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No.35537の一覧
[0] 【習作】Sword Art Online - Reinca Reaper 【SAO転生・オリ主モノ】[レイス](2012/12/04 01:30)
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[35537] Trans_04
Name: レイス◆fb25e506 ID:cd665d91 前を表示する
Date: 2012/12/04 01:35


「あ…ありのまま今、起こったことを話すぜ!

 『俺は第50層の迷宮区攻略をいつも通りにソロで攻略すると思ってたら、あのキリトさんとパーティを組んで一緒に攻略をしていた』

 な…何を言ってるのか判らねーと思うが、俺も何をしているのか解らなかった…。頭が如何にかなりそうだった…。
 バグだとかチートだとか、そんなチャチなもんじゃあ断じてねぇ。もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…」

「独り言で何を呟いているんだ、メイソン?」

「いや、何。現状を端的に説明するためにテンプレをやっていただけだZE☆」

 合点が往かず、キリトは困惑の表情をする。対してメイソンはあっけらかんと何でもない意を手を振ることで返す。
 二人が居る場所は第50層の迷宮区。クォーターポイントにして100層から成る《浮遊城アインクラッド》の折り返し地点。
 基本に振り返るかの如く、この迷宮区は第1層の迷宮区と同じようなオフラインRPGのダンジョン遺跡を彷彿とさせる構造となっている。

 出現するMobモンスターも同様で、第1層のフィールドに出現する動物・植物系モンスターと類似する容姿を持つモンスターばかりだ。
 勿論、第50層の階層に見合う攻撃に防御力、思考ルーチンを有している。それでも基本を押さえていれば、決して負ける事のない難易度である。
 中層プレイヤーの中にも基本に立ち返る為にこの階層を巡る者は少なくはない。この階層がそういう場所であると、メイソンはキリトから聞いた。

(そういう豆知識は確かにアリガタイけど何故、攻略組で最前線で戦うスーパーソロプレイヤー☆キリトさんとPTを組んでいるんだろう…? リズさん。貴女は一体全体、彼に何を吹き込んだんですか)

 思い出されるのは、有無を言わせぬ迫力満点の微笑みを湛える一人の少女。それはもう、清々しく厚顔で唯我独尊かつ尊大に傲慢なオーラを発しながらこう仰られた。

『メイソン。アンタはこれからこのキリトとパーティを組んで迷宮区攻略をするのよ。あ、もう決定事項だから質問は一切必要なしね』

『え、あの、リズ…いえ、リズベットさん? 話が全く、これっぽっちも、マイクロ単位どころかピコ単位すらも話が見えないのですが…?』

『質問は要らないって言ったわよ。メイソン、アンタが言うべき言葉はただ一つ――…"はい"か"Yes"よ。"Yes, Mam"でも良いわ』

『…』

『返事は?』←女神(修羅)の微笑みを湛えている。

『イ…イエス、マム!!!』

 …――

 いや、ホント。如何してこうなった。進路先に出現する敵を蹴散らしながら、メイソンは幾度目かの愚考が頭を巡る。
 リズベットに言われるがままに、キリトが申請するPT参加要請に同意し、尻を引っ叩かれて迷宮区へ直行。そして今に至る。
 迷宮区半ばまで会話の"か"の字もなく足を進め、そこでお互いに自己紹介がまだだったのでお互いに頭を下げ合う。この間の襲撃を謝ったり、弓の事を話したり等々…。

「―…そうか。それで弓に使う剣の補充のために武具を扱うリズと交流があったのか…」

「そ。射った剣はなるべく回収しているんだけど、射る毎に剣の耐久値も目減りするから武器屋の存在は必須なのよ。
 数を揃えるにも、耐久値を回復させるにも鍛冶スキルのある職人が必要で、そんな最中に出会ったのが彼女だったという現実。
 本当ならフツーな女の子よりも、ダイナマイトボディのエロスを醸し出すセクスィーな女性の鍛冶職人と出会えれば良かったと俺は思うんだが、キリトさんはどう思う?」

