「もう直ぐ国へ付くぞ」
霧が深い波の国、底に見えてくるのは…大きな建造中の橋である。
「うっひょー、でっけー!」
あの後、タズナさんから、真実を語ってもらった、そしてあの忍者の裏には「ガトーカンパニー」が控えているとの事、悪徳商法で一財産を築いた人物で、暴力を盾に様々な物を売っている。
そのガトーカンパニーのトップが「ガトー」である。
そのガトーが、一年前にこの波の国に目をつけ、瞬く間に海上交通を独占してしまったのである。
故に現在作り途中であるこの橋が完成すると、陸路が出来てしまう。それを恐れて、タズナさんを狙ってきているとの事だった。
「それじゃ、俺はここまでだ…気をつけてくれ」
「すまん」
そういって、隠れながら船を出していただいた方に別れを告げて、一同は歩き出す。
暫く歩くと、前方に何か気配感じたなぁ…と思っていると
「全員伏せろ!!」
霧の中から顔を出す、太刀。それが回転しながら迫ってきて木に刺さる。その上に
「これはこれは…霧隠れの桃地再不斬君じゃないですか」
「…お前は、写輪眼のカカシだな?」
その瞬間、明らかにサスケに動揺が広がる。だが、今はそれどころではないのだ。
ふと、その隣のナルトを見ると…完全にすくみ上がっている。私も、緊張してます。
「タズナさんを中心に卍の陣だ!」
その指示で瞬間的にタズナさんを囲むようにフォーメーションを組む。私なら行けると思うけど、今は単独ではなく、班で行動しているのだ…チームワークを乱すのは厳禁。よって、私を正面に、左がサスケ、右がナルトで固める。
「そのじじぃを渡してもらおうか…」
「悪いけど、俺を相手にしてから言ってくれない?」
カカシ先生の額宛を上にずらし、あらわになる「写輪眼」
忍、体、幻を一目見ただけで瞬時に見切り、跳ね返してしまう「うちは」一族だけが持つ特有の血系限界である。…まぁオビトの写輪眼だろうけど…更に、不信な空気を出してカカシ先生を見るサスケ。
まぁ仕方が無いだろう、自分の一族しかないはずのものが、関係ない人に宿っているのだからな。
そして、上忍同士の戦いが始まる…いや、既に始まっている。この縛られるような空気。ガイさんに本気で殺気を当ててもらってなかったら、全力を出すのが厳しいレベルである。ナルトとサスケは既に飲まれそうになっている…
一時の時間を置いて、ザブザが水の上に移動しする。
「水の上に?」
印を組むザブザ…その術、貰った。私も写輪眼を発現させる。私の写輪眼もカカシ同様、瞳孔の周りに三つのマークが浮かび上がる。
霧隠れの術!
大量に練られたチャクラを霧と水に浸透させて発動する術。これで視界が殆ど0になっている…が、
その術の後に印を組んでいた…恐らく
「消えた!?」
姿を消したザブザ…霧に溶け込んでいて、私も何処にいるか分からない。
「人体にある急所…その八箇所…お前らはどの痛みがいい?」
姿は無くとも声は聞こえてくる。その言葉とカカシ先生の気迫によって流れてくる殺気。
先ほどより濃密な殺気で、動くことすらままならない…ナルトとサスケ。私は、ガイさんで慣れているからあれだけど…
「大丈夫、俺の仲間は、絶対殺させはしないよ」
そう、カカシ先生が私達に対して声を掛けてくれる。瞬間に体が気持ち軽くなる。…流石上忍、言葉一つにかなり説得力あるよ…だが、まだ油断している。
「それはどうかな?」
後ろにチャクラが出現したのを感じ取る。
「遅いよ…眉なし」
そのまま後ろを振り返らず、顔面をチャクラで強化した右足で蹴り上げる。
バシャ
と、水分身が解けるのを感じる。しかし、相手も流石上忍といったところか、私の後ろに若干間が空いたがすぐさま、水分身を作成する。
「だから、やらせないって」
カカシ先生が割り込んできて、水分身をクナイで一閃。直ぐに水に戻る
「ちぃ…ただの小娘じゃないな?」
その言葉と共に、水分身が…10体、池のほうで作成される
「分身が一杯だってばよ!?」
「!?」
「作戦変更だ!サスケ、ナルト!お前達二人でタズナさんを守れ!アヤカ!援護を頼む!」
「了解」
その瞬間一気に此方に接近してくる水分身、それぞれ目一杯拡散しているので、各個撃破しか出来ない。
全身をチャクラで強化して、一気にトップスピードまで加速し
「まずは一体」
目にも留まらぬ速さの貫手で首と胴体を切断するが、直ぐに水に戻る。こちらに左右からの攻撃が来ているので、右の水分身のストレートにあわせて此方もストレートを出し、拳を砕きながら、腕を粉砕する。水に戻った瞬間、後ろから衝撃。
