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No.36224の一覧
[0] 【IS】ISと女子な狼と【クロスTS転生ネタ】[kuboっち](2012/12/21 05:30)
[1] ISと女子な狼と(続)[kuboっち](2012/12/21 05:23)
[2] ISと女子な狼と(続々)[kuboっち](2012/12/21 05:25)
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[36224] 【IS】ISと女子な狼と【クロスTS転生ネタ】
Name: kuboっち◆d5362e30 ID:ae67d96b 次を表示する
Date: 2012/12/21 05:30
追加投稿しようとしたらスレッドごと消えってしまったので、この話だけも投下し直しました(汗



その少女 具体的にいえば15歳になったばかりその少女の朝は早い。
朝食から自分の昼食であるお弁当まで作る母親が起きるよりも早く目を覚ます。

「ふぅ……」

気だるげな寝起きの時間などと言うのは目を開けて、ため息一つの間のみ。
ガバリと畳敷きの和室に魅かれた蒲団の上から起き上がると、寝巻をポイポイと投げ捨てる。
身につけるのは地味な青色系のジャージ。登下校用の靴ではなく、運動用のソレを纏ってまだ暗い外へと飛び出す。

軽いジョギング。それから剣道の素振りをこなし、家に戻る。
もう見慣れた高さ、徐々に朝日が満ちる街を見下ろす家は何処にでもあるマンションの一室。昔では考えられない高層建築。


「おかえりなさい、初ちゃん」

玄関を潜ると出迎えるのは食欲を刺激する良い香りと優しい母親の声。
飾り気がないショートの黒髪には僅かだが、確実に目立つ白。応和な表情が安堵感を連れてくる。

「あぁ……」

それに答えるのは余り味気が無い呟き。普通の家族ならばその場でケンカの一つにでも発展しそうだが、ここではそんなこと在りえない。

「給湯器のスイッチは入れて在るから、シャワーを浴びてきなさい」

「助かる」

母親は同じ暖かい温度を保った言葉を返し、少女はそれに同じように淡々と応じるのみ。



「さぁ、召し上がれ」

何時でも暖かいお湯を浴びる事が出来るという幸福を僅かながら噛みしめ、女性にしては短いシャワーを終える。
変えの服に身を包み、台所へと足を運べばそこには白米とみそ汁を中心にした朝食が並んでいる。

「いただきます……父は先に?」

少女は既に家の中にもう一人の家族の気配がない事を理解しつつ、食卓には使われていないまま置かれた食器一色を見て呟く

「えぇ、まだまだ忙しいみたいね」

「……」

困ったように笑う母の顔色に言葉以上の苦痛を感じた少女は箸を動かすのを止めて、言葉を紡ぐ。

「あの人は私が嫌いなんでしょう」

「そんなことは……」

もう何度目かになるその言葉を淡々と少女は吐き出す。


「二人の仲まで悪くしてしまっている事、重ねてお詫びします」



少女 初は自分が普通ではないとしっかり理解していた。

生まれて直ぐに自我と言われるものがあった。それゆえに無意味に大人びていたのだろう。
ただ遊ぶ事には疑問を持ち、規則を持って体を動かす。
絵だけの本などでは満足できず、直ぐに活字を追い始めた。
食事に行けばお子様ランチよりも、かけそばを頼む。
可愛い服よりも動きらしさを優先し、五歳の手前から竹刀を振り始めた。
視線には早すぎる時期から明確な鋭さが滲んでいただろう。

なかなか恵まれなかった第一子がこんなありさまでは、普通の人間ならば心の一つや二つひび割れてしまっても不思議はない。



「合格出来ればの話だが、IS学園は金の掛からない寮がある。だから……」

「初っ!!」

『二人の邪魔はしない』と続けるべき言葉は、実に珍しい母の金切り声に中断された。
本当に久しぶりに見る『本気で怒った母』に内心でため息。全く悪気はなかったのだが、女心? いや、母心は難しい。

「あの人も貴女が嫌いな訳じゃないのよ? ただ距離間が分からないだけだわ。
 そして……私は貴女の事を心から愛しているわ。私の可愛い初」

思わず顔を逸らし、味噌汁へと手を伸ばしながら呟く。
母と言う存在にはきっとどれだけ武を磨こうと、子は永遠に敵わないものなのだろう。

「あぁ……ありがとう」











「その辺にしておけ」

『凛とした声』……いや凛では少々ぬるい。『ギャンとした声』がその通学路の一角に響いた。
通学路の先にある中学校の制服に身を包んだ女子生徒だ。
身長はかなり高い方だろう。髪は撫でつけた様に纏まった黒を一つにまとめて細く垂らしている。
頬骨が見えるほど痩せているが、それは鍛えて引き締まったから。糸のように細い目はギラリと刃のような鋭さを宿す。
カワイイとか美人とかではなくどちらかと言えば、圧倒的に『カッコいい』タイプだろう。

