「へー…こんな所に遺跡なんかあるんだ」
こんにちは、ルクルです。今年で12歳。小学校を卒業しますが、最後の夏休みに両親にこの大陸を一カ月間旅したいと言ったら、許可が下りたので
色々見て回る事になった。お金は両親が出してくれたけど、ほとんど徒歩とかなので凄くあまりそう。
そう思いながら、道なき道を全力疾走したり、地図で現在位置を確認したりして進んで行った結果、遺跡に着いてしまったわけだ。
何の文明か分からないけど、壁面の彫刻と蔦が「ぼくはいせきだよ」と言ってるみたいに雰囲気が出ている。
ぐるっと、一回りしたら誰かがいるのだろうか、そう思って歩を進めるとテントが立ててあって誰かがキャンプしているようだ。発掘チームか何かだろうか?
と思って、近づいて行ったらテントからタンクトップとジーパンというすげぇラフな格好の無精ひげ親父が姿を現した。
うーん…誰だろう?纏を纏ってるから恐らくプロのハンターだと思うけど、すげぇ力強い纏だ。いいなぁ俺もあのレベルまでいきてぇ
まぁ誰でもいいや、この遺跡について何か知ってるかもしれないしな
「こんにちはー」
「ん?おお?子供か?親とはぐれたのか?」
けっこうフレンドリーに話しかけてくるおっさんは、よく見ると無精ひげを伸ばしている。
「あ、いえ、小学校最後の夏休みなので一カ月間この大陸だけでも回ろうかなと思いまして」
「へー…おまえ、プロのハンターじゃないだろ?」
「ああー…わかります?」
「わからいでか」
一応纏すら纏っていなかったが何故がばれた。こやつ、相当な熟練者だ。
まぁばれたのなら仕方が無い、俺も纏を纏って近づくが
「待て」
ぞわっと一気に全身の鳥肌が立つような気配を発してこちらを制止する。
目つきが鋭く、先ほどの雰囲気は既に何処にもなかった
「誰に雇われた?」
「あ、いえ、ですから、小学校最後の夏休みだと」
「嘘をつけ…証拠は?」
相変わらず何か鋭い眼光でそう言ってきたので、とりあえず、しまってある名札をカバンから取り出して、さらに学校から配られた自由研究の提出用プリントも出す
「……マジでガキだったのかよ」
「だからそう言ったじゃないですか」
「いや、すまん。でもな、結構嫌な雰囲気をだしたオーラを流していれば誰でも疑うぜ?」
「え?…そんなつもりは……」
やべぇ、実力者にはオーラの質があれなんだな、よく分かるんだな。
「それにしても何か雰囲気ある遺跡ですね」
「ああ、俺も偶然見つけてな。灯台もとくらしだったっけか?こんな近くに未発見の遺跡があるとはな」
確かに、山脈に向かって数キロ森を抜けた先にあるとは…俺のイメージだと孤島とか密林の奥だとか、そんなイメージだったけど、ある所にはあるんだなぁ
「うーん、帰りの時間もあるし、この遺跡に関して自由研究の課題を終わらせるかぁ」
「まぁいいが、あまり詳しく書くなよ?発見したのをまだ公開してないんだからな」
「何でまだ公開してないのですか?」
「ん?そりゃあ、内部調査がまだ残ってるからな!」
すげぇわくわくした顔で遺跡を見ている。どうやらここを発見したのは本日だというのだから驚きだ。まだまだ未発見の土地があるのは何か何処となくロマンを感じる
そう言った事を伝えたら
「おお!分かるか!お前もプロハンターになったら遺跡ハンターになってくれよな!ロマンが詰まってるぜ!」
そう笑ってくる髭のおっさん。結構愛嬌がある。ううむ…何処かで見たような顔なんだけどなぁ…思い出せない。
「古代のものは何か神々しい感じがして、こう、来るものがありますよ」
「はっはー!いいなぁお前!」
「あ、あははは…」
そうしてこの遺跡の外観をスケッチするべく周りをうろうろする。
鬱蒼と茂っている雑草が邪魔で中々スケッチのベストポジションが見つからない。
仕方が無いので壁際に行ってぐるぐる回ってみる。
絶対に入り口があると思ったけど、無かった。
このままダンジョンいくぜぇ!と思ったけど、無かった。
何のことは無く、5分位で一周しておっさんが居る所に戻った。
「何にも無いですね」
「いや…そうでもねぇんだぜ」
そういうと、徐に遺跡の壁に向かって念を込め始める。まさか…!!
