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No.38014の一覧
[0] 【一発ネタ】碇シンジ(29)と葛城ミサト(14)のエヴァンゲリオン[コモド](2013/07/07 11:37)
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[38014] 【一発ネタ】碇シンジ(29)と葛城ミサト(14)のエヴァンゲリオン
Name: コモド◆82fdf01d ID:939af992
Date: 2013/07/07 11:37

 蜃気楼に並び立つビル群が揺らぐ、暑い日の午後だった。
 特別非常事態宣言が発令され、電話も通じない。
 見知らぬ土地に取り残された葛城ミサトは、大きく肩を落とした。

「ダメかー。待ち合わせの人も来ないし、どうしたらいいのかしら」

 腰に届く藍色の髪が揺れる。手紙とともに届けられた水色の女性服の下には、十四歳の割に早熟な肢体が隠されていた。
 手紙に同封されていた写真を取り出す。清潔感漂う容姿の男性が写っていた。一目に高級とわかる外車に寄りかかって気障なポーズを取る様子は、どこかぎこちない。
 本人は控えめなのだろう気性が伝わってきていた。有難いことに、彼が迎えに行くとまで書いてある。
しかし、目当ての男性は現れなかった。透き通る紺青の空を見上げる。入道雲が空に立っていた。

「きゃあっ!?」

 見上げた空に戦闘機が映り込む。空気を轟かす爆発音が全身を揺るがした。ミサイルが飛び交い、奇怪な巨大生物が街中に現れる。

「な、何よこれぇ!?」

 頭を抱え、戸惑い叫ぶミサトの眼前に戦闘機が墜落した。巨大な脚が踏み砕き、爆発が届く――直前に、一台の車がミサトの前に滑り込んだ。
 ドアが開く。

「葛城ミサトちゃんだね? 乗って!」

 考える暇などなく、助かるためには乗るしかなかった。



爆発と同時に覆い被せられたときは、流石に戸惑いも忘れて赤面した。
 長身痩躯に見える男性の胸は意外に逞しかった。二転三転どころか数百メートルは転がった高級車は凸凹で、経費で落ちるのかな、と益体もないことを青年はボヤいていた。
 名前を碇シンジと言った。

「これからどこに行くんですか?」
「これを読めばわかるよ」

 手渡された書類には『ようこそNERV江』とパンフレットのような文面が書かれていた。
 実際、パンフレットだった。

「……これが、父の?」
「手紙、見た?」
「……十年前の遺書で呼びつけるって、おかしくないですか?」

 ミサトの疑問にシンジが苦笑した。達筆で認められた封書には、生前の葛城博士が遺した言葉が書き綴られていた。
 他人のシンジには、その内容を推し量るしかできないが、十四歳の少女が単身、上京する理由としては奇妙と言う他ない。
 地下へと向かう通路の流れてゆく景色の中で、倍も年の離れた男女が車内で隣り合う。
 父親の遺書で呼び出された第3新東京市、そこで山稜の向こうから現れた謎の巨大生物、聞いたこともない組織へと下る道程という唐突極まりない状況で、ミサトは冷静だった。
 冷めていると言い換えてもいい。思春期を迎えた少年少女が、斜に構えるのとはまた違う反応にも、シンジは平静に言った。

「上京には、お母さんはなんて言ってた?」
「反対はしてましたけど、形だけで……半ば諦めてる感じはありました」
「お母さんは、好き?」
「何でそんなこと言わなきゃいけないんですか」

 赤裸々な胸の内を初対面の男性に語るほど恥ずかしいこともない。ツン、とシンジとは反対の窓の外を眺め、間を置いて話をかえる。

「父さんは、ここで働いていたんですか?」
「僕がここに勤める前まではね。亡くなった僕の両親の同僚だった」

 ミサトは押し黙った。親がいないことは、珍しいことではない。
 十五年前に世界を襲った未曾有の大災害――セカンドインパクトによって生まれた孤児は、膨大な数に及ぶ。
 ただ、あっさりとそれを口にすることに驚いただけ。父と知り合いだったことにも。
 知らず、シンジを見ていた。目が合う。慌てて視線を逸らすと、また質問を投げかけられた。

「お父さんは、嫌い?」
「……わたしが四歳のときに亡くなってるんですよ? 嫌いも何も、憶えてないです。でも……お母さんに苦労をかけたという意味では、嫌いかもしれません」
「そう。僕もだよ」

