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No.38166の一覧
[0] メガテン系オリジナル世界観風?(ネタ・習作・リハビリ)[navi](2013/07/31 19:08)
[1] 題名未定《序章・覚醒篇・1》[navi](2015/01/28 13:20)
[2] 題名未定《序章・覚醒篇・2》[navi](2014/12/27 01:59)
[3] 題名未定《序章・覚醒篇・3》[navi](2014/12/27 01:59)
[4] 題名未定《序章・覚醒篇・4》[navi](2015/01/02 21:19)
[5] 題名未定《序章・覚醒篇・5》 [navi](2015/01/07 05:44)
[6] 題名未定《序章・覚醒篇・6》 [navi](2015/01/14 06:37)
[7] 題名未定《序章・覚醒篇・7》 [navi](2015/01/28 13:29)
[8] 題名未定《序章・覚醒篇・8》 [navi](2015/01/28 13:22)
[9] 題名未定《序章・覚醒篇・9》 [navi](2016/03/28 07:39)
[10] 題名未定《序章・覚醒篇・10》 [navi](2016/01/08 01:18)
[11] 題名未定《序章・覚醒篇・11》 [navi](2016/03/28 07:40)
[12] 題名未定《序章・覚醒篇・12》 [navi](2017/08/15 17:49)
[13] 題名未定《序章・覚醒篇・13》[navi](2017/08/20 16:01)
[14] 題名未定《序章・覚醒篇・14》[navi](2017/08/24 18:31)
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[38166] 題名未定《序章・覚醒篇・13》
Name: navi◆279b3636 ID:0421d24b 前を表示する / 次を表示する
Date: 2017/08/20 16:01
 白い男がいる。威厳はない、威嚇もない。ただ自然のまま、そうであるように。
 しかし、纏うものは既に人間のそれではない。濃密で取り込まれそうな魔力が空間を支配している。
 湊は距離をとりながらも対峙する。
「いやはやもったいない。ここまで来て帰ってしまうのですか?」
「ヴァイス――、何時の間に――、いや、人間の尺度で考えるのが間違いか」
「賢明ですね、素晴らしい。そう、私が人の姿をしていようとも、それが人間であるかは別の話で御座います」
 わざとらしい、鼻につく恭しい一例。腹が立つことを感じながらも、それを心の底で抑えた。
「おっと、失礼お嬢さん、私としたことが紳士としては真摯にあらず、紳士的ではありませんでしたね」
「え、あ、その」
「お名前を聞かせていただいても宜しいですか? お嬢さん?」
「成田・秋乃、です」
「秋乃さん、ええ、良い響きですね、ええ」
 そんなやり取りを見つつ湊は腸が熱くなってきてることを感じた。からかっているのか、それとも真面目なのか図りかねる態度に苛立っている。この男は一体何をしに来たのか、こちらをからかいに来たのか。からかいに来たならば帰って欲しいと願う。今、『鍵』の力を使い、尚且つ女性の相手をして心身に疲労を感じている。このような状況でおふざけに付き合えるほど湊も人間が出来てはいない。故に疲労で巡りの悪くなり始めた頭を回し、思考する。とにかくヴァイスはどこかに行けばいいと考えて。
「それでヴァイス――さん、貴方は何をしに来たのですか? 鍵を返せ、と言うのなら――」
「あ、其れは貴方のものですので別にかまいませんよ? 私がここに来たのは、ええ、其れは少しばかり『会合』にて新しい取り決めが出来まして、ね」
「取り決め」
「ええ、そうです。今貴方に課せられている条件についてです。そう、他者に話すことを禁じているというそれね」
「――」
「それについてですが、少しばかり条件の変更が行われた為に貴方に伝えに来た次第なのですよ」