「…黙秘させてもらうよ」

 然様で。と、索敵で進路先の左角より二秒後に敵モンスターが顔を出すのを確認。大きさから、小型の敏捷タイプと判断する。移動力のある敵は先手を撃つに限る。
 先手を取る為に弓に番える剣は、細剣を選択。剣を番えて弦を引き絞り、ソードスキルを発動。射る。投射された細剣は瞬時に曲り角の壁面を這うように通過し、顔を出した敵モンスターの頭部に命中。
 光を放って消滅をする。一撃で屠ったため、どの様な容姿をしたモンスターかは不明のままだが、リザルト画面の経験値から小人の容姿をするコボルトだろう。

「それで。第50層ボスはお地蔵様みたいな恰好をして、カバディをしながら飛鳥文化アタック夜露死苦!なラッシュ攻撃を仕掛けてくるのか」

「お前は何を言っているんだ?」

「俺も自分で言っていて判らなかったよ。詰まり、複数の腕から繰り出される絶え間ない連続攻撃に気を付け、隙を見つけて攻撃をすればいいのか」

 センスがぶっ飛んだ冗談は流石に通じなかったが真逆、あのテンプレがキリトの口から飛び出すとは思いもしなかった。
 それは兎も角として、フロアボスの部屋が間近に迫っている為、キリトから過去の経験からボス攻略のヒントを伝授してもらう。
 クォーターポイント毎に、第25層や第50層には特別強力なフロアボスが居るとのこと。マジか。道理で第25層では逃げ撃ちでしか勝てなかった訳だ。あれはマジ死ねる。

「…――」

「ん。キリトさんや、どげんしたの?」

「…いや、何でもない。そろそろボス部屋が見えてくる頃合いだ」

 顎に手を添え、キリトは何やら考察に没頭していた。彼は素っ気ない返事で歩みを早め、メイソンの先を行く。その顔には『解せない』と書いてあるが、さてはて?
 それから少しばかり歩くとフロアボスの部屋に通じる扉の前に到着をした。真っ直ぐにこの場所を目指したので、小一時間もかからなかった。既に攻略済み且つ、迷宮区のマップはコンプリートされて露店にてデータを購入済みだからこそ出来る芸当だ。
 そしてどの階層でも思うのだが、この扉は無駄に大きい。これはフロアボスの巨体に合わせて作られているのだろうか。他の階層のボス達が遊びに来る為か、設計者が平等精神を発揮してどんな大きな体躯のボスも通れるようにしたのか…。アインクラッド七不思議の一つになるだろうな、きっと(嘘)。

「それじゃ、ボス攻略と行きますか。キリトさんや、心の準備は出来たか? 回復ポーションの備蓄の確認は? アホ面な顔をマジ顔にする準備はOK?」

 キリトは何やら、閉じているボス部屋の扉を見上げて茫然としている。何が彼をそうさせたのか皆目見当がつかないが、彼の肩を叩いて現実に戻ってもらう。

「フロアボス撃破には攻略組のキリトさんの力が必要なんだ。頼りにしているんだから、頼むぜェ。あ、それから。ラストアタックボーナスね。止めは俺が刺すから、忘れないでくれよ?」

「あ、ああ…。任せてくれ――」

 未だに何か釈然としないのか、その返答には覇気がない。本当に大丈夫なのか此方が心配になるが、あのTUEEEキリトさんなら大丈夫だろうと気持ちを切り替える。
 此処から先は、命をチップにした本当の戦場が待っている。コンティニューなんて出来ないデスゲームの真実がこの中にある。
 開けた扉の中は暗闇。これはフロアボス戦では何時もの演出だ。そして後方に流れた扉が閉まる音。隣りから動揺する気配を感じる。最早、それに気を使う時間はない。

 フィールドに光が灯り、このフィールドの奥で佇む主の姿が目に映る。地蔵の如く直立して佇む、その姿はまるで修行僧のようだ。
 背丈は二階建ての一軒家程度だろうか。三対の腕が拝み、祈りを捧げるように手を合わして二人を迎え入れた。
 その伏せた瞳が見開かれ、声を一つ。雄叫びだ。衝撃波を伴う声に顔を顰めて受け流す。若しかすれば、今の声には麻痺効果があったかもしれない。無警戒に居たならば、先制攻撃を許しかねなかった。

