「ハンターねぇ」
そう呟いたのは我が父ライダである。容姿は金髪で身長はぱっとしない173cmで顔は中の上辺り。
夕食の席で俺がハンターになる!って言ったらこの返事さ。
「無理ね」
当然の如く返したのが母のアリアだ。容姿は茶髪で身長は156cmで顔は中の上位。そして、恐らく頭には既に明日の朝食の献立をどうするかで頭が一杯なのだろう、
黙々とご飯を食べてる。
それもそのはず、プロのハンターになるなんて普通の人間からしたら御伽噺の世界だ。
無論、家も例に漏れず。そんな夢物語はそこらへんに捨てて、現実を見てくれと、両親の態度がそう物語っている。
「でもさぁ、あんなカード1枚で一生遊んで暮らせるんだよ?最高じゃない?」
「本当でも、俺は我が子にそんな危険な職には就いて欲しくないなぁ」
尤もだ。しかし御幣がある。
「プロハンターになった瞬間にライセンス売ってお金にするから危険なことといえば試験だけだよ」
「でもなぁ」
「無理なものは無理よ」
これでは埒が明かない。何か実現出来ないような条件を並べてその達成のあかつきに試験OKという条件を提示するしかない。ということは…
「じゃぁ、何かボクシングジムとかに連れて行って。そこで小学校卒業までいて大人の人をKOさせたら許可して」
そういうと、わずかに考えて両親は顔を見合わせて此方を向く。
「いいよ。だけど12歳まで続かなかったら、負けたらそこで終わりだよ。危険なことはやらせたくは無い」
「ありがと!」
こうして、ボクシングジムに通って格闘の基礎を覚える事となった。
「ルクルと申します。宜しくお願いします」
次の休みの日に、それなりの距離のボクシングジムへ足を運び、プロハンターになりたいからという理由でボクシングジムに通うことが出来た。
オーナーのおっさんは笑いながら受け入れてくれた。
恐らく、冗談の類だろうと思っているはずだ。まぁそこらへんの子供の夢は殆どがプロハンターなのだ。
「それじゃぁまずは、足腰や体力を鍛えるトレーニングだ」
こうして始まった縄跳び。何でも手首のスナップだけで回すのがいいらしい。最初は探るように飛んで、慣れたらテンポを変えたり、時には3重飛びを混ぜたりして縄跳びを実施した。
何処まで早くなるのかなぁ…とか思って、びゅんびゅん早くしていったら近くのにいちゃんに何か止められた。これからがいい所だったのに…
「餓鬼にしちゃ上出来だ。嬢ちゃん、次はパンチの仕方を教える」
オーナーから声を掛けられて実践していく。まずはどういう風に握りこぶしを作るか。
それだけを数時間行った。まずは瞬間的に握りこぶしを作り。インパクトの瞬間だけ力を入れるように
何度もシミュレートした。最後にシャドーボクシングで、間合いや呼吸の基礎を教えてもらい本日は終了となった。
「ただいま」
結構な距離にあるボクシングジムだが、俺はトレーニング服を着用して家までランニングする。
トレーニング服を着ていれば、周りから「あ、ランニングしている幼女だ」と思われるだけである。
何より、前世では考えられない距離を走破してもまったく息が切れてないことにびっくりだ。
「おかえりなさい」
こうして出迎えてくれたのが、母である。
「どうだったの?」
おいおい、主語が無いぞと思うけど、十中八九ボクシングのことだろう。
「面白かったよ」
「あら」
「体のシェイプアップも測れるらしいよ、女性も結構いたし」
「本当?」
頷いて返して。洗濯場に自身が着ているトレーニング服を脱いで投げ込んで、リュックの中に入っている汚れたであろう衣服も詰め込んでいく。勿論パンツ一丁である。
今日はクマさんパンツだ。
「はぁ、女の子なんだから、もっと周りを気にしなさい」
「え~家の中じゃん」
「だーめ」
そう言いつつ、着替えを用意してくれる辺りはやはり感謝である。
シャワーを浴びてご飯を食べる。その最中に父が帰ってきて家族全員がそろったことを確認して、夕食を再開するのが家の通例の流れになっている。
夕食のとき父にもボクシングのことを聞かれたけど、面白かったよと返して何故か面食らっていた。
そして、父のお腹を見ながらシェイプアップ効果もあるんだって。と伝えると
「時間があればなぁ…」
と、何故か本気で悔しがっていた。まぁ気持ちは分からないでもない。前世の俺も時間が欲しいと切に願っていたものだ。
あ、そうそう、念は常人と同じく垂れ流しにしてトレーニングしているぜ。垂れ流さないとまったく疲れないし、筋力も上がらない…と思われる。
纏をしているとあんまり疲れないのだ。
疲れが出たほうが肉体的には効果的なのかなぁ…と思っているのであえて念は使用していないのだ。
まぁ夜になったら何時もどおりに基礎のから始まり応用である。
習得率はどれくらいかと言うと、基礎は上々。絶とかすると、幽霊になった気分を味わえる。
応用はまだまだこれから先があるさ。っていうレベルだと思う。いや、自分基準なんであれなんだが、発展の余地がまだまだあるからこの評価にした。
堅は半日以上行える。しかもガンガン増えていく辺りオーラの総量が多いことが伺える。
やはり転生の影響なのだろう、いや、転生直前のあの怨念の影響なのだろう。
オーラに色が合ったらどす黒いと思う。なんというか血が固まった感じな色。
昆虫共の王直属親衛隊と真っ向勝負できるんじゃね?雰囲気だけならな!
