「5歳の子供をやってもいいし、20の大人でもいい、私の子なんだから、それは変わらないよ」そう育ててくれた人は本当に俺の女神だった。それでもさ「もう少し、自分を許せるようになって欲しいね」俺は今日はファミレスで山田に相談に乗ってもらっていた。ドリンクバーでコーラ腹いっぱい飲んだから、コップを返して、山田の分のカルピスを入れて歩きながらうつらうつらとそう思う。席に戻る時に口に出ていたのだろう。「なんのこと?」ああ、他愛のないことだ、可愛いことだ。ま、そこは濁すしかない、相談出来ないとこだ。「ああ、妙子さんのこと、最近は習い事教室行かなくなったなーってあと、ほれ」「ありがと、一条の母が来て欲しいって言ってるらしいわよ」「一条って誰?」「あー私の喧嘩友達、あんた自分の分は?コップは?」「もー飲まんから、返してきた」「え、そうなの?」ああ、山田の分がなくなりそうだったし、ついで。「で、この前な、柴おばあちゃん先生から手紙で連絡きてさ、すごいぜ、手紙と一緒に大きなラベンダーの綺麗な絵が、もう妙子さん大喜び、それから居間に飾ってるんだよなー。なぁ、柴おばあちゃん先生が喜びそうなものって何か知らないか山田?あれ、凄い手間が掛かってる大作だしさ、何かお返ししたいな、本当にさ、取りあえず手紙だけはすぐ返したんだけどな。んーやっぱり国語の先生らしく「真心を」っていう綺麗な感じの達筆な文章で、妙子さん翻訳だと「この絵がもし、貴方が気に入って喜んでくれたのなら私も喜ばしいです、よければそちらも、私を喜ばしてくれませんか?」っていう、こうお茶目な感じの謎解きが入ってて、絶対何か喜ぶもの上げたいんだよね、何かないかな?それで何故か、妙子さんに「たっくん本当に……」とか言われて何か手伝ってくれないんだよ、普段なら手伝ってくれるのに、こういうの」「………「どした?」なんでもないわよオタンチン」山田は思った。本当にカエルの子はカエルだと。末馬達馬の修練。「準備運動終了!」人間ガジェットという、鬼ごっこ見たいな俺が唯一、その人外能力を好きに使って良い楽しいアルバイトの報酬ということで。軽く、達人に護身術を教わることにする。まずは怪我をしないように準備運動だ。海鳴の魔導師達の面々がお菓子をつまみながらジュースを飲みながら眺めている。普段忙しく働いている彼女達のひと時の癒しだろう。どいつもこいつも見目麗しい美少女というやつで、色々超人なのだが、やっぱりまだまだ中学生、他愛のない雑談をしている。部活動やったあとのひと時の楽しみ、という姿と変わりはしない。楽しそうで、華やかで、思わず笑みがこぼれる。だが人の体操に「気持ち悪っ!?」ってなんだ。そんなに人間の体が曲がるのが不思議か、テレビでみてるだろ、そういうの。いや、関節外したり、海老反りでエクソシストの悪魔の真似したりするのがダメなのか。「もらうね、たっくん、開けていいよね?この高そうなやつ―――これゴディバ!?」「え?」「本当?」「あら」おお、持ってきたかいがあったな、やっぱ甘いもん好きだな、お前ら。そこにリンディさんがススススっと混ざるあたり、流石だ。俺が持ってきたお菓子だ、去年のヴァレンタインデーの残りで、高そうなチョコ。高そうだから手を付けなかったやつ。確かそれは、えーと、国語の柴おばあちゃん先生のか、去年退職する前に引越し手伝ったら「ヴァレンタインデーだから、私からもね、ふふ」とか言ってもらったやつだ。あんまりにも高そうだから、部屋に飾っておいたんだよな。元気かなぁ、あの人。退職したら富良野で一人、絵を描いて暮らすとか言っていたけど。昔は美人だったな絶対って感じの人だったな。作文の書き方教えてくださいって頼んだら、サルでも書ける作文の書き方っていうくらい上手に教えてくれた人だし。