 合わさった手が其々、その巨体の背の後ろに回される。そして再び掌が見えた先に見えた物、それは剣だ。両手剣/細剣/曲刀/槍/戦鎚/戦斧だ。
 瞳を輝かせたソイツのHPバーが表示される。数は三つ。それと同時に、奴の頭上にフロアボス名が表示される。《Illshambles the Bloody Bonze》――血塗れの破戒僧。
 どう見てもあれは地蔵様ではなく、阿修羅だ。メイソンは片手剣を弓に番えながらも、そう心の中で愚痴る。フロアボスが軽く前傾姿勢となったので、ボスの気勢を殺ぐ為に射る。

 剣が細剣で弾き飛ばされる。初めから命中するとは思ってはいない。だが、そのまま此方が射った剣が砕けて消滅するのは予想外だ。
 ボス戦を想定し、持てる剣の耐久値は高めの物を用意している。今の片手剣はアイテムストレージ内でも耐久値残量は上位に位置している。それが破壊された。
 つまり、敵の攻撃力が非常に高いか武具破壊の特殊効果持ちかのどちらかだ。何れかにしろ、楽に勝たせてくれる相手ではない事は確かだ。

 アイテムストレージから新しい剣を取り出そうと思ったが、途中で中断する。何故ならば、敵が直ぐ目の前に居るからだ。
 彼我の距離を瞬時に詰め寄り、両手剣による斬り下しを繰り出していた。側面に回避。だがそれを見越していたボスは曲刀による水平切りをし、それを弓の峰で受け止める。
 踏ん張りが効かない。堪えるよりも先に、体はフィールドを大きく跨ぐように吹き飛ばされた。大した馬鹿力だ。空中でアイテムストレージから曲刀を選択し、展開。新たな矢を手に取る。

 ――さあ、死闘の始まりだ。


  ◆


 キリトはこの現状/事態を只々、驚愕一色に染まるしかなかった。それでも眼前に迫る剣戟を躱し、往なすための防御は忘れない。
 此奴は第50層のフロアボスだ。以前に垣間見た強敵の容姿そのものだ。だが、第74層の最前線でレベル上げをしているキリトにとって、今やこのフロアボスの攻撃など恐れるに足りない。
 以前よりもレベルは当然として武具やスキル熟練度、それら全てが過去を遥かに上回っているのだから。それこそがレベル制MMOの醍醐味/理不尽。このSAOも例外ではない。その筈だった。

「――ッ!」

 往なした腕に衝撃が走る。敵の斬撃、両手剣を防御したことによる副次効果だ。防御を少しでもミスると、一時的な硬直時間が発生する模様。
 見れば、奴の他の腕の剣/細剣から光が漏れており、高速の斬撃がキリトに襲いかかろうとしている。認識できても、硬直で体が動かない。
 明後日の方角から飛来する剣がボスの頭部に飛来する。それをボスは細剣で迎撃、剣を破壊する。そして標的を攻撃主であるメイソンへと替え、即座に槍による突進を始めた。

(巫山戯ろよッ。細剣中位技を使った上に、スキル発動後の硬直が無いだと!?)

 剣を破壊した先程の細剣によるスキル技は、キリトの見間違いでなければ九連撃。最前線でも良く使われる技を、このフロアボスは使用した。
 それだけではない。ボスとはいえ、スキル技を発動させた後は必ず硬直時間は生じるものだ。だがそれが起らない。それだけではない。

(ボス部屋の扉が閉まった事で退却は不可能。素手で戦う筈のボスが剣を手に取り、見た事のない攻撃手段で襲ってくる――…!)

 そして何よりも…――!

「どうして此処に、"倒したフロアボス"が居るんだッ?!」

 フロアボスの亡霊が、現実に存在した。

 フロアボスは、更に上の階層へと到達するために倒さなければならないモンスターだ。倒すことで、更に上の階層のボスを倒す機会が生まれる。
 そうなれば当然、倒されたフロアボスはその役目を終え、二度とその姿を現すことはない。そして現在の最前線は第74層だ。つまり第73層までのボスは倒され、もう二度と姿を拝むことはない。
 だが此処に、第50層のボスが現実に存在し、メイソンとキリトに攻撃を仕掛けている。嘗てのボスは剣を持たず、素手によるラッシュ攻撃がメインだった。それが何故? その思いがキリトの胸中を駆け回る。