「あぁん? 何だテメエはぁ?」

まず彼女の前にいるのは近所でも悪が多い評判の高校の制服を纏った集団。
その中に一人で震えるのは少女と同じ制服を纏った女子中学生。

「後輩が困惑している」

「んだとぉ? こらぁ!!」

「分かり難かったか? ならば言い直そう……さっさと失せろ」

ガラの悪い集団から上がる笑い声。ただの女子中学生が何を言い出すんだ?と言う事なのだろう。
だがこの騒ぎを遠巻きに見ている中学生の表情には、何故か安堵の色が合った事を彼らは見抜けなかった。

「ずいぶんと勇ましいじゃねぇか『バキ』……グハッ」

「「「「「っ!?」」」」」

汚らしい笑みを浮かべて、少女に触れようとした一人が文字通り吹き飛ぶ。
腰の入った見事な拳が隙だらけな脇腹を捉えた。一気に色めき立つ不良共とは対照的に、少女は淡々と告げる。

「年端もいかない女を集団で囲むのは、これすなわち悪だ」

「てめぇ……まさか、『狼』かっ!?

ただの女子中学生を捕まえて、大層なあだ名だとは思うが、狼と言う単語は嫌いではない。
そして実に程度の低いイザコザだろうと戦うというのは僅かばかりにも胸が熱くなる。
前のように濃密な戦いを期待できる世の中でも、身分でもないのだから。
それでも一つだけ変わらない事が在る。戦いの前に名乗ろう。

「■■初 座右の銘は……■・■・■だ」











「はぁ……またか」

「あぁ、まただ。先生」

とある中学の職員室にて、中年の男性教師と朝から不良集団相手に大立ち回りを魅せた少女が向かい合っている。
教師の顔には困惑と諦めの色、少女の頬には絆創膏が小さく自己主張しているが無表情の中にも満足気な色。

「今回も被害に在っていた生徒や周りで見ていた生徒、通行中の皆さまからお前に非はないという証言を貰えた。
 だけどなぁ~暴力は暴力な訳だ。もう少し申し訳ない感じでいてくれると、先生も後始末が楽なんだけど……」

「すまないが誇る事こそあれ、卑下する事はないだろうな」

中年の教諭は更に大きくため息。自分の半分も生きていないはずのこの生徒は、何故か自分と同年代以上の貫録を感じさせるのだ。
普通ならばもっと強く戒める所なのだが、彼女に対してはその意味を感じさせない。
思春期の突発的な行動などではなく、キッチリとした芯が心のうちに在っての行動なのだろう。
こんな『自分』をしっかりと持った人間なんて、大人でも数えるほどしか知らない。
破天荒な振る舞いにも頼もしさを感じてしまうという物だ……勿論口には出さないが。


「それにお前は三年生で、あと数日で受験なんだぞ? しかもあのIS学園にだ。
 それをまさか下らないイザコザでパーにでもしてみろ? 一大事だろ」

しかもこの一本の筋が通り、なおかつ猛烈に大人びている生徒は成績も良好。
IS適正も高く、剣道部での活躍も光る本当に優秀な逸材なのだ。登校時の下らないイザコザでつまずかせる訳にはいかない。

「俺の信じる行動……『正義』を遂行して、拒否されるような場所はこちらから願い下げだ。 
 それがどれだけ高名で人気の学び屋であろうともな」

だがそんな気遣いすら余計なモノなのかもしれない。きっと周りがどれだけ後悔しても、この人物は欠片の未練も感じないのだろうと男性教師は納得する。

「はぁ……もう行って良いぞ」

「失礼する」


諦めたように退室を許可する教師に綺麗な姿勢で頭を下げ、職員室を出た少女を出迎えたのは……

「■■先輩! 大丈夫でした?」

「怪我してるじゃないですか!」

三人の女生徒。少女は同学年の顔と名前は覚えているし、そのかしこまった口調から後輩であると確信できた。
二人には見覚えが無かったが、一人は今朝見たばかりだった。不良たちに囲まれていた生徒である。
先の二人 友人だろうに背中を押されるようにして、胸には真新しいコンビニの袋。中身はペットボトルの類が見える。