だが、一番最初に倒して発生した水で水分身を作り、それを瞬時に変わり身に使用。
ノーダメージで位置を入れ替え且つ、背後を取り、クナイで一閃。水に戻ったことを確認した。
「本体は…?」
水辺のほうを見ると、先ほどの霧隠れの術以上にチャクラを練りこんでいる。
何かする気か…と思ったがまずは、カカシ先生の後ろを取っていた水分身の頭を掴み、地面に叩き落す。
「く!ナルト!サスケ!そっちにいったぞ!!」
その言葉ともに、タズナさんのほうを見ると、3体向かっていっているではないか。
すぐさま、水分身の印を結び、一番最初に返した水分身と、カカシ先生が返した水分身の水溜りを利用して、私の水分身を作る。
「な!?」
「え!?アヤカちゃん!?」
しかし、一体すり抜けてしまう。だが、ザブザが練りこんでいるチャクラ量が異常だ。よって
「先生!護衛の方は私が…私達が何とかします!先生はザブザを!」
「ああ!あのチャクラ量はまずい」
そういって、二手に別れタズナさんのほうを見てみると…
「火遁、豪火球の術!!」
サスケが放った火遁をジャンプで避ける、しかしナルトが影分身を利用し、一斉に水分身に向かってクナイや手裏剣を放ち、サスケも負けじと手裏剣を放つが、悉く叩き落とされてしまっている…
だが次の瞬間に、弾かれたクナイがナルトの姿となり、そのナルトの手にはサスケが投げた手裏剣、その手裏剣を持ったまま、水分身の背中にしがみ付く
「クソ!この餓鬼が!?」
「あんたはその餓鬼に…やられるんだぜ?」
火遁 鳳仙火の術!!
次々と放たれる火炎弾だが…流れるように、直撃コースから逸れてしまう。
「は!外したようだな」
そう勝ち誇った顔をする、ザブザだが…
「そいつはどうかな?」
いきなり軌道が変化して、ザブザの顔面に迫る
「馬鹿な!?」
そう、放った火炎弾の軌道がずれることはない…通常であればだ。
「糸…ね」
チャクラを通した糸を辿って、ナルトが持っている手裏剣目掛けて炎が着弾し、炎を上げる
「ぐあ!」
「あちち!」
水分身は消えて、ナルトの影分身も消える。
「二人ともナイス!!」
その声が自然に出た。因みに、残り2体の水分身は私の水分身で足を止めさせ、本体である私が、背後からの一閃である。そうして、援護しようかと思ったが…どうやらその必要は無かった。
「へ、漸くこれで一体かよ」
「へへ…でも俺達もやれば出来るってばよ!」
サスケは口ではあんなことを言っているが、その顔は嬉しそうだ。無論ナルトもである。
それもつかの間、カカシ先生と、ザブザが放った上位忍術、その水流が荒れ狂っている。
(ちぃ!写輪眼で術を見ていなかった!)
せっかく、術を手に入れるチャンスだったのだが…そうも言ってられない。
しかし、ザブザがチャクラを練りこんでいる量が違い、幾分先生の水流が小さい。その事を悟っているのか、険しい表情になっているカカシ先生。
「はは!これほどまで練りこんだチャクラはコピーできなかったようだな!」
「く!」
大量に練りこんだチャクラを用意していたザブザに術合戦は軍配が上がってしまった。
荒波に飲まれるカカシ先生
「先生!」
「させねぇぜ、小娘が」
勝ったと踏んだのであろう、ザブザ本体が私に切りかかってきたが、屈んで避ける。返す刀で更に追撃してきたが、バク転で避け、着地する。髪が少し切れたのはかなりショック
「ち、その身のこなし…ただの下忍じゃあ…ねぇな?」
「さぁ?…それに、相手は私ではないですよ」
「何!?」
ザブザの斜め後ろに姿を現したカカシ先生が、回し蹴りでザブザの体を吹っ飛ばす。
「ちぃ!仕留めた筈じゃ!?」
「…変わり身ですか」
「ご名答だ、アヤカ。ま!結構ダメージ食らったけどね」
そうして、ふっ飛ばした先は先ほどの水面。
「どうやら、またやられたいようだな」
「…」
そうして、一斉に動く二人とも、その動きは全て同じである。
「こいつ、動きを「コピーしてやがるってか?」!?」
同時に印を結ぶ構えをとる。徐々にザブザの同様が広がっていき…
「水遁・大瀑布の術!!」
ザブザが発動する前に術を決め、大量の水がザブザを襲う。
「いくらチャクラを練りこんであるといっても…使えなきゃ意味ないでしょ」
その言葉と共に、木に叩きつけられたザブザにクナイを放ち、磔にし、瞬時にザブザの頭上の木に移動し
「終わりだ」
とどめという所で、ザブザの首に数本の千本が刺さり、意識を失ったのか…そのまま倒れてしまった。
「あ~あ、本当に死んじゃった」
その言葉と共に、追い忍の仮面を被った忍びが顔を出した。