 もう一度、視線を戻すと、シンジはミサトを見ていなかった。ジオフロントが、景色を一変させた。



「時間ピッタリ。相変わらず几帳面ね」
「緊急事態なんだ。当然だろ」

 シンジ曰く、『秘密基地』の入り組んだ通路の先に白衣の女性が佇んでいた。
 茶髪に性格がきつそうな顔立ちの美人で、理知的な内面が口調から滲み出ていた。
 シンジとの親しげな会話からは、年季を感じさせる軽やかな雰囲気がある。ひょっとしたら恋人なのだろうか。
 勘繰るミサトに女性の目が向けられる。肩が浮いた。

「そのコが例のサードチルドレンね」
「うん。ミサトちゃん、紹介するよ。こちら、赤木リツコ博士。技術一課のE計画担当者で、この基地の副司令だ」
「は、はじめまして」
「よろしくね、ミサト」

(E計画ってなに? それにサードチルドレンって……?)

 不信感に眉を潜めながらも、悪の組織のような内部に目が止まらない。基地というよりも結社ではないか。
 否応なしに高揚する気分に足が前に出る。
 ――この時、ミサトは、もっと深く考えるべきだった。父の仕事と遺書の父の記した言葉の意味を。
 亡くなった父の職場が、全く関係のない彼女を呼び出した理由を。父の遺産が彼女に渡される、それだけで終わるはずがないとは、発ったときには気づいていたのに。

『総員第一種戦闘配置! 繰り返す、第一種戦闘配置! 対地迎撃戦用意、初号機起動準備』

 不安を呼び起こす警報が絶えず響いている。薄明かりしか灯っていない水上をボートが走っている。
 前に座るシンジに話しかけた。

「あの、初号機ってなんですか?」
「すぐにわかるよ」

 暗くても、その端正な横顔が険しくなっていることに気づくのは、訳はなかった。柔和で、温厚な青年の面影は既にない。
 男の人の印象は、時にこんなにも変わるものかと、胸がざわついた。

「ここよ」

 灯りがつく。やおら目に飛び込んできたのは、巨大な鬼の頭部だった。

「ひゃっ」

 違う。悲鳴を上げたミサトが、まじまじと見る。それはロボットの顔だ。紫で統一された、悪役が乗るロボットのような禍々しいデザインの。
 周囲を見渡した。ケージの浮き橋は狭く、腰を抜かしていれば水の中に落ちていた。退路がない。

「人型汎用決戦兵器、人造人間エヴァンゲリオン。これはその初号機。我々人類の最後の切り札よ」
「これが、父の……?」
「そうだ」

 降ってきた声に顔を上げる。初老の男性が三人を見下ろしていた。

「誰?」
「冬月司令。ここの最高司令官よ」
「久しぶり、と言うべきか。葛城の忘れ形見。君にはこれから、初号機に乗ってもらう」
「は?」

 呆然とした声が口をつく。開いた口が塞がらない。素人の小娘に何を言い出すんだ、この老人は。

「な、何の冗談? わたし、訓練も説明も受けたことないのに」
「これから受けてもらう。そして、先ほどの敵、『使徒』と戦うのだ」
「ふ――ふざけんじゃないわよ! 何でわたしなの? あなたたちが乗って戦えばいいじゃない!」
「あなたしかいないのよ。エヴァに乗れる適正を持った人間は」

 リツコが厳然と補足した。ミサトは身振りも遮二無二、喚き散らすように叫んだ。

「何でそんなことわかるのよ! わたし、戦いも何も知らないのに! 普通に暮らしてたのに、十年も前の父の遺書で呼び出されて、わけわからない場所に連れ込まれたと思ったら、いきなり戦えって……」
「時間がないわ。こっちへ」
「嫌よ! あなたたち、自分の言ってることわかってる!? 自分の半分も生きてない子どもを戦場に送り込む気なの!? 死ねって言ってるようなものじゃない!」
「……君が行かなければ、人類が絶滅する。それでもかね?」

 卑怯極まりない質問だとミサトは糾弾したかった。自分の命と人類の命を秤にかけろ、と大人が十四歳の子どもに言ったのだ。
 退路の絶たれた、孤立無援の土地で。ミサトは救いを求めるようにシンジを見た。

「乗るんだ、ミサトちゃん。これは、君のお父さんが、君を乗せる為に造った。君が乗って、戦うんだ」

 シンジの言葉も、視線も厳しかった。足が竦む。優しく、気さくな青年の面影は残っていなかった。

「君が乗らなければ、世界中の人間が死ぬ。僕も、ここにいる全員も、君のお母さんも」
「……」

 母子家庭のミサトに母の存在は重かった。自分勝手な父に振り回され、気づいたら死んでいた父の所為で、母は多大な負担を背負わされた。
 置いてきた母を想うと、胸が痛む。ミサトは毅然と睨み返した。

