<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

チラシの裏SS投稿掲示板


[広告]


No.35605の一覧
[0] ちょっとお姉ちゃん!(零 ~紅い蝶~)[海堂 司](2013/09/09 22:17)
[1] ちょっとお姉ちゃん! その2[海堂 司](2012/10/23 19:04)
[2] ちょっとお姉ちゃん! その3[海堂 司](2012/10/25 06:13)
[3] ちょっとお姉ちゃん! その4[海堂 司](2012/10/25 21:41)
[4] ちょっとお姉ちゃん! その5[海堂 司](2012/10/27 17:27)
[5] ちょっとお姉ちゃん! その6[海堂 司](2012/10/28 08:21)
[6] ちょっとお姉ちゃん! その7[海堂 司](2012/10/31 09:46)
[7] ちょっとお姉ちゃん! その8[海堂 司](2013/09/09 22:22)
[8] ちょっとお姉ちゃん! その9[海堂 司](2012/11/06 20:50)
[9] ちょっとお姉ちゃん! その10[海堂 司](2012/11/10 06:52)
[10] ちょっとお姉ちゃん! その11[海堂 司](2012/11/19 14:57)
[11] ちょっとお姉ちゃん! その12[海堂 司](2013/04/28 08:26)
[12] ちょっとお姉ちゃん! その13[海堂 司](2013/06/09 06:46)
[13] ちょっとお姉ちゃん! その14[海堂 司](2013/09/08 18:30)
[14] ちょっとお姉ちゃん! その15[海堂 司](2013/09/09 22:26)
[15] 【番外編】夜光虫 (零 ~月蝕の仮面~)[海堂 司](2012/11/02 10:40)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[35605] ちょっとお姉ちゃん! その13
Name: 海堂 司◆39f6d39a ID:fc355867 前を表示する / 次を表示する
Date: 2013/06/09 06:46
脅威から逃げる。悪意から逃げる。それは別におかしな事でもなんでも無いと思うのです。特にこの『夜が明けない村』においてはなおさら。

 この村に迷い込んで、いろんな『ありえない事』を体験してきたワケですが、逃げるという選択肢を取った事は無かったような気がします。お姉ちゃんを探し出して、二人で一緒にこの村から脱出する事が目的なのですから、どちらかといえば立ちふさがる、あるいはジャマをする幽霊は射影機の力でやっつける。そうやって、今までやってきたワケです。

 けれども、それはただ単に、逃げるという選択肢を取らざるを得ない、にっちもさっちもいかない状況が無かっただけなのかもしれません。

 手元には、射影機という『ありえないもの』に対抗する手段があった。だから異質な、あるいは異常なものに立ち向かってこれた。
 ホラー映画、パニック映画のように、追いつかれたら最後。とか、昔のファ〇コンのように、触れただけでアウトといった理不尽な状況が無かった。だから逃げるという選択肢を選ばなかった。

 …そんなわけで、どうも皆さん。天倉 澪です。
 長々と話してしまいましたが、今、あたしがどういう状況にあるかと申しますとですね、

『開けてくれえ、開けてくれえ!』

 と、悲痛な叫び声を上げる男性が、あたしが今、逃げ込んでいる部屋の中に入ってこれないよう、自分がつっかえ棒になるような格好で、引き戸を開けまいと頑張っているところです。それはもう、必死に。

『お願いだ! ココを開けてくれ! 頼む!』

 それこそホラー映画ばりにドンドンと戸を叩かれ、懇願されますが無視です。逆に力を込めて、ひたすら開かないようにしちゃいます。

 …走り回りましたよ。古い日本家屋を行ったり来たり、ドタバタと。始めはこの家の外に逃げようと思ったのですが、鍵がかかっているわけでもないのに開かないパターンです。

『うわあ! 追いついてきた! 助けてくれえ!』

 あたしは男性に追いかけられ… というか、一方的に助けを求められたワケですが… そんな男性を、鬼気迫る、般若のような形相で女性が追いかける。今までで一番、巻き込まれた感が強かったです。
 そして、そんな理不尽な追いかけっこの末、この部屋に逃げ込み、必死で引き戸を閉めているというワケなのです。

