「はじめまして、ルクルと申します。宜しくお願いします」
「俺はゴン!宜しく!」
「俺はレオリオってんだ、宜しくな?」
「私はクラピカと言う。宜しく頼む」
「俺はバロガンだ、ま、お互い頑張ろう」
そうして一同自己紹介が終わったと同時に、ジリリリリと目覚まし時計がなった。
音がしたほうを見ると、何か執事風の男が目覚ましを持って通路に現れた。
「ここに居る408名が今年のハンター試験を受けるものたちとなります」
そうして全貌が見える、特徴的な髭に白い髪…口が…口……気のせいだな。うん。
「私、試験会場案内人のサトツと申します。これより試験会場に案内いたします。私にはぐれないよう付いてきてください」
そうして先頭のサトツさんが通路の奥へ歩いていき、受験者全員がそれに続く。
確かこれは既に一次試験になっていて100km位あるんだっけか…体力的には大丈夫だけど、精神的に疲れるな。
「それにしても、重そうだな」
俺のキャリーバックを見てそう零すハサン
「女の子は色々用意しなきゃいけないの」
「お前にそんな神経が残っていたか」
「まぁねー」
そうして歩き出す俺達。
「しっかし、この通路一体何メートル位あるんだろうな?」
「さぁ」
「ん~確か100km位だと思う」
「100k!?」
驚いた声と共にレオリオが気落ちする。ぶつぶつとなげぇとか言っているが、大丈夫か?
そうして互いに他愛もない話をしながら少し歩いていると、徐々に前の人のペースが上がっていっている。
今更だが、現在私たち集団は列の後方に居る。前は人だらけで後ろを見れば歩いてきたトンネル内が見える。
「おい、徐々にスピードが上がってないか?」
「ああ、上がってるな」
レオリオとバロガンさんがやり取りをすると同時に、サトツさんがペースを上げたのか、前のほうからの足音がうるさくなった。
恐らく駆け出してきているのだろう。
「さて、私はキャリーバックが邪魔になるから後ろのほうに行きますか」
「そうか、俺達はペースを維持しつつはぐれない様にするぜ」
そういって、ゴンご一行と離れて最後尾に着く。
私一人だけかと思ったけど…
「ま、お前がへばらないよう見ててやるよ」
…それ関係なくね?と思う。そう。ハサンが一緒についてきたのであった。
「それはこっちの台詞」
しかし、ゴン達と会ったからなのか、一年近くあっていなかったが、男子三日あわざるは克目してみよとはこの事か。
かなり雰囲気が落ち着いている。そう、中二病を克服した後の感じに似ている…そういえば、俺と同い年だったよな。
「へ…」
そうして前を向いて呼吸を調節していくハサン。ふむ…体は鍛えてあるようで、身体能力もそれに伴って上がっているということは明白だ。
「結構鍛えたんだ」
「ああ、プロハンターになるなら体を鍛えなきゃいけないからな…お前も大丈夫のようだな」
「まぁね」
そうして俺も呼吸を調節して走る。が、ぶっちゃけ呼吸なんか合わせなくても体力には自信があるから大丈夫なのだ。
けど、呼吸を調節すると体力が温存できるし、何より死ぬことはないと思うけど、何が起こるかわからないのが現実なので出来るだけ体力は残すに越したことはない。
途中パソコンを持った少年とぎりぎり言える人が呼吸を荒げながら走っていた。その横に似ている人が二人何か耳元で呟いた。
その瞬間に少年がパソコンを落とし、膝を付く。…のを横目に見ながら俺達は走り去っていく。
「ふぅー…最初の脱落者か」
そう、ココまでフルマラソンより走っているが、漸く最初の脱落者が出たのだ。
「ん?息が上がってきたの?」
「は!まさか」
どうやら結構鍛えてきたみたいで、若干呼吸が激しくなっているかもしれない程度の乱れだ。恐らく余裕だろう。
「…ふ、スカートじゃなくて良かった」
「おまえなぁ」
しばらく走っていると階段が見えて俺はそう呟いた。そう、これを見越してのジーンズ!
