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No.36713の一覧
[0] 【習作】 インフィニット・ストラトス 白き閃光の再来、鴉は三度甦る 【IS、ACfaクロス、TS要素有り】[ACRL](2013/04/02 21:13)
[1] 第二話[ACRL](2013/04/02 21:15)
[2] 第三話[ACRL](2013/04/02 21:16)
[3] 第四話[ACRL](2013/04/02 21:17)
[4] 第五話[ACLR](2013/04/04 22:20)
[5] 第六話[ACRL](2013/05/27 00:29)
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[36713] 【習作】 インフィニット・ストラトス 白き閃光の再来、鴉は三度甦る 【IS、ACfaクロス、TS要素有り】
Name: ACRL◆38c38538 ID:67b6df09 次を表示する
Date: 2013/04/02 21:13

狭っくるしいコックピットの中で、やかましい警告音がひっきりなしに鳴り続ける。
被害甚大、ジェネレータに深刻な損傷、プライマル・アーマー展開不可、AMSに致命的なエラーが発生。
ネクストAC、ホワイト・グリントが受けたダメージは、機体が爆散していないのが奇跡といえる物だった。
朦朧とする意識を必死で繋ぎ止めながらも、迫る死に抗う事を既に無駄だと諦めている自分がいた。

「レイヴン! 返事をして、レイヴン!!」

通信機から聞こえるフィオナの声。
フィオナ=イェルネフィルト。コジマ・テクノロジー研究の第一人者、イェルネフェルト教授の一人娘。
リンクス戦争が終わり、居場所のなくなった私と共に生きる事を決め、ここまで一緒に来てくれた、大切な存在。
彼女に抱いた想いは親愛か、それとも愛情だったのか。彼女と共に生きた10数年間の想い出が脳裏に浮かぶ。
……走馬灯が見えてきた辺り、私の悪運もいよいよここまでのようだ。

「フィオ……ナ……」
「レイヴン!? お願い、早く脱出して!」
「無駄、だ……出力系が、完全に死んでいる……」

企業連は自らが汚染した大地を棄て、その生活圏を清浄なる空へと浮かべた方舟、"クレイドル"へと移した。
反クレイドルの思想を掲げ、企業に対立する形になっていたラインアークは、行き場のない私たちにとって最後の居場所だった。
企業はラインアークへ幾度に渡って侵攻し、その度に自分はこのホワイト・グリントを駆り、それを撃退してきた。
しかし所詮はネクスト一機。リンクス戦争の英雄などと持て囃されても、企業が本気をだせば結果はこの通りだ。
ラインアークに侵攻するネクスト二機を相手にして、海上での攻防戦。
ホワイト・グリントを撃破するために企業側が用意したのは、企業連のNo1リンクスであるオッツダルヴァ。
そして最近になって頭角を現し、次々と戦果を上げ続けている新進気鋭のリンクス、通称『首輪付き』だ。

オーメルの新標準機ベースの機体を駆るオッツダルヴァ。
その操縦技術はランク一位に相応しい目を見張ほどの物であったが、撃墜することは難しい事ではなかった。
手応えが無さ過ぎた辺り、なにか企業とは別の意図があって手を抜いていたようではあったが……
それが何かを想像する余裕など、こちらには無かった。

問題はもう一機。首輪付きが駆るのは、今や旧式となったその機体。
旧レイレナード標準機03-AALIYAH(アリーヤ)。
リンクス戦争でレイレナードを滅ぼし、亡くした戦友の機体で戦う私に引導を渡す相手としては、あまりに皮肉が効きすぎていた。
かつての戦友、"アスピナの並ぶ者無き天才"とまで呼ばれたジョシュアを思い出させる圧倒的なAMS適正。
さらにはオッツダルヴァをも越える程の、凄まじいまでの操縦技術。
激闘の末、最後まで戦場に立ち続けのは彼のみだったのは、当然の結果だったと言える。

年々衰えていく自分の体が、リンクス戦争当時のものだったのなら或いは――――
いや、それも言い訳か。戦いの場に置いて、勝者が彼で、敗者が私だったというだけの話だ。
そこにそれ以上の理由など必要もなければ、意味もない。

