《序章・覚醒篇・1》[navi](2015/01/28 13:20)
[2] 題名未定《序章・覚醒篇・2》[navi](2014/12/27 01:59)
[3] 題名未定《序章・覚醒篇・3》[navi](2014/12/27 01:59)
[4] 題名未定《序章・覚醒篇・4》[navi](2015/01/02 21:19)
[5] 題名未定《序章・覚醒篇・5》 [navi](2015/01/07 05:44)
[6] 題名未定《序章・覚醒篇・6》 [navi](2015/01/14 06:37)
[7] 題名未定《序章・覚醒篇・7》 [navi](2015/01/28 13:29)
[8] 題名未定《序章・覚醒篇・8》 [navi](2015/01/28 13:22)
[9] 題名未定《序章・覚醒篇・9》 [navi](2016/03/28 07:39)
[10] 題名未定《序章・覚醒篇・10》 [navi](2016/01/08 01:18)
[11] 題名未定《序章・覚醒篇・11》 [navi](2016/03/28 07:40)
[12] 題名未定《序章・覚醒篇・12》 [navi](2017/08/15 17:49)
[13] 題名未定《序章・覚醒篇・13》[navi](2017/08/20 16:01)
[14] 題名未定《序章・覚醒篇・14》[navi](2017/08/24 18:31)
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[38166] 題名未定《序章・覚醒篇・14》
Name: navi◆279b3636 ID:0421d24b 前を表示する
Date: 2017/08/24 18:31
 大き目の市街には必ず異能者の集会場がある。そこを基点として周囲に目を光らせる。そうなれば自然と『そういった』人間に向けての商売が行われるのは当然であった。
 梓馬市の繁華街の雑踏にその店はある。雑居ビルの三階、薄暗い明りの中、塗装された骨組みだけで出来たような金属の階段を上がればそこにある。一見すればただのミリタリーショップにしか見えない。店名は『梓馬キャロル』、品揃えはマニア向けで初心者には優しくないが好みに嵌れば御用達だ。ネットも発達していない時代だから長い期間希少な品物もおかれていることもあった。今日はそんなところに似つかわしくない客を連れてきた、と湊は思う。スタイルは周りに比べて頭一つ良く、顔も良く、性格――は知る限りでは几帳面な『少女』、大凡鉄火場には向かないだろうが、異能者で湊の後輩とも言える。
 声をかけてきたのは店主だった。
「よう、少年。女連れデートならここは向かないぜ?」
「茶化さないでくださいよ」
 それほど長く付き合いがあるわけではないが、極めて親密な親友のよう。ラフに挨拶。とは言え、湊はここの店主に極めて礼を尽くしていた。武器、ボウガンの矢、その他幾つかの霊的消耗品はここでそろえている。生命線とも言えた。
 店主は『少女』を見て、問う。
「そっちの子は? 新顔だけど」
「故ありまして指導することになりましてね――、挨拶を」
 湊に言われ、『少女』は前に出て、一礼、
「始めまして、成田・秋乃と言います。至らないところがあるかもしれませんが宜しくお願いします」
 堅苦しい風情に、一瞬だけ苦笑いを店主は浮かべるが、すぐに何時もの人懐こい笑みを浮かべた。
「良いよ良いよーそんなに堅苦しくなくても」
「は、はい」
 言われても堅苦しさは抜けない。それを見て、湊は次を促す。このままでは次に進まない。
「それで店主、予想はつくと思いますが」
「子のこの装備ってことね」
「ええ、予算は百万程度で防御機能優先で、あとは別途に消耗品をお願いします。このリスト通り」
 叫んだのは秋乃だ、
「ひゃ、ひゃくまん!?」
「これくらい当然だ。命を張る以上使うものは良いものを使う」
「で、でも」
「黙れ、学生としての自分ならば手段として会話をするが、異能者としての私は悪いが現状において君の意見を取ることはない」
 とは言え、と頭髪を掻き揚げて、
「それでも気にするのなら、一人で仕事を出来るようになってその報酬で」
「わかった」
「なら良い――、失敬店主、話が途切れてしまい」
 いいさ、と店主は手を振った。
「青春の一幕、美味しゅう御座いました」
「止めてくださいよ」
 冗談さ、と店主。
「ほいじゃ商談の続きだ――、そちらのお嬢さん用の装備を百万前後、君用の消耗品の補充、リスト見せて――、フムフム、何時もより消耗が少ないね、あまり依頼をこなしてない?」
