試験を合格して、下忍になった私たち。その後サスケと帰宅する。
「なぁ…」
「何?」
「……どうやって、あんなに…いや、何でもねぇ。修行に行ってくる」
そう言って、駆けだす。その背中が曲がり角を曲がる前に
「人に!」
そう、叫ぶと、サスケが止まる。どうやら此方の方に聞き耳を立てているみたいだ。
「人に、教えてもらったの」
「…退院した時の話か」
「そう」
サスケも誘ったがにべもなく断られた件だ。
「…そうか」
その一言だけ呟いて、曲がり角を曲がって行ってしまった。…この一件で心を入れ替えれば一番いいんだけど…思春期の男の子である。私もそうだったが…自分の考えなんてそうそう変わるものではない。
しかも、今まで正しいと認識してきた。変われるはずもなかろう。
「はぁ~」
溜息しか付けない…まぁ家に帰れば寝る前に話せるけど…向こうからの接触を待つべきか。
そんな風に思いながら、家路を歩くのであった。
side サスケ
「くそ!」
誰かの家の塀に拳を叩きつける。今日の最後の最後に見せたアヤカの速さ…
「見えなかった…」
カカシのやつに一人で挑んで鈴を取るという芸当…俺は出来ない。
最初は冗談かと思っていたが…あの速さを見ると…納得してしまう。
イタチに家族をアヤカ意外殺されてしまってから、既に4年の歳月が経っている。
その間、俺はずっと修行してきた。その為、アカデミーの授業でも常にトップを走っていたのだ。
それに比べて、アヤカは常に平均。偶に平均より、上の時や下の時もあるが、概ね平均であった。
アカデミーでも、イベントがあるごとに見比べられていると、たまたま夕食が一緒になった時話していた
そう、俺より確実に下だと思っていた。
だが、今日。その現実をあっさり覆された。ショック…というより、疑問が残った。
何故、隠していたのだと。俺が…信用できなかったのか?分からない。
だから聞こうかと思った。その強さは…何なのか?何故、隠していたのか…
でも、踏み出せなかった。自分がたどって来た道が否定されそうで、馬鹿にされそうで。
アヤカは何を思ってか、人に教わったと言う…成程な。確かに、最初に俺を訓練に誘っていたっけな。しかし、俺は蹴った。何故なら、体術の特訓であったからだ。俺は体術には自信があったから、別にいいと思ったし、忍術の訓練の方が余程将来へ…イタチを殺す為に繋がるのかと思った。
いや、事実俺も力を付けた。…が、アヤカの方がその上を行っていただけだ。そうだ。もう、同じ土俵だ。これでアヤカに追いつける。俺はそう確信して、いつもの訓練場へ向かった。
「人に教わった…か……」
その呟きは、木の葉と共に、風が奪い去って行った。
side アヤカ
サスケと別れてから、そのまま家に帰らず、いつも特訓していた森へ移動する。そうして65体の影分身と混じって訓練をする。内容はチャクラコントロールと形態変化、性質変化である。
まぁ、螺旋丸に雷の性質変化を乗せればいいだけなのだが…結構難しい。
まぁほぼ完成には至ってるけどね。相変わらず術が増えないで御座る。体術の技の方がバリエーションあるってどういう事だよ?マジで。まぁ無いものは無い。であれば、既存の物を改良してより昇華させるべきである。
今日の件で実力を隠す事は無くなったので、まぁザブザ戦は楽に越えられると思う。恐らくだけど。
そう、何も無ければ直ぐに終わると思われる…が、あそこは確かサスケの写輪眼の覚醒する回だ。
それを潰してしまうのはまずい。
…うーむ。まぁ何とかなるだろう。カカシ先生もいるし。私もいるし。死にはしないと思う。
そう思って、影分身を全て消して、経験を吸収し訓練場所を後にするのであった。
ある日…
「バカヤロー!」
Dランク任務で可哀そうな猫の捕獲作戦を行った後、依頼人に猫を引き渡し、その次の任務を火影直々に選んで頂いているときに、ナルトが行きなり、もっとすごい任務をやらしてくれとせびったら、イルカ先生の雷が落ちたのである。
「誰しもが一つ一つ積み重ねていくんだよ!」
「そうだ、まだ下忍になったばかりだ…Dランク任務がいっぱいいっぱいじゃ」
「けど、オレってばもう、じいちゃんが思っているようないたずら小僧じゃないんだ!」
そう反論する。…まぁその前に人の話を聞かずに突っ込まれたけども。
「分かった」
そう、火影の言葉が聞こえた。
「ある人物の護衛じゃ」
そういって、入って来たのが…酒瓶を持って大きな荷物を背負っているゲンさん…みたいな人であった。
「なんだぁ、超ガキばっかじゃねぇか、特に金髪のちび…お前本当に忍者か?」
「ぶっ殺す!」