「くそったれッ!」

 毒を吐き、吶喊。敵はメイソンに近接攻撃を仕掛け、メイソンはそれは俊敏な動きで躱して反撃をしている。
 彼は敏捷値極振りにしている聞いた。それを生かし、敵の三対による連撃を回避している。否、躱しながらメニュー画面を展開して操作をしている。
 オブジェクト化した剣を時には上空へ放り投げ、或いは足元へと落とす。または手に取り、弓矢として射る。その一連の動作は淀みなく、常に流麗だった。

 その様に驚愕で呆けるよりも優先すべきことあるをキリトは自らを律し、ボスの隙だらけに見える背後に斬撃を見舞う。左右の手に剣を携える二刀流で、だ。
 既にメイソンには知られている。そして、この未知の敵と化したフロアボスに出し惜しみをする余裕もない。全力で挑まなければ、此方が殺される。
 右手の斬撃は敵の背中を深く斬り刻み、続く左手の剣戟は曲刀によって防がれた。まただ。この敵は連続攻撃を許さない。多腕である事を生かし、メイソンの攻撃を継続しながら一対の腕の反撃が来る。

 曲刀と槍による連撃。曲刀は不規則な軌道を描き、槍はリーチの長い速度を乗せた超連撃を繰り出してくる。これも一種の二刀流による攻撃だ。真逆、自身が二刀流の洗礼を受けるとは夢にも思わなかった。
 間合いが徐々に離される。リーチの長い槍の攻撃は厄介だが、タイミングを合わせれば接近は出来る。それを曲刀の不規則な斬撃によってその隙をカバーしているため、付け込めない。
 そして敵の斬撃有効範囲からキリトが離脱すると、曲刀の腕が此方を威嚇するようにゆらゆらと揺らしたまま攻撃を止め、槍の腕は再びメイソンへの猛攻に加担する。

「俺は纏わりつく蠅か蚊なのかよ…!?」

 先程から、否、常に敵の攻撃目標はメイソンひとりだ。敵の思考ルーチンがメイソンの遠距離攻撃を最優先攻撃対象に指定しているのだろう。
 弓による射撃を真面に浴びた時、敵のHPバーの一つの一割を削った。その時は槍だった。もし、それが両手剣であれば、三割を削ったかもしれない。それ程までに、弓の威力は絶大だった。
 メイソンのレベルは69。安全マージンは十二分に取れており、レベルによる筋力値補正も高いようだ。その上で、敵の攻撃有効範囲外から攻撃可能となれば、キリトとて一番の脅威を優先して倒そうと思う。

 そうと判りつつも、キリトは憤りを覚える。彼とて、最前線で攻略組として/ソロプレイヤーとして戦っているSAOプレイヤーだ。下層のモンスター相手を対等以上に戦う自負があった。
 嘗て倒したフロアボス/変容した姿で再び会い見えた時、敵はキリトを歯牙にかけない。その現実に、キリトの頭の中のスイッチが切り替わる。此処は攻略の最前線だ、と。
 敵の姿は第50層のフロアボスの様相を呈しているが、全くの別のナニカだ。良く見ろ。そして攻略の糸口/弱点を探り/確定し、攻めろ。キリトは機械的に思考を進める。

 そしてソードスキルを発動する。《ヴァンガード・ソルストライク》。左右の剣を重ね合わせ、一本の剣として大威力の一撃を繰り出す技だ。跳躍をし、上空から襲撃する。
 曲刀が防御の姿勢に入る。そんなモノは突破するだけだ。交差した両者の剣は、次の瞬間には一方が弾かれ、一方の剣は攻撃に成功する。勝者はキリトだ。
 大威力の攻撃に敵は被ダメージ硬直が発生。キリトも大技のスキル発動後により、行動は不可能。そして、その隙を奴は見逃さない。敵の頭部に/胴体に/槍を握る腕に、剣が突き立つ。