「あっ あのっ! 私があんな事になってたから……先輩を巻き込んじゃって!」

なにやら戸惑い、視線が彷徨う。言葉は途切れ気味で、顔が赤い……体調不良だろうか?と最初に考えてしまう時点で、少女 初は『そういうのに』に疎い。

「もうすぐIS学園の入学試験ですよね? そんな大事な時に…『お前のためじゃない』…っ?!」

その遮った言葉は完全に拒否の意思を示す。ビキリと当たりの空気が凍った。

「全ては俺の正義に従ったまでの事。それによって生じる問題は大小全て俺の責。だから……」

しかしそれも一時の事。

「だから……お前は何も心配しなくて良い」

声は先ほどと変わらない平坦なモノ。温かみなど欠片もない。なのに強い安堵感を感じさせる。
それ以上の言葉を続ける事もなく、後輩の胸の内から袋を奪い取る。背を向けて歩き出す一つ上と言うだけにしては大き過ぎる背中。
ようやく緊張が解けた後輩は初に本当に言いたかった言葉を口にした。

「あっ……ありがとうございました!」





既に数えられるほどしか潜らない扉を潜って、自分の教室へと辿り着いた初をクラスメイトからの予想通りの言葉をかけられた。

「今日も大活躍だったみたいじゃないか! 初」

第一声は男からの物だった。これは別に珍しい事ではない。
余りにも男らし過ぎるこの十五歳の女子は同姓の友達と同じくらい、男の友達がいる。
どちらも友達として確固たる認識を持っているかは別にして、居心地が良い関係だ。

「別に……何時も通りだ」

「ま~確かに週一くらいはやってるからな」

ちなみに第一声をかけた男子の名前は織斑一夏という。
何処にでも居る現代の中学生だが、波長が在った人間には無意識なフレンドリーっぷりを発揮する。
そんな一夏の第一声に刺激されて、次々とかかるクラスメイトの声に、「あぁ……」とか「そうだな」とか淡白な感じで答えて行く。

「ふぅ……」

4・5回の会話とも言えない言葉のキャッチボール終えて、初は自分の席に腰を降ろした。
あんな会話でも全く不満が起こらないのが凄い。『もっと喋りなさいよ!』と向かって来た大熊猫は二学年の終わりに里に帰ってしまった。

「それじゃあホームルーム始めるぞ~」

入ってきた担任の言葉に誰もが自分の席へと戻り。平凡な中学三年生、三学期の一日が始まった。










外は夕暮れに包まれ、帰りのホームルームも終る時間。
夏の大会なんて物は記憶の彼方に過ぎ去り、三年生は部活を引退。
後はただ受験の勉学に打ち込むのみ……となるのが普通である。

「……行くか」

しかし初が向かったのは図書館でも自宅でも塾でも無かった。
塾は勿論いくのだが、それはもう少し後の話。彼女が向かったのは剣道場。

「……」

入口で黙礼をして中に踏み込めば、女子中学生から外れた身長と気配で、瞬く間にその存在は部員達へと伝わった。
同級生たちは流石に受験勉強に掛かりきりで姿はなく、一年・二年生が合計で十五人ほどだろうか?

「先輩! 今日も部活出られるんですか?」

「あぁ」

「だって初先輩の第一希望はあのIS学園よ? お勉強だけ出来たって駄目なんだから!」

受験するというだけで大騒ぎになるIS学園とはIS インフィニット・ストラトスの操縦者を育成する事を主眼に置いた世界でたった一つの学び屋。
世界を変えた超兵器は純然たる力として目指す者は意外と少なく、大人気な習いごと程度の感覚。
在る種の平和ボケだが、それだけ良い社会だと前向きに初は考える事にしている。

「素振りの後はかかり稽古で?」

「頼む」

平然と自分に合わせてくれる後輩たちには感謝しきれないと思いながら、少女は躊躇ない動作で制服を脱ぎ始めた。



「ふむ……少しキツイな」

女子中学生としては破格の身長を包む胴着の肩に手を当てて呟く先輩を、ウットリと眺める女子生徒が居た。
剣道部の三分の一を占める彼女の熱烈なファンの一人であり、不良に絡まれているのを助けられた少女だ。

「やっぱりステキです~」

男前で在り、武士道に準じる初先輩は何時だってカッコいい。
同じ制服を着ているとは思えないほどに素敵だし、たまたま見る事が出来た私服も似合っていた。
それでも胴着ほど彼女にぴったりとハマる服は無い。これで竹刀を構えれば、まさしく完成された自然の形となる。

そしてそこから振るわれる剣は……本物だ。

剣道の段がどうとか、大会で何位だったとかそういう事ではない。
本物の侍など会った事が在る訳もないのだが、断言できる。あの人こそ本物の『侍』である。
この後輩部員の陶酔は他の部員が全員、初に打ち倒されるまで続き、ついに自分の番となった時に……一つのお願を口にした。