「いいけど、1コだけは絶対残しておいてくれ、それ恩人からの貰い物だし」「わかった」「あとポテチのかたあげのヤツは絶対とっといてくれ、ジュースはコーラな」「炭酸なんて、私との模擬戦後果たして飲めるのだろうか達馬。そのような喉がしゅわしゅわと痛くなるものを」目の前に今日の相手。シグナムだ。「胸を借りるつもりで、お手合せお願いします――――シグナムあと俺はコーラが大好きなんです、一気飲みとかマラソンのあとでもイケます」「コーラには毒があって歯が溶けるらしいぞ?ポカリにしておけ」「それは迷信です―――ではお願いします」俺は構える、いかに身体能力が優れていても、使う人間が普通な人間な故、その構えは何処までもシンプル。正眼、そして拳ではなく掌を相手に構える。大地に繋がる足をリラックスさせ、そして芯がはいったように硬く、柳のように柔軟に、常に変化を加える。決まりのないリズムを与えることで、わざとらしくも、それでいて、臨機応変な構えだと自分では思っている。ステップは踏まない、ただ、リズムを踏むのだ。いつだって大雑把に適当に。シグナムもレヴァンティンを構える、それがどんな技術的な意味があるのかは素人の俺にはわからないが。最初に掌を狙うべき場所がわからなくなるほど、隙がない。狙うべきは基本正中線だとはいうが、難しいなと達馬はいつも思う。「胸を借りてどうするん?まさか「そこ、おふざけしない、人がせっかく真面目になって格好つけてるのに」」俺は妙子さん以外興味ないのだ、馬鹿者。「格好つけても無駄や、普段が普段や」「男の子だから、たまには格好つけてもいいじゃないか、はやて」「あんまりカッコよくない」だって普段おふざけしすぎ。と口々に言われ、達馬は落ち込んだ。まぁ生まれてこの方、あと前世でも誰かに格好良いと、言われたことはない。うけることは多いのだが、ま、うけた方が嬉しい気もする。格好良いと言われるだけよりも喜んで貰ったほうが嬉しいだろう。それに、格好良いと言われたら気恥ずかしくなる。複雑だな、と達馬は思う。「いえ、主はやて、達馬は技術は荒削りですが、中々のものです、特に揺らぎしかない特異な構え、面白いです、」無為の構えには至らない、稚拙な構えだ、リズムを崩されれば、あっけなく倒れるような構え。折角の正眼のまっすぐな構えがブレブレで、足払いなどの奇襲に弱い。小刻みなリズムの間隙に攻撃を加えれば、簡単に全弾命中する。だが。あっけなく倒れないように我慢する。倒れても攻撃を受け続けてもやめない、動くのをやめない、酷く落ち着きのない。でも達馬の中では達馬の臨機応変の構え。いっつも、ざわざわとバカみたいに動き回る、全部バカをみる、構え。だがそれでいい、いつだって、俺は真面目に馬鹿をやる、そういう人間だ。「攻守も全てを捨てた、ただ耐えることが前提の構え、面白い。せっかくザフィーラの教えたストライク・アーツの攻防一体が身に入ってないが、まぁそれぐらいでいいだろうな」はやては思った、それってただ面白いだけじゃないのか、と。「本当にザフィーラさんすみません、おバカな生徒で」「構わないぞ、お前はそれでいい、とても新鮮だった」「どうもです」捨て身の構え、その場で決める、その場で乗り切る、でも楽しそうで面白いと思ってしまう、変な遊びの構えだ。ムラが酷く、その日のテンションで全然違うのだ。「びょーんって感じだもんね?日によって」「たっくんはマゾなん?わざわざ縛りゲーするって真面目にザフィーラから習わんの?」「はやて、達馬はきっとそうなんだよ、なんだかんだいって、人に叩かれて楽しそうにしてるし」同級生にプロレス技かけられても、いたいいたいやめろよなーとかいっつも笑ってるし。で、くすぐられ続けて「あーもー!」と怒るよね、とくすりとフェイトは笑った。