『ひえええええええええええ………』

 …引き戸の向こうから、何かズルズルと引きずる音と共に、情けなさ全開の悲鳴がフィードバックしていきます。同情はしません。悪いのはあの男の人です。



 …静かになりました。さて、一段落ついたトコロで。



 改めて、この部屋を見回します。あたしがこの家に来た目的は、男女の修羅場をリアルタイムで見学する事ではなく、お姉ちゃんが閉じ込められている座敷牢の鍵がココにあるという、樹月くん情報に従ったワケですが…

 ワケですが…

 ワケで…


 ワ… ケ…



『アナタもまだ若いのに大変ねえ』



 うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?



 失礼、かみまみた。もとい、取り乱しました。まさか人がいたなんて… いえ、もちろん正確には人ではないんですが、そのですね、あのですね、なんと言いましょうか。

『そんなに怯えなくていいわよ? どうせアナタもあの男に引っかかったんでしょう?』

 違います。

『いきなりこの部屋に押し込められて何事かと思ったら、あの女が押しかけてきたのよねえ… 二股かけられていたことに気付かなかったアタシもアタシだけど…』

 いやいや、いきなりそんな身の上話みたいな事を聞かされても困るんですけど。と、いいますかその… 今、あたしはものすごく動揺してます。ビビって壁に背中を思いっきり貼り付けるくらいの勢いで。

 えー とりあえず、女性です。さっきまであたしを追いかけていた女性とは別の人が、この部屋にいたようです。布団とか着物とか本とか、そういった雑多なものが腰の高さまで積まれたその上に、気だるげに腰掛けてます。逃げるのに必死だったとはいえ、声をかけられるまで気付きませんでした。
 ふっくらとした、女性らしい体つきです。ファッション雑誌のモデルのような、無理の無い、それでいて無駄の無いスタイル。少し着崩れた感のある着物を着ていますが、それも一つのアクセントとなるような着こなしです。

 …残念な事にただ一つ、どうにもこうにもならないと言いますか。そのせいで、どうやってもこの人はモデルにはなれないだろうなと言いますか、ぶっちゃけ、あたしがココまで怯えている理由がありましてですね。

『まったく、いつまでこんなトコロにいればいいのかしらねえ』

 その人はそう言って、疲れたように肩を落とし、ため息をつきました。そしてその拍子に、整った顔と、長く、艶やかな黒髪をたたえた頭が、



 プラン、プランと…



 うわあ、吐きそう。めっちゃ気持ち悪い。

『あら、大丈夫? 具合でも悪いの?』

 心配してくれてありがとうございます。ですがその原因はアナタですよ、とは流石に言えませんでした。そうです。この人、



 首がポッキリと折れてしまっているんです。



 首から下はすごくまともなのに、首から上がもう… いえ、美人なんですけど、というか逆に美人だからこそなんかもう、生理的に受け付けられないですよこんなの。幸い、襲いかかってくる気配は無いようですが… 襲いかかってこられたらもう、泣いちゃいますよ?

『ねえ、アナタ?』

 はい?

『どうしてこんなトコロにいるのかしら? あの男と何か関係があるの?』

 関係ってなんだ、と言いたいですが… ココは大人しく、正直に話す事といたしましょう。

「あの、お姉ちゃんが座敷牢に閉じ込められて、それを開けるための鍵がこの家にあるって聞いたから、それで…」
『…座敷牢?』
「はい」
『閉じ込められてるの?』
「はい」
『お姉ちゃん… アナタの姉が?』
「…はい」

 そんな短いやり取りの後、その人は少し苦笑いを浮べて、

『まだ若いうちから、そんなアブノーマルなプレイにハマるとろくな事が無いわよ?』

 なんの話だ。
 まあ、それは置いといて、その人はそう言った後、近くに置いてあった箱の中をゴソゴソとまさぐると、一つの古ぼけた鍵を取り上げました。 …それって、もしかして?

