俺は妙子さんに引き取って貰うまで、ため息を吐く第二の生を送っていた。「あんたは気持ち悪い、本当に家からいなくなって欲しい」俺もさっさと出たい、お互いその方がいいよ、マジで。「何その目………ふ、……さっさとご飯食べて二階に上がってよ!私の目の前からいなくなって!」俺はコクりと頷いて、ご飯を胃の中に詰め込み二階に上がる。そして何もない布団しかない部屋で一人ゴロンとなって天井を眺めた、体が軽くて、疲れない。前はもっと体は重くて、足を伸ばしたら狭いベッドに足先がついてソレが嫌だった。「はー、家出すっかなー、でも野垂れ死にする前に大人とかに捕まって家に戻されるしな、そっちの方が迷惑になるし」下手したら今の俺の産みの親は、一気に点火して俺を虐待するだろう。まぁヒス起こして顔面にお湯かけられたことあるけど。ま、結構きつかった。そのときは速効風呂場に逃げた。こんまんまだと本当に酷い暴力が始まる。「マジでそれは後味悪い、どうにかならんかね本当に……可愛そうだろう、あんなにまだ若い人なのに、早く捨てて欲しい」下の階から泣き声が聞こえる。そして今の父が帰宅したのか、父は結構短気な男で、たまに唐突に俺を叩くことがある。妻を守るために、心を憎悪の黒い色に染めて。本当なら、もっと幸せが彼らにあった筈なのに。それだけが俺の胸をいっぱいにする。それが悲しい。だから殺せばいいなんて絶対に俺は言わない。そんなもっと酷い人生を俺が作ってどうする?好きに憎んでも貰っても構わない、それで気が楽になるなら、社会で彼らが酷い目に合わない程度で俺に暴力を振るってくれても構わない。これ以上不幸にならないで欲しい。それだけを願って今を生きている。「転生ね……もし最強に生まれても、幸せじゃなきゃ俺は嫌だね、あと何の世界だかしらんけど」記憶なんてどうだっていいだろ?俺は馬鹿だから楽しく幸せに生きていければ、俺が俺であり、毎日夜寝る前にソファーで野球みながらウトウト出来ればいい。寒くもなく暑くもなく涼しい布団に入っておやすみして起きて飯食うぐらいで十分。そういう安らぎが毎日必ずあるように、それを守るために大学入って、その糧を得るために、バカばっかやって一生懸命じゃないけど、それなりに生きてたんだ。馬鹿やりまくったけど、誰からも愛されない、なんてことはなかった。そうだろう?誰だって誰かがいないと成長してそういう風になれないんだから。死ぬ前までそういう風に毎日毎日笑えるように――――「くそっ……情けないな、現実逃避ばかりしたくなる、これがあるから、ああだってのに」これがあるから、こういう現実が生まれたんだ。「しょうがないけどなぁ、あるからさー」其れを踏まえて生きるしかない。「はてどうっすかねー神様に会えたら良かったのに、今ならいうね、最初から転生なんぞせんでそのまま消滅した方が気が楽だって」そんな先のことなんてどうだっていいし、死ぬ為に生まれてきたわけじゃないし、死んでいくために生まれてきたわけじゃない。「生きるために生きて、はーあれだなんだっけ?とあるんーと。そうそうイカちゃんじゃなかったそげぶだそげぶ」意味のわからない思考になったので中断した。俺は手から和菓子を出してそれを口に運びむしゃむしゃとおはぎを食べる。「ふう、取り敢えず、捨ててくださいって土下座でもなんでもした方がいいかも」正直お互い共倒れしそうだし。「それこそ不幸だーっ!って―――――――やべえ下に響かせ得ちまった」うん馬鹿ですから、ゴロゴロしたまま3歩く前に昨日嫌なことぶっ飛びます。うわー何か物壊れる音した。ガラス割れたな、なんか。かーちゃんとーちゃん怪我してねえといいけどバカバカしいしそんなで怪我しても、無駄だしな。「こえー………まじで実際やけどした顔いてー。現実だよ、ポエミーやって黒歴史作ってる暇あったらどうにかせねば。いつか誰か好きな人できてこんなこと5歳で思ってました、なんて言ったらドン引きされてしまう、うん俺が女なら本当にそれこそ気持ち悪くて逃げるわ」という話を妙子さんにしてしまった。だって話してお願い?とか言われたからしゃべりました。ドン引きされたらやだなぁーと思いながら。「ああ、だから言ったでしょう?欝になる話だって、あんま貴女も人の悲しみ背負わん方がいいですよ?そういう風になるし他人の過去バナで不幸になってどうすんですか」妙子はベッドの上で声を押し殺して枕に顔を突っ込み、しくしくと泣いていた。「別に今はこんなに妙子さんに良くして貰って幸せなんだから、気にしなくていいでしょう?」「だって、ひどいじゃん!なんで!?」「いやえ?なんで?……てかそんなの気にしてたら、疲れるじゃないですか、流石に妙子さんでもタイムワープできないだろうし」「え?私がこうして悲しむの変なの?」「ははははっ変じゃないですよ、気にするなって話でほらほら寝ましょう」「たっくんが虐める、私を泣かせる、悲しませる――――タイムワープして今からたっくん助けてくる」「はいはい、すいませんでしたーてか妙子さんの口からそれでるとマジでやりかねないし怖いっす!ドキっとするからやめてください!?もう二度と口にしないでください!」てか俺が二人になるだろ!?嫌だよそれ!?別の意味でドキドキしてますけどね?「ほら寝ましょう、あーもうじゃあ前の人生で一番爆笑した話聞かせてあげますから」悲しんでくれてありがとうございます。でも貴女の御蔭で今は幸せです悲しくありません。今は楽しいです。だからいつか俺が貴方にそう思わせてやる。終わったこと終わったって言って今を本当に楽しく生きれるようにしてやる。絶対に。それがそれが何よりもかけがえのない貴方に贈りたい俺の愛だから。end「ところがどっこいそれが大変難易度高過ぎる!」あとがきこれがいつでもどこでも希望エンド。