<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

チラシの裏SS投稿掲示板


[広告]


No.35503の一覧
[0] 【習作】 うちの妹が人外をヒャッハーしてる件について (東方project)[myon](2012/10/14 22:30)
[1] うちの妹が九尾の狐をヒャッハーしてる件について[myon](2012/10/22 00:16)
[2] うちの妹がいなくて幻想郷がヒャッハーな件について[myon](2012/10/28 03:14)
[3] うちの妹が鬼をヒャッハーしてる件について[myon](2012/11/11 01:44)
[4] うちの妹が幻想郷をヒャッハーしに行く件について[myon](2012/11/24 07:59)
[5] うちの妹が隙間妖怪をヒャッハーしてる件について[myon](2013/01/03 05:53)
[6] うちの妹が天人をヒャッハーしてる件について[myon](2013/01/06 23:15)
[7] 幻想郷縁起 『風見幽香』の章[myon](2013/05/04 20:17)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[35503] うちの妹が天人をヒャッハーしてる件について
Name: myon◆d57a7827 ID:11c27b96 前を表示する / 次を表示する
Date: 2013/01/06 23:15
部屋の隅、体育座りで俯いているタンコブのできた誘拐犯(腕)

優雅に紅茶を啜っている風見幽香さん

目からハイライトが消えた紅白で脇が開いた独特な巫女服を着た美女

目からハイライトが消えた化け猫の女の子

ハムスターのごとく、頬を膨らませ私の膝の上に座っている霊夢

机の下に転がっているまな板シールドの女の子

外の花畑で楽しそうに遊んでいる異種族混合の子供たちと作業をしている風見幽香さん達(分身?)

『児童保育所 ゆうかりんランド』の一室のそんな奇妙な雰囲気に飲まれつつも、私は霊夢が暴れない様に腰の周りに手を添えた状態で状況の整理を始めた。そして、改めて自分自身に問うた。


どうしてこうなったと。


霊夢がゆっくりと空中に浮かび上がり、ゆうかりんさん(後の自己紹介で『風見幽香』さんという名だと知った)が大勢に増えた際に、私は何故か「この二人に喧嘩をさせると恐ろしいことになる」という感覚に囚われた。いけない。それだけは避けなければならないと。


「霊夢っ!」
「えっ!?」


空中に浮かび上がった霊夢の足に私が抱きついたため、霊夢の集中力が完全に途切れた。風見さんが慌ててまな板シールドを振り抜くのを止めようとしたのが見えたが、時既に遅し、止められなかった。


「せいっ」
「きゃっ」


しかし、まな板シールドの直撃よりも霊夢が掌底を放った方が早かった。まな板シールド(女の子)の胸部が霊夢の掌底で弾かれ、その衝撃に耐えられず、風見さんはまな板シールドを手放してしまった。


「出なさい!藍、橙!私が兄さんを遠ざける間時間を稼いで!」


見覚えのある狐と黒猫がいつの間にか霊夢の真下に佇んでおり、次の瞬間、物凄く胸が大きな巫女さんと獣耳と尻尾の生えた女の子になっていた。正直、意味が分からない。確かに目撃したものの、その過程が全く理解できない。


「藍!あなた何してるの!?橙も危ないからこっちに戻りなさい!」


慌てる誘拐犯(腕)に霊夢がどんな表情でその事実を告げたのか、私からは見えなかった。


「とっくの昔に私が主従権奪ってるけど?」
「……え?」
「私が式神の主」
「…嘘よね?藍?ねえ、私達家族よね?橙も何か言いなさいな」
「変だと思わなかったの?兄さんが藍と橙に直接触れているのに、私が何もしないなんて」


誘拐犯(腕)の顔色は蒼白から土気色に変化した。確かに霊夢は狐を捕まえたことは何度かあったものの、危害を加えたことは一度もなかった。黒猫に至っては一度も捕まえていない。


「奪えるはずないわ」
「本当に?絶対にそうだと言い切れる?私の兄さんへの愛があなたの能力を下回るって本当に断言できるの?」


瞳孔を大きく見開き、虚ろな笑みを浮かべながら霊夢は告げた。




「ねえ、今どんな気分?いきなり家族を奪われた気分は?」




静観している風見さんを背に霊夢は私から名残惜しそうに離れ、誘拐犯(腕)の顎を掴み眼を覗き込んだ。


「ずっとあんたがやってきたことでしょう?やろうとしたことでしょう?」
「……っ」
「私から兄さんを、家族を奪おうとしたじゃない。何度も、何度も」
「否定はしませんわ。私は私にとっての優先順位を選択したまで」
「藍から十分に情報を聞けたし、仲間も含めて全滅させてやるわ」
「なるほど、通りで最近結界が緩み治安が悪くなっていると思いましたわ」