 メイソンの弓による連撃だ。予めオブジェクト化してフィールド中に転がしていた剣を使うことで、連続攻撃を可能にした。
 敵が悲鳴を上げる。敵のHPバーの一本目を削り切った。まだ二本分が残っている。キリトは硬直が解けた直後、敵の正面に回り込んだ。そして攻撃を再開する。
 敵の反撃が繰り出される。それを左右の剣で弾き、そして躱す。敵の剣は五本。メイソンの攻撃で、槍を握る腕が空手となっている。

 その腕は、嘗ての第50層のボスと同様の素手の攻撃を繰り出しているが、槍による連撃よりも対処が容易い。躱し/弾き/迫り/攻撃をする。この繰り返しだ。
 だが、このままの攻防を続けるとジリ貧なのは自明の理。次々に掠る敵の斬撃は此方の自動回復量を優に上回り、既に此方のHPバーの三割が削られている。
 此方の攻撃手段は左右の手の二つ。敵は一つがリーチの理を失いつつも、六対の六つ。リーチも敵の方が上だ。ソロで挑めば、敗北するしかないとキリトは確信する。

(真逆、中層で勝てない敵と相対するとは思いもしなかったぜ…)

 キリトは頬を小さく釣り上げて、笑みを浮かべる。敵が全ての腕による同時攻撃でをし、それを防ぐことに成功したものの、防御をしたことによる硬直をしてしまう。
 敵は全ての手を振り上げ、その全てのソードスキル発動を光を灯している。あれを全て受け止める事は不可能だ。そしてあれをこの身が受ければ、死ぬ。
 それ故の笑み。そして、この先の展開を見越しての笑み。キリトもソードスキルを発動体勢に入る。だが、それでは遅い。迎撃にはならないとキリトも理解している。

 神速の閃光がフロアボスの胸中を貫く。敵のソードスキルはその衝撃で霧散。膝を着き、その巨体が初めて麻痺に似たダウン状態となった。
 敵に突き立つ剣は細剣。透き通る琥珀色をした剣が敵に持続ダメージを与え続けている。それを目にしたキリトは思考するよりも早く、二刀流スキル技《スターバースト・ストリーム》を発動する。
 合計十六連撃の斬撃が無防備を呈する敵の身体に繰り出される。後方からも、敵の腕や頭へと次々と剣が飛来し、突き刺さる。

 メイソンの一射が改めて敵の腕/鉾を持つ手を射抜き、敵が鉾を取り零した時に其れは起こった。それは丁度、敵の全ての腕から剣が消え失せた時の事だ。
 その瞬間、先程までダウンしていた敵の瞳に光が宿り、このフィールド全体に轟く咆哮を上げた。キリトは攻撃を中断して距離を置く。そして敵の様子を観察する。
 見遣れば、敵のHPバーが残り一本を切っていた。HP残量による攻撃パターンの変化か。それとも剣を全て失った時に起こる変化か。どちらしろ、敵は動く。

 再び起き上がり、そして全ての腕を大きく広げる。そして、その体に光が灯る。その様はまるで幽鬼のようだ。
 敵の攻撃が来る。確信はない。だが、敵の攻撃方法は判った。キリトは身構える。そしてメイソンが攻勢を仕掛ける。メイソンは知らない。嘗ての第50層のボスの攻撃を。
 敵は跳躍でその一射を躱した。天上間際まで飛翔した巨体は真っ直ぐメイソンが居る場所へと降下。メイソンは位置を変え、着地地点に偏差射撃。命中。敵は追撃を行う。

 防御をかなぐり捨て、被ダメージ硬直を無視した特攻。第50層のボスが、HPをレッドゾーンにした際に行った攻撃パターンだ。
 その猛攻は、今は時のギルドであるKoB《血盟騎士団》団長であるヒースクリフのユニークスキルがなければ大敗していただろう。
 それが今、更なる敏捷と攻撃力を兼ね備えてメイソンとキリトの目の前に再び姿を現した。目に付いたプレイヤーを片っ端から攻撃を行い、此方の攻撃の一切を防御しない。その隙を突く。