「人をマゾ扱いしないでくれ、俺はただ怒首領蜂とか避けて攻撃するゲー苦手なんだよ、本当に、途中でごちゃごちゃしてて泣きたくなってくるし」敵の攻撃発射されてる目の前で無敵モードでずーっと、攻撃していたいので、裏技使います。それ、楽しいの?と色々な人に言われます。「チートコード禁止したらうわうわ言いながらクリアしてたねそういえば、だったら腰だめに構えて「でん」と待っていたほうがいいんじゃないの?」「いや、それやると、逆に落ち着かない、これがいい、「でん」は集中力なくなるし、ようは何が何でも死ねばもろとも戦法だ」「ヤケクソすぎるやん」「なんかたっくん、面倒になるとボンバーマンでもそうだよね、無造作にボム置きながらみんなを巻き込みながら自爆して顰蹙を買うやつ」なのはがいつも怒る達馬の悪癖だった。あとドクロ見つけるとニヤニヤし始める。滅茶苦茶楽しそうにしながら、たまにそういうことをやって「おいぃぃ!?」とヴィータに肩を掴まれて揺すられる。自分が負けたあとのスタートボタン連打とか遊びが入ると、ふざける、バカをやる。「二度とお前とはやらない」とかまで行かない微妙なあたりを飛行する、おバカ。妙子さんのお菓子を賭けてやると、眼が瞬きしなくなって、機械になる。妙子さんを呼んで見てもらえばいいのになぁ、となのはは何時も思う。99,999999%妙子さんおばかなんだから、と。このもう一人の兄のような少年は好きな人に努力を見せることを恥ずかしがるから、多分その前に逃げちゃうな、となのはは思う。外では適当にやって内側では努力している。妙子さんの前で、いや他人の前でどんな時でも本当に辛い姿は絶対に見せず、笑ってやせ我慢をし続けていると知っている。出会ったとき、必死に自分をつなぎとめる為に強がって、笑っていた少年。痩せぎすの少年、まるで透明な少年、どこにもいて、どこにもいない。自分は いないと、いなくなれ、と思っていた少年。でも悲しくなりたくないから悲しくないようにする、楽しくなりたいなら楽しくなりたいようにする、そういう一生懸命な少年。守りたい人間がいるから守れるようになろうとしている人間。今は善く生きるのに真剣な少年。眠そうな少年、いつだって、大好きな人がいてその人のことばかり。「そういう人が私にも見つかるのかな」「フェイトちゃんがいるやろ」「口に出てた?」「なのは」見つける必要はなかった、となのはは笑った。私はばかだなぁ、と。うん、今のは気の迷い、ちょっと恋をしてみたい、という女の子の気の迷い。「フェイトちゃん」「一緒に強くなろうね?」「うん」「青春やなぁ――――」「はやても」「はやてちゃんも」「おお………ありがとうな!」「一緒にみんなで」私たちは顔を見合わせ、笑いあった。となんか、空気が、エアーが、メイプルに感じたら不純な人間確定の空気がががががががが。「うわー、ちょっとおじさんの俺には眩しすぎる友情だ」いきなり俺パリングされた。やっぱり、俺にはああいう心の綺麗さはないから弾かれます。本当に子供のころでもああいう綺麗な心はなかったと俺は思う。今も14年間子供をやってきたが、俺みたいにひねくれた人間にはキツいものがある。だって、誰かひとりでも雪かき手伝ってくれれば――――結局私のせいだからっ別に恨んでなんかいないんだからねっ!やめよう。そういうの。俺には妙子さんがいるし。妙子さんは大人なんだから、俺は馬鹿な小賢しい大人でいい。あとそれを微笑ましそうに見れる大人なあなたたちが凄い。「おい、タツマ今日はどんな面白い必殺技考えてきたんだ?」「ん?ヴィータさんそれは秘密に決まってます、あと今日は絶招です」「今日は何読んできたんだ?」「えーと中国武術のバトル漫画です」「面白いのか?」「燃えます、なんかK1観たあとの独特な自分も強くなってくるような感じが出てくる熱い漫画です―――そろそろ始めていいですか?そろそろ」「今度貸してくれ」「いいですけど「私にも貸してくれ」――――「ハイハイ皆あんまり口出しちゃダメよ?