『多分、コレだと思うわ。あの男がしきりにアタシを誘ってたもの』

 …誘ってどうするつもりだったのかは、考えない事にします。
 そして、その鍵を手に、ゆっくりと立ち上がり、こちらに向かって歩いてきました。

 いえね、分かりますよ? わざわざ自分から鍵をあたしに渡そうとしてくれているという事は。ぶっちゃけ、この村で会った中で、樹月くんに次ぐいい人なんだなって事くらいは、あたしにだって分かりますよ。

 でもね、折れた首がね、一歩歩くごとに、プラン プランと揺れるわけですよ。
 しかもこちらに向かって歩いてくるわけですから、だんだんと細かいところが見えてきたりとかするワケですよ。 



 本当に皮と筋だけで、頭と胴体がつながってるんだな、とか。



 折れた骨が内側から皮をぐいぐいと突き破るように押している様子とか。



 縦に並んだ二つの目の、開きっぱなしの瞳孔とか。



 その人が一歩ずつこちらに近づいてくる度に、あたしの意識は一歩ずつ遠くへ行っちゃってますよ! 顔から血の気が音を立てて引いていく感覚をモロに味わっちゃってるんですよ!

『ハイ、鍵』

 …ああ、ダメ。そんな、90度超えの微笑で言われても、もう… と、いよいよ気を失いかけたその時、



 バン!



 と、何かが爆発したような音と共に、さっきまであたしが開かないよう押さえつけていた戸が吹き飛びました。そして次の瞬間、

『た、助けてくれえ!!』

 …あの男です。散々やられたのでしょう。顔も体も、まるで切り刻まれたみたいに、いたるところが引っかき傷だらけです。そして、

『いいかげんみっともないわよアンタ!』

 あの女性も、それこそ怨念のカタマリみたいな形相でこの部屋に怒鳴り込んできました。そして、男につかみかかろうとした、その時、

『…何よ、この女』

 気付いたみたいです。首の折れた女の人も、あたしに鍵を押し付けるようにして渡した後、憎々しげにもう一人の女性に向き直ります。 …会ってから今までで一番大きく頭が揺れてました。

『よりにもよって、家の中に連れ込んでたなんて!』
『フン! いつまでもギャアギャアとみっともないわねえ!』
『なあんですってえ!!』

 そして、女性二人による取っ組み合いのケンカが始まりました。男の人はといいますと、そのケンカを止めようともせず、部屋の隅で膝を抱えてうずくまり、ひたすら気配を消してます。 …気持ちは分からないでもないですが、巻き込まれた身としましては同情なんてこれっぽっちもできませんね!

『人のオトコに手を出しておいて、なんなのよアンタ!』
『アンタこそ、もう終わってるって気付きなさいよ!』

 …まあ、子供がどうこうできる話ではなさそうなので、ここは失礼させていただきまーす。あんまりはげしくやりあうと、首がもげちゃいますよー と、口には出さずに心の中でつぶやいて、その場を後にしました。

 出口へと向かう途中、背中越しにドッタンバッタンと派手な音が響いていましたが、気にせず外へと向かいます。あの三人の幽霊を射影機で除霊しないと出られないとかだったらどうしようと思いましたが、幸いそんな事はなく、普通に外に出る事ができました。



 はあああああああああああああああああああああ………



 外に出たとたん、あたしはその場にへたりこんで、大きくため息を吐きました。なんと言いますか… あんな大人にはなりたくないものですよ、ホントに。

 …そして、もう一つ問題が発生しておりまして。

 あの首の折れた女の人、いい人でしたけど、ビジュアル的な怖さ、恐ろしさでいったら今までで一番怖かったんですよね。それで、まあ、その、そういう時に人間の体に働く生理現象と言いますか、なんと申しましょうか… ズバリ言っちゃいますとですね、



 下着とレギンズが濡れちゃってまして…



  


 ハア… なんかもう、色々とどうしましょう。









〈あとがき〉

 チラ裏から移動いたしました。
 あと、感想掲示板の返信も再開しようかと思います。あれだけ偉そうに言っておきながら、勝手を言ってすみません。

 これからも、よろしくお願いします。


前を表示する / 次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.044284820556641