 キリトの斬撃が敵を斬り裂く。敵が此方を見る。同時に三対の腕が一斉に攻撃を仕掛ける。

「さあ、終わりにしよう――!!」


  ◆


 拳の一撃を往なす。そして次の拳を体を捻り、直撃を躱す。秒間六発を優に超す拳が幾度となく迫る。
 その全てを対処するには手が足りない。故にキリトは、防御し切れない攻撃を受ける前に態と拳を受け止め、防御姿勢のまま吹き飛ばされる。
 そしてメイソンが攻撃を仕掛け、態と敵の攻撃目標となる。そしてキリトはその隙に回復を行い、再び攻勢を仕掛ける。

 ダメージを与えるプレイヤーをターゲットにする、敵の思考ルーチンを逆手に取った戦術だ。
 嵌め技と化した攻略法を得て、敵のHPを確実に削り続ける。これを幾度となく繰り返すことで、敵のHPを撃破目前のレッドゾーンへと陥れていく。
 撃破する為に時間を要する攻撃ではあるが、確実性があった。故にこれを繰り返すこと――…最早、忘れた。

(何時になったら、此奴のHPは底を見せるんだ?!)

 キリトは苛立ちを募らせていた。何故ならば、フロアボスのHPが減らないのだ。敵は、HPがレッドゾーンに至ると同時に攻撃を中断し、瞑想を行う。そして再びHPパー半分まで回復をする。
 これを幾度も幾度も幾度も幾度も幾度も幾度も幾度も幾度も幾度も幾度も幾度も幾度も幾度も幾度も幾度も幾度も幾度も幾度も幾度も幾度も幾度も幾度も幾度も幾度も!
 キリトとメイソンは、敵のHPバーの四割を削ることは出来る。だがその先が続かない。全てを削り切る前に、回復を許してしまう。打開策が見付からず、只々唯々終わりの見えない攻撃/死闘を繰り広げる。

 キリトは、手にする剣《エリュシデータ》と《ダークリパルサー》の耐久値が気になっている。幾合もの攻勢と防御によって耐久値は大きく減少しているからだ。
 耐久値が底を着けば剣は壊れてしまう。他の剣に交換するにも、奴に確実なダメージを与える剣はこの左右の片手剣に匹敵する剣を彼は持っていない。
 どちらかの剣が破壊されれば、その時点で此方の優位性は確実に崩壊する。後の一割の削る戦術が見つかっても、それを実行できる攻撃力を喪失していては意味がない。

(転移結晶での撤退も視野に――…駄目だ。扉が閉じている以上、使えない可能性が高い!)

 嘗てキリトが所属するギルドが全滅した、あの忌まわしいトラップ部屋。出入り口は閉じ、転移結晶を無効にしたフィールドの悪夢がフラッシュバックする。
 もし使用可能でも、あの攻撃の前で転移結晶は使えない。若しかすれば、転移結晶に反応をして結晶を使うプレイヤーに特殊な攻撃を仕掛ける可能性は否定できない。それこそ命取りになる。

「ナニか、何か無いのか…!」

 周囲を見渡す。視界に映るのはボスのフィールド。戦闘を繰り広げるフロアボスとメイソン。メイソンは一貫して敵の攻撃の合間を縫って剣のオブジェクト化と射撃を行っている。
 メイソンが有する剣の多さには驚きを覚える。あの中にはSAOプレイヤーから殺して奪った剣もあるだろう。それでも、リズベットの協力が一番の要因だろう。
 射られる剣はピンキリだ。美しい剣があれば、粗製の剣がある。ボロボロの剣や質実剛健な剣も見られた。リズベットから与される剣は、失敗作から成功作まで性能や種類も問わないようだ。

 そして奴の戦い方にも目を見張る。高い敏捷値を生かして敵の連撃を確実に回避し、場合によっては弓で往なしてもいる。
 キリトのようにステ振りで筋力値を主体にしているプレイヤーなら可能な受け止められる攻撃を、足で回避し続けていた。
 常に敵の攻撃の先を読み、時には瞬間的な反応速度が必要になる回避運動を行っている。それをボス攻略開始当初から何一つ衰える事なく、躱し続ける。

 延々と続く戦闘に疲労を覚えるキリトは、攻撃を躱すよりも攻撃を受け止める回数の方が多くなってきた。攻撃も粗くなっている。
 この状態で若しも、敵の手に再び剣が戻れば勝てないだろうと、消耗している精神状態であっても理解していた。

 だがメイソンの瞳は/敵を見据え続ける眼光は敵を射抜き続けている。それが彼の才能か、それとも何か彼をそのように駆り立てる何かが存在するのだろうか。
 彼がレッドプレイヤーとして戦い、リズベットがそんな彼を助けて欲しいと懇願する何かが、其処にはあるのだろうか…?

