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No.37177の一覧
[0] 【習作】ソードアート・オンライン DEBAN EDITION #01[秋吉台](2013/05/07 00:12)
[1] #02[秋吉台](2013/04/06 20:28)
[2] #03[秋吉台](2013/05/06 23:46)
[3] #04[秋吉台](2013/05/11 18:47)
[4] #05[秋吉台](2014/02/13 01:51)
[5] #06[秋吉台](2013/06/01 07:49)
[6] #07[秋吉台](2013/08/04 21:42)
[7] #08[秋吉台](2013/08/25 22:30)
[8] #09[秋吉台](2014/01/08 03:13)
[9] #10[秋吉台](2014/02/13 01:50)
[10] #11[秋吉台](2015/03/04 08:12)
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[37177] 【習作】ソードアート・オンライン DEBAN EDITION #01
Name: 秋吉台◆ce53145c ID:befbd824 次を表示する
Date: 2013/05/07 00:12
ソードアート・オンライン二次創作ものです。

以下注意事項です。
・ヒロインはDEBANさんことシリカ/綾野珪子
・Web版要素含みます
・DEBANさん的に難易度ルナティックなSAOです
・キャラ崩壊します
・独自解釈、オリジナル武具、オリジナルキャラ、こじつけ等多数含みます
・予定としてはALO編まで

SS初挑戦で至らないことも多々あるでしょうが、何卒ご容赦をば。























「キリトさん……行っちゃうんですか……?」

 少女の口からぽつりと漏れ出た言葉がキリトの耳朶を打つ。言葉通り行ってしまうのだろうという諦念と、或いは留まってくれるかもしれないという一縷の希望とがないまぜになったような、そんな声音。

 ――きっとこれは、自分にとっての初恋とやらなのだ。

 少女は――シリカはそんな確信を持ちながら、祈るような気持ちでキリトを見つめていた。

 現実世界ではませた友人が、恋だの愛だの、好いた惚れただのとやたらと盛り上がっていた記憶がある。シリカとしても興味がなかったわけではないが、自身の身に即してみるとどうにも実感がわかず、どこか他人事のように聞き流していた。この世界に来てからは、13歳である自分よりもずっと年上のプレイヤーに言い寄られもしたが、そんなのは恐怖でしかなかったし、以来男性プレイヤー自体を忌避してきたきらいさえある。

 しかし、そんな中現れたのがキリトだった。出会いは鮮烈にして強烈。大事な友達であるフェザーリドラの使い魔・ピナを失い、己が命さえも儚く消えゆこうとしていた時に颯爽と現れ、雷鳴の如き剣撃で敵を打ち滅ぼし、自分を助けてくれた剣士。生憎と白馬どころか、真逆の真っ黒尽くしなのが玉に瑕だが、女の子なら誰もが夢見るシチュエーションだ。当初警戒していた自分を邪険に扱うこともなく、それどころか他の男性と違って一切の下心なしに親身になって接してくれた。これでは夢見がちな時分のシリカに好きになるな、と言ったところでそんなの不可能だろう。

 キリトとしても、留まりたくないというわけではない。むしろ、キリトの本心はシリカの傍にいることを主張していた。容姿自体はあまり似てはいないというのに、その所作がどことなく妹を彷彿とさせる彼女のことを放ってはおけない気もするし、幼い割にこちらの気持ちを慮って優しい言葉をかけてくれる聡明さをもつ彼女の隣にいられたらさぞ居心地はいいことだろう――頭に浮かんだそんな考えを、しかしキリトは許されないことと即座に否定した。今回こそシリカを救うことが出来たが、本来ビーターであるがゆえに、他人からの悪感情を招きかねない自身が近くにいては、要らぬ厄介ごとを巻き起こすのが関の山だろうし――何より今更どの面下げて他人にすがろうというのだろうか。

 ナーヴギア使用のVRMMORPGソードアート・オンラインが・ゲームと化したのは今からおよそ一年前のこと。今でもキリトは鮮明に覚えている。我が身可愛さに、はじまりの町のプレイヤー達を、友人であるクラインを見捨てたあの日のことを。レベルを偽って加入したギルド・月夜の黒猫団を見殺しにして壊滅させてしまったあの日のことを。守ると約束した少女を死なせてしまったあの日のことを。キリトは忘れることなく悔い続けている。