「諸事情で」
「珍しいこともあるね、槍でも降るかな?」
「魔王が降ってくるかもしれません」
「そりゃ怖い。精々的にならないように気をつけようかな――、うん、これくらいなら在庫で賄えるね、オーケー用意しよう。で、お嬢さんのほうは少し時間貰うけど問題はない?」
「命を失うよりは、時間を失ったほうがましですから」
「はいよ――、じゃあお嬢さん此方のほうに」
 店主が親指で店の奥を指差した。
 秋乃が不安そうに湊を見る。大丈夫だ、行け、と合図。少しだけ震え、意を決して進んでいく。
「ではお嬢さん、怖がらないで、大丈夫。俺は命を助ける手伝いはするが投げ捨てる手伝いはしない、そう決めてるんでね」
「だ、大丈夫です。宜しくお願いします」
「お任せお任せ」
 店主の軽口も、なかなか固くなった少女には通用しない。湊は頭を抱えた。こんなので大丈夫だろうか。これからは命を懸けて殺しあう、それも人間ではない、人間の理屈も通用しない悪魔たち。魔界より出でる伝説の存在と刃を合わせることとなるのだ。この程度で硬くなっているようでは先が思いやられる。今の店主には自分も軽い口調で頼む程度でなければいけない。
(いや、私が間違っているのかな)
 そんな反論も心で浮かぶ。自分が偶々巧くやっているだけで、何も知らない状況でワケの分からない異形と関わることになればこちらの方が正しい反応なのかもしれない。
 そんなことを考えている間に秋乃は店の奥に消えていった。
 湊は時間を持余したな、と思う。仕方なしに店内を見回した。なかなかに面白かった。考えてみればそれほど時間をかけて店内を見回したことがなかったことを湊は思い出した。それなりに広い店内を歩きながら観察する。コルト、S&W、ブローニング、キング、ルガー、店主がアメリカ推しと言うだけあり、米国産の物が多く並んでいる。一応グロックやH&Kなどもあるがブースの片隅に纏めて置かれているだけだ。後は軍用のコートや放出品が置かれている。まずいと高名な米国レーションMREがコレクション品として陳列していた。しかも型番は初期のものだからまずい上に食べれば健康的にもどうなるか分からない代物だ。面白そうだと湊は手取った。重量はそれほどない。
「食べてみたいな」
 MREの正式名称Meal, Ready-to-Eatだが、Meals, Rarely Edible (とても食べられたものじゃない食物)や、Materials Resembling Edibles (食べ物に似た何か)と揶揄された凄まじい一品だ。ここまで揶揄されているのを見ると逆に興味がわいてしまう。購入の欲に駆られるが、目を伏せて一度思想、そして元の場所に戻した。人に指導をしようとしている人間が、食べ物で腹を壊して戦えません、などとは馬鹿らしすぎて反吐が出る。
「銃か」
 湊は再度店内を見回した。装備の刷新をするべきか、と考える。今使っているのはボウガン、ドイツ製の値の張るものだ。過去のものとは違い、なかなかに連射の効く良い物だ。しかしそれを加味しても銃は魅力的に見えた。男だから、と言うのもある。しかし携帯性こそがその真の魅力だ。ボウガンは嵩張る、取り回しも良いとは胸を張っていえない。連射が効くとはいっても最初からマガジンに弾丸が装填されている銃よりははるかに遅い。無論銃の欠点も存在する。劣化、ジャム(弾詰まり)、定期的なメンテナンス、値段等が分かりやすい。更に言えば威力を求めるなら拳銃で足らなくなる。
「欲しいなぁ」
 それでもケースに並ぶ銃を見ると欲求が鎌首を上げてくる。多少は収入があるのだからそれを使って購入すればいい、と。しかしそれをすれば今の戦闘スタイルを変えなければならなくなるから、それが困りものだ。湊は己を器用なほうではないと理解していた。ようやく染み込んできた戦い方を変えれば、戦闘における打撃力は激減することが予測できた。其れは避けたかった。
「まだ、時間かかるかな」
 時間がかかっても良い、と言ったことを湊は少しばかり後悔した。



 秋乃が戻ってきたのは三時間後だった。
「似合うかな?」
 戻ってきて開口一番に、そう聞いてきた。
 湊は秋乃をみやる。アメリカ陸軍装備を基調に、霊的装備を幾つか持っている。
「まあ、似合うかな」
「そ、そう?」
 軍事装備が似合うと言うのも変な話だが。それでも似合っているといえるのは、一般的に秋乃が美少女と呼ばれるカテゴリに属されるからだろう。これが残念な顔面造詣なら――まあ、軍用なら似合うだろう。どこぞの微笑みデブも軍装は似合っていた
「君は両親に感謝するべきだ」