「お願い、諦めないで……!」
「すま、ない……フィオナ……」

十数年前のリンクス戦争、そしてそれより前の国家解体戦争より前から私は常に戦場に在り続けた。
死ぬ事に後悔はない。殺し続けて来たのだ、今になって自分の番が来たのだと考えれば、寧ろ遅すぎるくらいだ。
ただ一つ。ここまで付き合わせてしまったフィオナを残して逝くのだけが心残りではあるが……
それも仕方のない事か。それを言うのなら、自分が今まで殺してきた中に、大切な人を待たせていた人間が何人いたのやら。

「今まで、すまなかった……生きてくれ、フィオナ」

その言葉が果たして彼女に届いたのか。それすらも解らなかった。
だが、これでやっと終わったのか。
国家解体戦争で一度死にかけ。リンクス戦争が終わった時にもう一度。
自分は、そのどちらかで死んでいるべき人間だったのだろう。ジョシュアが裏切った意味も今なら理解できる。
企業という、この世界のパワーバランスを担う存在を滅ぼす事の出来る自分たちの存在は、危険過ぎるのだ。
あの首輪付きもそうだ。彼がこの後、どんな道を進むかは解らない。だが強過ぎる彼の力は、この世界に大きな騒乱を呼び起こすだろう。
あの時の、私とジョシュアがそうだったように。

まどろむように、意識が沈んでいく。
伝説のレイヴン。アナトリアの傭兵。
そう呼ばれた男の一生は、今この時をもって終わりを告げた。















と、思ったんだがな……





インフィニット・ストラトス  白き閃光の再来 鴉は三度甦る





ラインアークでの戦いから、一瞬とも永遠ともつかない時間が流れたような不思議な感覚。
一瞬、死後の世界にでも来たのかとも思ったが、場所がベッドの上であることからここが現実である事が分かった。
生き延びてしまった、まさか、という思い。そんな馬鹿なと、状況を確かめようと体を起こそうとした時だった。
体が、起こせない。寧ろ、体全体が鉛のように重く思うように動かす事ができない。
何故だ、と自分の手を見れば、そこに在ったのはまるで赤ん坊のような手。

輪廻転生。国家が健在だった頃にあった宗教の言葉だったか。
信じられない事に、というか信じたくない事だが……私は生まれ変わりというのを体験してしまったようだ。
それも……どういう訳か、女として。





新たに生まれてから数年が経ち。自分の意志である程度の行動が出来るようになった頃。
私は新聞やテレビのニュースといった情報媒体を通し、世界の情勢を掴む事に日々を費やしていた。
私が新たに生まれたここは、どうやら前にいた場所とは異なる歴史を歩んだ世界のようだった。
まず国家が健在であり、国家解体戦争に至る理由になった世界的な治安の悪化が起きていない。
国によっては日夜戦争が行われているようだが、少なくとも世界全体で見れば、前の世界とは比べ物にならない程この世界は平和だ。

逆に、前の世界と同じ部分というのも幾つか存在しているのだが。
前の世界で世界を支配していた、GAを始めとする企業連。それが此方にも存在していた。
ここの企業は革命を起こそうという訳ではなく、複数の軍需企業からなる複合体が国家から独立した統治権をもって存在しているようだ。

戦場で使われる兵器に始まり、航空機や作業用機械など、さらに地下資源の採掘から日用品の生産までなんでもアリの企業連。
ネクストやコジマ・テクノロジーといった技術は生まれていないようだが、その事業の幅は前の世界よりも圧倒的に広い。
平時である世の中においては、極めて賛否両論な立場ではあるのだが、そこは平時であるからこその資本主義。
金の力はかくも偉大である。かくして企業連は、世界的な戦争の無い現代においてもその地位を確立していた。

私が暮らしているのは、この企業連にある居住区の一角である。
とは言っても両親の存在はなく。企業の行う慈善事業の一つである戦災児の引き取りで連れてこられた子供の一人なのだが。
施設の暮らしではあるが出資元が企業であるため、孤児としては比較的裕福な生活であるといえる。
施設の視察という事で企業の重役が来た時、その重役が有澤隆文だった時は目が飛び出るかと思う程驚いたが……
どうやら企業連だけでなく、そこにいる人間も前の世界と同じ人物が何人かいるらしい。



更に数年後。世界全体を動かす衝撃的な事件が起きた。
極東の島国である日本。そこに居る一人の科学者によって生み出されたパワードスーツ、インフィニット・ストラトス。
その発表から一ヶ月後。日本を射程内に収めるミサイル基地が同時にハッキングを受け、2341発ものミサイルが一斉に発射された。
そして、突如としてあらわれたIS『白騎士』がその半数を撃破。
その圧倒的な性能故に捕獲、もしくは危険故に破壊しようと送り込まれた各国の戦力を蹴散らし、白騎士は姿を消した。
これが後に『白騎士事件』と呼ばれ、世界にとっての転換期になる出来事のあらましであった。