「ちょ!破壊するつもりですか!?」
「んなわけねぇだろ!!」
…勘違いだったようだ。
「いいか、遺跡ってのは特殊な仕掛けがしてあるものが多い。何故かは定かではないが、ただ言える事は外敵から何かを守るためにということだ」
「ということは、この遺跡にも何かあるんですね?」
そういって遺跡を見る。前世で言うならばアステカの遺跡みたいだと思うけど…形状がちょっと近いだけだろう。
その証拠に全体に念が掛かっているのか、うっすらとオーラを纏っている。
「ふーん…遺跡全体にオーラがあるけど、念でも掛かってるんですか?」
「ああ、過去の遺物は念が込められているものが多い。恐らく呪術的な何かだと思うが、やはり特別な物にはそういった’念’が込められている」
おっさんのオーラに触発されたのか、壁だと思っていた壁面がごごご…と地面へ降りていっている。
「へー…念って凄いですね」
「お前さんも念が使えるし、一緒についていくか?」
「勿論です。これはいい題材になりそうです」
「ほどほどにしとけよ」
そうして俺達は中に入っていった。
中は薄暗くてひんやりとしている。細い通路があり、幾重にも分かれ道がある。
常時凝を行っているので罠が大体どこら辺にあるのか、仕掛けがどこら辺にあるのかは区別が付く。
しかし、念が無いところでも仕掛けは多々あるから、そこはおっさんがこなれた手つきで解除したりしていく。
数多の分かれ道があるが、マッピングしていつでも外へ出られるようにしておく。
勿論俺もマッピングしているが…ううむこれは難しい。若干方向音痴な俺だと東西南北の何処に線を引けばいいか曖昧だ。
「マッピングは難しいですね」
「そりゃそうだ。この閉鎖された空間で方位磁石持って来てないのにマッピングするのはまず無理だな」
そういいつつ方位磁石を取り出して方位を確認し、マッピングするおっさん。
何か悔しい。
ま、向こうはプロだしな。仕方が無いな。うんうん。
数時間は経つだろうか、かなり歩いた先に見えた扉を開いて中に入るとかなり広い空間へと出た。
「へー…広い遺跡だと思いましたが、こんな広い空間あったんですね」
「まぁ、地下に潜ってるから無いことはないが…嫌な予感がする」
「でも、何にも無いですよ?」
そう、何にも無いのだ…真ん中にある台座以外。
「台座以外…な」
「でも凝で見てもオーラは無いですし、もう既に誰かがお宝か何かを持って行ったのではないですか?」
「……いや、そうでもないぜ」
その言葉と共に入り口に重い鉄がこすれる音と共に鉄格子が掛かる。
台座の奥の壁が回転しそこから現れたのは全長3メートル位ある真っ黒い鎧を着た何か。
相当禍々しいオーラを膨大に纏っている。これは…
「死者の念…」
そう、俺の全力を引き出した際のオーラの質に似ている…しかし、俺のもののほうがもっと禍々しい。
これはどちらかというと、何かに執着しているオーラ…っぽい。いや、勘なんだけどね。
「それにしても、でかい剣ですね。オーラも物凄いですし、相当高そうです」
「…お前やっぱ遺跡ハンター向いてないかもな」
そうして二人とも臨戦態勢に入る。やはりというか、おっさんのオーラは流麗でかなり力強い。
対する俺は
「…おい、やっぱお前、何かやばいんだけど」
「仕方が無いじゃないですか!?私だってこんなオーラ纏いたくないんですよ!」
やっぱり禍々しいようで、何かめっちゃ警戒された。いや、本当にすんません。
「ったく、そのオーラを俺に当てるなよ。条件反射で攻撃しちまうかもしれないぜ?」
「そんなことしないので大丈夫です」
そこで漸く相手の準備が整ったのか、剣を構えて…その場で此方目掛けて振りぬいた。
その瞬間にオーラの刃が此方へ向けて飛んでくる。
それを横っ飛びで回避するが…
「嘘!?」
90℃の直角で速度を落とすことなく此方へ曲がってきた。
更に回避するが、ホーミング性能があるのか、此方へ執拗に迫ってくる。
おっさん!ヘルプミー!