私は日常の一部として捉えてしまった霊夢と誘拐犯の攻防だが、霊夢からすれば家族を奪われかねない、必死の攻防だったのだろう。霊夢の焦りを、気持ちを理解できていなかった私は兄失格だ。


「霊夢。落ち着いて」
「大丈夫。私は冷静よ」
「…ごめんね」
「…何が?」
「気づかなくて」
「本当に兄さんは危機感が無いんだから」


冷静とは思えなかったので、私は霊夢を後ろから抱きとめ、頭を撫でる。さて、どうしたものかと思案していると風見さんが何か言いたげな様子で上空を指差した。ふと上を見上げるとまな板シールドが落ちてきている途中だった。このままだと私にぶつかるだろう。


「アハッ♪」


生まれて初めて霊夢にゾッとした。その時、霊夢が浮かべていた笑みはそのくらいサディズムに満ちた笑みだった。口の端をつり上げ目を細め、いかにも悪いことを思いついた表情だった。ああ、この表情は不味い。本気で怒りつつも冷静に相手の精神にダメージを与える感じだ。


落ちてきたまな板シールドを霊夢は的確につかみ、誘拐犯の方に投擲した。自称5km先の硬貨を打ち抜ける霊夢による投球は、誘拐犯が咄嗟に展開した空間のスキマと呼べるべきものをスライダーのように迂回した。しかし、それも予想していたのか新たに展開されていたスキマにまな板シールドは吸い込まれ、別のスキマから遥か遠くに見事な放物線を描いて飛んで行った。


「危ないっ!」


私が警告を発したことで間一髪誘拐犯の回避が間に合った。いつの間にか橙と呼ばれていた女の子がバールのようなものを誘拐犯の頭に向けて振り下ろしていた。それを誘拐犯は自身が空間のスキマに飛び込むことで回避した。


「霊夢!止めて!アレ頭に当たったら死んじゃうって!」
「嫌よ。兄さんを、私の家族に危害を加える犯罪者はここで潰すわ」


誘拐犯の件を日常の一環として見逃していた件は私の責任だ。霊夢が守ってくれるから大丈夫だと無意識に逃げていた私の落ち度だ。誘拐犯については後で決着を付けないといけんが、まず妹に殺人を犯させないことが第一だ。


霊夢の行動原理は家族の安全だ。頭の良い霊夢の事だ、私や両親の安全を第一に行動し、万が一私が誘拐犯に拘束された場合のことも視野に入れているはず。発信機くらい服に着いていそうだ。後は霊夢がとる対策として考えられるものを想定し、ふと思いついた。霊夢なら私にも主導権を残してくれているのではと。……有り得る。過保護な霊夢なら十分に。


「藍さん。あの人が出てきたら取り押さえてください。橙さんはそのまま待機」
「かしこまりました」
「はい」


霊夢は私が抑えているのでこのまま話し合いに持っていければなんとかなりそうだ。


「……あ、さすが兄さん」
「大体霊夢が考えそうなことくらい分かるよ」


やっと霊夢が落ち着いてくれたので、誘拐犯と話そうと振り返ると。誘拐犯が巫女さんと風見さんにボコボコにシバかれていた。私は取り押さえて欲しいと依頼したはずなのだが。


「まさか、あの時盗撮されているなんて思わなかったわ。私もまだまだね。まあ、これで魔理沙とアリスにバレずに済むわ」
「あなた初めからコレ狙ってたわね」
「当たり前じゃない」


その後、巫女さんに見事な関節技を決められ、意気消沈してしまった誘拐犯を横目に、何か通じるものがあったのか霊夢と風見さんはがっちりと握手を交わしていた。


「やっぱり愛よね」
「ええ、あなたもとっても素敵よ」


想定外だったがこれで綺麗に収まると思った私は危機感が本当に足りなかった。あまりにも当然のように武器として扱われていたので、まな板シールドが人間であることをすっかり失念していたのだ。


人間ならば意思疎通ができる。故に余計な情報を外部に与えてしまうことがある。


私はそれを完全に失念していたのだ。


あの時、まな板シールドにまで気を回していれば、輝夜と霊夢の関係があれほど拗れることもなく、藤原さんが悲劇に巻き込まれることもなかったのだ。




前を表示する / 次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.02279806137085