 其れは、
「今、貴方は貴方のおかれている状況を他者に話すことはできませんが……、それに対しての緩和措置が行われました。嬉しいですね? ええ、そうです。一定条件を満たした他者にのみそれを話してよいものとすることとなりました」
「そんなことよりも、このおかれている状況そのものを取りやめていただきたいのですがね」
「其れは無理です。だって始まってしまいましたし? ええ、フライングで私の出番を持っていったロートに思うところは御座いますが、とは言え我々にしてみれば堰の外れた水流を止めるなど出来ない話であり、これはしたがって純然たる運命なのですよ」
「勝手に巻き込まないで頂きたい」
「残念ながら運命とは蹴り飛ばされた小石のごときものでして、どこに跳ね返るか、それとも誰かに当たってしまうのか、それを理解するは神のみぞ知る、そう全てを理解しうる神が! まあ、それすらも運命のうちなのかもしれませんが」
「迷惑な」
「迷惑ではない運命などないのです。努めて運命とは面倒で迷惑、人間をこれでもかと振り回してしまうこの世において最悪のもの。まあ、言い訳としては使いやすいでしょう? そう! 何でも運命のせいにすれば宜しい! 己の不運も、不幸も、不利も! 何もかもが運命だから仕方ない! だから諦めましょう湊さん、だって貴方は傍迷惑な運命の奴隷! そう運命に弄ばれる人形なのです!」
 慇懃無礼な物言いに、抑えている怒りが噴出しそうになる。一度深呼吸をし、湊はヴァイスを見据える。
「結局のところ、貴方は何を伝えに来たのですか」
「むう、貴方が話を逸らしたように思うのですが、まあ、いいでしょう。ええ、ええ」
「前置きはもういいです」
「ああ、つれない。無駄を楽しめるのが人間の醍醐味だというのに……、ああ、いえ、失礼。人間の寿命を考慮するのを忘れておりました。命短し戦え人間、とはよく言ったもの」
 そんなことは世間にて言われていない、という突っ込みを湊は我慢する。
「では、お伝えしましょう会合の決定を。浅木・湊、貴方は極近しい者にのみ、己の使命を伝えることを許す。以上です」
 湊は絶句する。
「――」
「おうや? どうしました固まりまして」
「いや、いや――」
「ああ、都合が良いとお考えで? そりゃまあ都合が良いとは思いますが、ほら、ね? 元々無茶振り投げたのは此方ですしぃ? 少しくらいは温情ありでもいいんじゃない? 的話になりましてね? あ、ロートはぼろくそに反対してきたんですけど――、あ、これはどうでもいいですか? そうですか? まあ、要するに巻き込む人間を選びなさいネ? っていう話です。あ、一応言いますけど巻き込まれた側がほかに流すのはNGですからね? ほらクズノハとかヤタガラスとか教会とか出張られると面倒くさいですし」
 そこまでヴァイスは一気に捲くし立て、では、と。
「あ、すいません、そろそろ私もお暇しますね? どうせ私も、私の同僚も何れまた合間見える運命ですからね」
 言い切り、高笑いを浮かべる。大仰な手振り、そこから頭を下げて、
「では――Auf Wiedersehen. 御機嫌よう。何れ七つの王冠が世界を滅ぼす前に」



 嵐のように現れ、花が吹雪くようにヴァイスは現れ、さっていった。残されたのは異界と、そこに湊と秋乃だけだった。唖然とした表情を互いに見合わせ、状況を思う。それにしても、湊は思う。なんと言う疫病神だろうか。何をしたというのか、己が。そもそもロート(赤)にヴァイス(白)などとあからさまに偽名くさい名を名乗るあたり、信用が置けない。無論人智を超えた存在なのは明らかだ。ノルンの鍵をこともなげに渡してくる存在が通常の理屈に当てはめていい存在ではないだろう。
「あ、あの」
 秋乃が湊に触れる、恐る恐ると言う体で肩に少しばかりの感触。湊はどうした、と問う。
「彼は――?」
「強いて言わなくても、私の疫病神だ」
「疫病神?」
「まあ、今更隠し立てする必要もない、か。まあ、何だ、極めて不快な話だが今私はあいつ等、今は居なかったがロートと呼ばれる存在にゲームを仕掛けられてな、あの存在はそのロートの仲間のヴァイス、と言うらしい。明らかに偽名くさいが」