その後、各国首脳会議でIS運用協定――――通称『アラスカ条約』が結ばれる。
それによって日本国内に秘蔵されていたISの技術が他国へと開示され、各国は自国の戦力としてISの開発を進める事となる。
当然ながら、軍需産業で世界的なシェアを担う企業連もその例外ではなかった。

既存のあらゆる兵器から隔絶された性能を発揮するISだが、それを扱うには先天的な資質が必要とされた。
まず絶対条件として搭乗者が女性である事。理由は全くの不明とされていた。
開発者である篠ノ之博士がISコアに設計段階から何らかのプロテクトが掛けたのではと噂されるも、真相は解明されずじまいだった。
それに加えISランクというものが存在し、これが高ければ高いほどISに搭載されているイメージ・インターフェイスを高度に扱う事が可能とされていた。

しかしISという兵器は驚くほどに、私の前にいた世界のネクストとよく似ている。
無論、コジマ粒子のような環境に対し致命的な悪影響を与える技術は使われていない。
だが操縦者を守るために周囲に展開されるシールドバリアーはプライマルアーマーに、使用者のイメージをダイレクトに反映するイメージ・インターフェイスはAMSと似た役割を果たしている。
それに加えてクイックブーストとまでいかなくとも、PICの慣性制御によって、それに近い機動を可能にする機動性。
それらから導きだされる戦闘スタイルは、ネクストが用いるそれと非常に近い物だと思えた。

開発国である日本に追いつくため、企業連はIS操者を選抜する事に力を入れ始めた。
私が通わされていた企業出資の教育機関――要は学校なのだが――にも、適正検査のために企業から研究員とその監査役が送り込まれてきた。
IS適性を計るために用意されたのはISの簡易シミュレーターで、前世で私がネクスト操縦の訓練に使用したのを思い出させる作りだった。
……そこで私は、前世でもやらなかったような失敗をやらかす事になった。

兵器のシミュレーションといっても、それを動かすのはペンより重い物も持った事のないようなか弱い少女たちである。
操縦者の意志を反映するイメージインターフェイスの感覚に驚きながら、つたない動作で初歩的な訓練課程をこなしていく少女たち。
自分の体とは違う物を動かす感覚に慣れず、つんのめりになる者もいて、研究者たちも苦笑しながら順番に検査を終えて行った。
そして、ようやく私の番がやってきた……正直に言おう、この時点で私は大分興奮していた。

平和な世の中に生まれて十余年。平和ボケするには十分な年月をこの世界で過ごしてきた。
しかし英雄とまで呼ばれた自分が、戦場への未練がまるでなかったと言えば嘘になる。
だからこそ、このネクストとよく似たISという兵器の存在を知った時から、ずっと心が惹かれていたのだ。
シミュレーターに入り、イメージインターフェイスを起動した時に感じたのは、初めてACに触れた時のような高揚感だ。
ディスプレイに仮想空間が表示され、状況開始の文字が出た瞬間、私は研究員からの指示などまるで無視し、かつての感覚のままに機体"ぶん回した"。

……その次の日。
検査を行っていたBFF社から、やたらと身なりの良さそうな社員がやってきたのは私の自業自得といえよう。
そして時間は、更に進む。









BFF社にある私室に設けられた通信機がコールを鳴らす。
表示を見ると、そこには『王小龍』の文字が現れていた。
ひどく気が進まないが無視する訳にはいかず、やむなく受話器を取る。

「はい」
『ミッションだ。レイヴン』

受話器の向こうに居るのはBFFの重鎮、王小龍。
BFF社のIS開発部門に半ば強制的に引き抜かれた私の後見人に当たる人物でもある。
私以外にも優秀なIS適正を持つ少女の何人かの後見人を務め、ロリコン爺などと陰口を叩かれる彼ではあるが、その声は重く年齢を感じさせる凄みがあった。

『つい最近、日本のIS学園で世界初の男性操者が発見されたのは知っているな?』
「ええ、織斑一夏ですね。"ブリュンヒルデ"織斑千冬の縁者でしたか」

日本に設立されたIS操者養成機関であるIS学園。
そこで発見された初の男性操者が"あの織斑"というのは、知る者にしてみれば偶然とは到底思えない、ある意味必然とも思える出来事だ。
伝説のIS操者、織斑千冬。この世で最も輝かしい称号を持つ彼女を英雄視する者は多い。