(――アレだ!)

 キリトは駆ける。敵を打倒する手段はこれしかない。もしそうであれば、一つの仮説が成り立つ。それは倫理的で、そしてメイソンには残酷な現実となる。
 キリトはその剣を手に取る。武器スキルを会得していない為か、武器としての認識しない。単に重量のあるオブジェクトとしてキリトの手に圧し掛かる。
 急がなければならない。メイソンの回避能力は高いが、完全に躱しているわけではない。視界の左上方に表示されるPTメンバーのHP情報は、メイソンのHPが半分であることを示している。

 残り数分でメイソンのHPは完全に削り取られる。そうなる前に、必勝の可能性をお膳立てし、現実のものにしなければならない。
 鉾を運ぶ。槍を抱える。細剣と曲刀を持つ。戦鎚を/戦斧を引き摺る。両手剣を背負って駆ける。そして――、

「メイソンっ!!!」

 咆哮を伴い、キリトは敵に吶喊する。十六連撃のスキル技を伴い、敵の矛先を自分に向けるように仕向ける。

「集めた剣を――撃てッ!」

 メイソンが見る。それを視界に収め、認識/理解する。そしてキリトの意図を察し、離脱する。それを確認する暇もなく、キリトは連撃を敵に叩き込み続ける。
 敵の拳が迫る。上体を伏せて躱し、続く拳は剣戟と合わせて往なす/攻撃する。三の拳は脇腹を捉え、吹き飛ばされる。しかし、スキル発動補正で大きく吹き飛ばされる事はなく、連撃を継続。
 攻撃に次ぐ攻撃。キリトとフロアボスの攻撃の連鎖を幾合となく交わす。だがしかし、回数制限のない敵とは異なり、キリトは16が限界だった。

「――――ッッッ!!」

 最後の一撃が敵の懐深く抉る。そして見れば、敵のHPバーは残り二割弱となっている。レッドゾーンぎりぎりだ。その結果にキリトは、笑みを浮かべる。
 敵の拳がキリトを大地へと叩き付ける。息が詰まる。それでも顔を上げてみれば、敵の拳にソードスキル発動の光が灯っている。
 その拳が一度振り下ろされれば、キリトのHPが尽きるまで殴り続けるのだろう。そうであると、不思議と確信が持てた。だがそれと同時にもう一つ、確信がある。

「俺達の、勝ちだ!」

 拳は振り下ろされず、敵は大きく吹き飛ぶ。その巨体が落着し、フィールド端まで滑る。その末に苦悶の悲鳴を盛大に上げている。
 もう一方を見れば、メイソンが射った態勢で立っていた。何てことはない。メイソンが剣を射ったのだ。戦鎚を/このフロアボスが使っていた巨大な戦鎚を。
 再び敵を見れば、HPがレッドゾーンに突入している。メイソンは二射目に細剣を選択。重々しく雄大に、身の丈を超える細剣を弓に番える。そしてスキルを発動する。

 敵が起き上がり、攻撃主のメイソンを睨ね付ける。細々と細剣に光が粛々と宿り続け、そして光が細剣の全てをを包み込んだ瞬間、投射。キリトがその軌跡を認識/反応するよりも早く、光が敵の胸部を射抜く。
 悲鳴が上がる。敵は瞑想/回復に走らない。キリトの読みは当たった。敵の剣を使用し、短時間で大ダメージを与える事が攻略の鍵だったのだ。
 メイソンは足元に転がる、残り四つの敵の剣から戦斧を選択、ソードスキルを発動、投射。続いて両手剣を、鉾を射る。敵のHPは、残り数ドットだ。敵を倒せる。キリトがそう確信した時――、

『―――!!』

 今までとは異なり、声なき咆哮がフィールド全体に轟く。その声にキリトの身体が動かなくなる。麻痺だ。敵の最後の悪足掻きに、キリトは舌を打つ。
 見れば、メイソンは弓に槍を番えた体勢のままに片膝を着いている。彼も麻痺になっていた。あと少しという所で必勝の策が無効化されたその渦中で、敵が行動を再開する。
 その移動速度は歩く程度のものだ。足運びはぎこちない。弱点を突いたことによるダメージエフェクトなのかもしれない。だから、突き立つ剣による持続ダメージも発生していない。

(――メイソン、撃て…!)