「え、と、そりゃ感謝はしてるけど」
「見目良く生んでくれたことを」
「~~!! 気障野郎!!」
 顔を真っ赤にしてはたいてくる。確かに少し気障な台詞だったかもしれない。
「それよりも元の服に戻してきてくれ」
「このまま行くんじゃないの?」
「其れは夜だ。その装備は一度別のところに預けておく……、まさかその格好で家に帰るわけにも行かないだろう」
「ん、わかった。あの、店主さん」
「分かってるさ、あ、これ持っていきな、装備を纏める袋ね」
 有難う御座います、と秋乃は言って再度店の奥に消えた。店主がいやな笑みで此方を見てくる。。
「どうか致しました?」
「いや、仏頂面な君もそれくらいの台詞は言えるんだな、とね」
「私も木石では御座いませんので」
 少なくとも美的感覚は一般人と変わらない。グロテスクなものはグロテスクだと感じるし、美しいものは美しい。
「そーいうことじゃないんだけど、そういうことでいいよ」
「……追求は無駄でしょうね、ではそういうことにしておいて下さい――、会計を」
「はいはい、――えっと、お嬢さんの装備と君の消耗品、合わせて126万9505円ね」
「思ったよりはいかなかったですね――、はい、これで」
「君の消耗品がそれほどじゃなかったからね、ひいふうみい……、あい確かに。じゃあ今後もご贔屓に」
「ええ、そうさせていただきましょう」
 秋乃が戻ってきたのはそれからまた二十分してからだった。
 湊は秋乃を呼び、店を出た。
「なんと言うかその、軽い感じの人だったな」
 階段を下りながら、秋乃は湊に言った。
「厳つく見えた?」
「うん」
「見た目は、うん確かにそう見えるな」
 見た目だけならヤクザかマフィアか――、実態は異能者相手に商売を行うとある意味それ以上に恐ろしい存在だが。
「秋乃、異能者をやるなら敵にしてはいけない人間って言うのが確かに居る。彼もその一人だ、残りは追々教えるが、あの人は怒らせるなよ」
「怒らせると?」
「簡単だ、あの人は武器や防具、消耗品を取り扱っている。それを購入できないとなると?」
「成程、首を絞められるのと同じか」
「ああそうだ。ネット上で装備に加護をかけるように他の異能者に頼むことも出来るが、しかし物品そのものを抑えられればどうにもならん」
「手足をもがれるのとどっちが酷いかな」
「どちらも換わらん、死ぬだけだ」
「物を買えなくなるだけで?」
「異能者になるということは方々から恨みを得るものだ。たとえ裏から足を退いても、何らかの危険視を受けて消されることもある」
「大げさ――、じゃないのか」
「こんなことで嘘はつかない、事実だ」
「怖いな」
「君も災難だ。こんなことに巻き込まれるなんてな」
「仕方ないよ、生きていればこういうこともある。それにあの夜私は死んでいたかもしれないんだ、それを思えばこれくらい」
「強いな、君は」
「そう?」
「人間は男も女も弱いと思う。ただその個人が強いことはあるだろう。今、君は前を向いている。後ろを向いて詰まらない文句を言わないだけ、君は強いと思うよ」
 湊の忌憚のない意見だった。秋乃は少しばかり恥ずかしそうに頬染め、爪で引っかいた。
 帰りは繁華街からずれた道を歩いた。異能者用の貸しロッカーが存在し、そこに購入した荷物を預けるためだ。異能者向けの店から一定の道に沿って歩くと結界が張られている。認識阻害の結界だ。一般の人間から装備を隠したり、後をつけられないようにするためのものだった。
「結構複雑な道を歩くんだな」
「ああ、そうしないと変に一般人を巻き込むことになる」
 湊と秋乃はその道を並びながら歩いている。秋乃の手には幾つか厚手の紙袋が抱えられていた。秋乃の装備だ。
「これを着て、今日戦うんだよね」
「ああ、そうだ。それが君の命綱でもある」
「戦えるかな?」
「不安?」
「うん」
「なら、それを大事にしたほうがいいよ。不安とか、そういうこと考えられないと早死にする」
「湊も不安なの?」
「――さあ、ね」
 湊は言う。己は悪魔をどう思っているのだろう。湊は思う。
「私は良く分からない」
「自分で言ったのに」
「又聞きさ」
「自分の言葉で言わないと」
「そうだな、でも、分からないよ」
「不安とか、怖いとか?」
「ああ」
 ねえ、と、秋乃が問うて来た。
「湊は何で戦うの?」
「私が、戦うのか?」
「うん」
 そんなこと、と言いかけてから、湊は気付いた。
 何故、己は戦うのだろうか、と。
 湊は少しばかり、めまいを覚えた。


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