「先輩! 私……『あの技』を受けてみたいです!!」

ザワリと部員達が震え、初の眉毛もピクリと跳ねた。
先輩のあの技といえば、部員はみんな知っているだろう。この夏の大会 個人戦決勝、初めて魅せられた『技』であろうと。

「俺はあの技のお陰で優勝を逃したんだぞ? それに……危険だ」

剣道のルールから逸脱している。だがその技が純粋な戦いにおいて、強いのは誰の目からも明らかだった。
そして強いのならば、使いたいはずなのだ。剣道の決勝戦よりも大事な舞台 IS学園入試の実技において。


「試験前に来られるのは今日が最後ですよね? 実技試験でぶっつけ本番は駄目だと思うんです!」

「確かにな……」

「っ♪」

僅かだが同意の言葉。そして向けられるのは何時もとは比べ物にならない程の殺気。
今朝の不良なんかよりずっと怖い。だけど耐える。それだけの事を教わってきた……この人に。

「良いだろう。構えろ」

ゆっくりと先輩の姿勢が変わる。あの時の構え、決勝戦の熱を吹き飛ばした技がくる。ただ受けるなんて考えない。
そんなのは逆に失礼にあたる。来る時が分かっていれば私でも……



そんな後輩部員の意識は迫ってきたはずの剣先を黙視する事も出来ず、一瞬で刈り取られた。



そして大好き初先輩の膝枕の上で目を覚ます御褒美も貰った。











「ふむ……」

■■初は鼓動の高鳴りを認識する。緊張……などではない。
闘争を前にした純粋な昂りだ。身に纏うのは甲冑 日本制第二世代IS 打鉄。
装着するのも未だに二回目でしかないが、これから戦わなければならない。
相手はISの操縦を学びに学んだIS学園の教諭。こちらは未だにPICによる飛行やパワーアシストの手応えを確かめている状態。
全くもって危機的状況だ。勝利しなければ合格できない……なんて事はない。しかし勝利が欲しい。
それゆえの高鳴り。武装を呼び出す。最初に説明された時から『ソレ』を使うのは決めていた。

『打鉄用近接格闘ブレード』

呼び出して見ればいわゆる日本刀である。竹刀などよりもずっとシックリくる。
細かい所は色々と違うのだろうが、久しぶりに握る刀の感覚。全てが昔に戻っていく感覚。
自分でも気付かずに試験開始の合図を獰猛な笑いで初は迎えた。



「近接格闘ブレード……ですか?」

これから相手をする受験生の武器選択に、試験官である山田麻耶は微かな驚きをもって答える。
戦闘と言う物に髪の上でしか触れていない受験生の多くはまずは射撃系統の武装を選択するものだ。
だが相対している受験生のプロフィールを考えれば納得もいく。個人戦にて準優勝という剣道の実力。
普通に生活などしていれば銃も剣も縁遠い存在だ。だが剣道部となれば縁遠い二つから。剣を選択するのも納得はいく。
そういう経歴からブレードを選択する人物は年に何人かは存在するのだ。どちらも馴れていないのなら、少しでも得意な方。
確かに合理的な選択だし、評価はプラスだしかしそれだけで合格できるほどIS学園は甘くはない。

「相手がブレードを選んだら先制攻撃……」

マニュアルにある対応を口に出しながら、麻耶は実行する。
少しでも得意な分野を選ぶならば、そこから飛び出す勇気を試す。
銃を売った事が無いのは当たり前だが、銃を向けられた事が無いのは更に確実。
それに対する反応を見……「はぁっ!」……あれ? 突っ込んできた!?


「生身でガトリングガンに相対するよりも大したことはない」

ISのシールドというのは並みの銃火器では致命傷とは成りえない。
それを頭の中でだけでも理解していれば、その河川をある程度は許容して行動する事が出来た。
生身でガトリングガンに追い回された事が在る人間からすれば、ある程度でも守られていれば、距離など詰めるのは容易い事だ。
そして詰めなければ勝ち目がなかったのだから……

「この子っ!?」

『剣道部にて優秀な成績を残す』なんて安っぽい言葉では言い表せない斬撃の連続に、麻耶は目の前の受験生に対する認識を改めた。
試験対象から敵へと。剣裁きが剣道のソレに収まらない上、銃弾に狙われる事に馴れている動き。
これで自分と同じIS操縦の熟練者ならばまだしも、相手は代表候補生でもない一般人なのだ。
IS装着してからの確かめるような動きと、ブレードを呼び出す滑らかさも相反する。
全くもって評価しきれない受験生は続いて不可思議な構えを取ったのだ。