「乗るわよ……乗ればいいんでしょう! どっちにしろ死ぬなら、足掻いてから死んでやるわよ!」

 答えた瞬間にシンジが申し訳なさそうに微笑んだのが、最後まで印象に残っている。
 血の味がする、不味いLCLを飲んで、敵の前に出されて、為す術もなくやられた。
 そこから先のことは憶えてない。知らない天井が広がっていた。



「じゃ、僕とミサトちゃん、一緒に住むことになったから。あとの処理よろしくね」
『……あなた、ロリコン? 問題を起こしてからじゃ遅いのよ?』
「ちょっとは信用してよ!」

 電話口で怒鳴るシンジを、ミサトは他人ごとのように眺めていた。どうしてこんな事態になったのか。
 一人暮らしを言い渡されたとき、焼けっぷちになって憎まれ口を吐き捨てたからだろうか。
 病院内を歩き回っていたら、シンジが自分の病室より先に青い髪の、自分と同い年くらいの少女の元を訪れていたのを見つけて、皮肉を吐いたからか。
 半ば怒っていたシンジの強硬により、ミサトはシンジと同居することになった。
 片や二十九歳の男と十四歳の少女。互いに見ず知らずで、職場の上司と部下。名目上の保護者としても無理がある関係だ。

「今日はごちそうするよ。なにか食べたいものある?」
「……ビールとか?」
「ダメに決まってるじゃないか。ミサトちゃんは未成年でしょ」

 未成年の女の子を戦場に送り込んだのは誰だ。スーパーに向かう車内で、心のなかで盛大に罵る。
 今でも腕を握りつぶされ、眼を抉られた痛みを鮮明に思い出せる。安全な場所で命令するだけだったくせに、正論だけは吐くとか、何様のつもりだ。

「そうだ。家に帰る前に、ミサトちゃんに見せたいものがあったんだ」

 思い出したような口ぶりで、ハンドルを切った。車は第3新東京市を一望できる高台だった。
 山稜の奥から差し込む夕陽に山吹色に染まる町並みは味気なく、風景としてはつまらなかあった。

「わたし、観光して感動する婆臭い趣味ないわよ」

 厭味ったらしく言うと、シンジは苦笑して時計を見た。顔を上げる。
 視線の先には、新たな景色が生まれていた。

「ビルが……」

 忘我と呟いた。地下から新芽が芽吹いたかのように姿を現す高層ビル群。沈みゆく夕陽の橙色に染まる町並みは、大都会そのもので、ミサトには計り知れないほどに大きかった。

「これを見せたかったんだ。第3新東京市……君が守った街で、これから君が住んで、これから、君が守る街」
「……わたしは、そんなつもりで戦ったんじゃ――」
「それでも、僕たちが生きているのは、君のおかげだ。大の大人が、自分の半分も生きていない子どもにかける言葉じゃないけど、それでも言わせて。
 ありがとう」

 夢じゃなかった。あの痛みも、葛藤も、戦いも。理不尽な命令と勝手に背負わされた使命に急かされて、誰もいない病室で目が醒めた。
 感謝されて然りだし、それ以上の恩賞もされて当然の行動だった。でも、自覚がない。
 救った覚えも、褒められた精神性もないけど、彼の気持ちは本物だった。
 ミサトは、言いそびれた言葉を発した。

「……卑怯者」





嘘予告
シンジに父、兄、恋人の姿を重ね、依存するミサト。
シンジに懐く謎の少女、綾波レイ。嫉妬にかられる心。
元恋人だという赤木リツコ。彼らの過去に何があったのか。
来日する惣流・アスカ・ラングレー。友達とも家族とも言えないライバル。
愛憎渦巻く選ばれし子どもたち。もっとドロドロした選ばれなかった大人たち。
大人になれなかった子どもたちは、補完される計画の中で何を知るのか。
さーて、次回もサービスサービスぅ!





あとがき
元ネタは某スレから。
溢れ出る犯罪臭に妄想を堪えることができなかった。
本当は旧設定エヴァンゲリオンとか書きたかったんですが、資料からラストが想像つかないので諦めてこれに。
書くとしても本編以上にドロドロするので投げて一発ネタに。
誰か書いてくださいm(__)m


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