達馬君のアルバイト代なんだから」リンディさんが場を鎮めるためにパンパンと手を叩く。「いやー本当にありがとうございます、機材ぶっ壊しても、弁償なしとかまじですいません」「まぁ私のお金じゃないから、いいのだけれど、月間業務運営目標で予定が空いてる時、便利で助かってるし、正直ガジェットよりや――はい始めて」達馬は思う。貴方は本当にそういう感じの行動似合いますよね、あと――――とりあえずよし。「アルバイト料金貰いに行きます」管理局の人たちから貸してもらっている、防護服のポケットから、グローブを取り出す。耐熱防寒防弾防刃の手袋、魔法の世界からやってきたグローブ。地球にはなさそうな特殊な物質か何かで作成された。天才的なデバイスマイスター手作りのお気に入りだ。誂えたようにという、言葉が似合う、手になじむ、もうこれを付けるだけで、強くなった気がする。律儀にもマリエルさんがわざわざ去年の俺の誕生日に作ってくれたものだ。これつけて家に帰ると、妙子さんが驚いた顔で「それ他の彼女がくれたの?山田ちゃんは高そうなボールペンだったし、いやーたっくんはモテるなぁ」とか聞かれて死ぬほど焦った。あと他の彼女ってなんか疑われている!?それは親バカ発揮しすぎだろ!?しかも何か皮肉られた!?あれは自分は前世から今の今まで彼女がいない虚しい人間だという説明をしなくてはいけなかった、悲しい時間だった。とか思いながら。それを手に嵌める。(強化)達馬は一気に全身の肉体を強化する。筋肉、皮膚、神経、末端までどこまでも強くする。まるで焚き火にロケット花火をブチ込むような、急激な暴力的な変化だ。ああ、これはいつもファンタジーだな、と達馬は苦笑する。空中で体をクルクルと回転させ飛び跳ねるのは視点が目まぐるしく、模擬戦で使えないのは現実だった。あとあまり肉体の変化は戻らなくなったらどうしようという恐怖があるのでただ。(もっと強化する)意識的に心の奥底で囁くことで、明確にする。自らで口にすることで、ファンタジーを現実に近づける。違うか、現実をファンタジーで強化する。やる、と言えば出来る。そう信じることが力になる。何かあったときでは遅い――死んでからは遅い、やりのこしたことがないように、悔いがないように笑って死にたい。日の出が見たかった、もっと生きたいと思っていた。でもいまなら、落ちたぐらいじゃ死なない。でも、もっと別の何かで死ぬかもしれない。こんな訓練は無駄になるかもしれない、無駄じゃないかもしれない。あの時は一人で死ねた。でも今度は死ねない、絶対に。せっかく周りには強い人たちがいる。ヒーローが居て欲しいような現実にヒーローが周りに居ないとき、俺がヒーローになれれば、と思う。きっと良いと思う。妙子さんのように、優しく助けてくれるヒーローがいてくれれば、誰でも嬉しいし、幸せだと思う。だから。ああ。今は夢がある。学ばせて貰う。俺はそんなに強くない、普通の男だから。積み上げて見せる。最後まで逃げずに諦めず、届いてみせる。もしいや、いいか。さて真面目にやるか。隣に並べるように、追いかけてやる。あーいつか「ついてこい」とか言えるようになってみたいなぁ。やっぱ誰だって、強くなってみたいだろう?目の前の少年の眠そうな瞳は深く。貪欲そうで、強欲で、なんでもかんでも一生懸命な。夢を追う若い騎士のような眼だ、ワクワクしてしまう、とシグナムは微笑む。そしてシグナムは苦笑する。本当の本気が見てみたいと思ってしまった。なりふり構わない、本当の本気を。その時は多分、この少年は怪物となる。その時がこなければ良いな、と思うが、やはり己の性か少し楽しみなのだ。「やっとか?無駄話が長くないか?」「貴女が勝ったら漫画貸してあげますよ」「言ったな――――空戦にするか?」「デカイ口叩いてすいません!」