 贖う術などないはずだった。死して然るべき身であった。それでもキリトが今尚生きているのは、守ると約束しながらも守れなかった『彼女』の言葉があったからだ。

 ――もし私が死んでも、キリトはがんばって生きてね。

 この言葉はキリトにとって呪いとなり、救いとなった。そして決して消えない傷となり、生きる意味となってからは、キリトは立ち止まることをやめた。
生きること。生きて、この世界を終わらせること。キリトが『彼女』に立てたこの誓いは、自己満足に過ぎないのかもしれない。だが、たとえ一方的なものであろうと、今度こそ『彼女』との約束を破るわけにはいかないのだから。

「……ごめん、行かなきゃ」

 だから、キリトは暫くの間の後、シリカの問いに首を振った。

 瞬間的に、やだ! と子供じみた我儘が口から漏れ出そうになったシリカは、無理矢理にその言葉を飲み込んだ。ぎこちない笑顔を浮かべて強がってみせるが、その程度のことはキリトも察しているらしく、どことなく悲痛な表情でシリカを見つめていた。

「そ、そうですよね! だってキリトさん、あんなに強いんですもん! きっとみんなのために攻略進めなきゃいけないんですよね!」

「シリカ……」

「しかも、あたしとか、シルバーフラグスってギルドとか、攻略で忙しいのに助けてくれるし!」

「シリカ」

「攻略組でも大活躍なんですよね! それに比べてあたしなんて、たかだか中層で冒険気取りなんてして――ちょっとちやほやされて舞い上がって――それで――」

 ――大事な友達を、失いかけた。

「……あたしのレベルが高ければ……もっと強ければ……もっとしっかりしていれば……」

 大事な友達を失いかけることはなかったのだろう。キリトの後ろで守られるのではなく、隣に並び立つことが出来たのだろう。口には出さなかったが、そんな願望にも似た予想がシリカの心を押し潰す。

 急に声のトーンを落とし、俯いて肩を震わせるシリカの肩を、キリトの両腕がふわりと優しく抱いた。その暖かさにシリカは思わず抱き付きたくなってしまうが、すんでのところで堪える。ここで甘えてしまっては、きっといつまでも弱いままになってしまう――そんな気がしたから。

「……シリカ、レベルなんてただの数字だし、この世界での強さなんて単なる幻想に過ぎない。そんなものよりもっと大事なものがあるんだ。そして君は――ピナのために涙を流せる優しい君は、それを持っている。だから君は、きっと強くなれる」

 頭上からの優しい声に、シリカはぱっと顔を上げた。すぐ近くには穏やかな微笑みを浮かべたキリトの顔があった――少し背を伸ばせば、キスさえ出来てしまいそうな距離。
 そのことを認識したシリカの心臓がどきりと跳ねる。しかし、まるで熱病に罹ってしまったかのような熱と同時に、言いようのない暖かさが胸中に広がった。似て非なる二つの熱。暴れだしそうな胸の高鳴りは、心に広がった暖かさにじんわりと抑えられていった。

「……はい。きっと――きっと」

 ――きっと強くなって、いつかはあなたと一緒に。

 その言葉は言わなかった。その誓いはただ一人、シリカの胸の中に閉じ込めておけば良いのだ。その『いつか』が来る、その時まで。

「さ、ピナを呼び戻してあげよう」

「はい!」

 シリカは大きく頷き、≪ピナのこころ≫と≪プネウマの花≫をオブジェクト化させた。今打ち立てた誓いを守る前に、まずは頼もしきパートナーにここ数日の大冒険のお話をしよう、と心に決めながら――







 ピナを≪プネウマの花≫で蘇生させた後、35層を後にするキリトを転移門で見送ったシリカは、ホームとしている8層のフリーベンではなく、再び風見鶏亭へと舞い戻ってきた。思いのままに存分にピナにキリトのことを語りつくした後、ふわふわと肩口で飛んでいるピナを一撫でして、ベッドにうつ伏せに体を投げ出す。因みに、シリカは一度前日まで逗留していた部屋を引き払って、キリトの面影を感じ取れるような気がして、との理由で昨日キリトが使用していた部屋を借りるという非建設的なことをしていたが、そこはそれ、恋する乙女は損得度外視なのである。