 キリトは声にしようとし、掠れ声のみでメイソンへは届かない。敵はキリトに見向きをせず、真っ直ぐメイソンへと向かう。
 メイソンは終に槍を取り零す。体は傾き、そのまま地面に倒れ伏す。彼は回復を行っておらず、HPはレッドゾーンのままだ。これは不味い。拳の打撃数回でやられてしまう。
 動きが鈍いままの右手を振る。だがメニュー画面は開かない。腰のポーチに解毒薬を入れていなかった事に悔む。そして遅々としながらも、匍匐擬きでメイソンの許へと向かう。

 そんな無駄な行為をしている合間に、敵はメイソンを攻撃範囲に収める。そして雄叫びを幾度も上げる。まるで勝利を謳うかの如く/怨敵を討つ悦びを世界に知らしめるかの如く。
 メイソンは突っ伏した体勢であり、表情は窺えない。だが、空いた右手が起き上がろうと懸命に地面を押している。麻痺が、そんな思いを嘲笑う。
 敵の三対の掌が一つに重なる。一つの拳となった手に目映い光が集束していく。初めてみる攻撃だが、その拳が振り下ろされるのであれば、メイソンの命は確実に奪われる運命にある事は判る。

「メイソン!」

 掠れながらも、芯の通った声を張り上げる。同時に、メイソンは吼える。自らを束縛する状態異常の効果に抗する為に。だが動けない/動かない。

 阿修羅/死神の拳/鎌が、振り下ろされる。

 ソードスキルの光が、フィールドの大地へと落ちる/墜ちる。

 …

 ……

 ――…、

 フロアボスの頭を、槍が貫いた。

(――…何?)

 敵の巨体が崩れ落ち、そして転倒と同時にその身体は光となって霧散する。無数の光が周囲を目映く照らしている。そして虚空に浮かぶ『Passed the Next Floor』の綴り。
 そしてキリトの眼前に表示されるリザルト画面を見止めた事で、敵モンスターを撃破した事を理解する。次瞬、キリトは脱力する。そして、そのまま地面に仰向けとなった。
 高い天井が、遥か遠くに感じる。疲労感が一気に押し寄せ、身体はピクリとも動かない。理解の範疇を超えた結末に、キリトは一人茫然とするしかなかった。

 そういえば、とキリトは頭だけは如何にか動かし、目的の人物を探す。そして見つけた先にはメイソンの姿が。仰向けに大地に倒れ、左手からは何かが四散した光が灯っていた。弓だろう。
 彼の左手から先程まで使っていた弓が見当たらない。成程。理屈は解らないが、あの状況下で辛うじて槍を放ち、敵の拳を弓で弾いたのだろう。流石にノーダメージには出来なかったようだが。
 メイソンのHPは辛うじて残ったのは奇蹟的である。弓の耐久値に防御のタイミング、そしてメイソンのHP残量の何れかでも不足をしていたら、彼は生き残れなかった。その結果、彼は生き延びた。

 その強運に驚くと同時に呆れも覚える。何もかもが如何でも良くなり、もうこのまま寝てしまおうという結論に至る。
 此処はボス専用のフィールドのであるため、Mobモンスターは出現しない安全圏だ。
 流石に剣の耐久値がとても危ない領域にあるため、朦朧とする意識の中で用心して剣をアイテムストレージに放り込む。そして大の字になって、完全に地べたに寝転がる。

(――ああ、眠いなぁ…)

 弓やPK、今回のボス等々、メイソンとリズベットに聞きたい事は沢山あるが、疲れた頭は睡眠を最優先事項として処理を進める。
 キリトの瞼は上と下が完全にくっ付き、全身の筋肉は脱力し、呼吸は穏やかな寝息へと変化する。

 とどのつまり、寝たのである―。



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