「まぁいい、始めるぞ」「ええ、お願いします、行きます」そうだ面白い、こいつは面白い、なにせ、面白いほど強いのだ。「来い」のーないのテンションあげそうな物質、あがれ、と達馬は強化する。「よし!いくぜええええええええええええええええええええええ!」一気にテンションを上げて、上げて上げて上げまくる思考が早くハイになるのだこれは、今日は短期決戦でいく!一撃必殺ならなんだって絶招だ!存在が中二病とかまたみんなに言われるような、爆笑モノの「意味あるのそれ!?」とかいうすげぇやつ見せて―――テンション下がった。バトルもたまには編。「やっぱり私よりも速い、小回りは私の方が速いけど」「どっかの漫画みたいに柱を投げて、それに乗って飛べんじゃねぇの?そしたら空戦もできるんじゃないか、なぁ?」「そこまで出来るのなら自分で飛んだ方がいいんよ?」「夢こわしちゃダメだよ、はやて」「じゃあさ、反動デカイ銃持って、撃って空を飛ぶとか!空気を踏んで―――」「ヴィータさん!無理だから!水ならできるけど!前やって出来たけど、調子に乗って立ち止まって、俺は犬かきとカエル泳ぎ以外泳げない!なんでこんなところまで走った、俺!?」「馬鹿だろ」「できたらやるでしょ!?みんな絶対!」「よそ見するなぁ!」「すいません」「凄いわねぇ、ウチに来てくれればいいのに、陸士としてなら登録出来るのにね」「餓死するくらい、食い扶持に本気で困ったらって言ってました」「あらあら日本じゃ無理ね」「妙子さんちなら大丈夫なんじゃないかな?働かなくても」「達馬君も男の子だからやっぱり、ね」「うん、ニートとか言い出すよりも全然いいよね、安心した」「そこ!人がそういう人間だとか思ってるのか、一応学年一位だぞ!?」「英語しゃべれる?今数学の問題言われて解ける?」「紙のテストの答えなら書ける!あと俺はオーフェンか!?所詮応用が出来ないペーパー用だ俺の頭脳は!基本反復作業の暗記だぞ!?昔の問題が出ると――――」「よそ見するなぁああ!」「すんません」「達馬くんが穏やかで真面目な子で良かったわ」「おだやかで、まじめ?」リンディは目の前の少年とシグナムの模擬戦を眺めながら、そう思う。目の前の少年はシグナムの流麗な斬撃を慌てながら掌で弾く。なんと、剣の腹に手のひらをぶつけて弾くのだ。武器は体と一体化していないから、感覚が掴めないそうで素手でやるしかないそうだ。武器を持つと武器に振り回されて弱くなる。それでも十分脅威的な戦闘能力だ。「発射された銃弾を指でつまめそうね、相変わらず」人格的に末馬達馬も末馬妙子も問題があったならば、管理下に置かなければならないという絶対がある、戦闘能力。技術的な問題、タクティカルスキルが磨かれれば、末馬達馬は陸戦ならば、指おりの存在になれるのだ。仕事上、欲しい、と思ってしまう。元来の性能だけで、陸戦A級以上、末馬妙子に至っては不明。管理局に入局したならば「人の形をした竜」とか魔法生物的な扱いになりそうな二人。達馬君の場合「亀のような兎、兎のような亀」かなとリンディは思い、自分ながら、いい表現かも、と微笑む。特に末馬達馬はレアスキルと一応認定された肉体強化だが、今イチ全貌がわからない。己の攻撃に魔法の非殺傷設定らしきものだけを載せることが出来る。リンカーコアは確認されているが、そのリンカーコアは独自な非殺傷とその強化の調節を行う程度の働きしかしていない。魔力自体はリンカーコアではなく末端の神経まで全身に行き渡っている。過去に肉体のなんらかの変化があった後天的なものか、それとも先天的なのかは検査してもわからなかった。「原因として幼児期の多大なストレスによる可能性が高いのかもしれないわね」あのお菓子を作る能力も。ある程度の自己のイメージにより励起させる原始的な魔法の才能なのかしら。自分の限界を神がかり的な何かで、超える才能。