次の日の朝
「おはよーサスケ」
「ああ…おい」
「ん?」
「何故飯を食べてる」
そう、何時も通り食事をする私…そういえばご飯食べちゃいけないんだっけ?
「…気にしない気にしない!」
「…はぁ、まぁいい。先に行ってるぞ」
「ご飯食べないの!?」
「ああ」
そういって玄関を後にする…しっかり歯磨きして、ご飯を食べた証拠を消そう。
うむ、やっぱり朝は納豆が一番である!
そうして、時間通りに集合場所へ向かってみると…
「あー!アヤカちゃん!おはよーってばよ!」
「おはよー」
「…ふん」
ナルトは元気がいいねぇ…しっかし、確かお昼近くに来るんじゃなかったっけ?
「しっかし、遅いってばよ」
「ねー…遅いね」
座りながらカカシ先生を待つ。…あまりにも暇だったのでポーチから暇潰しの本を読む。
そうして、丁度2時間後…
「やー諸君。おはよう!」
「おそーい!」
そんなやり取りが聞こえてきたので本から顔を上げると、片手を挙げて挨拶するカカシ先生と、あまりにも遅い事に抗議をしているナルトの姿。その後ろにカカシを睨みつけるように見てるサスケの姿が眼に映った。
「時間をセット。さて、これから演習を行う。この二つの鈴を規定時間までに取らなければそいつはアカデミーに戻ってもらう。まあ見ての通り、二つしかない。よって…誰か必ずアカデミーへ戻る事になるってわけだ」
殺す気で来い。そう言って、ナルトが昨日のこと間抜けなカカシ先生の事で反応するが…逆に挑発されてクナイを投げようとする。しかし、クナイを投げるより早くカカシ先生がナルトの後ろに現れてナルトの手を掴んで止めた。結構早い…
「やっとオレを認めたかな?…くく、漸くお前らを好きになれそうだ」
スタート!!
その掛け声ですぐさま身を隠す。…さて、合格方法が分かっているのだ、わだかまり無くさっさと合格しようと、私は鈴が要らないので手を組みましょうと二人に相談しようと思ったのだが…
「しょーぶったらしょーぶ!!」
草むらから飛び出してカカシ先生に勝負を挑むナルト。
ええー!原作見てたけど、さっきの動き見てたでしょ?何て無謀な…もっとこう……冷静にいこうぜ。
「あのさぁ…お前ちっとずれてるよね」
そういって、ため息をつくカカシ先生…まぁため息付きたくなる気持ちは分かります。
さて、ナルトが時間を稼いでいる内に、サスケと協定を結んばなければ…まてよ…ここで下忍にならなければ…
ちらっと、ナルトとカカシ先生をみる。すでに後ろを取られて…こりゃ、カンチョウだな。
「千年殺しー!」
「ぎぃやあああ!」
…彼が主人公である事には変わりない。であれば、原作通りにこの試験は合格する事を目指そう。
よって、サスケを探し出す。暫くすると、ナルトとカカシ先生の戦闘を観察しているサスケを発見。
「サスケ」
「!?…何だ」
「見てて分かるでしょ?ナルトを含め、三人で協力しよう」
「…断る」
は?どどどどど…どういうこっちゃ?
「お前なら兎も角、あのドベを含むのであれば、俺は一人でやる」
おいいいい!そんな事いってる場合じゃないでしょ?
「い、いやぁ…見てたでしょ?先生の動き、あれは皆で「俺は」」
「あんなやつに躓いてられる程度じゃ…イタチを殺せない、お前と違ってな」
「…サスケ」
そういって、視線をナルトとカカシ先生に移す。……ええい!ここで引けるかってんだ!
と思ったが…何とかなるだろう。そう思い、気配を殺しながら移動するのであった。
ここで、私の忍者としてのスペックを紹介しよう。
まずは、体術。此方に関しては既に上忍を越しているといっても過言ではない。ガイさんは下せるレベルである。技も色々覚えているしね。
次に忍術。これはアカデミーで覚えた忍術のほかに数種類しか覚えていない。
幻術も月読と二つ位だけど…まぁある意味最上級だから別にいいとする。
忍具は中忍位で、トラップ等に関しては…下忍レベル。…完全に体術で頑張るくの一になってしまった。…まぁこれからがつがつ忍術覚えるからいいけどね。
移動して、トラップを張ろうかと思ったけど、ぶっちゃけサスケよりトラップの才能は無い。というより、戦闘中にトラップという発想があんまり出てこない。肉体があるから。とりあえず、ブービートラップでも作ろうかなと移動したけど、意味無いなわはは。となってしまったのである。
これは、原作通りにお弁当で合格するしかないな。ナルトとだけでは駄目だし…三人一緒じゃなきゃなぁ
サスケぇ…お母さんはあんな子に育てた覚えはありません!