「おらよ」
ナイスタイミングで俺と刃の間に躍り出たおっさんが拳の一振りでその刃を消し去った。
「強化系ですか?」
「さぁな」
「いや、強化系でしょ?」
そんな軽口叩いてる間騎士はもう一振りして、念の刃を飛ばすと同時に巨体に似合わず一瞬にして距離をつめてきた。
しかし、此方も最終兵器おっさんがいるから大丈夫。もうすべて任せていいんじゃね?っていうほど強い。
向かってきた刃を手で払い、騎士の神速の斬撃をかわして硬で強化した拳で騎士の胴体にカウンターをいれ吹き飛ばす。
「つよ」
「そらぁな、此れでもプロハンターだぜ?」
余裕綽々である。そうだ!
「すみません、私もちょっと参加させていただきます」
「あ?怪我してもしらねぇぞ?」
「大丈夫です。たぶん」
そうして堅を維持しながら吹っ飛ばされた騎士に近づく。
既に体制を整えており地面を陥没させる踏み込みと同時に此方へ袈裟切りを放つ。
それを見越してスウェーで避けて流を用いた攻撃で相手の剣を持っているほうの腕を蹴り上げ、無防備の胴体に渾身の一撃を放つ
手に鉄の感触と、何か生ぬるい感触が伝わる。この生ぬるい感触が恐らく相手の念による防御。
しかし、堅でもない恐らく唯の纏での防御なぞ生ぬるい。そのまま鎧を突き破り相手を吹き飛ばす。
「ほー…かなりのオーラだな」
「それだけが取り柄なので」
「しかし、まだまだあめぇな。もっと基礎修行すりゃもっと上を目指せるぜ?」
「毎日点や修行は行ってるんですがねぇ」
正直に言おう。まったく相手にならない。
身体能力が前世に比べて格段に上がっているし、自身の流も目で追える程の動体視力に反射速度。
確かに、最初の刃は若干怖かったが、何のことは無い。冷静になればいくらでも対処のしようがあった。
恐らく堅の状態を維持していれば、無傷で終わっただろう。それほどのオーラの差があった。
「攻撃力はそれほどでもありませんね」
「ああ…だが、それを補って余りある…再生能力があるな」
おっさんの目線を追うと既に立ち上がって砕けた鎧が完全に修復されている騎士の姿があった。
「嬢ちゃん、中はどんなだった?」
「ん~…オーラの塊、かな?」
そう、あの生ぬるい感覚はオーラだ。ねっとりとしたオーラ。
「どうするんですか?」
「…まぁ再生能力が何処まで再生できるかだな」
なるほど、まぁぶち壊すしかないのか…んーそのままで売ればかなりの値打ちになりそうなオーラだけど…仕方が無いか
「では、私が手足切り落とすので、胴体を粉々にしてください」
「ああ、宜しく」
手足を切り取るといっても念能力じゃないから相当念を込めて変化させないといけない。
いや、かなりきついんだよね。実際。鎧自体は纏レベルだけど。中は完全に硬状態。それを切断するのは骨が折れる。
が、それでも切れることは確信している。何故だかわからないけど。
それに最終兵器おっさんがいれば確実に何とかしてくれるだろう。どうせ本気のほの字も出してないだろうし。
切れなかったらバトンタッチすればいいや。
今度は此方から仕掛ける。一息で騎士の懐に潜る。そして一気に両足を切り裂こうと思ったが、嫌な予感がし右へ横っ飛びする。
その瞬間膝蹴りが繰り出されるが、生憎そこに俺はいない。カウンター気味で右腕と右足を切断して、体制を崩させ、一気に左も切る。
そして、膨大な量のオーラを練っているおっさんの下へ胴体を蹴って転がし
爆発
膨大な音と共に衝撃波が此方に伝わってくる。それを纏を纏ってやり過ごす。
地面には大きな亀裂が入っており、中心に近づくにつれ地面が蜂起している。というより、遺跡ぶっ壊してるけどこれいいのか?