一種の超能力のような。精神的なものに影響されすぎるあたり。いえ。結局わからないわね。レアスキルが魔力によるのなら、あんなに空腹を感じるわけがないのだけれど。まぁまだ聖王教会の予言とかよりも、わかりやすいレアスキルね、と思う。「いつから使えたのか、わかりません、出来るからやってます」って言うのが気になるのよね。妙子さんも「何か出来るからやってる」ですし。あなたたちは本当に人間なのかしら、あと妙子さんはもう、諦めたわ、とリンディはふてくされるような気持ちになった。末馬親子は不思議すぎる。レアスキル名が二人とも「不思議なパワー」ミスティック・パワーだもの。突然少年の移動速度が上がる、「2速!」と叫び、さらに肉体強化を行ったようだ。先週は「ギア2!」とか言いながら速度を上げていたが、その前に「ギア4!」とか言っていたので、絶対に適当だ。最初の頃はあれをやる達馬君に思わずフェイトが瞬きするほど、驚いていた。「遅くなるかと思ったら、早くなった、フェイント!?」「言い間違ったの!ごめんね!ギア5!」という感じで。「ふふ…あら、音速超えたわね」衝撃音。空気を引き裂く瞬間が見えた、その瞬間少年の姿が見えなくなる。まるで人間大の質量兵器ね。脳や血管や臓器が破裂したりしないのかと思って、最初はこれを見て訓練を中止して管理局の病院に運んだが、「なんで?」とピンシャンとしていた。人間の肉体の形状のまま、特に変化のない、爆発的な運動能力の強化。管理局の記録上、彼を超える速度を生身で出せる人間はこの世にいない。どんな魔導師でも魔法による後押しではなく純粋な肉体の変化であの速度は出せるわけがない。音速で走る新幹線があったとしてその上で、生身で立てるわけがないのだ。人間ではないシグナム以上に人間をやめた速度、それでもシグナムは的確に斬撃を狙う。「―――――!」とさらに速度を上昇した後に響く置き去りになった声。末馬達馬の質量が移動するたびに衝撃波が発生し、空間を爆発させた音を響かせる。防護服は何故か一切破けたりしない。本当に不思議だわ。「あら、今日はそういう訓練なのね」周囲に衝撃の強さが増してくる。此処までいくと最早、ただの嵐だ。そこから――――と思ってるみたいだけど、どうやら、無理みたいね。「そっちか」と周囲が防御魔法の強さを上げつつそれを見る。それがみんなのちょっとした訓練にもなっているからお得よね。この状態になると、1か0の戦闘になる。即ち。「そろそろね」もう終わりか、とリンディは思った。燃料切れ。「腹減った……たんまです」ああ、調子に乗りすぎた。「達馬、もう少し我慢できないの?」そうフェイトが赤い瞳をぱちくりとさせながら言うが。「我慢したらお腹が空いて目が回って力が出ない、本当だよ?」うん、本当、顔が濡れたアンパンマンの気持ち、パンが投げれれれば、俺の場合はぱくりと食べて元気凛々である。「そ、そうなんだ……」「だからお腹いっぱいになればまた動ける」「そ、そう」何かドン引きされた……何この単純な生き物、とかそんな感じで、いや、どう反応すればいいかわからなくて滅茶苦茶困っているだけか、フェイトなら。「食べてすぐに回復って、人間技じゃないよね?」なのはがフェイトを後ろに隠しながらそう言う、何、その感染防止的な、あれだ、バリアとかえんがちょとかそういうの。「人間の俺が出来るなら、人間技だろ、なのは?」「人間?いきなり「ばぁ」とか言いながら自分の体を気持ち悪くして人を絶叫させることばかりするのが人間?」お前に言われたくない。お前だけには言われたくない!面制圧で俺をいっつも瞬殺するくせに前なんか「もー!すばしっこい!」「制空権とるのいいけど、下から滅茶苦茶パンツみえてんぞ、はしたな「ディバイン・バスターぁああああ!」―――あれ―――光が――――お前その色―――大人になったな」「たぁああああああああああ!