「先生、俺、もっと強くなりたいんですよね」
「無人機が当たり前になった時代に何よ、いきなり。だいたい、もう十分人外って言えるくらい強いんだから、これ以上強くなっても大して変わらない気がするけどね」
「そうでもありませんよ。今回よりも、一人多くの人を助けられるかもしれません。
ひょっとしたら、その一人が別の一人を救えるかもしれない。もしかしたら、その別の一人がまた別の一人を助けて……」
「その連鎖が続くってわけ? お優しいわね。そうまでして人を救って、あんたに何のメリットがあるのよ」
「ひょっとしたら、今度こそあいつらは死ななくて済むかもしれません。俺じゃない誰かが、あいつらを守れるようになるかもしれません。
ひょっとしたら、それがきっかけで、その誰かと幸せになれるかもしれない」
「……」
「でもこれ以上強くなるには、上手く言えないんですけど、壁みたいなものを壊さないといけない気がするんですよね。限界を超える、と言えば良いんですかね」
「あんたは、それで良いの?」
「何がですか?」
「何度も何度も死ぬ思いをして、限界を超えて、そうまでして強くなって守った女が、他の誰かの横で笑っていても、良いというの?」
「はい」
「……っ! あんた、頭おかしいんじゃないの! どこまで人が良いのよ、あんたは!!」
「それは違いますよ、先生。俺だって、出来ればあいつらに傍にいてほしいと思います。でも、それは無理だ。俺は戦い続けないといけない。でないと、人類は滅んでしまう。
でもそんな俺の傍にいたら、あいつらは死んでしまう。今回のように、これまでのように、これからもそうであるかもしれないように」
「だからと言って……!」
「俺はね、先生。あいつらに幸せになってもらいたいんですよ。そのためにこれまで戦ってきたんです。そのためだけに戦い続けるんです。これから先も、ずっとずっと」
「……先生? ……泣いているんですか?」