「はぁ……行っちゃったな、キリトさん……」

 自分も納得してのことだが、そうは言ってもやはり未練は残る。なんとなく枕に顔を押し付けてすうっと息を大きく吸い込んだところで、シリカは自分のやっていることを認識して思わず顔が赤くなった。

「ち、違うの! キリトさんの匂いがしないかなぁ、とかじゃなくて……! そそそ、そんなんじゃないの!」

「きゅるぅ?」

 自分とピナ以外に誰がいるわけでもないのに、慌てて取り繕うシリカ。ピナは部屋にあるテーブルに着地すると、一声鳴いて小首を傾げた。使い魔のAIはさほど高級でないと聞くが、こういう動作を見ると、シリカにはピナがAIで動くプログラムどころか本物の生き物に見えてくる。

 そんなことを考えて冷静になってみると、そもそも前日は自分がベッドで寝ていたことを思い出した。というより、ゲームであるこの世界に残り香云々の設定があるのかどうかすらわからない。武器やら防具やらにはやたらと凝っているくせに、食べ物は劣悪というアインクラッドの現状を鑑みるに、この世界の創造者たる茅場はそこらへんに頓着がないらしい。

「……ざ、残念とか思ってないからね!!」

 テーブルで羽を休める相方に念押しをしておいた。それを理解したのかはわからないが、今度はピナも「きゅるぅ!」と元気よく返事をしてくれたので良しとする。そっと手を伸ばしてペールブルーの羽を優しく撫で、シリカは再びぼすん、と枕に頭を落とした。

「……でも、やっぱり会いたいなぁ……」

 今しがた別れたばかりだというのに、もう既にそんな言葉が口の端から漏れ出ていた。しかし、そう立ち止まってばかりもいられない。キリトに歩み寄ってもらって庇護されるのではなく、シリカがその背中に追いついて――あわよくば隣に立って――やろうと誓ったのだ。キリトと過ごした僅かな時間を後生大事に抱えているだけでは、到底叶いやしない。

78と45。キリトとシリカのレベルだ。現在キリトが活躍している最前線に行けば、シリカなどボスどころかモブにも瞬殺されてしまうだろう。レベル差は実に33。SAOが始まって暫くははじまりの街に閉じこもっていたとはいえ、一年以上かけて積み上げてきた自らのレベルの3分の2もあるその差を、シリカは埋めなければならないのだ。

「……出来るのかな、あたしに……?」

 残酷なまでに明確な、キリトとシリカを隔てる壁を再認識し、思わずそんな弱音が口をついて出た。もう手遅れなのでは、という諦めが一瞬頭をよぎり、慌ててシリカはかぶりを振って振り払う。

 ――まだこの恋は始まったばっかり。こんなことで諦めてどうするの、あたし!

 自らを叱咤し、キリトに追いつくという夢物語を実現せしめんとの意思を掻き立て、頭の中で現実的なプランを立て始めた。

 目標とするキリトとは雲泥の差であるとは言え、シリカとて中層クラスではそれなりの実力者だ。小柄なシリカの体躯を最も活かせる短剣スキルは七割近くマスターしているし、ピナのアシストも十分心強い。それに慢心してピナを死なせてしまったわけだが、かといって自己を過小評価するのも悪手だ。自信過剰にだけは二度となるまい、と自身を強く戒めて、戦力分析を続けていく。

 重要なのは、キリトに追いつくための鍵だ――考察を続けた結果、シリカはその結論に至った。自分がどれだけレベルを上げようと、キリトだって並行してレベルを上げていくのだ。むしろあちらが攻略組で、レベルがダイレクトに生命に直結する分、シリカよりレベリングのペースは早いと考えた方が妥当だろう。そうなると追いつけないように感ぜられるが、所詮はアキレスと亀の逸話のようなもの。レベルは高くなるにつれて上げにくくなるというのがRPGの定石もあることだし、いつかは追いつくことは可能だろう。

