「本日もよろしくお願いします」
「おう!」
あれから4年がたち、私も既に12歳になった。髪は腿位まで伸ばしてその先端を赤いリボンで一まとめしている。身長も151センチと平均位。今まで取得した技術無しでは漸くガイさんと打ち合えるレベル…といっても、相当手加減されてるけど…になったのだ。
そして、本日が最後のガイさんとの訓練となる。予め、何時も訓練している所ではなく、だれにも邪魔されそうに無く、且つ、人があまり来ないところで訓練場所を指定した。
理由は簡単…上忍相手にどこまでやれるかが気になった。今の自身の実力を確認しておきたかったのだ。
何時ものように訓練が終わり、休憩となった。
「ガイさん」
「お、どうした?」
「…本気で組み手をお願いします」
「ほぅ…錘を外してか?」
それに頷いて答える。私の真剣さを汲み取ってか、ガイさんも錘を外す。
錘が地面に落ちた瞬間に陥没する。無論…私の錘もである。
「休憩は終わりだ…始めるぞ」
「はい」
一定の距離を空けて対峙する。
「ガイさん」
「どうした?」
「……このことは他言無用でお願いします」
なんのこっちゃ?と思って頭にハテナマークが浮かんでいる。
しかし、それも一気に吹き飛ぶ
「写輪眼」
「!?……成る程な」
写輪眼を開眼させると動体視力が飛躍的向上する。だが、正直いってこの眼で対抗出来るのかと聞かれれば…難しいと答えざるを得ない。相手はあの「マイト・ガイ」なのだ。普段は馬鹿っぽい熱血キャラだが、真剣に対峙すると、心地よい緊迫感を運んでくれる。
「行きます!」
瞬時にチャクラを肉体活性に回し、爆発的な加速を生み出す。踏み込んだ地面は陥没し、一息もせず100メートルは離れていたガイさんに接近する。
「!?」
最初の陥没の音以外、私の足音は無音。
「木の葉烈風」
視認を許さないほどの命を刈り取る死神の鎌の如くな回し蹴りがガイさんの胴体に炸裂する。それを冷静に衝撃を殺しながら防がれる。が、今は綱手姫…には劣るが、それに追随する力を発揮している。当然
「ぐぅ!」
苦しいうめき声が聞こえるが、それも一瞬。直ぐに受け流して流れるような掌底を放つ。地に着いている足にチャクラを瞬間的に移動し、爆破させ、その力を利用して回避する。この間1秒未満。私の脇腹を掠めてガイさんの攻撃が通る。
空中に居ることを逃すことなく
「木の葉閃光!」
その名に恥じぬ正に閃光に匹敵する速度で私に襲い掛かる。そして、直撃。が、甘い。
地面に叩きつけられた私は煙を立てて丸太に変わる
「何!?変わり身の術だと!?何時の間に」
ガイさんの左前方に煙を撒き散らしながら姿を現す。ガイさんも視認した瞬間完全に油断が取れた眼でこちらに向かってくる。それを迎え撃つ。
「木の葉昇風!」
写輪眼を駆使して、ガイさんの動きを完全に予測しジャストミートで空中に上げる蹴りを当てる。
が、一発ではわずかに浮いたばかりだが、
「追撃!!」
もう片方の足で更に蹴り上げる。しかしその瞬間に、ガイさんは丸太に代わる。
「変わり身!?」
後方に僅かな違和感、いや上だ!