「なぁ~んてね」
「何が?」
瞬神の術で私の背後に現れたカカシ先生…
「先生、ナルトとサスケは?」
「ああ、沈めておいた」
どうやら、二人ともやられたらしい…この状況、通常は助けに行って三人協力するのが一番ベターだと思う。故にカカシ先生を出し抜こう。
「では、二人を助けないといけませんね」
「ほぅ…何故だ?」
「だって、私一人では鈴を奪えませんから」
「ま!そうでしょうね…だけど、それをむざむざ見過ごすとでも?」
そりゃそうだ…仮にも上忍。というより、実践であれば相当なピンチである。構えて、様子を見ていると、いきなり幻術を使ってくる…が。
「解」
印を結び解除をする。幻術については確かに覚えている術は少ないが…チャクラコントロールが異常に精密な私相手にそれは悪手である。幻術はチャクラの流れを乱して、相手に幻影を見せたり、幻の痛みを与えたりする術である。よって、チャクラコントロールを鍛えれば、それだけで幻術対策となるのだ。
「ほぅ…」
僅かに関心を込めた呟きが聞こえる。さてと…どうやって出し抜こうかな。
「…オレを出し抜くことを考えているのはいいけど…もう、時間が無ないでしょ?」
「…まじっすか?」
「マジマジ」
ええ~…これじゃあ、三人で協力する時間がないということ?…うーむ。
であれば、ナルト、サスケが以内のであれば私一人で取りに行かなければならないな。
「であれば…その鈴、貰います」
「やっとやる気出した?」
その言葉に返事をせず、チャクラで肉体活性を瞬時に行い、接近する
「!?」
掌底を放つ。瞬時にガードされるが、予想済み
「木の葉旋風!」
ガイ先生張りの体術を繰り出す
「何!?」
それをガードして、やり過ごされる。…まぁ全然チャクラ使ってないしね。せいぜい中忍レベル、と思われる。
「サスケがアカデミーナンバーワンかと思っていたら…君、実力隠してたでしょ?」
「はい、その言葉。ガイさんにも言われました」
「…ああ~、成る程。通りでガイに似てると思った」
その言葉と同時に、ナルトを止めたあの速さで駆けて来る、しっかり眼で追って
「し!」
「ほ!」
パンチを放つが、軽く避けられて、カウンターの一撃。しかし、それは既に
「…変わり身、ね」
ボンと音を立てて現れたのは、ただの丸太。あれ?罅入ってるんだけど…
「やるじゃない」
「どうも」
そうして、ちゃりんと鈴の音を鳴らして見せる
「!?何時の間に…」
そうして、鈴を持ったまま、カカシについているもう一つの鈴を抜き去って、背後に姿を現す。
「変わり身の時に取っただけですよ…こんな風に」
「…とんでもない速さだな」
「……嘘ですけど」
へ?というカカシ先生の言葉共に、私の二つあった鈴の一つが消える。
「!?…幻術?」
「そーです。油断しすぎです」
カカシ先生の腰にある鈴が一つに戻っている。そう、簡単な幻術を仕掛けただけ。
内容的には、私に鈴を取られたと思わさせて、カカシ先生についている鈴を一つ見えなくする。
そうして、幻術で私がかなり素早く取った風に見せ、実際には普通に抜き取っただけ。
そこで、種明かしである。…こんな術に掛かるなんて…油断しすぎにも程がある。
「それに、私の位置も変わっていませんよね?」
「…参った」
そういって、両手を挙げて降参ポーズをする。
「まぁ、この鈴はお返しします」
「ん?どうして?」
「この試験…三人のチームワークですよね」
「どうしてそう思う」
どうしてそう思うか…本で読んだからです。何ていえないけど、前知識があったとしてもだ。
「普通、下忍程度が上忍に触れられるのがそもそも可笑しいのですよ…通常であれば」
「…いや、面目ない」
そう、普通に考えてありえないのだ。上忍に条件付でも勝とうとすることが…それは、ガイ先生を通しても理解できたし、それに匹敵するカカシ先生相手に、素人が取りに行っても不可能である。
「鈴二つはチームワークを乱す為」
「正解、ま!それが分かってるなら何故それをしなかったの?」
「あ~…それは私の力不足です」
すみません。と頭を下げる。…もうちょっとがっつけばいいかなぁと思ったけど。
この後の弁当イベントで合格するからいいかなぁ…と思ってました。何て言えない。
…しかし、今後何が起こるかわからないのだ…今回も、もしかしたら弁当が無いかもしれなかったのだ。
…まぁ弁当があることを確認したから恐らくその可能性は限りなく低いと踏んだけど。
そこで、タイムアップのようで、じりりりと時計が鳴った。
最初の集合場所に戻ると…ナルトが縄で縛られている。
「ナルト」
「なんだってばよ」
「何でそうなってるの?」
それは…と事情を聞いたら、まぁお弁当を先に食べてしまおうという所でカカシ先生に見つかって縛られてしまったとの事。…ドンマイ!