むきー!と怒るナルトをカカシ先生が抑えつけながら諭す
「わしは橋作り超名人、タズナというもんじゃわい。ワシの国まで超護衛をしてもらう!」
遂に来てしまった…ぶっちゃけどういった対応をするか、全く考えてないお。というより私も実戦なんて初めてなのである。だからこそ…ここで私も経験を手に入れなければならない…実戦という形で。
各自、荷物を用意して、里の門前に一時間後集合という掛け声をカカシ先生が言って、その場は解散となり…
「しゅっぱーつ!」
いよいよ、出発する事となった。はしゃぐナルトをしり目にカカシ先生に近付いて確認するべき事を確認する。
「先生」
「ん?どうした」
「…殺しは、ありなのですか?」
「…うーん。ま!時と場の状況…だな」
そういって、一行は既に出発していたので歩きだす。どうやら、ナルトは依頼人の態度が気に入らないのか絡んでいるけど…
「ナルト」
「あ、アヤカちゃんも言ってやってよ!」
「…少し静かにしようね」
静かににっこり笑って、ナルトを見つめる。うっとなって静かになり、一行は道を歩いていく。
ん~良い天気である。実に良い天気である。それなのに…
(水溜りがある…)
道に溜まっている水、ここ数日の天気は晴れである。カカシ先生に目線を送るとばっちり眼があった。
恐らくアイコンタクトを図っているのだと思うけど…全く意味が分からん。
その水溜りをスルーし、一時時を置いた瞬間、後ろに二つの気配を確認する。
一気に、カカシ先生へと迫り、チェーンが全身へ巻きつく。
「何!?」
このコピー忍者は白々しいにも程がある。私でも気付く気配。上忍が気付かない筈がない。
ひっそりと印を結んでいる事を確認した後、カカシ先生の体が色々な部位ごとに切断され、血が吹き出る
「カカシ先生ー!」
たまらずナルトが声を上げる。しかし、ナルトの後ろに既に忍びがいる
「二匹目」
声が上がる瞬間にポーチから敢えて遅くクナイを取り出し投げる。それと同時にサスケもクナイを投げて、チェーンを絡め取り、木に張り付ける。それを確認した瞬間、一瞬で投げたクナイに追いつき、吸着でクナイを足場にして無理なく敵の背後を取る。
視認すら許さぬ動きで、頭を鷲掴みにしチャクラを込めて地面に叩きつける…殺すつもりで。
グシャ
つかんでいた手と手の間に生ぬるいゼリー状のようなものが零れおちる。
自然と…不快感も何もない。冷静に受け止めている。初めての実戦で初めての殺人。
されど冷静だ…最初の時点で、狂っていたのかもしれないけどね。
「…え?」
ナルトの声が広い森に木霊する。その隙にサスケが足止めしていた忍びがナルトに向かって飛ぶが、
「ご苦労さん」
その言葉と共にカカシ先生が姿を現して、忍びを締め上げる。
「全員、怪我は…無いね」
「先生、手を洗いたいです」
「どーぞ」
許可を得たので水筒から水を握りつぶした手に掛けて血とその他諸々を洗う。
「し、死んでる?」
ナルトの声、サスケも流石に声が上がってこない。
「ん?見りゃわかるでしょ?」
カカシ先生はいつも通りだ。…当たり前か。暗部として動いていた時期もあったのだ、殺人に対してそこまで嫌悪感は無いはずである。
「こ、殺す事は無かったじゃん!?」
反発の声を上げるナルト…まぁ確かに、殺す事は無かった。首筋にチョップか仙掌術で気絶させれば良い事である。ではなぜ、殺したか。それは、これからの実戦の中で必ず殺人を犯すからだ。
その時になって、殺人を躊躇してみろ。待っているのは仲間の死である。
そう、これは忍びにとって、避けて通れない道である。だから殺した。私の礎になってもらった。
「ナルト、もし…さ。もしだよ、このまま殺人をせずに、敵を見逃していくとしよう…そうして、見逃した敵がさ、仲間を殺しちゃったら、私は、悔やんでも悔やみきれない」
だから、ここで私の為に、私のエゴの為に…殺した。
仲間は何も、この班だけではない。ヒナタだって、里の人たちだって…見逃した敵に殺されるかもしれない。それだけは、ナンセンスだ。
その一言で、ナルトは少し考え。納得したのか納得していないのかよく分からない表情で
「…オレってば、頭が悪いから、よく分からないってばよ…でも、それでもオレは」
救える道があるなら、救いたい。
「ふん」
サスケは納得したのか、鼻を鳴らしながら先に進む。私も、これが主人公と、納得したよ。
「そう…じゃ、行きますか」
「「おう」」
「あの、オレが担当だよね、この班」
タズナさんを守りながら、先へ進もうと思ったが…
「先生さんよ…ちょっと、話したい事がある」
タズナさんの一言で、この班は真実を知る事になる。