「木の葉剛力旋風!」
「木の葉大閃光!!」
大気が弾け、衝撃波が訓練場を襲う。突風が襲ったかのごとく木々の葉が風に舞っていく。
私の足場がその力に負け、地割れを起こす。
そこで一旦距離を瞬時に開ける。仕切りなおしだ。ガイさんも同じことを考えていたのか、あちらも距離を開けてきた。
「…実力隠してたなー!?」
「さぁ、何のことやら」
先ほど打ち合った足の骨にひびが入っていたが、精密なチャクラコントロールで瞬時に肉体を活性化させ、修復する。完治である。
「まさか、この俺がアカデミー生に体術で驚かせられるとは…」
「どうです?私の力は?」
「…脅威に値するよ」
真剣な眼でこちらを見てくる。いよいよもって本気か。
「私の教え子でね、ロック・リーという奴がいるんだが…彼は努力の天才だ。そして、君も努力の天才だ…さらに、天性の才能もある」
「それは、買いかぶりすぎです」
「何を言う。俺にここまで言わせるアカデミー生は恐らくアヤカしかいない」
それはそれは…
「ありがとうございます!!」
先ほどのチャクラを全力の5割だとすると今回は7割のチャクラを使用して肉体活性を行う。
空気が弾ける
しかし、ガイさんも同様に空気の壁をぶち抜いて接近する。100メートル以上あった距離が1秒も満たないで0になる。
「し!」
「は!」
高速のストレートが此方に入るのを視認し、それを下から蹴り上げる。しかしそれで終わるガイさんではない
「木ノ葉大旋風!!」
ローキックから始まり、だんだん上段へ超高速の蹴りを叩き込み、最後に踵落としで決める、体術では高位に位置する技。が、繰り出されたローキックを踵落としの要領で叩き落とす。
「ぐ!」
地面と直撃する前に素早く足を引く。地面に私の足が到達した瞬間に、地面が衝撃に負けて喚起する。
凄まじい衝撃音を撒き散らすが、既に次なる攻撃が来ている。
「木ノ葉壊岩升!」
痛烈な肘が私に襲い掛かる、まずい事に、喚起した地面が邪魔で迎え撃つしかない。チャクラを腕に集めて防御する。瞬間に衝撃が襲い掛かる。
「くぅ…!」
吹っ飛ばされ、ミシリという骨の嫌な音が聞こえたが、瞬時に回復させる。吹っ飛ばされた衝撃を和らげながら、空中で姿勢を整え着地する。強いな…じゃあ、ギアを上げさせてもらいましょう。
「開門」
瞬間に一気にチャクラ要領が増え、辺りの砂埃がチャクラに呼応して舞う。
「な!?俺は教えていないぞ!」
「見ましたから」
「…成る程な、写輪眼か」
納得したのか、ガイさんも姿勢を整えて
「開門!」
一気にチャクラが増す。自然とにやける。心地良い闘気。彼は完全に本気を出している。…全力は出していないと思うけど。
しかし、ここで決定的に違うことが発生した。
「アヤカのチャクラが…留まっている!?」
そう、膨大なチャクラゆえに放出しながら使用するしかない八門遁甲。しかし、私はその常識を塗りつぶす。精密なチャクラコントロールで体内全てのチャクラをコントロールし、僅かなチャクラも漏らさない
「行きます」
先ほどより更に速い速度で距離を詰めて攻撃を開始する。
「!?」
速さに驚いているようだけど、冷静に対応する。さすが上忍である。しかし、完全に此方が押している…と思いたいが、ガイさんは防戦一方。一発一発がソニックムーブを伴う一撃に苦悶の表情を浮かべながら捌く。
「ぐぅ!」
カウンターの一撃を放ってきたが、遅い。
「雷歩」
霞む様にその場から消え、ガイさんの後ろに電気を伴いながら姿を現す。ガイさんはまだカウンターの一撃を放ったままだ。
「木ノ葉大旋風!」
此方に気づいていたが…カウンターのカウンター、避けれるはずがない。故に、ローキックが完全に入る。回転しながら上段蹴りをお見舞いし、最期に
「痛天脚!!」
強烈な踵落としを決める。地面が蜘蛛上に割れ、クレーターが出来る。
「があ!?」
完全に決まり、吐血するガイさん。そして、瞬時に距離を開けるが……起き上がる気配はなし。
「勝った!」
その場でガッツポーズをする。ふふ…このオートリジェネみたいな戦闘の最中でも自動で怪我を回復する業を常にかけているのだ…我ながら嫌らしい術を作ったもんだ。まぁ掌仙術の応用なんだけどね。
「おっと、ガイさんの治療をしなければ」
そういって、クレーターの真ん中でぶっ倒れているガイさんの頭を膝に乗せて掌仙術で治療していく。
ううむ…見る見る内に治っていく。チャクラの乱れをコントロールし、ダメージが酷い内臓を治療する。
毒とかなければ、まぁ一日は動けないと思うけど回復は出来る。
そんな感じで治療を続けてると
「う…」
「あ、起きました?」
「あ、ああ……って、うお!?」