「それが秘密?」
「本当は集められるだけ集めて人海戦術を取りたいところだが、向こうはそれを許さないらしい。まあ、能力者が束になって当たれば難易度は下がるだろうしな。ゲームの難易度を簡単に下げるのは向こうの思うことではないのだろうよ」
「それで、そのゲームって?」
「人類――、は、言いすぎかな? まあ最低でも梓馬は滅亡する素敵ゲームだ、クソッタレめ」
「め、滅亡って……」
「あの阿呆共はな、ちょっとした手管を使ってこの地に今私たちが戦っているような雑魚悪魔とは比べ物にならない強大な悪魔、それこそなんだ、ルシファー? アスモデウス? それともアーリマンかアマツミカボシかテスカトリポカかは知らないが、とにかく強い悪魔を呼び出し、この世界では暴れさせる、とか言う傍迷惑な計画を立てているのだ。そして、私はそれに巻き込まれた」
「な、何だそれ!! 無茶苦茶だ!!」
「怒るな、むしろ私が怒鳴りつけたい――、が、其れは意味がない」
「そして、それが言えないことだった?」
「そうだ。初期の条件において、プレイヤーは私一人で、他の人間に言えばその時点で仕掛けが作動し、ここらは吹き飛んでいただろう。だが、何の心変わりか私に仲間をつけることを許すと……、いや、本当に何を考えているんだ。狂人の思考回路など理解できるはずもないとは言え」
 秋乃がムウ、とうなる。
「そうか……、湊、御免なさい」
「どうした、いきなり」
「事情を知らないとはいえ、迷惑をかけた」
「何だ、そんなことか」
「そんなことって――、下手すれば皆死んじゃっていたんだぞ!」
「ま、そうだな。しかし私はそうならないように動いていたし、そうなったら玉砕覚悟で如何にかした」
「玉砕って!? 馬鹿野郎!! そういうことを簡単に言うな! 死んじゃったら何も出来なくなるんだぞ!」
 そういって秋乃は湊の胸倉を掴み上げる。振りほどこうと思えば簡単に振りほどけるが、湊にはそれを行うことが出来なかった。
「お前に助けられた夜、私は心細くて、本当に死んじゃうような気持ちだった――、虐められて弱っていたのもあるし、理不尽を嘆いていたのもある。でも、あの怖い化物と戦って、そして生き残って、帰ってきて、私は心のそこから生きていて良かったって思ったんだ。生きて帰ったからそう思えたんだ、玉砕なんて、簡単に死んじゃうなんて口にするなよ……」
 支離滅裂、何を言っているのか当人ですら意味不明であろうが、言いたいことはなんとなくだが理解できた。
 湊は溜息をつく。
「分かった、すまなかった。確かに簡単に死ぬなどと口にするのは宜しくなかった」
「あ、ああ、うん。その、それならいい」
 湊の言葉で一拍子置いたからか、クールダウンした秋乃が己の言動を振り返って恥ずかしそうに頬を染めていた。何を今更、と湊は思うがそれを言うほど野暮でもない。むしろ湊の頭を占めていたのはこれからどうするか、と言う思考だけだった。一、このまま進む。リスクは大きいが実際のところ湊に残された時間は少ない。時間は敵ではないが味方でもない。二、一端帰宅し、準備を整える。あの良く分からない力を使う悪魔トウビョウとの戦いで湊はいささか消耗していた。トウビョウには然程梃子摺らなかったが、あの良く分からない空間の仕掛けを解除する為に使った力が湊の体力を大きく削った。体の芯に力が入らない気分だ。さてどうするか、と湊は思う。事実として急務ではあるが、時間が残されていないわけではない。焦りは禁物だが同時にゆるりと動いているだけの余裕も存在しない。
「湊?」
「ん? ああ、済まない考え事だ」
 その思考を現実に引き戻したのは秋乃の声だ。そして一度唸ってから、答えを出す。
「ま、それも済んだ。帰ろう、今日は」
 自分一人ならば問題はないが、今は秋乃が居る。ならば無理をするのはいけないだろう、と結論付ける。むしろ明日にもなれば敵が異界に沸いているだろうから戦いをレクチャーし、戦力として鍛えるのが良い。彼女は魔法主体だったはずで、それをどの方向に導くかも考えなくてはならない。後は戦いに際しては自衛する手段を教えるのも必須だ。魔法が使えなくなったならば近接で戦えなければ何の意味もない。