砂埃が消えるとそこにはクレーターがあり、中心にはおっさんが地面に向かって拳を突き出していた。
「ほえー…あほ見たいな威力ですね」
あの鎧は…もう跡形も無い。手足もオーラが消えうせており、マジで一撃必殺だったようだ。
「お前もいずれできる様になるさ」
「無理」
そう、強化系か放出、変化あたりじゃないのあれは無理だ。つか、あれ食らったら俺はじけ飛ぶよね?堅でガードしていれば即死はしないと思うけど…まぁ再起不能になるだろうな。
「お、何かあるぜ?」
その言葉と共にオーラを手に集中して夢中で地面を掘り出す。
そうして見えてきたのは何かの文字がびっしり掛かれた壁だ。
「これは…」
「神字だな」
この世界にある念で文字を彫り、念を補助する文字のことだ。
「神字かぁ…中に何があるのでしょうか?」
「さぁ?…ま、入り口は恐らくあそこだけどな」
目線を辿るとそこには台座がある。
「凝ではオーラが出ていませんが?」
「いや、こいつはカラクリだ。恐らく何か鍵があるのだと思うが…」
台座を調べると分かることは何か指すところがあるだけ。
「剣ですね」
「ああ、剣だな」
そうして剣を拾ってきて徐にさしてみると…台座が横にスライドし、階段が現れた。
そこを下っていくと神字でびっしりと彫られている空間にたどり着いた。その中心には棺が置かれている
「もの凄い念ですね。凝をせずとも分かります。この念は全てあの棺に効果を及ぼしていると」
「ああ…何時でも戦闘できるようにしとけ、何が出るか分からないぜ」
そうして堅を維持しながら棺を開けると
「…」
「…ミイラ……か」
そう、かなり高価そうな装飾を身に付けている恐らく女性であろうミイラが出てきた。そのミイラにはかなりのオーラが宿っている。
ミイラを守っている?…うーん…この遺跡の背景が全然分からないから何ともいえないけど、動かすのはやめといたほうがいいかな?
「…願い」
「ん?」
「このオーラには願いが込められている。そう、また蘇るようにという、願いが」
……蘇る…かぁ…
「この方を守っていたんですね。あの騎士は」
「そうだな、悪いことをしちまったな」
そうして棺の蓋を閉じ、来た道を戻ったのであった。
「あのー、この剣貰っていいですか?」
そう、騎士が使ってた凄いオーラが宿っている剣。長さは全長1m50cmはあると思う。
改めてみると、凄く綺麗な刀身だ。
赤く透き通っていて宝石で出来てるみたいだけど、その中にはびっしりと神字があり、念が膨大に込められているのが分かる。
「…まぁ、今回は見逃してやる。危険な目にも合わせちまったしな」
「やった!ありがとう!」
へへ…何に使おうか考えていないけど、何かかっこいいし。
扉の仕掛けって大丈夫と聞いたけど
「あそこの扉は剣を抜いても開きっぱなしだし、大丈夫だろう」
とのことであった。
そうして、マッピングした地図を頼りに外へ出るのであった。
外にでると既に夕日に変わっている時間になっていた。
「この遺跡、どうするのですか?」
「そうだなぁ…ま、まずは協会や色々な機関に報告して色々決めなきゃな」
そらそうか、しかし、あのミイラ…どうなるんだろう
……いや、悩んでいても仕方が無い。今回はいい経験になった。それで十分さ
「…ま、なるようになるだろう。世の中、そんなもんだ」
「……そうですね」
本当に、世の中ってそんなもんだよな。なるようにしかならない。
そう思いながら夕日を見続けた。何時までも、何時までも。