しかし、それでは遅いのだ。

 シリカは目を閉じ、瞼の裏にキリトの姿を思い浮かべる。自分を助けてくれたときの凛々しい顔、柔らかに笑う顔、あどけなく寝ている顔、ゲームクリアのために攻略へと向かうときの勇ましい顔――それらが全て、他の女性プレイヤーに向けられたとしたら。

 ――駄目だろう、これは。

 間髪入れずに結論が出た。これは無理だ。あんなに素敵な人に優しくされてしまえば、自分以外の女性もきっと惹かれてしまう。経験者たる自分がそう確信しているのだ。間違いはない。
 そしてキリトは、恐らくそんな優しさを振りまいてしまうのだ。時々彼が漏らした悔恨の言葉、それを鑑みるに十中八九間違いない。贖罪のつもりなのかはわからないが、キリトはきっと儚く散ってしまいそうな命を助け続ける、とシリカは確信していた。それに、キリトのもともとの心性も基本的にはお人好しなのだろう。困っている人を見捨てられるような性質ではないはずだ。だとすれば、考えられる結末はひとつ――修羅場、だ。

 ちょっと想像して、すぐさまシリカは焦燥感に駆られた。方や初恋にドギマギしっぱなしの自分。華奢で人形のよう、と褒められるが、シリカ的には貧相な身体。方や恋愛経験豊富な見知らぬ女性。妖艶な体つきをしているかもしれない。男性をその気にさせる巧みな話術をもっているのかもしれない。あるいは、攻略組であるキリトがその背を預けられるほどの実力者かもしれない。そんな相手とキリトを巡って争おうにも勝ち負けなど明らかだ。

 故に、シリカには時間がないのだ。あるいは時間遅れなのかもしれないが、それでも足掻かずにはいられない。何としてでも、対抗馬が台頭してくるその前に自分の立ち位置を確保せねばならない。SAOにおけるシリカの肉体は、はるか一年半前に最初で最後のログインをしたときにナーヴギアが大雑把にスキャンして生成したその時のままだ。現実では多少なりと成長しているはずだが、ゲームの中では肉体の成長なぞ望むべくもない。男性経験とて、キリトが例外なのであって、他の男性で積むなどもっての外だ。

 なればこそ、シリカは強くならねばならない。キリトと一緒に戦場に立つためのステータスとしての強さは勿論のこと、シリカと同じくキリトを求めるであろう女性に負けない強さを。そして、もしキリトが折れそうになったときは支えてあげられる、そんな強さを。

「――ピナ」

 思考が纏まったところで、シリカはぽつりと呟いた。

 キリトに追いつくための鍵。自分だけにあって、他の人には負けないもの。それは『シリカ自身』だ。
 ≪竜使いシリカ≫。意図せず広まった二つ名。たまたまピナを――フェザーリドラをテイムしたという運だけで転がり込んできた二つ名だ。実力とはなんら関係ない。これのせいで嫌なやっかみを受けてきたことだってある。慢心していたかつての自分ならいざ知らず、本当に大事なものを改めて知ったシリカにはもはや余計なものですらある。
 されど――使わせてもらおう。自身のネームバリューを前面に押し出して、レベルの高いパーティーに参加させてもらうことが出来れば、多少は強引なレベリングだって可能なはずだ。寄生だ姫プレイだとの誹謗中傷だって甘んじて受け入れよう。それは事実であり真実だ。利用してしまうことになるパーティーに対しては良心の呵責を覚えないでもないが、よくよく考えてみれば今までだってシリカはアイドルプレイヤーとして扱われてきたのだ。正直今更感がする、ということがシリカの決意を後押ししていた。

「――あたし、負けないから」

 ――着いてきてくれる?

 言葉には出さずに、ピナを見やって視線で問うた。大切な友達がどう答えてくれるかなんてシリカには簡単に予想はつく。だからこれは確認作業だった。お互いに意志を明らかにして、これからも共にあり続けよう、というお互いの確認。

「――きゅる!」

 そしてピナは、予定調和のように一声高く鳴いた。休めていた翼を羽ばたかせ、シリカのいるベッドの上を、任せろ、と言わんばかりに雄々しく飛ぶ。
 それを見たシリカはふっと笑みを漏らし、決意を新たに拳を握った。



 自分が下したはずの決断、それにほんの少しの違和感を抱いたことに気付かぬまま――


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