誰があんな危ない所いくかよ!今度は絶対平穏な暮らしを…しようかなぁ?
まぁまだまだ人生これからだしゆっくり悩んで決めるか。
そう思ってオーラを錬で出し切った瞬間に眠りに付いた。本日の持続時間は予想通り12時間30分だった
つまりボクシングジムの帰りから錬をし続けてたんだ。くそ眠い。しかも、何か人を直視すると威圧を感じるらしいからあんまり目を見ないようにしている。
もっと効率がいい方法が無いものかねぇ
「ようチビルク」
学校の授業の合間に何時も絡んでくるやつが何時もどおり絡んできた。
「何?ハサン」
ハサン・クレドリア
何時も俺の事をチビルクと呼んでは何故か絡んでくる。しかも何がしたいのか分からないのだ。
俺は授業の合間は点を行ってオーラの質を磨いてるのに、こいつのせいでいちいち中断させられる。
顔は将来に期待といった所であろう。まぁ確実に前世の俺よりはかっこよくなることは間違いない。
「いつも座ってるから何時までもチビなんだよ」
何か言ってきた。そんなことで怒りがこみ上げるということは無い。
そうなんですかと受け流すのが一番いいのだ。だいたい自分も分かっていることで事実を指摘されたまで。そんなことに怒りを感じるわけは無い。
「いいじゃない」
そういって彼の顔を見つめると何故かうっとなって顔を赤くする。意味が分からん。
「い、いい気になってんじゃねぇぞ!」
しらねぇよ。そう言おうと思ったらチャイムが鳴って彼もしぶしぶ席について行った。
何であんなに残念そうに自分の席に向かうのだろう。こんなにも勉強は面白いのに。…面倒でもあるけどね。そうして、次の授業で使う教材を取り出して授業を受けるのであった。
そうして1年が過ぎた。
「は!」
「ぐふ!」
カンカンカーン!とゴングが鳴り一礼をする。
そう、ボクシングをたった1年でアマだけど大の大人をKOにしてしまった。
この一年間で身長もようやく120cmに達して内心凄い喜んでるけど、決して表には出さないよう細心の注意を払っている。
「本当に実現しちゃうなんて…」
「信じられん」
先週に「KO勝ちしたよ」と言ってプロハンターの試験受けに行ってもOK許可をいただこうとしたが。
まぁこんなことを言っても信じられないというのでジムに連れて行って今度は最初にKOを取った人より強い人とスパーリングという名の練習試合を行い両親の目の前でKOをもぎ取った。
つか、この世界確かに鍛えれば鍛えるほど強くなるのは確かだが、念を覚えてないと更に上にいけない。
俺の筋力がそれを証明している。大の大人が子供に本気で掛かり開始20秒でKO負けを喫したのだから。
…試合では念は使ってないよ?ほんとだよ?
「お宅のお嬢さん、相当やりますぜ。始めてみたよ、天才ってやつを」
というのはジムのオーナーの言葉だ。俺もまさかここまで強くなるとは思わなかった。
何か、ちょっと集中すると皆の動きが凄く遅く感じようになったのだ。平常時でも。…気のせいかもしれないが
スタミナも既にフルマラソンをハイペースで走破できるんじゃないの?って思うほど付いた。
両親の顔を見て一言
「さて、1年で達成しちゃたけど、どうする?」
此方を絶句してみる両親の顔はあきらめの表情であった。