最後尾だけど、ココで脱落する人間が結構続出するはず…その際にスカートの中身、すなわちパンツが見られる心配が…皆無なのだ。
そうして階段を上りだす俺達。その途中で脱落者になるであろう人が座り込んでいたりしていて、結構邪魔だ。
「どいてどいてー、キャリーバックに当たるよー」
「お前、何でキャリーバックなんだよ…」
いいじゃないか!めっちゃ中に荷物が入れられるんだぜ?もうこれしかないと思ったね…
「ふぅー…しかし、お前は余裕だな」
「まぁねー」
ぶっちゃけ余裕過ぎる…これがきつかったらヒソカに付けてあるマーキングへジャンプしようとしてた所だけど、杞憂に終わったよ。
そうして走っていると、出口が見える。
「お、出口」
「はぁ、はぁ…やっとか」
そうして光が差している出口へと入っていった。
「うわー…」
「ゴールじゃないのか…よ」
視界いっぱいに広がっているのはぱっとみ平原。しかし、この平原にはない特有の湿り気…湿原だ。
「ここはヌメーレ湿原、この先に第二次試験会場があります」
「嘘だ!そいつは嘘をついている!!」
サトツさんが説明しているのを遮って誰かが割り込んだ。声がしたほうを見ると、傷だらけの男が此方へ歩んでくる。
「そいつは偽者だ!この湿原に居るサルが人へ擬態できる能力でだまそうとしているのだ!」
と言っているが、まぁ俺は正解が分かるのでどうでもよし
しかし、それが分からない人間が混乱を起こし、それが広がっていく…が
ヒソカが目にも留まらぬ速さでサトツさんと男、二人同時にトランプを投げる。勿論、念が若干篭っており、使えない人物にはかなり殺傷力がある攻撃だ。
そしてそれを受け止めたのが…サトツさんだけ。男はトランプが刺さり、死んだと思われる。
「これで決定。本物は彼♪」
そうしてヒソカがサトツさんに注意され、その後の説明がされて、試験が再開される。
「ハサン、見失うと説明どおり霧が濃くて二次試験会場までたどり着けないかもしれない。前へ行こう」
「オーケー」
そうして俺達も前へ出た。すると見えてくるサトツさんと…子供二人。恐らくゴンとキルアだろう。
「おっすお二人さん」
「よお!無事だったか、ゴン!」
「ハサン!とルクル!」
二人に並ぶ。やはり12歳だけあって、俺より背が小さい。因みに俺は161センチになった。ハサンは恐らくそれ以上の170に近いと思う。
「ゴン、知り合い?」
「うん!男の子の方がハサンで女の子の方がルクル」
「「よろしく」」
「ああ、俺はキルアって言うんだ。よろしく」
一気に重要人物と会ったなぁ…まぁ一際目立っているのがやっぱりこのキルアだ。
体術、技術は抜きん出ている。足運びも特別な訓練を受けているそれだ。…因みは俺は全て我流。
自分の能力と向き合って先頭理論を構築していっている為、あまり型に嵌らないほうがかえって動きやすいと思ったからだ。
「…ルクルっていったっけ。あんた強いでしょ?」
「まぁ、それなりにねー」
…あれ?こんなにバトルマニア発言したっけ?この子。しかし、纏を纏っていないのにその評価か…まぁまぁだな。
ま、キルアがどれだけ俺の実力を見抜いているか…でも実際戦ったら…いや確実に勝てる。
それだけの経験と自信を付けてきた。そう、命がけの訓練(ヒソカとの定期戦闘)をしてきたのだ…成長しないはずがない。
む、とハサンがキルアを見ているが、キルアはお構いなしに走っている。
…まぁハサンは確かに体力や鍛えてあるというのは分かるが、戦闘は殆ど初心者であろう。
むしろその年で戦いを覚えること自体は通常考えづらい環境だったからそれは仕方がない。覚えていなかったらこれから覚えていけばいい話。
そこから成長するかは本人しだいだ。
「うーん…ルクルが強い?」
「はは、あまり期待しないようにね」
そうして前を向いて走り出した。その10分後
「ぎゃー!」
霧が出始めてきて、少し走った所で後方から断末魔。それと同時に殺気が此方まで溢れて来た。
…ヒソカだ。
「あいつ、霧に乗じてかなりやるぜ」
「どうして分かるの?」
「俺も、あいつと同じだからさ」
「同じ…?」
「そう、俺は猫被ってるだけ」
うーん、これまでの経歴を見れば同じに見えなくはないけど、根本的に違うよね。
だってあの変態度は誰にも被らないと思うよ。あの変態は。
キルアが「くく☆」とか呟いたら俺はもうどうしたらいいか分からん。
「ぐあ!?」
「レオリオ!?」
さらに悲鳴が上がったがどうやら、レオリオらしい。ゴンが真っ先に反応して後ろに駆け出していった。
「あーあ…あいつ馬鹿だな」
そういうキルアは前を向いて走り続けている。ハサンはゴンを追いかけようか追いかけないかで少し迷ったていたが、結局追いかけはせずに私たち先頭グループに残留した。
「まぁあいつらなら…大丈夫だ」
といいつつハサンは疲れで出た汗とは違う汗をかいていたのは一目瞭然だったが、あえて突っ込まずにそのままスルーした。
「よ、こんなところにいたか、ルクル」
ゴンと入れ替わりに追いついてきたのはバロガンさんだ。息切れなどは全く起こしていない…こやつ、絶しながら走ってやがる。
「!?…へぇー」
おい、キルア君がバロガンさんに興味を抱いたぞ。絶しながらだから恐らく声を掛けるまで気付かなかったはず。今は纏を纏っているけど
おそらくそれもポイントとして加味されているだろう…因みに俺は垂れ流して試験を受けている。
キルアみたいな腕が立つ人間の前で使うと余計な警戒心を生んでしまうからだ。
「余裕そうですね、バロガンさん」
「まだまだ若い奴らには負けないぜ?」
「ご謙遜を」
「……お前が言うと何故か嫌味に聞こえてくる」
そんな自覚は一切ないぜ☆
「む…」
ハサンから聞こえてくる、若干怒気を含み零れ落ちた言葉。…なに怒ってるんだ?
「なーに怒ってるの?」
「別に」
「…いいねぇ若いって」
そうして走っていると霧が晴れた地帯へ出てきて
「お、見えてきた」
そうして漸く二次試験会場の小屋が見えてきたのであった。