いきなりガバって起きるもんだから
「いたた…」
「駄目ですよ、いきなり動いては」
そういって、また膝に寝かせる。しっかし…濃いなぁこの人は。
「ひ、膝が…」
「あ、嫌でした?」
「い、いや…そうじゃなくてだな」
と、あたふたしているが…まぁそんなことより治療だ。
「掌仙術を使えたのか?」
「はい」
「どうりで、あの馬鹿げたチャクラコントロールが出来ると思ったが…」
半分納得半分疑問でうんうん頭を悩ましている。…まぁチャクラコントロールで私の右に出る人間はいないと思うよ。まさしくこの瞬間でも影分身がチャクラコントロールの訓練を行っているのだ。
いまは、螺旋丸のキャッチボールを訓練事項として行っている。
キャッチした瞬間にすぐさま同程度のチャクラの乱回転を維持しなければ瞬時に暴発してしまうし、投げる際も、絶妙なコントロールで螺旋丸を切り離さないと瞬時に暴発してしまうのだ。
それを水の上や塗れたコケの上、他の影分身が攻撃をしながらである。
「しかし、これほどまでとはおもわなんだ」
「まぁ、実力は隠すに越したことありません」
「…何故俺には力見せた?」
そう問いかけてくる。
「まず一つが、これが最期だったからです。そして二つ目が、上忍相手にどれほど通用するか試したかったといった所でしょうか」
「…アカデミーでは、どうしている」
「平均を保ってます」
ぽかーんと口をあけて此方を見てくる。ううむ…濃い顔だ。
そして、首を振る。ちょ
「く、くすぐったいです…」
「あ、ああ…その、すまん」
そういって、膝枕から頭を上げる。大分回復したみたいだ。チャクラの流れも正常だし、明日には完治しているだろう。
「…今のアヤカの実力を火影に報告を……」
「あれ?言いましたよね?この件は内緒にすると」
「そうだが…」
「約束を違えるんですか?」
うるうるさせてガイさんを見つめる。これでもかなりの美少女なのだ。男子からの告白は…数えるのもだるい。顔は完全に美少女で線の細い体だが、肉つきはあり、細すぎず、太すぎず。胸も少し膨らんできた。…まぁヒナタレベルではないけど。
アカデミーの女子とは…まぁずっと同じスタンスを保ってきたが、ちょっとかわって、「いざという時に頼りになる子」として認識されてしまっている。二つ名は「平均王」だ。
「わ、分かった…だが、必要があれば直ぐに報告するからな」
「分かりました。ガイさんの判断に任せます」
「…直ぐに報告するかもしれないぞ?」
「構いません。ガイさんを信用しているので」
「…参った」
そういって、両手を挙げる。ちょっと痛そうにして立つ。
「八門遁甲についてだが…あれは危険だ」
「コントロールでk「確かに。だが、破壊力的にも非常に危険なのだ」……」
まじっすか?
「何処まで開門できる?」
「えっと…驚門までです」
「…え?オッケー!もう一回お願い!」
「驚門まで開門できます」
あんぐりあけるガイさん。まぁ死の門まで開けられるけど…と普通は死に至るからな。
あら、ガイさんが額に手を当てて何かぶつぶついっているぞ。大丈夫か?
「よ、よし、冗談は置いておいてだな」
「冗談じゃありません」
そういって、一気に驚門まで開門する。眼が蒼く光り周りのオーラも蒼になる。天まで昇るチャクラを圧縮して押し留める。全ての門を循環するように荒れ狂うチャクラをコントロールするが、やはり無駄は出てきてしまう…。が、それでもかなりのチャクラ量なので地面はチャクラに負けて地割れを起こしてく。まるで九尾のチャクラだ。
「…俺は夢でも見ているに違いない」
「夢じゃありません」
そういって、現実に戻す。そこで正気にもどり
「は!い、いいか!絶対にそのまま攻撃するなよ!」
「え?どうしてですか?」
「いいから!」
そういって、全ての門を閉めてチャクラを霧散させる。
「ふぅー…一瞬命の危機を感じたよ」
「どうしたんですか?」
「いいか、驚門を開門して正拳突きをしたとしよう。あたり一面空圧で一気に丸裸になる」
…なんと。
「まぁ動いてないからそれほどでもないと思うが、筋肉とか断裂しないのか?」
「瞬時に回復させてます」
「…俺はもう何も突っ込まないぞ」
いやいや、あれほどのチャクラを少し回復に回せばがんがん動き回れると思うのですよ。
しっかし、あ~汗かいた。八門遁甲使うと汗かくんだよね。早くシャワー浴びたい。
「さて、これで特訓を終わる!…最後に抜かれるとは思わなかったけどな!」
「ガイさんも全力で来てませんでしたよね?」
「まぁ…な!だが、本気で行ったつもりだ、それを下したのだ…自信を持て!」
「…はい!」
そうして、長くも短い特訓期間が終わったのであった。