『お前には日本へ飛び、IS学園の生徒として編入して貰う。目的は織斑一夏の護衛、及び監視。期限は――――』
「……失礼、王小龍。護衛だけならまだしも監視など、私に務まる仕事ではありません。他に適任がいる筈です」

王小龍直々の連絡に感じていた嫌な予感が、予想以上の形で当たる事になった。
学生になって要人の見張りをしろなどと、一介のIS操者の仕事ではない。
それこそ企業連の各社が独自に抱える、専門のエージェントがやるべき任務だ。
……とはいっても、王小龍本人がわざわざ私の所へ持ってくる話なのだから、それでは済まない理由が在るのだろうが。

『このミッションに、お前以上の適任者はいない』
「リリウムは? どうしても学生としての身分が必要と言うのなら、彼女の方が上手くやると思いますが」
『あれは機体がまだ完成していない。そもそも、あれに監視役が務まると思うか?』
「ですが……」
『それに比べて、お前には"あの機体"がある。これは日本政府から直接依頼された任務でもある。決定は覆らんぞ』

あの機体、の部分に思わず拒否の言葉を出しそうになるうが、堪える。
私専用に調整された専用機であるアレは、確かに私にしか乗れない。
それが世界でも試作段階を抜けていない第三世代機の内の一機なのだから、確かに出し惜しみなど出来る代物ではない。
私自身がその機体にどんな感情を持とうが……組織の中に置いて、そんな物は何の意味もなさない。

『最近、どうにもキナ臭い。亡国機業と思わしき所属不明のISによる横行が相次ぎ、何かしらの異変の前触れかと思った矢先に例の男性操者騒ぎだ』
「…………」
『織斑一夏には専用機が与えられる事が決定した。開発は倉持技研が一任するらしいが、使用されるコアの出所は不明。日本政府が所持するコアの一機だと言ってはいるが……おそらくは奴めが関わっていると見て間違いあるまい』
「篠ノ之束、ですか」
『状況は各国が認識している以上に混沌としている。故に、あらゆる局面に対応できる戦力が必要なのだ。解っているな、レイヴン……いや、アリア・セルヴァティカ』
「……了解。最善を尽くしましょう」






出発前に最後の機体調整をすませるべく、私はISハンガーにいた。
私専用に開発されたこの専用機は、BFF社開発の第三世代型機の先駆けとして建造された機体だ。
だが、私はこの機体が好きではない。否が応でも、前世で犯した業の深さを思い知らされるのだ、この機体は。

「浮かない顔をしていますね、お姉さま」
「……リリウムか」

リリウム・ウォルコット。名門ウォルコット家の才女にして王小龍の寵児。
リリウムは、同い年なのにどういうわけだか私をお姉さまと呼ぶ。
IS同士の模擬戦闘で、一方的に私がリリウムを下した時からの事なのだが……それ以来、異様なほどに懐かれている。
好かれる事には悪い気はしないのだが、これはアレなのだろうか? 所謂、百合とかなんとか……いや、よそう。

「聞きましたよ、日本に飛ばれるそうですね」
「ああ、日本のIS学園で学生ごっこだ。王小龍も、もう少しまともな仕事を任せてくれればいいものを」
「ふふ、あの方はお姉さまの事をとても高く評価していらっしゃいますよ」

如何にも貴族の御嬢様といった佇まいのリリウムはクスクスと上品に笑う。
確かに王小龍の言う通り、彼女に潜入しての護衛任務など不向きか。学生をやれというのなら、私などより余程似合いそうではあるが。

「私も新型のロールアウトが間に合えばお姉さまと一緒に学園へ通えたのですけど……残念です」
「ああ、確か063ANのカスタム機だったか。名前は――――」
「アンビエントです、お姉さま」

063ANは、BFF社の新標準機である。
これまで極端な砲狙撃戦機体のみを作ってきたBFFにとって新しい取り組みの、近距離から中距離での戦闘を主眼に置いた機体だ。
トータルバランスでは各企業の機体の中でも頭一つ抜ける物を持っており、武装次第では専用機にも匹敵するポテンシャルを秘めている。
最早、量産機とは言えない生産コストになってしまっているのが最大の難点ではあるのだが。
まあアルゼブラ社のシールドバリアーが無ければ一撃で紙キレみたいに吹き飛びかねない、あの軽量機よりは全然マシか。
堅ければいいかと聞かれれば、GAのサンシャインと有澤の"アレ"は論外だと言っておくが。