たぁああああああああああ!たぁああああああああああ!たぁあああああああああああ!」「セクハラ!セクハラなの!?ディ、バインバス「土下座しますから許してください」もうたっくん、見えててもそこは見ないようにするのがマナーだよ?」「ふ、ふざけるなよ、空飛んでズ「ディ」やめてください、全くもって全然怪我とかしないけれど、心折れます」「妙子さんに言いつけるよ?いっつもそういうことするって」「お前、それ反則だろ、孫悟空の金環並だぞ、それ。あとハーパンぐらい履け、俺はピクリともこないけど凄い見ぐ「言いつけるよ?」ごめんなさい」おいそこの小娘ども、「イイこと聞いた」って顔するな。とか体が震える。あれこそが魔王の恐怖。「消化を強化ー!って消化速度や効率上げてエネルギーに変換してんの!多分!それもエネルギー食うけど!」そこらへん適当。「燃費悪っ!?」妙子さんには悪いなぁ、と思うくらいな。「何か食べて休め、次は段階を下げて強化を行え、攻撃に移れないまま終わるしな……今日は私が握ったおにぎりがあるが、食うか?」「おお、食べます、いただきます、ところで三角上手に出来るようになりました?」「シグナムは上手になったよ、この前一緒に模擬戦した後くれた梅おにぎり、美味しかった、あと次は私がやっていい?」「お褒めに預かり光栄だ、テスタロッサ、あと駄目だ、私はさっき、ただ立って素振りしかしていないからな」「すいませんね、素振りさせて。前はなんていうか3Dおにぎりだったな、あれ、まぁ塩加減は丁度良いから別に味は普通だけど、あと、隣でまさか砂糖で握る人なんてのが居るのにびっくりしました、面白いから止めませんでしたけど(俺も昔やったし)」「あれは、おはぎがあるならとか思っての実験なの」「まぁ食べれるけど、その中にアーモンドチョコが入ってるのがファッキンショッキンポイントですよシャマルさん」「穀物なら一緒って思って試したのよね、ほらゴパンがあるし」「それは……んー菓子パンではなく、菓子ごはんっていう新規開拓ですか、悍ましい発想ですね、もう、感心しちゃいます」「あれ、美味しくなかった?前、無言で黙々と食べてたから、美味しかったのかな、とか思ったのだけれど」「今度はせめて、チョコやめた方がいいですよ?中で溶けてドロドロで食べづらいです、焼きチョコとかならいいかもしれません」「えー美味しそうにたべてたんじゃないの、達馬君?……あと焼きチョコかぁ」「えーと別に発がん性物質とかじゃないし、食べれることは食べれるなって感じでした」「え、なんなん?また生物兵器作ってるんシャマル?あとたっくんはなんなん?」「き、聞かないではやてちゃん!?」「はやてーまたシャマルが生ゴミ作ってたぜ、唯一、逃げないでオモシロソーって顔しているタツマをゴミ箱にして」「ヴィータちゃん!」「なんでにげないの?」「毒じゃなければ、食えると思うけど?まぁ俺、味覚貧相だし、俺も色々やったなぁ、そう言うのってという生暖かい気持ちになれるし」ポーションでおでん作ってみたりとか、よくやったし、まだシャマルさんの方が真面目にやってる分、救いがある。いや、訂正。シャマルさんの方が救いようがない。「妙子さんの料理で大きくなったのに?」「うん、俺まじで貧相なんだ、たまに「どこら辺が美味しい?」って聞かれて、「とにかく美味しい」としか言えない自分の感性を何時も呪う」もう言葉で表現出来ないから、リアクションで表現してる。妙子さんが「もう、そんなに美味しいはずないでしょ?ふふ」と微笑んでくれるだけで、もうお腹一杯です。「感性なん?」「んー多分」「音楽美術とか読書感想文とか駄目駄目だもんね、馬描いて、犬とか言われるレベルの」俺は絵が下手だ。モシャモシャは一応、出来るけれどそれは「設計図」を書く気持ちでかくのだ。