「感覚は掴めた。やってみるか」

初がしたのは『左』のみで刀を握り右手は添えるのみと言う、『片手』だけ『一本』のみで行う『突き』の構え。
これは余りに道理を踏み越えている。何せISのパワーアシストは片方の腕ごとに限界値が在り、ただ威力を増すならば両の手こそが相応しい。
しかも機動力に優れたIS同士の戦闘において、斬撃以上に辺り判定が狭い突きは有効な攻撃手段とは言い難いのである。
勿論、着弾面の小ささにより威力と貫通力こそ高いが、それも当たらなければどうという事はない。

そのはずだった……




「■突」





小さな呟き。地面を踏み込む衝撃。風を切り裂く音。
全盛期とは比べようもない非力な体なれど、ISという万能の補助を得て、練りに練られた必殺の一撃だった。
一切の理論を飛び越えて、ただ鍛え上げられた技だけで山田麻耶という元代表候補生にして、現IS学園教諭の回避も防御も飛び越えた。


「なぁあっ!!」

脇腹を僅かに抉られた。少しでも反応が遅れていたら、一撃でシールドエネルギーをゼロにされていただろう。
いま何をされたのか? そんな事を推測する時間は麻耶にはない。ただ突きと言う技の弱点、回避された時のスキを突くべく動こうとして……

「甘いな」

「っ!?」

突き込まれ、わき腹と腰部装甲を抉った剣先が『水平』に気がつく。
突きという攻撃自体、殆どされた事が無かった故に気がつけなかった。平らにされた剣は突きからでも……


「□□□!!」


横薙ぎの大衝撃。受けられた! アサルトライフルが両断されたけど……と安心していたら、回し蹴りが頭を穿つ。
地面に打ち付けられる前に聞いたのは受験生の年齢を間違えそうな重い声。


「突きを外されても間髪いれず、横薙ぎに変化できる」

「戦術の鬼才、新撰組副長 土方歳三の考案した平ら突きに死角はない」




「俺の『牙突』ならば……尚更だ」










「ここか」

IS学園の入学式にて、一年一組の扉を潜った少女は些か……いや、かなり目立っていた。
新高校一年生、しかも女子にしてはかなり高い身長。だが無意味に大きいという印象はない。
引き締まった体、顔には頬骨すら浮いてみえる。整った顔立ちの中で、細い目は刃の鋭さ。
一切手が加えられていない制服に身を包み、髪も生まれたままの黒を撫でつけ、一つに纏めている。


「おぉ~初~」

「なんだ? 死人のまねごとか、織斑?」

クラスの誰もが目を奪われるその生徒に真っ先に話しかけたのは織斑一夏。
女性しか動かせないISをどうした理由か動かしてしまった故に、女子高の中にたった一人だけ放り込まれた哀れな男子。
そして初の同じ中学で同じクラスだった驚異的な腐れ縁である。

「死人の真似もしたくなるさ~まるで初めて日本に来たパンダだ。
 もしくは針の山の投げ込まれた水風船だ。視線だけで殺されそうだ……助けて」

「はっ! お前が話しかけて来たせいで、俺の学園生活も風雲急を告げているぞ? 阿呆が」

「なぁっ! そこは同じ中学同じクラスの縁でなんとか~」

誰よりも注目を浴びるたった一人の男、それと平然と話す同じ中学らしい侍チックな女子。
それだけでクラスの注目を浴びるのには十分であった。



『なっ! 何だそいつはぁあ!!』

そんな必死に命乞いをする一夏の様子を横目で睨み付ける女子生徒の名は篠ノ之箒。

『他の女子と言うだけでは飽き足らず! そいつはだけは駄目だぁあ!!』

一夏が何やら妙に親しげに話している生徒には見覚えがあった。
中学最後の個人戦 決勝で戦った相手だ。妙な突きを繰り出して、反則負けになったアイツ。
だが決して勝てた!とは胸を張れない相手。それが気になるアイツと仲良くしている!(箒主観)
これは由々しき自体だ。一夏と同じクラスなのは胸が高鳴るが、それ以上に厳しい戦いの予感がするぞ!!



そして自己紹介の席で、その少女 転生なんて体験した、侍にして、狼にして、新撰組三番隊組長は告げる。





「斎藤初。特技は剣術。好きな食べ物はかけそば。苦手なモノは女子らしい行動全般。
好きな言葉は……悪・即・斬だ」







はい、るろうに剣心の斎藤一さんでした。
一体何をしているのだろうか(遠い目


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