 何より、今の秋乃の装備は貧弱だ。女性用ブレザーに無手と言う、餌にしかなれない状態でここにたっているのは極めてまずい。
「秋乃の装備も考える必要があるし、武器も必須だ。今のまま戦えば実際問題として秋乃はお荷物だ。言っておくが前回の戦いは幸運に幸運で、死んでも可笑しくないどころか死ななかったのが不思議なくらいだ」
「う、まあ、そうか……」
「何より錬度が足らん。まあ、明日にてみっちり仕込んでやるから覚悟するといい。悪いが私は私のやり方しか知らないし、それを曲げるつもりもない」
「望むところだ」
 強い瞳で秋乃は湊を見据えた。いい根性だ。期待が出来る。
「そうか、では帰ろう。かえってゆっくり体を休めて、明日に備える。それが今の最善だとも」
「分かった。経験者の言葉だもの、従うよ」
 秋乃の頷きに、湊は頷きで返す。



「はい、ただいま皆さんヴァイスさんただいま戻りましたよー」
 広めの部屋がある。ざっと見れば二十人くらい収容できるバーの雰囲気だ。薄暗い明かりと、酒のボトルが並んだカウンター、古めかしいレコードプレイヤーは一枚のレコードを回し、音楽を一つ流していた。ジャズだ、軽快なサックスが旋律を奏でている。
 ヴァイスの帰還を迎えたのは三人の男だった。一人はロート、一人は無精髭が目だつ黒人で黒いスーツに黒いワイシャツ、黒いネクタイをつけた黒い男、一人は青い男、蒼白な肌青いスーツ青いワイシャツ青いネクタイ、ひたすらに青い男。声をかけたのは黒い男だ。
「よう駆けつけ一杯」
 琥珀色の液体が満たされたグラスを掲げた。酒精の匂いが周囲に振り撒かれた。
「ああ、有難う御座いますシュヴァルツ、とは言え酒は後にしましょう――、ロート貴方も何時まで不貞腐れているんですか? 会合で決まったことでしょうに」
 別に、とかぶりを振ったのはロートだ。言葉とは裏腹に不平不満を隠しきれて居ない。
「そもそも貴方が独断でことを行ったから悪いのでしょう? 何故それを指摘されて怒るのですか」
「五月蝿え、そういう風に出来ているんだ。性だ、そういう性質だ」
 舌打ちで応えてからロートが言い放つ。湊に見せていた面はどこにもない。粗暴な一面だけが現れている。
「まーったく、彼もそんなんじゃいい迷惑ですよ。まあ、私も貴方の見識を疑うとは言いませんがね、だからと言ってそのような態度では」
「黙れよ、殺すぞ」
 一触即発の雰囲気が部屋を支配する。苛立つロート、冷徹な目のヴァイス。シュヴァルツは煽る。
 それを止めたのは青い男だ。
「そこまでだ双方」
 低い、しかしよく通る声がヴァイスとロートを沈静させた。
「……失礼、頭に上っていました」
「まあ、先走ったのは俺だ、ここで納めてやる」
 増上慢な態度のロートだが、言葉に勢いはない。
 それを見て青い男は言う。
「我々が成さなければならないことは一つに集約される。それまで空中分解は許されない。いいな?」
 三人が肯定。青い男は頷いき、それからヴァイスに問う。
「首尾のほうは?」
「問題ありません。まあ、割りと嫌そうでしたが投げ出すことはしないでしょう。責任感と言うよりは投げ出せない性格とでも言いますか?」
「そうか、試練がつつがなく遂行されるのならばそれで問題ない。駄目だったら――、其れは後の話。今どうこう言うものでもない。まあ、今回の試験が終わり、我々が真の試練を与えるに値すると思えたならば――、その時は全力でやろう」
 その言葉に、それぞれが声を上げた。
「ま、意義はありませんよ」
「俺の見つけた人間だ、この程度こなすに決まっているだろう」
「さあ、どうだろうね? ま、この程度ならクリアすることを祈っているよ」
 青い男が頷く。その瞳は青を湛えている。青い、海のそこのような青の瞳。
 その瞳がどこか憂いを持ちながら、しかし、どこか期待しているのを隠し切れなかった。


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