「さて、皆集まったな…では、結果発表する。…お前ら全員アカデミーに戻る必要は無い」
「ってことは三人とも…!」
「そう…三人とも、忍者を辞めろ!」
…まぁ当然の結果である。結果が全てだし、私は鈴を返してしまった。最初に提示された条件を達成していないのだ。…一人だけ合格という事はあり得ないしな。結果がすべてである。…裏の裏も読んでいたが、それを行動に移せなかったし。納得である。
「どーゆーことだ!」
縛られながらナルトがカカシ先生に抗議する。サスケも歯を食いしばって、カカシ先生を睨みつける。
「どいつもこいつも忍者になる資格がねぇガキだって事だ」
その瞬間、サスケが立ちあがりカカシ先生に向かってクナイを構えながら駆ける。しかし、それを眼にも止まらぬ速さで、サスケを組み伏せ、上に座るカカシ先生。
「お前ら忍者舐めてんのか?あ!?何のための班分けだと思っている…ま!アヤカはその答えを知っているがな」
そうして、視線が集まる。…これは
「あー…チームワーク、ですよね?」
「そうだ」
「ちょっと待ってってばよ!先生についてる鈴は二つしかないってば!」
そこで、ため息をつくカカシ先生視線を何故か此方に向ける…サスケもそんなに睨むなよ…ビビっちまうぜ。
「それはわざと仲間割れを起こさせるためですよね」
「そうだ。自分の利害関係なく仲間の為に行動できるか…チームワークを優先させる事が出来るか、試したのだが…」
そこで言葉を区切る。私は何ていわれるのだろうか…
「ナルト!お前は一人で独走しするだけ、サスケ!お前は二人を足手まといと決めつけ、個人プレイ」
そこで一旦区切って、此方を睨みつける。
「そして…アヤカ!お前は本当の実力を隠したままだ…仲間を信用していない証拠だ!!」
「…」
「確かに、見事俺から鈴を取ったし、この試験の答えを弾きだした」
鈴を取ったという事で、此方に驚く眼を向ける二人…しかし、それに構っている余裕は無い。
「…まぁ、お前の実力はこいつ等とは釣り合わないだろう…だが!任務は班で行う!個人技能は確かに大切だが、それ以上に重要なのはチームワーク」
そうして、ポーチから何かを取り出そうとしているカカシ先生
「チームワークを乱す奴は、仲間を危機に陥れ、殺す事となる…アヤカ」
「…なんでしょう」
そういって、クナイを取り出し、サスケに向かって振りかぶる
「これからサスケを殺す…お前なら…止められるよな!!」
一気に振り下ろすカカシ先生…一切の躊躇が見当たらない。距離は50メートル位、普通に間に合う。
そうだ、もう隠す事はない。仲間なのだ。バランスとか確かに取れていない…が、彼らは天才なのだ、直ぐに頭角を現し、私では考え付かないような戦術で、敵を圧倒するかもしれない。
そうだ、隠す必要なんざ…もう、何処にも……無い!
全身にチャクラを通して肉体活性をし、地面を陥没させる位の踏み込みで初速からトップスピードを叩きだし、サスケの顔面に振り降ろされそうになったクナイを、私のクナイで止める。
鳴り響く金属音。
サスケの顔面一センチ位で私のクナイがカカシ先生のクナイを防いでいた。
「…そうだ、それでいい。何を恐れていたのか分からないが…お前はもう、俺の部下だ……プライベートと奥の手以外の隠し事は厳禁だ」
そういって、サスケを解放し慰霊碑の前に立つ。
「この慰霊碑をみろ…ここに書いてある名前は全て……任務中に殉職した、英雄たちだ」
「「!!?」」
「…」
じっと見つめるカカシ先生、その中には…うちはオビトの名前があるのだろう。
「この中には俺の親友の名も刻まれている…お前ら、最後にもう一度だけチャンスをやる」
そういって、此方を振り返る。その眼は真剣そのものだ
「挑戦したい奴だけ弁当を食え、ただし、ナルトには食わせるな。ルールを破ったからな…もし食わせたりしたら…そいつも失格だ」
ここでは俺がルールだ。分かったな
その一言を残し、瞬神の術で姿を消すカカシ先生
「アヤカ…」
「……何?」
「……いや、何でもない」
そういって、弁当を開くサスケ。私も弁当を開き、ご飯を少し食べる。
ぎゅるる…
ナルトのお腹から虫がなっている…
「はい、ナルト。食べちゃいなよ?」
「…そうだな、足手まといになられちゃ困るからな」
そういって、ロープを切り、ナルトを解放する。
「へへ、ありがと」
そうして、私の箸を受け取り、ご飯を口に運んだ瞬間
「お前らああああ!」
眼の前からボンと煙が立ち込め、そこからカカシ先生が顔を出す。鬼気迫る表情だ。
「うおわ!」
「!?」
「ごーかっく」
そうして、私たち第七班の合格が確定したのであった。