とにかく「絵を書く」と思うともう、ボロボロ。色んな定規とか使って、「え?」という顔をされながら書く、下に元の絵を描いて写す。「それでも、成績は5だ!」「なんで?」「えーと、人格的に優れてる――ハイハイ真面目に労働力になってますから俺」「うわーそれってどうなん?」「人間誰しも限界はある、そこを成績にするなんて可笑しい話じゃないか、人間誰しも5を取るチャンスが必要なんだぞ?」「ちょっといいかしら?」「なんでしょうか?」「燃料もっと積めないのかしら?」はちきれんばかりお腹いっぱいで戦え、そういうことかリンディさん。勿論「普通に吐きます、吹き出します」「試したの?」「ええ、山田とケーキバイキング行ったあとに夕方別れたあと一人山の中で―――わかりますよね?」同じく山の中にたまたまいた高町兄妹と「あ、たっくんじゃん」「今日も修行ですか?」「ああ」などと雑談したあと。「みててください、これが俺の―――」「すまん、今帰るところなんだ夕飯の時間が―――「帰っていいですよ?」」一人で山ん中でやったよ!暴発したよ!そのあと、一人しくしくと上着を脱いで、上半身裸でユニクロで罪悪感たっぷり、店員に嫌な顔されて服買って、コインランドリーの店を探しにいった。「――――うわぁ(すご、体すごっ)」「すんませんジロジロ見ないでください、情けを、武士の情けで、なんでもいいからレジ早くお願いします、あとタグ外して貰っていいですか?」「私女ですよ?」「いいですから、レジ、さっさとレジ、手を動かしてくださいね?」「あ、はい」滅茶苦茶ぎょっとされてたし、あのお姉さん、何か考え込んでたし。絶対捕まる一歩手前だったぞアレ。「おかえりー遅かったね、ん、あれ?今日一応おめかしの格好、私が用意して出かけるの見届けたんだけど、なんで別の服になって―――――――え?」「違います、それだけは言っておきます、正直いいます、遊んでてゲロまみれになって汚れて、服買って、コインランドリー行ってきました」俺は必死に涙が出てきそうになりながら、証拠物を見せた。もう、空気が凍ったね、妙子さんの顔が見れなかったね、疑われた瞬間に。山田と遊ぶの控えようかな、何かやばいし、絶対やばいし。でもなぁ、相談に乗ってくれる人が――――。「そこらへんは、何故か貴方の服が燃えない理由みたくはならないの?」「うーん、やっぱムラっ気の塊なんですよね、未だに原理がわかりません、超能力より物理現象無視したり出来る時ありますし」「ええ、「魔法」っぽいわね、人を驚かせる、タネが破れない手品みたいな」「なー達馬、いい考えがあるんだけど、聞くか?」「なんですか?」「じゃあさ、カロリーが滅茶苦茶あるアメリカ産の変な味のお菓子をミキサーでジュースと混ぜて液状にしてペットボトルに詰めてさ。リュックで背中に背負ってチューブで口に運ばれるように――「絶対嫌です、本気で嫌です」」無邪気そうに言う、ヴィータに達馬が眉を顰める、何かしら口元をヒクつかせ。それを見て皆、「ああ、一度は考えたんだ、似たようなことやってみたんだ」とすぐにわかった。リンディは思った。この子「誰もがやった、通る道」をレアスキルでもする子なのね、と。末馬達馬波紋が出来なくても、メメタァが出来る、不思議存在。腹が立つぐらい、何かモテるように成長。基本お姉さんキラー。レアスキル「ミスティック・パワー。」「妙子さんの場合、ゴッデス・パワーの方がいいのでは?妙子さんとかマジで何でも出来ちゃうし」「一緒のほうが親子って感じでしょ?」「ところで、貴方たちはなんて呼んでるの?その力を普段は」「なんとなく出来るからやった、反省はしていない!」「なんか出来るかな、そしたら出来たってやつ」「もしかして貴方たちってモノ凄い天才なのかもしれないわね、理解が及ばないタイプの」末馬妙子。いろいろ複雑になってきたお年頃の30歳。