「とても美しい機体なんですよ。もちろん、お姉さまのホワイト・グリントには負けますけれど」

ホワイト・グリント。前世で私が乗っていた最後の機体と同じ、ジョシュアが乗っていたのと同じ名前の専用機。
第三世代型を目指したが故の完全ワンオフ機であるそれは、私の起動データを元に戦闘用としての機能を突き詰めた結果、かつての乗機その物と言える仕上がりになっている。
アクアビットとの戦闘で失われたオリジナル。あれが健在であったなのならば、ジョシュアはアレサに乗る事もなかったのだろうか?
……こんな感傷ばかりが浮かぶから、私はこの機体が嫌いなのだ。

「今からでも上に掛け合って063ANを回して貰いたいくらいなんだけれどな」
「……本当にお嫌いなんですね。ご自分の専用機ですのに」
「こいつに乗っても、嫌なことばかり思い出すだけなんだ」

キーボードのエンターキーを叩き、作業画面を終了させる。
調整は全く終わってはいなかったが、どうせ日本に着くまでは輸送機の中で缶詰だ。その時にでも済ませればいい。

「当日はお見送りにいけませんけれど、どうかお気をつけて行ってらして下さい」
「ああ。まあ、任務とは言っても学園での滞在がメインだからな。あまり大袈裟な戦闘にはならないだろう」
「そうですか。あと私が居ないからといって、他の女の子に目移りなどしないで下さいね?」
「……善処しよう」

本気かジョークか判断の付きかねる発言を流し、荷物を纏める。
いつもの調子なら、この後リリウムにお茶の誘いを受け、なんだかんだと理由を付けられ断れずに付いて行くハメになるのだが。
無言でこちらをじっと見つめるリリウムを不思議に思い声をかけようとすると、それより先にリリウムが口を開いた。

「お姉さまも色々複雑なのでしょうけれど……あまりホワイト・グリントの事を嫌いにならないであげて下さいね」
「どうした? 急に」
「いえ……ですが、ISには"心"があるんです。この子はお姉さまの為に生まれてきたのですから、あまり嫌がってはこの子が可哀想ですよ」

咎めるではなく、窘めるように語るリリウム。
ISに心。確かに、ISコアには意志らしき物があるのでは、というのはIS開発当初から言われてきた事だ。
……兵器に心など、ナンセンスだ。悪趣味だと言い換えてもいい。
IS操者は、イメージインターフェイスを介してコアと繋がる。
私のこの感傷も、未だ戦場に未練を感じる弱さも、全てその"心"とやら見透かされているのなら。
私にとってのそれは、何よりもの苦痛であることだろう。

「ごめんなさい、まるでお説教みたいですね。これでは」
「いや、構わないさ」
「お詫びに、美味しいお茶とケーキをご馳走しますね。丁度ユージン兄さまから良い茶葉を頂いたばかりなので」
「いや、それは別に今度でも――――」
「さ、行きましょう。こうして一緒に居られるのも今だけなんですから、ね?」

逃げる間もなく腕を取られ、引っ張られる。
まあ、いいんだけれどな。可愛くウインクなどされたものだから、逃げる気など失せてしまった。

平和な世界。ISという歪な存在。過去の遺物、ホワイトグリント。
どれもこれもに、折り合いをつけて生きていくしかないのだ。
そして元来、傭兵とはそういうものであり、私は今だ"アナトリアの傭兵"なのだ。例え、生まれ変わったとしても。





そしてその後、私を載せた輸送機は日本へと向かう。
IS学園の入学式へと間に合うようにとの事だったのだが、普通の機体ではまず間に合わない。
疑問に思って発着場へと行くと、そこにはインテリオル・ユニオンのロゴが入った輸送機が。
その最後部には、輸送機にはあまりに不釣り合いな大型のブースターユニットが取り付けられていた。
その名も、VOB(ヴァンガード・オーバード・ブースト)。

かくして私の空の旅は、この時速2000㎞で空を突き進むとんでもメカによって行われる事になったのだった。
王小龍め、始めからこのつもりだったな……!






あとがき

IS連載再開記念に以前書いて半黒歴史化していたSSを修正してみようと思います……
4主人公の半オリ化、TS有りと敷居が高そうですが、需要が有れば幸いです。


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